岡本安晴「カテゴリ項目テスト得点と真値の関連度指標について――種々

日本心理学会第79回大会一般研究発表(2015、ポスター)1AM-059(原稿)
カテゴリ項目テスト得点と真値の関連度指標について
種々の信頼性係数およびテスト得点と真値の間の決定係数の比較
○岡本安晴 1
(1 日本女子大学人間社会学部)
キーワード:信頼性係数、決定係数、カテゴリ項目
On indices of relations between categorical test scores and true values
Yasuharu OKAMOTO1
(1Japan
Women’s University)
Key Words: reliability coefficient, coefficient of determination, categorical item
目 的
心理尺度の測定値Xが連続量の項目 の和で与えられると
き、真値Tと誤差Eの和X = T + Eに分解され、測定値(観測
値)Xと真値Tとの関係(精度)を表す信頼性係数はω =
( )⁄ ( )で与えられる。測定値Yが、カテゴリ項目 の和で与
えられるときは、
(1)
= ,
≤ <
とモデル化され、ωは の回答パターンから推定できる
(Okamoto, 2013)
。平行テストの得点Y′を考えて、YとY′の相
関係数
を信頼性係数とする提案もある(Green and Yang,
2009)
。カテゴリ項目への回答を数値として扱ってα係数を求め
ることも広く行われている。しかし、カテゴリ項目の場合、測
定値はXではなくYであって、信頼性係数ω、
あるいはα
は、測定値Yと真値Tとの関係を示すものではない。ωはXの特
性、
とαはYの特性を表すものである。岡本(2013, 2014)
は、YとTとの関係を
(2)
T = aY + b + e
と表して、回帰モデル(2)の決定係数 によって、測定値Y
と真値Tとの関係の強さを表すことを提案している。ただし、
決定係数 のことを岡本(2014)では予測信頼性係数 と呼ん
でいる。YとTの関係はモデル(1)を介して表されるので、X
の特性を表すωや、Yの特性を表す
およびαより、YとTの関
係 は弱いと考えられる。すなわち、信頼性係数は、測定値Y
と真値Tとの関係を過大評価するものであると考えられる。信
頼性係数ω、
、αと決定係数 との比較をシミュレーション
によって行ったので、以下に報告する。
シミュレーション
各テスト項目 、・・・、 が次のモデルで表されるとす
る。
=
+ , ~ (0, 1),
=1−
カテゴリ境界は、
カテゴリ数=7のとき
= −1.23,
= −0.738,
= −0.246,
= 0.246,
= 0.738,
= 1.23
カテゴリ数=3のとき
= −0.25,
= 0.25
カテゴリ数=2のとき
=0
とする。
平行テスト
=⋯=
= 0.7
の場合と、非平行テスト
= 0.9、 = 0.8、 = 0.7、 = 0.6、 = 0.5
の場合について、信頼性係数ω、
、αと決定係数 を求めた
ものを図1および図2に示す。図1および図2のいずれの場合
も、信頼性係数は、測定値Yと真値Tとの関係(2)の強さを表
す より大きく、この傾向はカテゴリ数が2と3のように小さ
いときに顕著である。
結 論
信頼性係数は、カテゴリ項目の場合、測定値Yと真値Tとの関
係を過大評価するものである。測定は、真値を推定するために
行うことを考えれば、測定値と真値との関係を表すものとして
信頼性係数ではなく決定係数を用いるべきである。
ω
α
カテゴリ数
図1
=⋯=
= 0.7 の場合
ω
α
カテゴリ数
図2
合
= 0.9、
= 0.8、
= 0.7、
= 0.6、
= 0.5 の場
引用文献
岡本安晴(2013)日本テスト学会第 11 回大会発表論文抄録集
岡本安晴(2014)日本テスト学会第 12 回大会発表論文抄録集