効果的な質問 - Coachacademia(コーチャカデミア)

TM
08
Module
効果的な質問
〜コーチャカデミア〜
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〜コーチャカデミア〜
効果的な質問
CONTENTS
はじめに
… 4
P RE-CLASS ASSESSMENT
… 5
第1章 「効果的な質問」とは何か
… 6
08-1-1 なぜ質問するのか
08-1-2 質問をつくる軸
08-1-3 効果的な質問をするための8つのポイント
第2章 質問を効果的に使い分ける
… 9
08-2-1 「クローズド・クエスチョン」と「オープン・クエスチョン」
08-2-2 5W1H で、オープン・クエスチョンをつくる
08-2-3 質問のチャンク
08-2-4 チャンクダウン、チャンクアップ、スライドアウト
第3章 目的を持って質問する
…14
08-3-1 質問の目的
08-3-2 目的を持って質問をつくる
第4章 問いの共有
08-4-1 「問い」の共有がもたらすもの
08-4-2 組織における問いの共有
…17
はじ め に
「組織には、自分たちも気づかないほど豊富なリソースや可能性があるものの、それ
に対して誰かが効果的な質問を投げかけない限り、そのリソースや可能性に行き着い
たり、最大化したりすることは決してできない」
これは、コーチ・エィが、これまでコーチングを通じて、1,800 社以上の組織変革に
携わってきた中で、導き出した結論の一つです。
コーチングにおける会話の基本は質問です。では、どのような質問が「効果的な質問」
なのでしょうか。
効果的な質問は、相手が、物事に対して持っている視点や角度を変え、より一層関心
を持つ状態になるよう導きます。「質問」には、「分かったつもり」から、選択や行
動へと移行させる力があります。
私たちは普段、無意識のうちに、「そんなの分かっているよ」という場所から動くこ
となく、自分の安全を確保しようとしています。「分かったつもり」とは「安定」し
た状態です。いわば、現状に胡坐(あぐら)をかいた状態ですから、行動は起こりに
くいといえます。
ところが、恒常的に問われ続けることで、「分かったつもりでいたけど、まだ分かっ
ていないことがあった」ということに気がつきます。すると、人は「安定」から「不
安定」へとシフトし、次の安定を求めて選択し、行動を起こすようになります。
「問い」には、人の安定を崩し、行動に導く力があるのです。
そのような効果を発揮するには、相手の置かれた状況を的確に判断し、今ここで、ど
のような目的を持って質問をするのが最も効果的であるかを判断し、それに応じて質
問を使い分ける能力が求められます。
このモジュールでは、そうした効果的な質問の仕方について詳しく見ていきます。
08 効果的な質問
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RE-CLASS ASSESSMENT
このモジュールで扱う内容の「理解度アセスメント」です。チェックを付けながら、
・すでに何を理解しているのか
・新たに何を知る必要があるか / 身につける必要があるのかを明らかにしてください。
□ 効果的な質問とはどのような質問かを説明することができる
□ 効果的な質問をするための8つのポイントを理解している
□ クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンについて、それぞれの特徴
を理解している
□ クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョンの使い分けのポイントを理
解している
□ オープン・クエスチョンのつくり方を理解している
□ 3つのチャンクの特徴と使い分け方を理解している
□ チャンクダウン、チャンクアップ、スライドアウトの質問のそれぞれの特徴と効
果を理解している
□ コーチングにおける質問の目的にはどのようなものがあるかを理解している
□ 「問い」の共有の効果を理解している
チェックがつかなかった項目については特に、このマニュアルとオンラインクラスか
ら積極的に学び、すべての項目にチェックがつく状態を目指してください。マニュア
ルの最後に、もう一度このアセスメントを実施します。
08 効果的な質問
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第1章 「効果的な質問」とは何か
この章では、さまざまな切り口から、効果的な質問とは何かについて見ていきます。
08-1-1
なぜ質問するのか
質問にはさまざまな目的があります。「観察の幅を広げること」「人を不安定な状態に
移動させ、行動を起こさせること」、そして、質問の目的の中でも特に重要なのは、
「相
手の中に、選択肢を増やすこと」です。
では、なぜ、選択肢を増やすことが重要なのでしょうか。それは、
「選択」をしなければ、
人は自動的な「反応」によって行動するようになってしまうからです。考えさせるこ
とで、相手の選択の幅を広げるような質問、これこそが、効果的な質問です。したがっ
て、質問の後には、相手に対して、「選択の幅は広がったか」ということについても
質問しなければなりません。そして 、3 つ以上の選択肢が生まれたときにはじめて、
「それであなたはどうしますか ?」と次の行動を聞けばいいのです。
08-1-2
質問をつくる軸
質問は、以下のいずれかの軸に当てはめてつくることができます。
●「時間」の軸
●「人」の軸
●「状況」の軸
●「場所」の軸
たとえば、「時間」の軸で考えると、次のような質問をつくり出すことができます。
・「 5 年後からこの会社を見たとしたら、どのような改善点が必要と思いますか?」
・「 3 年後から見たとしたら、今取り組んでいるものの中で、
『これはやらなくてもいいな』ということはどのようなことですか?」
・「 1 年後から今を見たとき、今すぐ始めたほうがいいことは何ですか?」
その他、それぞれの軸の例も挙げてみます。
「人」の軸
・「もしあなたが部長の立場だったら、どのような発言をしますか?」
「状況」の軸
・「もし締切までの期間が今の半分に短縮されたら、あなたはまず何をしますか?」
「場所」の軸
・「今この状況を天井から見たとき、あなた自身はどのように見えるでしょうか?」
08 効果的な質問
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「時間」「人」「状況」「場所」。これらの質問を創る軸に加えて、想像力や柔軟性を発
揮することで、効果的な質問を生み出すことができます。
08-1-3
効果的な質問をするための 8 つのポイント
次に、効果的な質問をするために留意すべき 8 つのポイントを、一つずつ詳しく取り
上げていきます。
1. 会話の前に「どのような質問を投げかけるのか」を考えておく
会話の相手や会話の目的が前もって分かっているのであれば、どのような質問を投げ
かけ、どのような会話にしていくかを事前に考えておきましょう。「事実を確認する
のか」「可能性の幅を広げるのか」「注意を喚起するのか」「同意を得るのか」……。
事前に準備しておくことで、効果的な質問を投げかけられる可能性が高くなります。
さらに会話の最中でも自分の感情をコントロールしやすくなります。
2. 自分が持っている答えに誘導するような質問はしない
自分がすでに持っている答えに誘導するような質問をしないよう、気をつけなければ
なりません。こうした質問は、相手に発見を促したり、問題解決に向かわせたりする
ための質問とは正反対です。なぜなら「あなた自身が持っている正しい答え」を押し
つけるためのものだからです。
3. 根本的な問題を明確にするための質問をつくる
次の質問の例を見比べてください。
①「利益を上げるには、コストを削減するか、売り上げを上げるしかないことは明白
だ。きみはどちらがいいと思う?」
②「利益を上げるために、私たちはどのようなことができるだろう?」
①は二者択一で、選択の幅が限定されている質問。②は、自由に発想できる質問です。
この場合、②のほうが、相手の選択の幅を広げることができます。(詳しくは第 2 章
を参照)
さらに効果的な質問としては、次のような質問が考えられます。
「利益が上がらないことについて、そもそも原因となっているのは、どのようなこと
だろう?」
これは、表面的な解決方法を探る質問ではなく、根本的な問題を明確にする質問です。
上記のような重要度の高いテーマの場合に、最も効果を発揮する質問の一つといえる
でしょう。
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4. エッジの効いた質問をする
良い聞き手であれば、次のような、隠されたものを見抜くエッジの効いた質問をつく
り出すことができます。
・
「売り上げを今の 10 倍にするとしたら、今やっていることの何を変える必要があ
りますか?」
・
「現在行っていることのスピードを 5 倍に上げなければならないとしたら、何から
手をつけますか?」
エッジの効いた質問を投げかけることで、「相手が私たちに対して隠していること」
や「相手自身も気づいていないまったく新しい考え」などが、明らかになっていきます。
5. 目的に合った言葉を使う
質問するときに使う言葉は、相手からの返答に大きな影響を及ぼします。たとえば、
「『正確には』どういう意味ですか?」という質問は、単に「それは、どういう意味で
すか?」という質問よりも効果的な質問といえます。「それは、どういう意味ですか?」
という質問では、
「今、言ったとおりです」といった意図と異なる答えしか返ってこ
ない場合があるからです。
6. 質問は 1 回につき一つだけにする
効果的な質問の前提条件として、「1 回につき一つだけ」というものがあります。二
つ以上の質問は、混乱や責任逃れを招きます。
1 回に二つ以上の質問をしている例
・
「あなたは今日からどのような行動を起こしますか? あと、その行動を続ける自
信はありますか?」
7. 自分が質問をされたら、まずは答える
もし相手があなたの意見を求めてきたり、あなたの体験について話してほしいと言っ
てきたりしたときは、ぜひ積極的に話してください。その際、大事なのは、その情報
を相手に押しつけないこと。あくまでもあなた個人の経験として語るにとどめておく
ことが大切です。
そして、あなた自身が最初に回答することで、相手は新たな視点を手にする可能性が
生まれるでしょうし、あなたの質問に対しても、高いコミットメントで応じてくれる
でしょう。
8. 練習する
何もせずにレベルアップする人などいません。効果的な質問を投げかけられるように
なるためには、練習、練習、そしてまた練習です。職場での実践や電話会議クラス、
集合プログラムなどを通じて、練習を重ねてください。
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第3章 目的を持って質問をする
この章では、質問一つひとつが持つ目的について詳細に理解していくことを通じて、
目的ごとの具体的な質問事例を手に入れていきます。
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質問の目的
コーチングにおいて「質問をする」ことには、
「選択肢を増やす」「観察の幅を広げる」
といった大きな目的がありますが、その他に、質問一つひとつについてもそれぞれ目
的があります。
相手に質問するときには、「相手に何をさせたいのか」「そこでどのような会話を展開
させたいのか」「どのような情報を表面化させたいのか」など、目的をはっきりさせ
て質問することが重要です。あなたには、相手の置かれた状況を的確に判断し、今こ
こで、どのような目的を持って質問をするのが最も効果的であるかを判断し、質問を
使い分ける能力が求められます。
質問の目的としては、主に以下のようなものがあります。
••イメージをつくる
••リソースを探す
••モデルを見つける
••視点を変える
••他の選択肢を出す
••未来を予測する
••問題をはっきりさせる
••タイプを知る
••価値観を知る
••考えを整理する
••気づき、発見を促す
••モチベーションを上げる
••アイディアを出させる
••物事を具体的にする
••意味をはっきりさせる
••目標を設定する
••知識、スキルを棚卸しする
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