『ピグマリオン効果』 • はじめに

『ピグマリオン効果』
所属:心理教育ゼミ
2年6組13番 北爪 亜斗夢
•
はじめに
第1節
テーマ設定の理由
時をさかのぼること 2 年、私たちがまだ中学の 3 年生だった頃の初秋に、私は『高校生
クイズ』と呼ばれる番組を見ていた。その時私は初めてその番組を見たのだが、とてもお
もしろくつい見入ってしまったのを鮮明に覚えている。全国の高校生達がお互いの頭脳を
戦わせているなか番組は第 1 回戦で高得点を勝ち得た(50 校中の)上位 8 校による1校対1
校の早押し対決の第二回戦に移り、船橋高校対宇都宮高校が接戦を繰り広げている中、そ
の問題が出題された。
―アメリカの心理学者ローゼンタールが提唱した「生徒は教師が
期待した通りの結果を出す」という効果を何という?―
私は他にもクイズを幾つか覚え
ているが、この問題には興味を持つと同時に「これは本当なのか」と疑問がわいた。そし
て今回、私はこのテーマを思いついた。
第2節
研究のねらい
今、日本の教育はいじめであったり、国際化への対応であったり様々な問題を抱えてい
るという。当然のことだが、その日本の教育を担っているのは他でもない、現場で働く教
師達である。またこれも当然のことであるが、その教師達の教育を受け日本の未来を担っ
ていくのは各学校へ通う生徒、児童達である。この 2 者次第では、日本の教育は問題を消
化し更に高度なものとすることもできれば、どんどん問題を生み続けることもできる。
そんな中で私はこの『ピグマリオン効果』について研究し、教育について考え、また自分
の学習に生かしたい。
第3節
第1項
研究内容と方法
研究の内容
主な内容としては、『ピグマリオン効果』そのものの定義、その真偽、またその活用法
の三つである。
それに加えて歴史、反説などを挙げ、理解を深めていく。
第2項 研究の方法
これについては前回同様、探してみても参考になる文献がなかなか見つからない場合は
インターネットを主として活用し、またもしも参考になりうる書物があれば、それらを最
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大限に活用する。
第2章
研究の展開
――ピグマリオン効果――。現在では生徒の学習はもちろん、スポーツや恋愛の現
場でも幅広く応用されている心理的効果のことだが、それはある一つの実験から生まれた。
時をさかのぼること 52 年、西暦 1963 年アメリカ合衆国で教育心理学者ロバート・ローゼ
ンタールとフォードが大学の実験で学生にネズミを使った迷路実験をさせるときに学生達
を二つのグループに分け(ここでは仮にA、Bとする)、各グループにネズミを渡すときに
Aには「よく訓練された利口なネズミ」と言って渡し、Bには「これは全くのろまなネズ
ミ」と言って渡した。そうしたところ、A、Bの間で実験結果に差異がみられた。Aのネ
ズミは丁重に扱われ、Bのネズミは非常にぞんざいに扱われ、その2グループによるネズ
ミへの期待度の違いが実験の結果に反映されたのではないかとローゼンタールは考えた。
更にローゼンタールはこれは生徒と教師の間でもありうるのではないかと考えた。今回は
そのピグマリオン効果について深く調べたい。
第1節
『ピグマリオン効果』とは?
ピグマリオン効果とは、人間は期待された通りの結果を出す傾向があることの現れとされ、
1964 年ロバート・ローゼンタール(米)によって実験された。
この「ピグマリオン効果」の「ピグマリオン」という名称は、ギリシャ神話を収録した古
代『オウィディウス』第 10 巻に登場するピュグマリオンという王の恋焦がれた女性の彫
像が、その願いに応えたアプロディテ神の力で人間化したという伝説に由来している。
出典 http://www.vdgatta.com/lect/tufs/2011/120123.html
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またピグマリオン効果は「教師期待効果」、「ローゼンタール効果」とも呼ばれる。
逆に、周囲から期待されていない者が平均値を下回る現象を「負のピグマリオン効果」
、また「ゴーレム効果」と呼ばれる。
第2節
ローゼンタールの研究
第二章の冒頭でも述べたとおり、アメリカの教育心理学者であるロバート・ローゼンタ
ールは 1963 年にネズミを使った迷路実験を大学の学生達と行った。
そしてローゼンタールは 1964 年春に教育現場での実験としてサンフランシスコの小学
校でごく普通の知能テストを行い、学級担任には今後数カ月の間に成績が伸びてくる生徒
を割り出すための検査であると説明した。実際には検査には何の意味もなく、実験者は検
査の結果とは関係無しに、ランダムに選出された児童の名簿を担任に見せて、「この名簿
に載っている児童達が今後数カ月で成績が伸びる児童達だ。」と伝えた。その後その学級
担任は、その児童達の成績が向上するという期待を込めて児童達を見ていたところ、本当
にその児童達の成績が上昇した。報告論文では、「学級担任が子供達に対して期待のこも
った眼差しを向けたことと、そのことで子供達が期待されていることを意識し成績が向た
ということ」が主張されている。この報告書は、Rosenthal, R. & Jacobson, L.:"Pygmalion
in the classroom",Holt, Rinehart & Winston 1968 として刊行された。
第3節
ピグマリオン効果は本当なのか?
これまで述べてきたピグマリオン効果を、「本当か?」とふと思わされるひとは少な
くないのではないだろうか。私もそう思った。実際ローゼンタールの実験方法への批判も
あり、現在でも論題に上がるもののひとつである。先述の 1964 年の実験でローゼンター
ルが使用したのは公平でなかったとする学者、またスピッツが行った再実験ではピグマリ
オン効果は再現できなかったことから再現性を否定する学者がいる。また、ピグマリオン
効果は「教師が生徒に対して教える」というのが大体の構図とされているため、生徒が自
ら学習していくという視点が欠けているといわれることもある。
だがしかし、単純に考えてみると、ネズミの迷路実験、小学校での実験のどちらの結果
も、実験者(大学の生徒)、担任の教師がそうなるようにネズミ、児童達に働きかけたから
というだけである。実際 1963 年のネズミの迷路実験で、「このネズミは訓練されていて賢
い」と言われて渡されたほうのグループの生徒達はもう一方のグループに比べそのネズミ
を「賢い、かわいい」としてよくネズミを手に乗せ、より可愛がったと報告している。
そして何より私が驚かされたのは、幾つもあったピグマリオン効果への批判に対し、ロー
ゼンタールは 497 回の研究で対人効果の再現をしたということである。
また、ピグマリオン効果には、4つの媒介変数がある。
① 空気:教師が高い期待を抱く生徒に向けて作る,温かい社会情動的空気
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② 入力:教師が「特別」な生徒により多くのことを教える傾向
③ 出力:教師が“特別”な生徒には応答する機会をより多く与える
④ フィードバック:教師が“特別”な生徒に,より多くの個別化されたフィードバック
を与える傾向(生徒の答えの正誤に応じたもの,生徒の発言に直接関連したものな
ど)
特に①空気と②入力の影響が大きいとのことである。
ある実験(ローゼンタールは関与していないと思われる)で、「成績の優秀な生徒達のクラス」
と「成績の悪い生徒達のクラス」を作り、「成績の良い生徒のクラス」の担任には「成績
の悪い生徒のクラス」だと伝え、「成績の悪い生徒のクラス」の担任には「成績の良い生
徒のクラス」だと、それぞれの担任に逆のことを伝えクラスを担当させた。その結果、
「もともと成績の良かった生徒達のクラス」の成績は下がり、「もともと成績の悪かった
生徒たちのクラス」の成績は上がったという。私は上記のことを踏まえ、ピグマリオン効
果は二者の間に信頼関係さえ築かれていれば本当に再現できるのではないかと思う。
第4節
教育だけじゃなかった??
私はこの研究に着手した当初、ピグマリオン効果はあくまで教育に関することだと解釈
していた。だが、私が本文第二章で少し述べたとおり、実はピグマリオン効果は教育のみ
ならず、スポーツや恋愛にも関係しているのである。
まず、スポーツ。スポーツに関する新聞やニュースなどを見てると時折「メダルを獲る
と宣言した選手の方がしない選手よりメダルを獲得している」という旨の記事を見かける。
私以外にもこのような言葉を見たことがある人は多数いると思う。これは、自分で予言を
し、自分で達成するということ(予言の自己成就)であるが、実はピグマリオン効果にはこ
の意味合いが含まれていたのだ。例えば、体操の内村航平選手は「(メダルの)色は限定し
ないですが、獲る自信で言ったら 120%あります。」と言っている。《出典内村航平選手は
ロンドン五輪壮行会でメダル「120%の自信」宣言》
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出典 matome.naver.jp
またサッカー、なでしこジャパンの澤穂希選手は「(今後の目標は)ロンドン五輪で金メ
ダルを取ること。“私にはできる。”と思うので、がんばりたいです」と言っている。
《出典なでしこ澤、北島との“アベック金”宣言「私にはできる。ロンドンで同じメダル
を」
》
出典 realtime.wsj.com
この二人に共通していることは、「メダルを獲る」と宣言した後に実際にメダルを獲得
したことである。私達が今学期の初めに配布された学年通信にも「『目標を自ら宣言する
こと』には効果がある」と小林先生の言葉があったが、先述通りこれはピグマリオン効果
なのである。なぜかというと「自分の目標を宣言すること」で周りの人に自分の目標を知
ってもらい、目標の達成を周りから期待してもらうことで自らの意識が高まるからである
(勿論周りの人の応援、協力が不可欠である)。
次に恋愛。恐怖感を恋愛感情と交錯させる「吊り橋効果」、無意識に相手の行動を真
似してしまう「ミラーリング」は有名な恋愛効果であるが、これらに並ぶ恋愛効果がもう
ひとつある。勿論、「ピグマリオン効果」のことである。恋愛において男が「あなたはま
じめで誠実な人」と言われ続ければ、男も言われた通り期待に応えようと意識が動くとい
うものである。逆に「浮気者」などと疑われ続けると、本当にその方向に行動が向いてし
まうことがあるので注意が必要である。
《参考・http://sp.lalu.jp/article/show/aid/750.html
・http://matome.naver.jp/odai/2138332702316008701》
ここで一つ質問をしたい。自分の担任の先生(自分の好きな先生)、または自分の好きな
人から労われたり、褒められた時の自分を想像してみて欲しい。その時「嬉しい」と思っ
たり、自分の意識、感情が自分にとってプラスに動いた人はどれくらいいるだろうか。
「はい」と答えてくれた人の方が多かったと思う。果たしてこの予想は当たっただろうか。
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・感想
まとめ
これまで、ピグマリオン効果は教育、スポーツ、恋愛の現場で応用できることを記し
たが、友人関係、子育てにも応用できるのではないかと思う。この図を見てほしい。
出典 http://pigmakids.com/about
「ピグマ3C」という名前から恐らくピグマリオン効果の解釈を広げたものだと思われる
この図にあるように、ピグマリオン効果の原型と言える『教師―生徒』の概念を『親―子』
と変換してみても、何ら変わりはないように思える。「『教育』とは『共育』」という概念
があるように、子を守るべき対象とするだけでなく、自分を成長させてくれる師であると
いう期待を込めて接することで、親子関係が良好になるのではないかと思う。
また、先程の質問で「はい」と答えてくれた人に知らせておきたいのだが、私がピグマリ
オン効果と恋愛の関係性について調べてみたとき、出てきたのが「彼氏を自分好みに育て
る方法」
、「浮気をさせない方法」というものばかりだった。もし将来交際関係を持つよう
になって、相手からそのようなことを言われるようになったら、もしかすると相手が自分
にそうなることを望んでいるサインかもしれない(そのときは快く思いに応えてあげよう)。
個人的な話になるが、私がこの研究について友人に話をしたとき、友人が「それってト
イレの貼り紙と同じだろう。」と即答した。何のことか尋ねると、公共のトイレで時折見
かける『いつもきれいに使用していただきありがとうございます』と書かれている貼り紙
のことだった。確かに言われてみると、あの貼り紙には『きれいに使用してください』で
はなく『きれいに使用していただきありがとうございます』と書かれている。これは恐ら
くトイレ利用者に『きれいに利用してくれる』という一種の期待をかけ、利用者がそれに
応えようとすることを図っているのだろう。私はこの話を通してつくづくピグマリオン効
果を身近なものに感じた。
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出典 http://blog.goo.ne.jp/hal88/e/fb90181fc2eb4600ffe120f2f20dcffc
また、これについては昨年同様なのだが参考となる資料を探すときに、関連の書籍が全
くと言うほど私の身の周りには見つからなかった。しかし、インターネットには関連のサ
イトが多かったので助かった。今回得られた知識は私だけでなく他の人の役にも立つと思
う、というより、役に立てたい。また機会があれば更に詳しく調べたいと思う。この研究
ができてよかった。
《参考資料》
・http://sp.lalu.jp/article/show/aid/750.html
・http://matome.naver.jp/odai/2139185231115790501
・http://www.motivation-up.com/motivation/pygmalion.html
https://kotobank.jp/word/%E3%83%94%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83%B3%
E5%8A%B9%E6%9E%9C-7782
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%B0%E3%83%9E%E3%83%AA%E3%82%AA%E3%83
%B3%E5%8A%B9%E6%9E%9C
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