通りいっぺんの仕事ではなく 心からお手伝いする 気持ちを持て 株式会社阿波弥 代表取締役社長 熊田 昭夫氏 http://www.awaya-ceremony.jp/ TEL 06-6531-0042 事業内容/1745年創業の葬祭業者の老舗。社葬や個人 葬、ホテルでのお別れ会などの葬祭関連事業を始め、ギ フト販売や仏壇墓石販売などのアフターサービス事業、葬 儀保険の代理店業、イベント事業、式場情報サービスな ど幅広く事業を展開。最近では地域で勉強会を開催し、 正しい葬儀の方法を一般の方々に伝える活動も行ってい る。 「大阪『NOREN』百年会」会員。 時代の流れに対応しつつ伝統的な葬儀文化の継承をめざす 昔の葬儀の様子。当社先代が羽織袴を着て先導している する気持ちを持て〟という意味に理解し、 家業を継承することは 社員の継承に他ならない 日々実践を通じて社員に伝えています。 当社は今年で創業264年を迎えました。 べて」とも語っていました。礼儀作法が 祖父は他にも「身についた礼儀作法がす 1745年に阿波の国(現徳島県)で国主 身についていれば仏様をお見送りできる 御用の水売業を営んでいたことに端を発 ということです。 し、江戸中期の文政年間に大阪に移って 葬祭業を創業したといわれています。以 来、大阪の北御堂や南御堂、一心寺や四 老舗の看板を守りつつ 葬儀業界の流れを変える 天王寺をはじめとする約400の寺院とお 最近は社会的な風潮も影響し、葬儀が 付き合いさせていただき、葬祭に関わる 小型化、縮小化しています。一般の方々 一切を引き受ける葬祭の総合プロデュー の約8割は近親者のみで行う「家族葬」 サーとして歴史を積み上げて参りました。 を希望され、それに伴い葬儀の参列者 私はいまから13年前、31歳のときに先 が5年前に比べて2分の1から3分の1に減 代の父から当社を引き継ぎました。9代目 少しています。加えて最近では葬儀をし として重い暖簾を継いで常々考えてきたの ない直葬を希望する方まで出てきました。 は、 〝家業を継承することは社員の継承に 私はこの風潮に危機感を覚えています。 他ならない〟ということです。私たちの仕 葬儀は故人の弔いの場であるだけでな 事はモノを売ることではなく、故人をお見 く、参列者にとっては死を通して生命の 送りするサービス業。そのサービスをご提 大切さを再認識する数少ない機会です。 供させていただくのは当社の社員だからこ 特に若い人たちにとって死と向き合う経 そ、価値観やマインドを共有した社員を引 験は貴重で、 「自分が生きているのは当た き継ぐことが何より大切なのです。老舗の り前ではない」 「ご先祖さんや親がいるか 継承は人の継承に尽きる、そう思います。 らこそ自分がここにいるんだ」ということ 父は職人気質なところがあり、背中で を考える機会になります。だからこそ、伝 語るタイプでした。よって父から家訓な 統的な葬儀を絶やしてはいけないのです。 どを聞かされたことはないのですが、7代 また、お寺と檀家のお付き合いや地域 目にあたる祖父が「通りいっぺんのこと コミュニティが希薄になり、伝統的な葬儀 をしててはいかんのです」と語った昔の 文化を継承する場が失われつつあります。 記事が残されています。故人をお見送り そこでさまざまな団体と新たなネットワー するというのは、やはり難しい仕事。ご クをつくり、コミュニティの和を広げる取 遺族の心情はもちろん、地域やお寺、会 り組みを始めています。さらに葬儀会館で 社などさまざまな立場の方々のお気持ち の葬儀が増えていく中、昔のようにお寺 を察して対応しないといけません。葬儀 や地域集会所での葬儀に戻すことで、地 を進行するためのマニュアルはあるもの 域コミュニティの活性化も図っています。 の、その時々でどう対応するかの答えは 老舗の看板を守りつつ、葬儀業界の流れ ひとつではないのです。祖父の言葉を〝仕 を変える。新たな活動を通じ、葬儀文化 事としてではなく、心を込めてお手伝い の継承に寄与できればと考えています。 大阪「NOREN」百年会 大阪「NOREN」百年会は、大阪市内で創業 100 年以上の企業が集まって平成 2 年に設立された団体。先達の残し た技術・商品・ノウハウの情報発信にも力を入れており、大阪市内企業を対象に「のれん」の智恵の公開や企業の経営 方針・戦略の提言を行う「大阪『のれん』百年フェア」を大阪市とともに開催している。 02 b-platz press vol.118 会員数 75社(平成22年2月現在) UR L http://www.osaka-noren100.jp/
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