昇温-リアルタイム直接質量分析(TR-DART-MS)によるnylon類の迅速識別 ○竹井 千香子1 仙波 康之1 大澤 1株式会社バイオクロマト 400 oC 2株式会社資生堂リサーチセンター Theoretical mono isotopic mass [M+H]+,m/z n=2 [C6H11NO]n 114.0913 227.1754 nylon-6,6 [C12H22N2O2]n 227.1754 453.3435 nylon-6,10 [C16H30N2O2]n 283.2380 565.4687 nylon-6,12 [C18H34N2O2]n 311.2693 621.5313 NH n O 200 oC 400 oC ceramic tube heat block DART Ion source sample 30 oC 7 5 Time (min) におけるマススペクトル pump Fig.3 TR-DART-MS system O nylon-6,12 NH NH n O NH NH n O (a) TIC 300 oC 300 oC (b) Overlaid EIC m/z 565 m/z 311 m/z 283 m/z 621 (c) 300 oCにおけるマススペクトル [M(n=1)+H]+ 227.1787 [M(n=2)+H]+ 565.4617 (c) 300 oCにおけるマススペクトル [M(n=2)+H]+ 621.5224 [M(n=1)+H]+ 311.2650 [M(n=1)+H]+ 283.2337 114.0925 (d) 400 oC air Temperature Rising device (b) Overlaid EIC m/z 227 単量体 m/z 114 m/z 340 におけるマススペクトル MS 600 oC 3 POT ions He 400 oC (a) TIC m/z 453 二量体 (c) 200 oC [M(n=3)+H]+ 340.2644 保夫3 O nylon-6,10 NH [M(n=2)+H]+ 227.1787 [M(n=2)+H]+ 227.1787 3山梨大学 志田 Fig.2 昇温装置の設定 m/z 227 二量体 m/z 340三量体 m/z 453 四量体 (d) 400 oCにおけるマススペクトル 克行2 200 oC 1 (b) Overlaid EIC (c) 200 oCにおけるマススペクトル 前野 イオンは,IonSense社製のDART-SVPを使用し, 質量分析計はBruker社製micrOTOF-QIIIを使用した. ヘリウムガスの流量は,3 L/min,設定温度は400 oCとした. Temperature n=1 治男2 各種nylonのサンプルを剃刀で0.5 mm 角程度切り出し, POT(サンプル容器)に採取して,6分間で室温から600 oCまで加 熱した(Fig.2).加熱され気相になったサンプルは,DARTの開口 部前部に導入され,そしてイオン化される(Fig.3). nylon-6 (a) TIC m/z 114 単量体 (b) Overlaid EIC [M(n=1)+H]+ 114.0925 一真1 島田 O nylon-6,6 n 200 oC Elemental composition samples O [M(n=1)+H]+ 114.0925 木下 Table. サンプル一覧 Result NH (a) TIC 隆夫1 Materials & Methods Abstract nylonは,一般的に良く知られている脂肪族ポリアミド という合成ポリマーの総称である.nylonには様々な種類 nylon-6 があり,衣類の他,自動車・電子部品等その用途は多岐に 渡る.近年,食品や日用品の品質管理の重要性が議論され nylon-6,6 ており,このような樹脂が異物として発見される可能性が ある.異物の分析手法として,FT-IR,NMRなどの分光法 nylon-6,10 の他,DSC,TG-DTAなどの熱分析,熱分解GC/MSなどが 挙げられるが,異物が微量の場合や混合物の場合は,組成 nylon-6,12 まで明らかにすることは困難である(Fig.1). ソフトイオン化の1つであるDART-MS (Direct Analysis in Real Time-Mass Spectroscopy)は,大気圧下で前処理を必 Fig.1 nylonのFT-IRスペクトル 要としない直接分析法である. 近年,サンプル部にTR(Temperature-Rising)デバイスを設け,サンプルに熱勾配を印加することに より,低分子から高分子成分を短時間に分析した例が報告されている1) 2) 3)..本研究では,各nylonの 迅速識別を目的として,TR-DART-MSを用いて検討を行ったところ,各nylonの熱分解成分である単量 体および複数量体の精密質量と出現時間の違いによってnylonの種類を識別できた. nylon-6 正道1 西口 [M(n=1)+H]+ 227.1787 [M(n=2)+H]+ 453.3517 Fig.6 nylon-6,10のTR-DART-MS測定結果 Fig.7 nylon-6,12のTR-DART-MS測定結果 114.0925 [M(n=4)+H]+ 453.3502 Fig.4 nylon-6のTR-DART-MS測定結果 340.2653 Fig.5 nylon-6,6のTR-DART-MS測定結果 • 200 oC以上の温度域においてサンプルの熱分解物(単量体と多量体)が観測された • EICの重ね書きより,nylon-6では単量体,二量体,三量体が観測され(Fig.4b) ,nylon-6,6では主に単量体と二量体が観測された(Fig.5b) nylon-6とnylon-6,6の判別において,EICの重ね書きの比較は意義あることであった • nylon-6の200℃および400℃のMSスぺトルは,強度は異なるもののnylon-6,6と同じ質量数のイオンが観測されたため,断片的なスペクトル 情報からだけではnylon-6とnylon-6,6を識別できない 300 oC近傍においてサンプルの熱分解物(単量体と二量体)が観測された nylon-6,10とnylon-6,12は、構成元素は同じであるが組成が異なる為、熱分解物(単量体と二量体)により容易に識別できた • • Conclusion • • • nylonの識別のために,サンプルに連続的に熱勾配を印加しながら直接分析するTR-DART-MSを用いた ソフトイオン化法であるDARTイオン化を用いたことで、 nylonの熱分解物として単量体、複数量体を検出できた 各nylonの熱分解成分である単量体と複数量体の精密質量および出現時間の違いによってnylonの種類を識別できた 1)Haruo Shimada; Satoru Kamikubo; Tokimasa Kawanishi; Yoshimasa Nakatani; Yuka Noritake; Rakan Matsui; Kazumasa Kinoshita; Yasuo Shida: 60th ASMS Annual Conference, Abstract, ThP29 Poster655 2)工藤 由貴,島田 治男,則武 佑佳,木下 一真,志田 保夫,日本化学会第94回春季年会2014要旨,1PA-103 3)竹井千香子,西口隆夫,木下一真,島田治男,前野克行,志田保夫,日本化学会第95回春季年会2015要旨,1PB-031 ※このポスターで使用したシステム名と製品名は,商標登録済あるいは申請中のものです 第63回 質量分析総合討論会
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