レポート・論文の作り方 - 明治大学図書館ホームページへ

レポート・論文とは
 レポート・論文とは
 「問い」と「答え」という形式でできている
 意見を述べて議論する文章
 特に自分の調査,研究内容を論理的に記述し,公表し,他の人の理解を得るもの
図書館活用法
レポート・論文の作り方
 レポート・論文を書くとは
 テーマ(主題)に関連し,提起された問題の解明に必要と思われる事実とデータ
(資料)を集める
 集めた事実,データを分析し,その意味を解明,判断し,自分の主張を裏付ける
 筋が通り(論理的に),説得力のある文章・報告書にまとめる
明治大学 経営学部
長野史麻
 レポート・論文の要件
1.
2.
3.
4.
オリジナリティー:他にも見られない特徴,独自性,新しさ
論理性:筋が通る一貫性,合理性
普遍性:事実に基づく再現性,著者の個性によらない客観性
妥当性:一般に広く認められた理にかなうこと
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
2
レポートと論文の共通点と相違点
レポート・論文の構成
共 通 点
目 的:問題・疑問の研究,解明
タイトル:調査・研究の主題を端的に示す
内 容:事実と考察・理論の論述
評 価:学問的価値
• 論文
– 著者の考えを調査や研究の
結果として取りまとめ,他の
研究者などの理解を求める
文章
– 著者は自らの意思に基づい
て研究対象となるテーマを決
め,研究計画をたて,実施結
果(成果)を発表する
– 不特定多数の読者を対象と
する
 概要・要旨:成果を含めた数行の要旨(省略あり)
 表題(タイトル):内容の核心を適切に表す
 キーワード:内容を端的に表す語句(省略あり)
 目次:ページ数が多い場合に付す(省略あり)
• レポート
– 調査や研究結果を事実とし
てまとめた文章
• 著者の見解は必須ではない
– レポートの作成は,通常特定
の関係者の依頼や要請によ
る
 序論:背景,問題提起,アプローチの各要旨
 本論:データ,解釈,考察,推論,意見,結論
 結び:まとめ・確認,検討・評価,展望・課題
 脚注・末尾注:付随・詳細事項,読者参考事項
 文献:参考文献・引用文献の出所一覧
– 読者はレポートの提出を期
待する関係者に特定される
3
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
4
序論(序文,はじめに)
本論
文量:全体の5~10%
文量:全体の80%以上
 役割
 目的
 序論で提起した問題に対して,結論に至るべく議論を展開する
 暫定論旨や仮説にたいする論拠を示し,結論を導く
 あるテーマ(主題)に関して問いを立てること
 テーマ自体は問いではない。テーマとは論じる範囲のこと
 構成(必要に応じて,いくつかの節や項に下位分類する)
 役割
 仮説提示:提起した問題・課題について論旨となる仮説を提示する
 論拠提示:論旨の仮説(命題)が正しいことをデータを用いて明らか
にする
 論文の要旨,アウトラインを知らせ,理解を助ける
 構成
 論旨・・・論文の中心をなす主張
 テーマの設定・背景説明:なぜそのテーマを扱うのか,動機や理由を
示し,先行研究などを指摘する
• 暫定の論旨のことを仮説という
 結論提示:問題・課題の分析,仮説の立証結果を結論として述べる
 問題提起:なぜ問題として取り上げるのか,疑問点,問題点,新たな
視点の指摘
 論文のスタイル
 アプローチ:論文の目的,問題への取り組み方,解決の方法の要旨
を説明する
 予告:各節の概要を記述する
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
結び(まとめ)
 仮説論証型,説明型,探索型,比較型,事象確認型
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
5
6
文献出典リスト
文量:全体の10%程度
 役割
 役割
 「本論」において展開した議論にもとづいて
「序論」で立てた問いたいして解答を与える部分
 自分の最終的な主張
 成果の確認(既存研究との比較),次へのステップを示す
 参照したり,引用した文献,データ類の出所を提示・公表し
自説の裏付けをとる
 構成
 参考文献:論拠を示す過程で考察や判断の材料にした文献や
問題提起や論拠の提示の過程で引用した文献の出典
 構成
 要約: 「本論」の短い「要約」を最初につけて,これまでの議論の流れ
を確認する
 結論: 「本論」での議論から導き出される結論,および最終的な主張
や考察を論理的過程を示しながら明確に述べる。
 データ:論拠で必要とする各種データ(事実,記録,統計,文献など)
の出典
 注:論じる注や補足する注
 検討・評価:提出した自己の議論・結論の意義を客観的・第三者的に
評価する。
 展望・課題:論じ残された問題点や今後の課題などの指摘を行う。
★ アイウエオ順に列記し,一覧表にする。
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
7
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
8
1.予備調査
2.テーマ選定
執筆作業の流れと項目
1.
予備調査
2.
テーマの選定
3.
問題提起,仮説・暫定論旨の提示
50% 4.
5.
 テーマ選定
 日ごろから興味や関心が継続する対象であること
 調査,検討意欲が強く湧くこと
 学問的価値,オリジナリティを感じること
 調査方法(資料類やツール類)があり,利用できること
暫定目次の作成
資料・データの収集
 データが集めにくい対象に注意すること
6. 資料の整理
(解釈・説明,分析・考察・判断・意見)
7.
論旨,目次の詳細検討
8.
文書作成(論述・執筆)
9.
出典表示,文献整理,確認
50%
 タイトル
 調査・研究を経て本論でまとめられる中心的な内容を簡潔,適切に示す
こと。
10.仕上げ
9
出所:石坂春秋(2003) 『レポート・論文・プレゼン スキルズ』くろしお出版,32ページを一部修正のうえ引用
3.問題提起,仮説・暫定論旨の提案
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
10
4.暫定目次の作成
 テーマを掘り下げ感じとった問題点,疑問点を吟味し,特に解明し
たい事柄を取り上げ,問題提起する
 従来の扱い方や考え方に疑問を感じる事柄
 新しい考え方やアイディアがあると思われる事柄
 従来の研究に不足していると思われる事柄
問題提起と暫定論旨の決定
↓
 仮説としての提案,対策,主張の正しさ,妥当性を事実や
データを用いて立証し,結論(論旨)を導く議論(論証)の筋道
作りを行う
 提起された問題や疑問を掘り下げて考察し,対応策や解決策を考
える
 考え出された筆者の主張(アイディア)は現段階では明らかな裏付けや
証拠に欠けるため,仮説(暫定論旨)として提案することになる
 仮説は事実やデータを用いて論証され,論文の論旨となるもの
 仮説の提示により問題解決と論述の方向付けがなされる
 論旨・・・論文の中心となる判断の主張のこと。事実やデータをもとに,調査・
研究し,正しいと論証して導き出した結論のこと
 暫定論旨・・・調査,研究の過程で最も確からしいと仮に定めた結論(仮説)
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
 実力,時間,費用からみて難しすぎない,大きすぎないこと
 漠然とした,注目する視点が定まらない対象ではないこと
 小さすぎないこと(資料・データが見つからない)
 有効な協力が得られること
11
 予備調査や現時点の知識に基づき,
 作業の方向付け
 問題への取り組み方
 仮説・提案の調査し,論述する大まかな筋道の想定
 次の資料・データの収集に備える
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
12
6-1.資料の整理
(分類,解釈・説明,分析,考察・判断,意見)
5.資料・データの収集
 資料整理作業の流れ
1. テーマに関連した資料の収集 ⇒ A4サイズに統一してコピー
2. 暫定目次・サブテーマに即して分類し,整理する
 無駄のない資料の探索,調査は次のような目標を決めて取
り組むとよい
 テーマに関する
•
 全体的な知識・研究動向を調べる
 基礎的な知識を得る
 最新の知識や研究を調べる
 先行研究を調べる
 他分野の知識や研究を調べる
3. 分類した資料の解釈・分析
•
•
 きわめて重要なステップ
 図書館活用法の授業では,資料の種類に応じて,
詳細に収集方法を教えてもらえるので,しっかりと学ぶこと
 整理した資料
 テーマに関する筆者の結論を導くための考察と判断の裏付けに用いられ
る
 分析の結果から考えられる事柄を,事実と意見に分けて記録する
14
13
7.論旨,目次の詳細検討と確定
→論理の筋道が正しいかどうかを確認する
6-2.資料・データの解釈と分析
 資料と筆者の見解・意見は別記する
 なぜ目次の詳細検討が必要か
 暫定目次・・・文献の収集前に,テーマの設定,問題提起,
仮説(暫定論旨)の提示に続き作成したもの
 資料・データの解釈・分析における注意点
 立てた問いにたいし,解決策や対策として提案する仮説の正しさや妥当性を,
後で収集した文献やデータを用いて立証し,結論(論旨)を導く議論の仮の筋道
 筋道の正しさをいま一度確認しておくことが重要!
 論文の目的,筆者の仮説や主張を明確にしておく
 参考,引用箇所を前後の,また他の部分とのつながりを見ながら客
観的かつ正当に解釈する
 事実と意見を書きわけて記録する
 収集文献に基づき,目次案をみなおし,論理展開の流れを完成させる
 暫定論旨の確認も行い,必要ならば修正する
 すべてのデータを収集したわけではない。独断,偏見,我田引水は
避ける
 定量(数値)データはその意味や価値を理解しやすくするため,表や
グラフの作成も含め,どのような処理・分析が必要か考えておく
 数値データを鵜呑みにはしない。疑うことも大切
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
集めた資料・データの要旨を示し(引用し),その意味を正しく解釈し,
事実として説明する
さらに資料・データを分析し,その特質をグラフなどで示し,説明する
4. 分析結果から考えられる(推論する)事柄を筆者の意見として述
べる
5. 論文の筋道・論旨に沿うように整理・文章化する
 資料をいかに集めるか
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
研究ノートの作成:①著者名,②出版年,③書名,論文名,雑誌名(論
文の場合),④巻号(論文の場合),⑤ページ,⑥出版社(書籍の場合)
15
 目次を見直す手順
1.
2.
3.
4.
5.
論文の目的,各節の目的,主題,議論・論証すべき事柄を確認
この順序での論理展開に矛盾や無理がなく,書きやすいかどうか
筆者の考え,主張がスムーズに論理的に述べられるか
読者が読みやすく,重要個所に関心を引きやすく,理解しやすいか
必要と判断すれば,目次や論述の筋書きを修正する
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
16
8.文書の作成(論述・執筆)
9.出典表示,文献整理,確認
 執筆作業のスケジュールを立てる(全期間の半分)
 引用とは
 下書き(初稿)とその誤りや不備の訂正
 参考・引用文献の記入と確認
 文章の推敲,みがきをかけて完成
 自分の論を説明・証明するために,他人の文章や事例を引くこと
 引用はしないが参考にした文献(考察のヒントにしたものなど)も参考文献と
して出典を明示する
 引用の目的
 執筆の進め方
 序論の下書き(背景説明,問題提起,暫定論旨を各2~3行で簡単に書いてお
く。最初は備忘録の意味合いなので箇条書きでもよい)
 本論の記述
 詳細目次にしたがって,書き進める。
 引用の条件
• ただし,書けないところは後回しにする。書けない理由がきっとある。
 論理の展開,進め方に気をつけて書き進める。
 全体の見直し。論理の展開上の誤り,事実と意見の書き分け,引用箇所の記載の
誤りの有無など
 結論の作成
 序論の作成
 参考文献リストの作成
 引用の対象を理解するため
 自分の意見,論理の裏付けにするため
 自分の立場を明確にするため
 引用対象の適切な表現を利用するため
 「」付引用文は原文を忠実に写し,出典情報を明示する
 筆者自身の文章とは区別する
 引用の量的目安
 多すぎないこと。執筆本文の20%以下,1件は400字以下
17
10.仕上げ
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
18
参考文献リスト
 見直しのチェックポイント
1.
2.
3.
4.
内容のチェック
文章のチェック
引用・図表のチェック
形式のチェック
 石坂春秋(2003)『レポート・論文・プレゼン スキルズ』
くろしお出版。
 金子元久(2007)『大学の教育力―何を教え,何を学ぶか』筑
摩書房。
 酒井聡樹(2006)『これから論文を書く若者のために 大改訂
増補版』共立出版。
 佐藤望(編著)(2006)『アカデミック・スキルズ―大学生のた
めの知的技法入門』慶應義塾大学出版会。
 本多勝一(2004)『中学生からの作文技術』朝日新聞社。
Quiz
論文が論文足りうる形式とは何かを一言で述べなさい。ま
た序論,本論,結論では何を書くべきであるのか簡単に説
明しなさい。
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
19
図書館活用法「レポート・論文の作り方」
20