目的を持って聞く - Coachacademia(コーチャカデミア)

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Module
目的を持って聞く
〜コーチャカデミア〜
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目的を持って聞く
CONTENTS
はじめに
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RE-CLASS ASSESSMENT
第1章 何のために「聞く」のか
… 4
… 5
… 6
03-1-1 話を聞いてもらえないと、人はどうなるのか
03-1-2 話を聞くことで、相手の自己効力感を高める
03-1-3 関心を持って聞く
03-1-4 オートクラインとパラクライン
第2章 どうすれば「聞ける」のか
…11
03-2-1 あなたはどれくらい人の話を聞いているか
03-2-2 「聞く」ことの妨げになるもの
03-2-3 人は、見たいように見て、聞きたいように聞いている
03-2-4 どうすれば「聞ける」のか
第3章 聞く環境をつくる
…16
03-3-1 相手が話しづらい態度とは
03-3-2 ペーシングによって、話を聞く環境を整える
03-3-3 良い聞き手になるための 10 のポイント
第4章 目的を持って聞く
03-4-1 なぜ目的を持って聞くことが必要なのか
03-4-2 信頼関係を築くために聞く
03-4-3 状況を把握するために聞く
03-4-4 行動を促進させるために聞く
…20
はじ め に
「コーチングスキル」とは、誰かによって新しく創られたものではなく、既にうまくいっ
ている人を観察し、体系化したコミュニケーションスキルです。その種類は 100 以上
ありますが、その中でも、とくに大切なのが次の 5 つです。
・聞く
・質問する
・アクノレッジする
・要望・提案する
・フィードバックする
そして、コーチングのベースとなるのが、このモジュールで紹介する「聞く」スキル
です。
相手の話を聞くことが大切だということは広く認識されていますが、実際には「聞く」
という行為について本当に理解している人は稀です。リーダーの多くは「聞く」こと
がマネジメントで重要なことだと理解していながら、実際に「聞く」トレーニングを
受けたことがある人はほとんどいません。
「聞く能力」を上げるためには、ベースとして聞くことの意味に関する深い理解が必
要です。そこで、このモジュールではまず、基本となる「聞くこと」「聞かれること」
の目的や意味の理解を目指します。その上で、聞く能力をさらに高めるために聞くた
めの視点と方法を具体的に学んでいきます。
「目的を持って聞く」ということは、相手が言葉で表現している以上のもの、相手自
身もまだ気づいていない自分の中のパターン、欲求、課題などを聞きとり、聞き分け
る行為です。さらに、相手に、聞き分けたことをフィードバックや質問という形で示
すことで、新しい視点を提供するという、極めて高度かつ能動的な行為でもあります。
このモジュールで紹介する視点は、あくまでも代表的なものです。相手の目標達成を
促進させるために、より効果的な視点は何かを探求することで、さらに広い視野を持
ち、聞く能力に磨きをかけることを目指してください。
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RE-CLASS ASSESSMENT
このモジュールで扱う内容の「理解度アセスメント」です。チェックを付けながら、
・すでに何を理解しているのか
・新たに何を知る必要があるか / 身につける必要があるのかを明らかにしてください。
□ 話を聞いてもらえないと、人はどうなるのかを説明することができる
□ 話を聞くことの主要な2つの効果について説明することができる
□ どのようなことが聞くことの妨げとなるのか、いくつかの原因をあげることがで
きる
□ 聞くこと、聞かれることのメカニズムを理解している
□ 聞く環境を整えるための具体的な方法を知っている
□ 良い聞き手の特徴を理解している
□ コーチングにおける聞くことの目的について、3つの主要な目的を説明すること
ができる
□ その目的を実現するために、それぞれどのような聞き方、どのような聞く視点が
効果的かを知っている
チェックがつかなかった項目については特に、このマニュアルとオンラインクラスか
ら積極的に学び、すべての項目にチェックがつく状態を目指してください。マニュア
ルの最後に、もう一度このアセスメントを実施します。
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第1章 何のために「聞く」のか
この章では、何のために相手の話を聞くのか、また、聞くことで何がもたらされるの
かについて見ていきます。
03-1-1
話を聞いてもらえないと、人はどうなるのか
誰かと会話をしているシーンを振り返ってみてください。相手が話しているとき、聞
き手のあなたは集中して話を聞いているように振る舞っているでしょう。しかし、実
際には、無意識のうちに「次に、自分は何を話そうか」と考えているということはな
いでしょうか。
たとえば、部下が営業先から帰ってきて、上司に報告を始めたとしましょう。その際、
上司が部下の言うことをさえぎって、
「で、結局今日はいくら売れたの ?」と聞いたら
どうでしょうか。部下は、「自分の言うことは最後まで聞いてもらえない」「自分の話
すことは大事に扱ってもらえない」と思ってしまうことでしょう。
話を聞いてもらえないということは、単に自分の発した言葉の意味するところが相
手に伝わらないということだけにとどまらず、それを発している自分自身の意思も伝
わっていないということです。言い方を換えれば、自分の存在そのものが否定された
かのような「感覚」を引き起こします。これが繰り返されると、人は、次のようなス
パイラルに入ってしまいます。
「話を聞かれていないんだな」
↓
「自分の言っていることは重要と思われていないんだ」
↓
「自分はあまり大切な存在ではないらしい」
↓
「ここにいていいんだろうか」
↓
「ここにいない方がいいのかもしれない」
↓
孤立感 ......
結果、そこに「居場所」を感じることができなくなります。
03-1-2
話を聞くことで、相手の自己効力感を高める
「 自 己 効 力 感 」 と は、 カ ナ ダ 人 の 心 理 学 者 ア ル バ ー ト・ バ ン デ ュ ー ラ(Albert
Bandura)氏が提唱した概念で、外側で起きている事象に対して、自分が影響を及ぼ
すことが可能であるという感覚のことを指します。「人から話を聞いてもらえない」
という感覚を持つと、この自己効力感が下がってしまい、人は無力感に陥ります。一
方、話を聞いてもらうことによって、「自分の存在が受け入れられている」という感
覚が生まれます。この感覚が、自己効力感を高めるのです。
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第 2 章 どうすれば「聞ける」のか
この章では、なぜ私たちは聞くことができないのか、「聞く」ことを妨げているもの
は何なのかを理解した上で、どうすれば今以上に「聞ける」ようになるのかを明らか
にしていきます。
03-2-1
あなたはどれくらい人の話を聞いているか
最初に、現在あなたがどれくらい人の話を「聞いて」いるのかについて、棚卸しをし
てみましょう。
アセスメント
人の話を聞くとき、自分がどうしているかを振り返り、当てはまるものにチェックを
つけてください。
□ 1.人が話しているときは、うなずいたり、微笑んだりして興味を示し、相手の話を
促す
□ 2.興味を持っている、持っていないにかかわらず、人の話を聞くときは注意を払っ
て聞いている
□ 3.話し手が使う言葉やノンバーバルなメッセージを伝える能力について、評価を加
えずに聞いている
□ 4.騒がしい場所にいるときには、「静かな場所に行こう」と提案するなど、話を聞
くときには、気が散るような状況や場所を避けている
□ 5.話しかけられたら、自分のやっていることを脇に置いて、相手に完全に注意を向
けている
□ 6.人が話しているときには、相手が全部話し終わるまで時間をとっている。途中で
口を挟んだり、相手が言おうとしていることを先走って口にしたり、いきなり結
論に飛びついたりするようなことはしていない
□ 7.自分と考えの違う人の話でも、まずは聞くようにしている
□ 8.誰かの話を聞いているときや講義などに参加しているときに、別のことを考えな
いように集中している
□ 9.話を聞いているときには、相手のノンバーバルなメッセージに注意を向けて、相
手が何を伝えようとしているのかを全部理解しようとしている
□10.分からないことがあったときは、理解しているふりをせず質問している
□11.相手が話している間は、自分が何を話そうかということは脇に置いて聞いている
□12.何かが抜けていたり、矛盾したりしていると感じたときは、直接質問をして、相
手の考えをはっきり説明してもらうようにする
□13.聞いていて分からないときには、話し手にそう伝えている
□14.話を聞いているときには、相手の立場に立ち、相手の視点からものを見るように
している
□15.会話の最中に、正しく理解できているかどうかを確認するために、相手の言った
ことを自分の言葉で繰り返すことがある
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03-3-3
良い聞き手になるための 10 のポイント
この章のまとめとして、良い聞き手となる上で押さえておきたい、10 のポイントを
あげてみます。
1. 時間をつくる
何はともあれ、まずは相手の話を聞くための時間をつくることです。5 分でも 10 分
でも、相手のために時間をつくることが大切です。日常的に、または定期的に時間を
つくることは、相手にとって「自分の居場所」を感じることにもつながります。
2. 相手を尊重する
話を聞くとき、相手の意見や考えを尊重することが大切です。
「そう思っているんだね」
「話してもらってよかったよ」など、相手を承認する言葉を入れると、尊重している
ことがより伝わりやすくなります。
3. 話しやすい環境を用意する
「個室をとる」「静かなところに行く」など、話しやすい環境を用意しましょう。
4. 最後まで話を聞く
相手がまだ話している最中に、「ということは、つまり……」などと遮ってしまった
経験はありませんか? 4 つ目のポイントは、「相手の話を最後まで聞くこと」です。
また、相手が話し終えた後、数秒待つことも時に効果を発揮します。相手が心の奥底
に秘めていた思いを口にすることもあるからです。
5. 判断をしない
話を聞いた後、「僕ならこう思うけど」「それは違うんじゃないかな ?」などと聞き手
が判断を加えることは、「君の言うことは受け入れられない」というメッセージにつ
ながってしまうので、注意が必要です。
6. 自分が理解しているかどうかを確認する
「話をまとめると、このように言っているように聞こえます」「今君が言ったことは、
つまりこういうことですか?」など、聞こえたことをそのまま相手に返して、自分が
きちんと理解しているかどうかを確認するのは有効な手段の一つです。相手は「この
人は、自分のことを正しく理解しようとしてくれている」と実感することができます。
7. 客観的になる
感情や先入観が、聞くことの妨げになることがあります。良い聞き手は、自分の考え
や感情を脇に置き、客観的な立場に立って、聞くことに専念することができます。
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8. 肯定的なノンバーバル ・ メッセージを出す
ペーシング同様、コミュニケーションには、バーバル(言葉によるもの)とノンバー
バル(言葉以外のもの)の 2 種類があります。相手の話を聞く際は、「目を見る」「相
手のほうに身体を向ける」
「パソコンから手を離す」など、
「聞いているよ」というメッ
セージをノンバーバルでも示すことがポイントです。
9. 沈黙を大切にする
沈黙が訪れると、その間に耐え切れず、自分から話を始めてしまう人がいますが、そ
のときはぐっとこらえてみてください。せかすことなく相手が 話し始めるのを待ってみ
ることで、相手が自身の内側からアイディアや思いを言語化する可能性が高まります。
10. 聞くことに最大限コミットする
ポイントの最後は、「話を聞くことが、最終的に相手の目標達成につながる」という
ことを信じ、聞くことに最大限のコミットをすることです。
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