平成 27 年 3 月 16 日 14 時 記者発表資料 (神奈川県政記者クラブ、川崎記者クラブ、文部科学記者会、同時発表) 公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー 株式会社 森永生科学研究所 インフルエンザ検出感度 従来法の 1 万倍! ∼超高感度・簡便・迅速 イムノフルフローチップを開発∼ 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー(神奈川県川崎市、理事長 馬来義弘)は、株式会社森永生科 学研究所(神奈川県横浜市、代表取締役社長 小路正博)と共同で、検出時間 10 分で従来法の 1 万倍 の 感 度 で 簡 便 に ウ イ ル ス を 検 出 で き る イ ム ノ フ ル フ ロ ー チ ッ プ (Immuno fluorescence controlled-flow chip; ImmunoFLflow chip)の開発に成功しました。 【ポイント】 従来法(イムノクロマト法)の 1 万倍の感度、検出 10 分のウイルス検査チップ「イムノフルフロー」を開発 吸水性ポリマー利用によりチップ内部の検体の流れを制御し、蛍光検出法との組み合わせで高感度化 インフルエンザなど感染症発症初期の早期診断を可能にする小型・簡便・低コストツールとして期待 【概要】 (詳細は添付資料参照) インフルエンザの簡易迅速診断にはイムノクロマト法 が広く利用されていますが、検出感度が十分でないため、 発症初期の少ないウイルスを正確に検出することは困難 です。一方で、抗ウイルス薬は、発症後 48 時間以内に 投与する必要があるため、小児や高齢者に多いインフル エンザ合併症による重篤化を防ぐためにも可能な限りの 早期診断と早期治療が求められます。 当財団竹内グループ(グループリーダー 竹内昌治)は、 株式会社森永生科学研究所と共同で、検出時間 10 分で従来法の 1 万倍の感度で簡便にウイルスを検 出できるイムノフルフローチップの開発に成功しました。 本チップは、これまで困難であった感染症発症初期(∼12 時間、発熱後の早い段階)の早期診断をこ れまでと同じく簡便な操作で可能にし、上述の合併症等による重篤化および季節性や新型インフルエ ンザの感染拡大防止に貢献できると考えます。将来的には、迅速検査が求められるインフルエンザ以 外のウイルスや菌の検査への活用も期待されます。今後は製販企業等を募り、本チップの実用・量産 化を目指します。 【お問い合わせ先】 公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー 竹内グループ 大崎 川崎市高津区坂戸 3-2-1 TEL: 044-819-2037 FAX: 044-819-2092 Email: [email protected] 添付資料 公益財団法人 神奈川科学技術アカデミー 株式会社 森永生科学研究所 インフルエンザ検出感度 従来法の 1 万倍! ~超高感度・簡便・迅速 イムノフルフローチップを開発~ 【ポイント】 従来法(イムノクロマト法)の 1 万倍の感度、検出 10 分のウイルス検査チップ「イムノフルフロー」を開発 吸水性ポリマー利用によりチップ内部の検体の流れを制御し、蛍光検出法との組み合わせで高感度化 インフルエンザなど感染症発症初期の早期診断を可能にする小型・簡便・低コストツールとして期待 【研究の背景】 インフルエンザの簡易迅速診断にはイムノクロマト法が広く利用されており、15 分程度でその場で診断結 果を知ることができます。しかし、検出感度が十分でないため、発症初期の少ないウイルスを検出することは 難しく、罹患していても偽陰性となる例が全体の 3~4 割存在するといわれています。抗ウイルス薬は、発症 後 48 時間以内に投与する必要があるため、小児や高齢者に多いインフルエンザ合併症による重篤化を防 ぐためにも可能な限りの早期診断と早期治療が求められます。 公益財団法人神奈川科学技術アカデミーと株式会社森永生科学研究所は、μTAS(Micro-Total Analysis Systems)技術注①と免疫測定技術注②という双方の独自技術を融合させ、イムノクロマト法のような簡便な操作 でかつ高感度、迅速診断が可能な免疫測定チップの研究開発を進めてきました。 【研究の成果】 公益財団法人神奈川科学技術アカデミー竹内グループ(神奈川県川崎市、グループリーダー 竹内昌冶) は、株式会社森永生科学研究所(神奈川県横浜市、代表取締役社長 小路正博)と共同で、検出時間 10 分 で従来法の 1 万倍の感度で簡便にウイルスを検出できるイムノフルフローチップ(Immuno fluorescence controlled-flow chip; ImmunoFLflow chip)の開発に成功しました。 現在、イムノクロマト法は簡単な操作でその場で短時間に判定できるため、インフルエンザなど、免疫測定 分野の簡易迅速診断に最も広く利用されています。しかし、感度および精度が十分ではないため、定性的 な注③簡易判定しかできません。イムノクロマト法では毛細管現象注④を利用して検体を流しながら抗原抗体反 応注②を行いますが、流れが不均一になりやすく、抗原(例えばインフルエンザウイルス)と標識試薬の反応を うまく制御できないため、結果に誤差が生じることが要因でした。 イムノフルフローチップでは、吸水性ポリマーの吸水現象を駆動力とすることで、抗原と未反応の蛍光標 識試薬をしっかりと分離することに成功し、イムノクロマト法の 1 万倍という超高感度化を実現しました。イムノ フルフローチップは、透明プラスチックとファイバーシートを材料とする低コストの使い捨てチップです。操作 法はイムノクロマト法と同様に検体を滴下するのみで、小型蛍光リーダにより客観的数値にもとづき検査する ことができます(図 1)。不活化インフルエンザウイルス抗原を利用した比較(図 2)では、イムノクロマト法の検 出限界が 100 倍希釈程度であるのに対して、イムノフルフローチップは 100 万倍希釈まで検出できているこ とがわかります。 1 図 1 左:イムノフルフローチップ、右:イムノフルフローチップに検体を滴下する様子とチップ内部での検出機構. 図 2 不活化インフルエンザウイルス抗原(1mg/mL Influenza A protein : A/New Caledonia/20/99(H1N1))の希釈液を 市販のイムノクロマト法(上:目視判定)およびイムノフルフローチップ(下:市販の小型蛍光リーダで判定)で検査した 結果.市販のイムノクロマト法では 100 倍希釈が検出限界だが、イムノフルフローチップでは 100 万倍希釈まで検 出できた(1 万倍の高感度化). 【社会に対する成果の還元、今後の展望】 小児や高齢者は、インフルエンザにより脳症や肺炎などの合併症が生じることで重篤化しやすく、抗ウイ ルス薬は発症後 48 時間以内に投与する必要があるため、可能な限りの早期診断と早期治療が求められま す。イムノクロマト法は、操作が簡便であるというメリットがある一方で、検出感度と精度が十分とは言えず、感 染症発症初期の少ないウイルスは検出できず、発症後 24 時間以上経たないと正確な診断ができないという 課題があります。イムノフルフローチップは、これまで困難であった感染症発症初期(~12 時間、発熱後の早 い段階)の早期診断をこれまでと同じく簡便な操作で可能にし、上述の合併症等による重篤化および季節 性・新型インフルエンザの感染拡大防止に貢献できると考えます。将来的には、迅速検査が求められるイン フルエンザ以外のウイルスや菌の検査への活用も期待されます。 2 【用語】 注① μTAS: MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて、チップ上に微小な流路や反応室、 混合室を設け、一つのチップもしくはデバイスで血液や DNA をはじめさまざまな液体や気体を分析す る生化学分析デバイスのことです。 注② 免疫測定: 抗体は、抗原となる特定のタンパク質や病原菌等の物質に結合する性質があります。免 疫測定では、測定したい抗原に特異的な抗体によって、血液や尿等のサンプルから、その中に含ま れる抗原を検出し、検査・診断を行います。 注③ 定性分析: 検体中の標的となる抗原の「あり」「なし」のみを判定します。定量分析では、「あり」「なし」 だけでなく、検体中の抗原量を決定できます。 注④ 毛細管現象: シート内の繊維と繊維の間のような微小空間を、液体の付着力と表面張力の作用によ り、重力に関係なく液体が浸透していく現象のことです。 3
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