第39号 2015年 9 月 26日 声明 マイナンバー改正法の制定に抗議する ─ 安倍政権は10月の番号通知を中止せよ ─ 2015年9月12日 監視社会を拒否する会 共同代表 伊藤成彦(中央大学名誉教授) 田島泰彦(上智大学教授) 福島 至(龍谷大学教授) 村井敏邦(大阪学院大学教授) (1)安倍政権は9月3日、マイナンバー法と個人情報保護法の改正法を 衆議院で採決し成立させました。マイナンバー改正法は、2013年に制 定したマイナンバー法が施行できていないなかで、マイナンバーの利用範 囲を税と社会保障の分野から、さらに銀行口座・特定健診等の金融分野と 医療分野に一挙に拡大するものです。個人情報保護改正法は、企業が保有 する個人情報を匿名化して第三者に本人の同意なしに提供できるとするも のです。この二つの改正法の制定は、政府が、行政諸機関と各自治体さら には企業が保有する個人情報を一元的に管理し、国民監視をより強化する 超監視社会への道を切り開く企みにほかなりません。私たちはこの暴挙に 強く抗議するものです。 (2)マイナンバーと顔写真を記載した個人番号カードの取得は任意であるとし ながらも、政府はその交付を来年1月から開始しようとしています。ところが、マイナ ンバー改正法を制定した翌日の4日に、政府・財務省は、消費税率を8%から10 %に引き上げる際に、マイナンバー制の個人番号カードを活用して、国民一人ひ とりの飲食料品の購買履歴を集め、税率2%分に相当する額を還付する方式の導 入を検討していることを明らかにしました。この方式は、国民が個人番号カードを 常時携帯することを前提にして、政府が、誰が・何を・いつ・どこで購入したかという 個人情報を一元的に把握し、国民のプライバシーを丸裸にするものです。個人番 号カードのこのような活用は、このカードに健康保険証の機能をもたせる施策とも 重なって、国家が国民にその携帯の義務を課す「国民IDカード制」を実質上導入 するものにほかなりません。 (3)政府は9月4日、マイナンバー制の情報連携システム──行政諸機関と各 自治体さらには企業の参画が計画されている──へのサイバー攻撃の対策等を 新たに盛り込んだ「サイバーセキュリティ戦略」を閣議で決定しました。戦争する国 づくりに国民を動員し徴用するインフラとしてマイナンバー制を活用することを策し ているからこそ、政府はマイナンバー制の新たなサイバーセキュリティ対策の導入 を急いでいるのではないでしょうか。戦争法案が審議されているまっただなかの6 月に安倍政権は、米国へのサイバー攻撃でも、集団的自衛権を行使して日本が 武力行使できるという政府見解をはじめて示しました。「サイバーセキュリティ戦略」 -2 - 2015年 9月26日 第39号 に謳われている「サイバー空間における積極的平和主義」とはまさにこのようなこと にほかなりません。 (4)今年6月に日本年金機構の個人情報流出問題が発覚し、年金情報と連結 するマイナンバー制の運用開始に対する不信と反対の声が大きくわきあがってい ます。全国で2割にのぼる自治体で、マイナンバーで管理する個人情報の基幹系 システムと、インターネットに接続する情報系システムのパソコンとを分離する対策 がとれていない現状も明らかになっています。このようななかで、安倍政権は、来 月10月5日からマイナンバーを記載した「通知カード」の郵送を開始し、来年1月 からマイナンバー制の運用を強引に開始しようとしているのです。 (5)マイナンバー制は、高度情報化社会における国民総背番号制というべきも のです。とりわけ2020年東京オリンピックの「テロ対策」という名分で、政府はマイ ナンバー制を基盤にして、顔認証つき監視カメラネットワーク、個人番号カードを 使った購買・移動、メールや携帯電話の通信傍受、GPSを活用した行動監視等 々、これらすべてを網の目のように結びつけた国民監視網を現実につくりだしつ つあります。このような国民総監視社会は、プライバシーの権利をはじめとした基 本的人権を保障する憲法に反するものです。私たちはマイナンバー改正法の制 定に抗議するとともに、マイナンバー法そのものの廃止を強く求めます。安倍政権 は10月からの番号通知をただちに中止すべきである。 ︻ 解 説 ︼ 政 府 は 、 国 民 監 視 の た めに 、 来 年 1 月 か ら 交 付 を開始する﹁個人番号カード﹂を国民すべてに所持させ、 こ の カ ー ド の 履 歴 を 把 握 す る こ と を 画 策 して いま す 。 カ ー ド を 国 民す べて に 所 持 さ せ 、 さら に は 常 時 携 帯 さ せ る ために、政府は次のような策を弄しています。 ① カ ー ド に 、 健 康 保 険 証︵ は やけ れ ば2 0 1 7年 7 月 ) ( -3 - か ら ︶、 キ ャ ッ シ ュ カ ー ド 、 ク レ ジ ット カ ー ド 、 国 家 公 監視社会を拒否する会 務 員 の 身 分 証 、 企 業 の 社 員 証 等 々 の 機 能を 加 え る 。 ② 企 口座名 業 ・ 大 学 だ け で な く 町 内 会 な ど か ら カ ー ド を 一 括 申 請で 口座番号 00140‐9‐498989 き る よう にす る 。 ③ ス マ ー ト フ ォ ン や 街か ど にあ る 証明 郵便振替 写 真 機 か ら カ ー ド の 申 請 が で き る よう に す る 等 々 。 政 府 カンパをお願いします は い ま 、 8 7 0 0 万 枚 の カ ード を 、2 0 1 9 年 3 月 末 ま で に 交 付 す る 計 画 を た て て い る ので す [﹁マ イ ナ ン バ ー 制度利活用推進ロードマップ 案 ﹂ ] 。 第35回 監視社会研究会を開催 【2015年6月16日】 〈テーマ〉 ① 監視に向かう日本 田島泰彦・上智大学教授 ② 戦争法案と国民監視 事務局より
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