海の日芸術祭 ART & ECOLOGY 当 日 は、 生 憎 の 雨 だ っ た が、 会 場 は「 海 の 日 芸 術 祭 」 を 開 催 するのにふさわしい絶景の景色 の 中 に あ る。 太 平 洋 に 面 し た 高 年に 台の上にある見晴らしのいい場 所 で、 南 の 正 面 は、 明 治 大震災の津波により流失したが 〈ここ福島で生きる〉を合言葉に 福島県在住の4人のアーティストが世界に向かう 平成 年に再建)のある海岸で、 7 月 の 第 3 月 曜 日 は「 海 の 恩 恵 に 感 謝 す る と と も に、 海 洋 国 なまためみちお《幸福の赤い屋根、星降る夜》F6 日本の繁栄を願う」ことを趣旨 五 浦 六 角 堂( 北 茨 城 市・ 東 日 本 岡 倉 天 心 が 設 計 し 建 て ら れ た、 38 に、 福 島 県 で 活 動 す の 日 」。 こ の 日 本 の 国 民 の 祝 日 に 1 9 9 5 年 に 制 定 さ れ た「 海 北に 視界には当然入らないが反対の い建物が微かに見える。そして、 その近くの天心記念美術館の白 キ ロ の 距 離 に は、 原 発 事 る4人のアーティス 24 が行われるというの 「 ART PLAN Gallery 」 に 集 ま っ て、 打 合 せ いわき市泉町にある 催地となった福島県 作 家 が、 芸 術 祭 の 開 開催の迫った6月 の 中 旬、 そ の 4 人 の することになった。 の日芸術祭」が誕生 吉田成寿を中心に「海 新 井 浩、 浅 野 ア キ ラ、 ト、 な ま た め み ち お、 射 能 災 害 の 復 興 途 中 の 中、 わ れ 4 年 が 過 ぎ ま し た が、 津 波、 放 ま す。 一 方、 東 日 本 大 震 災 か ら と岡倉天心からのメッセージみ こから六角堂の方向を見ている の で、 こ の 地 を 選 び ま し た。 こ 信した岡倉天心を尊敬している 家・ な ま た め み ち お は、「 私 は、 こ の 立 地 が、 こ の 芸 術 祭 を 象 徴 し て い る。 実 行 委 員 代 表 の 画 る。 故を起こした福島第一原発があ 向かって発信していこうと思い 活 動 す る 美 術 家 た ち で、 世 界 に 生 き る 〉 を 合 言 葉 に、 こ の 地 で 思 い ま す。 そ れ も〈 こ こ 福 島 で 気 持 ち で、 芸 術 祭 を 行 い た い と と、 ま た 命 を 育 む 海 へ の 感 謝 の われは亡くなった方々への鎮魂 限 り、 絶 対 や る ま い と 思 い ま し 作 品 発 表 は、 声 を 掛 け ら れ な い ん で す ね。 私 自 身 の こ の 期 間 の 要があるだろうなと思っている の関係でいちど補正を受ける必 す 必 要 も あ る し、 そ れ が 社 会 と 信 す る だ け じ ゃ な く て、 鍛 え 直 単に自分の中でできたものを発 い か と 思 う ん で す よ。 創 造 力 は て、 冷 静 な 眼 差 し で 美 術 と 社 会 の 活 動 を 見 て、 現 地 の 作 家 と し と 言 う の は 新 井 浩。 他 府 県 か ら大勢押しかけるアーティスト いましたね」 でに何か作っておくべきだと思 ち ら が、 発 信 す る も の を そ れ ま 何か声を掛けられてはじめてこ らから行くことはないだろうと。 る こ と は あ る だ ろ う け ど、 こ ち の と こ ろ は、 よ く 分 か ら な い ん に 住 み 続 け て い ま す け ど、 本 当 う か を 迷 い ま し た。 結 局、 未 だ も い た の で す が、 私 た ち は こ の は県外へと避難する子供や家族 の後の原発事故によって周囲に 「震災が起きた当時、私には小 学 生 の 子 供 が 二 人 い ま し た。 そ の関係を捉えてきた。 まま郡山に住んでよいものかど ま す。 単 に 文 化 活 動 と い う よ う た ね。 逆 の 意 味 で。 必 要 と さ れ たいなものを感じることができ 日本の美術を世界に向かって発 で会場を訪ねた。 50 なまため みちお 考えています」 と、抱負を語った。 参 加 す る 美 術 家 は、 な ま た め の 他 に、 福 島 市 在 住 の 彫 刻 家 で 福 島 大 学 教 授 の 新 井 浩、 郡 山 市 在住の画家で郡山女子大学短期 大 学 部 教 授 の 浅 野 ア キ ラ、 そ し て 画 家・ 吉 田 成 寿 が、 実 行 委 員 として出品する。 「福島県で集まって、海がある と 震 災 の 話 が、 ど う し て も で て くるんだろうとは思うんですけ ど、 こ こ 4 年 の 間 に い ろ い ろ な 話 を 聞 い て い る と、 そ れ ぞ れ が 福島県生まれ 上野の森美術館大賞展、青木繁大賞展 日本環境庁ポスター採用 CAST IRON Gallery、CElAM Gallery(ニューヨーク)で 6 度の個展 中日現代美術交流展(上海大学) BASEL ART SHOW 招待出品(スイス) NY JAPAN CLUB 個展(米国) 1957 年 1979-1998 年 1982 年 1999-2005 年 2012 年 2013 年 2015 年 自分の都合のいいようにストー リ ー を 作 っ て し ま っ て い て、 僕 はここの状況を一言でいうと〈創 造力の暴走〉があったんじゃな なまためみちお《三美神》(左から 海の神 マリン 太陽の神 ソラ 大地の神 ガイア 各 80x45cm な甘い言葉ではなく、世界にまっ 作品展示が行われる ギャラリー すぐ向かっていく力強い展開を 太平洋に望む会場で左からなまためみちお、新井浩、浅野アキラ、吉田成寿 この右後方対岸に五浦六角堂の海岸がある 102 103 10 特 集 2015 夏の アートイベント そんなに意識していないん は思います。自分としては、 作品に影響を与えていると け で す か ら、 多 少 な り と も を目の当たりにしているわ 県に住んでいて様々な状況 ん が、 た だ、 や っ ぱ り 福 島 に表現することはありませ や津波や原発事故を直接的 で す。 作 品 に 関 し て は 地 震 こ の 大 地 に 立 ち、 海 な が ら 生 き て い ま す。 が様々な思いを持ち り ま す が、 そ れ ぞ れ 変わらない生活もあ ぞ れ 大 き く 違 い ま す。 その心の痛みはそれ す。 被 災 さ れ た 方、 割も担っている町で 前線基地としての役 な が ら、 原 発 収 束 の ら復興の兆しを見せ を眺めながら未来へ で す け ど、 も し か し た ら 変 ね」 化があるのかもしれません いですね。 れているところを眼前にした画 家の吉田成寿は被災したアトリ はいつくしむ心の尊 い の で す が、 震 災 後 いう思いは変わらな に 込 め ら れ れ ば、 と 意識の在り方を作品 星に存在する上での と い う 意 味 で、 こ の は宇宙の黒、《黄》は大地の黄色 開 始 し よ う し て い る。 毎 年、 続 ず、 広 い 視 点 に 立 っ て、 活 動 を 全員が震災ということに捉われ も積極的に行ってきた。そして、 お も 同 じ だ。 海 外 へ の 作 品 発 表 と は 変 わ ら な い。 な ま た め み ち と し て、 福 島 県 で 生 き て き た こ し か し、 そ れ か ら 4 年 を 美 術 家 こ の 3 人 の 話 だ け で も、 震 災 で 受 け た 影 響 は 大 き く 異 な る。 エを再建中だ。 さを強く感じていま 私は長年《玄黄記》というテー マで作品を制作しています《玄》 の思いを馳せる場ができればい 放射能の影響を心配 す る 父 親 と し て、 そ し て作家として活動する 問い合わせ 海の日芸術祭事務局 TEL.080-3196-5244 けていこうという決意と熱意が わ れ て い く の か、 こ れ か ら、 さ まざまな活動が計画されている ようだ。 吉田成寿《玄黄記 -02.5.5-》 浅野アキラ。 ●コンサート 7 月 19 日 18:00-20:00 〜海、宇宙とセッション〜 中嶋一座音楽パフォーマンス(入場無料) 1965 年 福島県生まれ 1988 年 東海大学芸術学部卒業 1990 年 第 16 回日仏現代美術展 佳作賞 1998 年 第 4 回さっぽろ国際現代版画ビエ ンナーレ 2005 年 第 6 回高知国際版画トリエンナーレ 2007 年 アートポート小名浜 2007(いわき市) 「 い わ き 市 は 震 災 か 浅野アキラ《華麗なる関係》S 50 号 展示作品 若松光一郎、草間弥生、大山美信、深沢軍治、 浅野アキラ、新井浩、会田誠、吉田成寿、 大久保草子、長岡誠、なまためみちお 吉田成寿 新井浩《蝶が舞う里 - 花咲く大地 -》 1959 年 福岡県生まれ 1989 年 東京藝術大学大学院油画修了 1992 年 第二回 JAPAN 大賞展特別賞によりパリで制作活動 2000 年 ニューヨークで初の海外個展(Cast Iron Gallery) 2002 年 「浅田アキラの世界」喜多方市美術館 2014 年 上海城市芸術博覧会出品(上海市) 7 月 14 日→ 7 月 20 日 ART PLAN Gallery いわき市泉町下川字大畑 180-1 伝 わ っ て く る。 こ こ か ら 何 が 行 吉田成寿《玄黄記 -11.8.25-》 す」。 新井浩《浅瀬に遊ぶ》 実際に津波に流さ 浅野アキラ《彷徨える人》F15 号 油彩画・土 1961 年 埼玉県生まれ 1983 年 埼玉大学教育学部卒業 1994 年 上越教育大学大学院修了 2003 年 越後妻有アートトリエンナーレ 2004 年 桜の森彫刻コンクール グランプリ ブロンズ設置 2008 年 個展(日本橋三越本店) 浅野アキラ 104 《海の日芸術祭》の4作家の作品は、インターネットで御覧になれます。 月刊ギャラリー アートの森 で検索してください。ネット上で購入できる作品もあります。 Click!! 105 10 特 集 2015 夏の アートイベント 新井 浩
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