第 25 回記念福岡シンポジウム Poster 発表応募用紙 トリアザシクロノナン配位子を有する新規鉄錯体の合成と 原子移動ラジカル重合反応への応用 Synthesis of Iron Complexes Having Triazacyclononane(TACN) Ligand and Their Application to Atom Transfer Radical Polymerization. 中西崇一朗 1、河村充展 2、甲斐英知 3、金仁華 4、砂田祐輔 2、永島英夫 2 (1 九州大学総合理工学府、2 先導物質化学研究所、3DIC、4 神奈川大学) 【研究背景と当研究室での試み】 原子移動ラジカル重合(ATRP)は金属触 媒によるラジカル重合制御の有効な手 段であり、応用化に向けた研究が学術的 のみならず工業的にも盛んに研究され ている。しかし一般的な ATRP では反応後の触媒残渣によるポリマーの着色や毒性の問題点がある ため、金属触媒の回収・再利用が課題となっており簡便な分離ができ、回収再利用可能な触媒の開 発は重要である。1)以前までに triazacyclononane(R3TACN)(図 1A)を用いて、MeOH に可溶で MeOH 再沈殿による回収再利用が可能なイオン性複核触媒(図 1Bx)2)及び高活性で触媒量の低減が可能な 単核触媒(図 1Cx) 3)の開発に成功している。しかし複核錯体 Bx は触媒活性が低く、適応可能なモノ マーも Styrene のみであるという課題があり、一方単核錯体 Cx においては MeOH に不溶なため回 収再利用が困難であるという問題が残されていた。今回我々高活性を示し、かつ回収再使用可能な 触媒開発を目的に研究を行った。 【実験と結果】 N 上に様々な立体障害を有す る TACN(図 2)を合成し、FeX2(X = Cl, Br)と の反応により対応する鉄錯体を合成したと ころ、 N 上に cPentyl 基を有する cPentyl3TACN を導入した鉄錯体は、複核・単核の両者を安 定構造として単離可能であることを ESI-MS および単結晶 X 線構造解析により明らかに した。本錯体は Styrene、MMA、BA の重合 制御が可能な他、触媒量の低減も可能であり、特に MMA 重合では[Fe] = 50 ppm の触媒濃度でも重 合制御可能である。さらに分離・再利用特性に関して検討を行ったところ、MeOH で再沈殿するこ とで得られるポリマーからの鉄の除去率が 99.7%とほぼ完全に除去可能で、回収された触媒の MeOH 溶液は乾燥させるだけで再使用も可能である。本触媒は世界初の高活性・回収再使用可能な ATRP 用鉄触媒である。4) <参考文献> 1)Matyjaszewski, K. Macromolecules 2012, 45, 4015-4039. 2)Niibayashi, S.; Hayakawa, H.; Jin, R.-J.; Nagashima, H. Chem. Commun. 2007, 1855-1857. Kawamura, M.; Sunada, Y.; Kai, H.; Koike, N.; Hamada, A.; Hayakawa, H.; Jin R.-H.; Nagashima, H. Adv. Synth. Catal. 2009, 351, 2086-2090. 3)Nakanishi, S.; Kawamura, M.; Kai, H.; Jin, R.-J.; Sunada, Y.; Nagahima, H. Chem. Eur. J. 2014, 20, 5802-5814 発表者紹介 氏名 所属 中西崇一朗(なかにし 九州大学 そういちろう) 総合理工学府 学年 博士後期課程 3 年 研究室 永島研究室 研究室紹介写真
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