ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル 環境省環境管理局 総務

ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル
平 成 13年 8 月
環境省環境管理局
総務課ダイオキシン対策室
大
気
環
境
課
目
第1節
測定方法の概要
次
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1
はじめに
2
測定対象物質
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
3
用 語 の 定 義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
4
試 料 採 取 及 び 分 析 方 法 の 分 類 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
5
表示方法
8
6
測定方法の精度管理の概要
7
測定方法の採用のための評価
8
安全管理
第2節
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
分析精度の管理
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
1
標準作業手順(SOP)
2
器具・装置の性能の評価と維持管理
3
測定の信頼性の評価
4
データの管理及び評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
5
精度管理に関する報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27
第3節
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
環境大気中のダイオキシン類の測定分析方法
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
1
測定方法の概要
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
2
試薬及び材料
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28
3
器具及び装置
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
4
試料採取及び前処理
5
試験操作
6
検出下限値、定量下限値
7
濃度の表示
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 50
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
大気中のダイオキシン類の測定方法マニュアル
第1節
測定方法の概要
1. はじめに
ダイオキシン類は、健康影響の未然防止の観点からの対策が必要な物質であり、環境汚
染物質の中でも社会的関心の高い物質である(注1)。
これらの物質に係る環境保全対策を推進するためには、環境濃度の現状、発生源の状況
等の把握が重要であるが、そのためには信頼できる測定分析マニュアルが不可欠である。
ダイオキシン類の測定分析は、試料の性状によってその採取方法が異なっている。また、
一般にその濃度は低く、かつ、これらの物質は多数の塩素置換体の総称であり、多成分を
感度良く分離・分析する方法が必要である。更に、測定データに対する信頼性を確保する
ため、分析値の精度が管理されているマニュアルが要求される。
本マニュアルは、環境大気試料中のダイオキシン類を測定するための測定分析マニュア
ルである。しかし、測定方法にかかわる技術の進歩は著しく、これらの新しい手法を有効
に活用することは重要である。したがって、本マニュアルでは測定方法を厳密に限定せず、
測定担当者が実状に合った測定方法を採用できるよう、一定の測定精度を担保するために
確保すべき基準や条件などについても提示した。
(注 1 )ダ イ オ キ シ ン 類 は 、 動 物 に 対 し て 発 が ん 性 、 催 奇 形 性 等 、 多 岐 に わ た る 毒 性 を 示 す 。 人 に
対しても発がん性があるとの評価があるものの、現時点ではまだ不明な点も多い。しかし、人へ
の健康影響等を未然に防止する観点から、分析者を吸引、飲み込み或いは直接皮膚への接触から
保護するための管理を徹底することができ、かつ、ダイオキシン類の前処理室や分析室の排気及
び厳重な排液の管理を行うことができる機関で行う必要がある。
2. 測定対象物質
本 マ ニ ュ ア ル で は 、 環 境 大 気 中 の ポ リ 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (PCDDs)、 ポ リ 塩 化
ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (PCDFs)及 び コ プ ラ ナ PCBsを 測 定 対 象 物 質 と し て い る 。
3. 用語の定義
ダ イ オ キ シ ン 類 : 狭 義 に は ポ リ 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (PCDDs)と ポ リ 塩 化 ジ ベ ン
ゾ フ ラ ン (PCDFs)を 指 す が 、 本 マ ニ ュ ア ル で は 、 更 に コ プ ラ ナ ・ ポ リ 塩 化 ビ フ ェ
ニ ル (Coplanar PCBs)を も 合 わ せ た 総 称 と す る 。
異 性 体 : 塩 素 の 置 換 し た 数 と 位 置 に よ っ て PCDDsは 75種 類 、 PCDFsは 135種 類 、 PCBsは
- 1 -
209種 類 の 異 な っ た 分 子 構 造 の 化 合 物 が 存 在 す る 。 (Isomerま た は Congener)
同 族 体 : そ れ ぞ れ の 異 性 体 の う ち 、 塩 素 数 が 同 じ 化 合 物 を 指 す 。 (Homologue)
PCDDs
: ポ リ 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Polychlorinated dibenzo-p-dioxins)
PCDFs
: ポ リ 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Polychlorinated dibenzofurans)
TeCDDs : 四 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Tetrachlorodibenzo-p-dioxins)
PeCDDs : 五 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Pentachlorodibenzo-p-dioxins)
HxCDDs : 六 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Hexachlorodibenzo-p-dioxins)
HpCDDs : 七 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Heptachlorodibenzo-p-dioxins)
OCDD
: 八 塩 化 ジ ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン (Octachlorodibenzo-p-dioxin)
TeCDFs : 四 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Tetrachlorodibenzofurans)
PeCDFs : 五 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Pentachlorodibenzofurans)
HxCDFs : 六 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Hexachlorodibenzofurans)
HpCDFs : 七 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Heptachlorodibenzofurans)
OCDF
: 八 塩 化 ジ ベ ン ゾ フ ラ ン (Octachlorodibenzofuran)
TeCBs
: 四 塩 化 ビ フ ェ ニ ル (Tetrachlorobiphenyl)
PeCBs
: 五 塩 化 ビ フ ェ ニ ル (Pentachlorobiphenyl)
HxCBs
: 六 塩 化 ビ フ ェ ニ ル (Hexachlorobiphenyl)
HpCBs
: 七 塩 化 ビ フ ェ ニ ル (Heptachlorobiphenyl)
Co-PCBs: コ プ ラ ナ PCBs(Coplanar PCBs)。 共 平 面 構 造 型 塩 化 ビ フ ェ ニ ル で 、 オ ル ト 位 に
塩 素 が 配 位 し て い な い も の 、 1つ あ る い は 2 つ 配 位 し て い る 化 合 物 の う ち 、 14
種を規定する。
ノ ン オ ル ト PCBs(Non-ortho PCBs) : オ ル ト 位 非 塩 素 置 換 型 塩 化 ビ フ ェ ニ ル の う ち 、 4種 。
モ ノ オ ル ト PCBs(Mono-ortho PCBs): オ ル ト 位 1塩 素 置 換 型 塩 化 ビ フ ェ ニ ル の う ち 、 8種 。
ジ オ ル ト PCBs(Di-ortho PCBs)
: オ ル ト 位 2塩 素 置 換 型 塩 化 ビ フ ェ ニ ル の う ち 、 2種 。
TEF
: 毒 性 等 価 係 数 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Factor)。
TEQ
: 毒 性 等 量 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Quantity)。 PCDDs/PCDFsと コ
プ ラ ナ PCBsの 量 を ダ イ オ キ シ ン 類 の 中 で 最 強 の 毒 性 を 有 す る 2,3,7,8-四 塩 化 ジ
ベ ン ゾ -パ ラ -ジ オ キ シ ン の 量 に 換 算 し た 量 と し て 表 し て い る こ と を 示 す 記 号 。
PFK
: ペ ル フ ル オ ロ ケ ロ セ ン (Perfluorokerosene)
HRGC
: 高 分 離 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (High Resolution Gas Chromatography)
又 は 高 分 離 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ (High Resolution Gas Chromatograph)
HRMS
: 高 分 解 能 質 量 分 析 法 (High Resolution Mass Spectrometry)
又 は 高 分 解 能 質 量 分 析 計 (High Resolution Mass Spectrometer)
HRGC-HRMS: 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 法 又 は 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ
質量分析計
- 2 -
SIM
: 選 択 イ オ ン 検 出 法 (Selected Ion Monitoring)
RRF
: 相 対 感 度 係 数 (Relative Response Factor)
QA/QC
: 品 質 保 証 /品 質 管 理 (Quality Assurance/Quality Control)
%v/v
: 体 積 百 分 率 (Volume per unit volume)
%w/w
: 重 量 百 分 率 (Weight per unit weight)
ppm
: 100万 分 の 1(Parts per million;10 − 6 )
ppb
: 10億 分 の 1(Parts per billion;10 − 9 )
ppt
: 1兆 分 の 1(Parts per trillion;10 − 1 2 )
ppq
: 1000兆 分 の 1(Parts per quadrillion;10 − 1 5 )
μg
: マ イ ク ロ グ ラ ム (microgram;100万 分 の 1g;10 − 6 g)
ng
: ナ ノ グ ラ ム (nanogram;10億 分 の 1g;10 − 9 g)
pg
: ピ コ グ ラ ム (picogram;1兆 分 の 1g;10 − 1 2 g)
sps
: サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク (Sampling Spike)
cs
: ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク (Clean-up Spike)
ss
: シ リ ン ジ ス パ イ ク (Syringe Spike)
DL
: 検 出 下 限 値 (detection limit)
(ブ ラ ン ク 値 と 識 別 で き る 最 小 値 ; 測 定 の 標 準 偏 差 の 3倍 又 は S N 比 が 3 )
QL
: 定 量 下 限 値 (quantification limit)
(定 量 値 が 信 頼 で き る 最 小 値 ; 測 定 の 標 準 偏 差 の 10倍 又 は S N 比 が 10)
本マニュアルにおいては、検出下限値、定量下限値及び操作ブランク値等の許容性を判
断する基準として、「目標定量下限値」を採用している。目標定量下限値は、測定の目的
等に照らして決定されるが、本マニュアルにおいては原則として、ダイオキシン類に対し
て 基 準 値 (TEQ換 算 濃 度 )の 1/10の 濃 度 が 定 量 で き る こ と と し て 表 1 に 示 す と お り と し た 。 し
か し 、 TEQ換 算 値 の み で は 、 分 析 を 実 施 す る 上 で 不 便 な 面 が あ る の で 、 便 宜 上 、 表 2 の 検 出
下限値を目標検出下限値としても良い。ただし、各分析で求めた検出下限値に対して、毒
性等量を算出するとき、全ての測定値が検出下限付近の場合でも、毒性等量の総和は、基
準 値 の 1/30以 下 で あ る 必 要 が あ る 。
個々の塩化物の目標濃度として、表2の検出下限値を用いて毒性等量を算出し、定量下
限 値 に 換 算 す る と 、 約 0.04pg-TEQ/m 3 と な り 目 標 定 量 下 限 値 は 達 成 さ れ る (注 2 )。
しかし、表1の目標定量下限値が達成できれば、個々の異性体の検出下限値を必ずしも
表2の値以下にする必要はない。また、実際の測定試料の濃度が高くて十分に測定できる
場合にも、この表2の検出下限にこだわる必要はない。
表 2 の 検 出 下 限 の 値 を 用 い た 場 合 、 表 1 に 示 す 目 標 定 量 下 限 値 の 60% 程 度 に な る が 、 環
境濃度の実態把握をより正確に行う等の点から各分析機関の検出下限値はできるだけ小さ
- 3 -
くして低濃度まで定量する事が望ましい。
表1
環境大気におけるダイオキシン類の
目標定量下限値
表2
目標定量下限値
環境大気基準値
0.06(pg-TEQ/m 3 )
0.6(pg-TEQ/m 3 )
環境大気試料中のダイオキシン類の検出下限値
と毒性等量の計算例
同族体
毒性等価係数 *
(TEF)
TeCDD
PeCDDs
HxCDDs
HpCDDs
OCDD
1
1
0.1 (3)
0.01
0.0001
0.003
0.003
0.007
0.007
0.01
0.003
0.003
0.002
0.00007
0.000001
TeCDF
PeCDFs
HxCDFs
HpCDFs
OCDF
0.1
0.05,0.5
0.1 (4)
0.01(2)
0.0001
0.003
0.003
0.007
0.007
0.01
0.0003
0.0017
0.00028
0.00014
0.000001
Co-PCBs
0.1
0.01
0.0001(6)
0.0005(3)
0.00001
0.007
0.00079
全毒性等量
検出下限値
濃度( pg/m 3 )
毒性等量( pg -TEQ /m 3 )
検出下限値
定量下限値
−
−
0.011
0.036
( )内 は 異 性 体 数 、 * WHO-TEF(1998)
なお、本マニュアルに記載されている商品名は、マニュアル使用者の便宜のために、マ
ニュアル作成に伴い行われた検証試験等に使用し、かつ、一般に入手できるものを示した
ものであり、これを推奨するものではない。
- 4 -
(注 2 )実 際 の 試 料 で 測 定 対 象 物 質 の ピ ー ク 付 近 に お い て 標 準 物 質 で 得 ら れ た 検 出 下 限 や 定 量 下 限
が達成されていない場合には、必要な対策を講ずる必要がある。
4
試料採取及び分析方法の分類
4.1 試 料 採 取
試 料 採 取 方 法 は 、 ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム 2個 を 装 着 し た 採 取 筒 を ろ 紙 後 段 に 取 り 付 け た ハ
イ ボ リ ウ ム エ ア サ ン プ ラ で 行 う 。 24時 間 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で
24時 間 採 取 す る 。 週 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 す る 操 作
を 7回 繰 り 返 し て 行 う か 、 100 ç /min程 度 の 中 流 量 で 7日 間 の 連 続 採 取 を 行 う 。 ハ イ ボ リ ウ ム
エアサンプラ用のろ紙は石英繊維ろ紙を用いる。
4.2
4.2.1
前処理方法
溶媒抽出法
石 英 繊 維 ろ 紙 は そ の ま ま 、 約 16∼ 24時 間 ト ル エ ン を 溶 媒 と し て ソ ッ ク ス レ 抽 出 (以 後 、 ト
ル エ ン ソ ッ ク ス レ 抽 出 と 略 称 )を 行 う 。
ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム は 約 16∼ 24時 間 ア セ ト ン を 溶 媒 と す る ソ ッ ク ス レ 抽 出 (以 後 、 ア セ
ト ン ソ ッ ク ス レ 抽 出 と 略 称 )す る 。
4.2.2
クリーンアップ法
抽 出 液 は 濃 硫 酸 処 理 -シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 又 は 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ
マ ト グ ラ フ ィ で 妨 害 物 質 を 取 り 除 い た 後 、 液 を 二 分 し 、 一 方 を PCDDs/PCDFs用 に 、 他 方 を コ
プ ラ ナ PCBs用 と し 、 そ れ ぞ れ ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ で PCDDs/PCDFsと コ プ ラ ナ P
CBsの 分 画 を 行 う (注 3 )。 GC-MS分 析 で 妨 害 が あ り 、 よ り 高 度 な ク リ ー ン ア ッ プ が 必 要 な 時 、
又はアルミナカラムクロマトグラフィの替わりに活性炭カラム高速液体クロマトグラフィ
(HPLC)又 は 活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ を 行 う が 、 特 に PCDDs/PCDFsと ノ
ン オ ル ト PCBsを 分 画 す る 必 要 が あ る 時 に は HPLCが 有 効 で あ る 。
図1にクリーンアップ法のフローの例を示す。
(1) 硫 酸 処 理
抽出液を濃縮後、ヘキサンに転溶し、濃硫酸で有機化合物の分解処理をして着色を取り
除く。処理液についてシリカゲルカラムクロマトグラフィを行う。
(2) シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
強極性物質や色素成分の除去のために効果的であり、硫酸処理をした溶液のカラムクリ
ーンアップの最初の段階に使用し、アルミナカラムクロマトグラフィを行う前段階の処理
として用いる。
- 5 -
(3) 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
硫 酸 処 理 -シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 処 理 の 代 わ り に 、 シ リ カ ゲ ル と 水 酸 化 カ リ
ウム、硫酸、硝酸銀等を被覆したシリカゲルを順次積層したカラムで着色物を除去する。
特に、硫黄分の多い試料には、硝酸銀シリカゲルが有効である。これは、アルミナカラム
クロマトグラフィ用の前段階の処理である。
(4) ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
着 色 物 を ク リ ー ン ア ッ プ し た 試 料 を 活 性 ア ル ミ ナ カ ラ ム に よ り PCDDs/PCDFsと PCBsと を 分
画 す る 。 PCDDs/PCDFsと コ プ ラ ナ PCBsの 含 ま れ る 画 分 を 濃 縮 し 、 ノ ナ ン 溶 液 と し GC-MS分 析
する。
(5) 分 取 形 活 性 炭 カ ラ ム 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (HPLC)
アルミナカラムクロマトグラフィ処理後、又はアルミナカラムクロマトグラフィの替わ
り に 用 い ら れ る 。 GC-MS分 析 中 に 感 度 変 動 (低 下 )を も た ら す 妨 害 成 分 の 除 去 や 、 GC-MSの 分
離カラムで保持時間が一致する異性体を分画する。
(6) 活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ
ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 処 理 後 、 GC-MS分 析 で 妨 害 が あ り 更 に ク リ ー ン ア ッ プ が
必要な時、又はアルミナカラムクロマトグラフィの替わりに用いられる。
4.3
分析方法
ダイオキシン類の同定と定量は、キャピラリーカラムを用いる高分離能ガスクロマトグ
ラ フ (HRGC)と 二 重 収 束 形 の 高 分 解 能 質 量 分 析 計 (HRMS)を 用 い る 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ
フ 質 量 分 析 法 (HRGC-HRMS)に よ っ て 行 う 。
分 解 能 は 10,000以 上 が 要 求 さ れ る が 、 内 標 準 物 質 に よ っ て は 12,000が 必 要 で あ る 。
検出法としては各同族体を区分するため、ロックマス方式等を用いる選択イオン検出
(SIM)法 又 は そ れ と 同 等 以 上 と 確 認 さ れ た 方 法 に よ り 行 う 。
測 定 感 度 と し て 4 ∼ 5 塩 化 物 0.1pg、 6 ∼ 7 塩 化 物 0.2pg、 8 塩 化 物 0.5pg、 コ プ ラ ナ
PCB 0.2pgの 測 定 が 可 能 で あ る こ と が 要 求 さ れ る ( 注 4 ) 。
(注 3 )妨 害 の 無 い 試 料 に つ い て コ プ ラ ナ PCBsの み を 分 析 す る 場 合 に は 、 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ
トグラフィや多層シリカゲルカラムクロマトグラフィでの濃縮液にシリンジスパイクを添加し、
ノ ナ ン 溶 液 に 転 溶 し て GC-MSで 測 定 し て も 良 い 。 そ の 時 は 分 離 カ ラ ム と し て 全 PCBs異 性 体 を 良 好
に 分 離 で き る も の (例 え ば 、 HT-8(8% Phenyl(equiv.)Poly carborane-siloxane)や DB-5MS(Phenyl
(5%)methyl(95%)silicone,bonded)を 使 用 す る 。
(注 4 )目 標 定 量 下 限 値 が 達 成 で き れ ば 全 て の 異 性 体 で 必 ず し も こ の 量 を 満 た す 必 要 は な い 。
- 6 -
試料採取
クリンアップスパイク添加
サンプリングスパイクの添加
試料抽出
(ろ紙、ポリウレタンフォーム)
但し、
Hex:n-ヘキサン
DCM:ジクロロメタン
Tol:トルエン
粗抽出液
一部分取
硫酸処理
多層シリカゲルカラムクロマトグラフィ
Hex 50ml
H2SO4 10ml
Hex 120ml
シリカゲルカラムクロマトグラフィ
Hex 150ml
妨害物が無い試料について
コプラナPCBsを
分析する場合
2分する
PCDDs/PCDFs用
コプラナPCBs用
アルミナカラムクロマトグラフィ
アルミナカラムクロマトグラフィ
2%DCM/Hex 100ml
Fr.1
Hex 40ml
Fr.1
PCBs
5%DCM/Hex 120ml
直鎖炭化水素
Fr.2
50%DCM/Hex 160ml
50%DCM/Hex 160ml
コプラナPCBs
Fr.2
Fr.3
PCDDs/PCDFs
必要ならば
活性炭カラムHPLC
活性炭 カラムクロマトグラフィ
30%Tol/Hex
20min(40ml)
Fr.1
活性炭カラムクロマトグラフィ
25%DCM/Hex
150∼200ml
Reverse flow
Tol 15min
(30ml)
Fr.2
(50℃)
活性炭カラムHPLC
25%DCM/Hex
150∼200ml
Fr.1
PCBs *
測定せず
PCDDs/PCDFs
必要ならば
Hex 4min(8ml)
Fr.1
PCBs *
Fr.1
PCBs
Tol 200ml
50%DCM/Hex
20min(40ml)
ジオルトPCBs
Tol 200ml
Fr.2
Fr.2
Fr.2
PCDDs/PCDFs
PCDDs/PCDFs *
モノオルトPCBs
PCDDs/PCDFs
30%Tol/Hex
20min(40ml)
Fr.3
Reverse flow
ノンオルトPCBs Tol 15min
(30ml)
(50℃)
Fr.4
a)
PCDDs/PCDFsのクリーンアップ
PCDDs/PCDFs *
b) コプラナPCBsのクリーンアップ
測定物質用のシリンジスパイク 添加
* アルミナカラムクロマトグラフィを行わない場合
HRGC-HRMS測定
図1 ダ イオ キシ ン類の クリ ーンア ップ 法のフ ロー の例
- 7 -
5
表示方法
(1) 濃 度 の 表 示
PCDDs/PCDFsの 同 族 体 濃 度 は 、 四 塩 化 物 か ら 八 塩 化 物 の 各 同 族 体 と そ の 総 和 と し 、 異 性 体
濃 度 は 、 各 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 (17異 性 体 )に つ い て 表 示 す る 。 汚 染 の 由 来 を み る 場
合 等 、 必 要 に 応 じ て 1,3,6,8-TeCDD、 1,3,7,9-TeCDD、 1,2,7,8-TeCDF異 性 体 の 各 濃 度 に つ
いても定量し表示する。
濃 度 は 試 料 ガ ス 濃 度 (pg/m 3 )で 表 示 す る 。 表 示 方 法 は 表 3 の 通 り で あ る 。
表3
ダイオキシン類の表示方法
a) PCDDs及 び PCDFs
塩素置換体
PCDDs
同族体
四塩化物
TeCDDs
五塩化物
PeCDDs
PCDFs
異性体
2,3,7,81,3,6,81,3,7,9-
同族体
TeCDFs
2,3,7,81,2,7,8-
PeCDFs
1,2,3,7,82,3,4,7,8-
1,2,3,7,8-
六塩化物
HpCDDs
1,2,3,4,7,81,2,3,6,7,81,2,3,7,8,9-
HxCDFs
1,2,3,4,6,7,8七塩化物
HpCDDs
八塩化物
OCDD
Σ ( 四塩化物∼八塩化物 )
1,2,3,4,6,7,8,9全 PCDDs
異性体
1,2,3,4,7,81,2,3,6,7,81,2,3,7,8,92,3,4,6,7,8-
HpCDFs
1,2,3,4,6,7,81,2,3,4,7,8,9-
OCDF
1,2,3,4,6,7,8,9全 PCDFs
コ プ ラ ナ PCBsは 、 異 性 体 (ノ ン オ ル ト 異 性 体 4種 、 モ ノ オ ル ト 異 性 体 8種 )の 濃 度 と ノ ン オ
ル ト 置 換 体 濃 度 の 総 和 、 各 オ ル ト 置 換 体 濃 度 の 総 和 及 び 全 コ プ ラ ナ PCBsに つ い て 表 示 す る 。
各異性体の濃度は、定量下限以上の値はそのまま記載し、定量下限未満の値については
以下の通りとする。検出下限以上、定量下限未満の値は定量下限以上の値と同等の精度が
保証できない値であることが分かるような表示方法(例えば、括弧付きにする等)、検出
下限未満は(<検出下限値(数値))で記載する。全測定値を算出する時には、検出下限
以 上 は そ の 測 定 濃 度 、 検 出 下 限 未 満 は 検 出 下 限 値 の 1/2 の 値 を 用 い そ の 総 和 を 求 め る 。
- 8 -
b) コ プ ラ ナ PCBs
同族体
四 塩 化 物 (TeCB)
ノ ン オ ル ト PCBs異 性 体
モ ノ オ ル ト PCBs 異 性 体
3,3',4,4'- (# 77)
3,4,4',5- (# 81)
3,3',4,4',5-(#126)
2',3,4,4',5-(#123)
2,3',4,4',5-(#118)
2,3,3',4,4'-(#105)
2,3,4,4',5- (#114)
2,3',4,4',5,5'-(#167)
2,3,3',4,4',5- (#156)
2,3,3',4,4',5'-(#157)
2,3,3',4,4',5,5'-(#189)
全 モ ノ オ ル ト PCBs
五 塩 化 物 (PeCB)
3,3',4,4',5,5'-(#169)
六 塩 化 物 (HxCB)
七 塩 化 物 (HpCB)
全 ノ ン オ ル ト PCBs
全 コ プ ラ ナ PCBs
(
)内 の 番 号 は 、 IUPAC No.
(2) 毒 性 等 量 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Quantity;TEQ)
定 量 さ れ た 濃 度 は 毒 性 等 価 係 数 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Factor;TEF)を 乗
じ て 毒 性 等 量 (pg-TEQ/m 3 )と し て 表 す 。 ダ イ オ キ シ ン 類 の TEFは 表 4 の 通 り で あ る 。
表4
ダ イ オ キ シ ン 類 の 毒 性 等 価 係 数 (TEF)
PCDDs及 び PCDFs
異性体
PCDDs
2,3,7,8-TeCDD
1,2,3,7,8-PeCDD
1,2,3,4,7,8-HxCDD
1,2,3,6,7,8-HxCDD
1,2,3,7,8,9-HxCDD
1,2,3,4,6,7,8-HpCDD
1,2,3,4,6,7,8,9-OCDD
PCDFs
2,3,7,8-TeCDF
1,2,3,7,8-PeCDF
2,3,4,7,8-PeCDF
1,2,3,4,7,8-HxCDF
1,2,3,6,7,8-HxCDF
1,2,3,7,8,9-HxCDF
2,3,4,6,7,8-HxCDF
1,2,3,4,6,7,8-HpCDF
1,2,3,4,7,8,9-HpCDF
1,2,3,4,6,7,8,9-OCDF
他 の PCDDs,PCDFs
WHO-TEF (1998)
1
1
0.1
0.1
0.1
0.01
0.0001
0.1
0.05
0.5
0.1
0.1
0.1
0.1
0.01
0.01
0.0001
0
コ プ ラ ナ PCBs
異性体
IUPAC
No.
WHO-TEF (1998)
For Humans/Mammals
ノ ン オ ル ト PCBs
3,4,4',5-TeCB
3,3',4,4'-TeCB
3,3',4,4',5-PeCB
3,3',4,4',5,5'-HxCB
# 81
# 77
#126
#169
0.0001
0.0001
0.1
0.01
モ ノ オ ル ト PCBs
2',3,4,4',5-PeCB
2,3',4,4',5-PeCB
2,3,3',4,4'-PeCB
2,3,4,4',5-PeCB
2,3',4,4',5,5'-HxCB
2,3,3',4,4',5-HxCB
2,3,3',4,4',5'-HxCB
2,3,3',4,4',5,5'-HpCB
#123
#118
#105
#114
#167
#156
#157
#189
0.0001
0.0001
0.0001
0.0005
0.00001
0.0005
0.0005
0.0001
他 の Co-PCBs
- 9 -
0
毒性等量の算出は、各異性体の毒性等量を算出し、その合計を毒性等量とするが、各異
性体の毒性等量の算出方法としてJIS規格には以下の3種類が提示されている。即ち、
①定量下限以上の値はそのままその値を用い、定量下限未満・検出下限以上の値と検出下
限未満のものはゼロ(0)として各異性体の毒性等量を算出し、それらの合計を全毒性等
量とする。②定量下限以上の値と定量下限未満・検出下限以上の測定値はその値を用いて
毒性等量を算出、検出下限未満のものは検出下限値を用いて各異性体の見積り毒性等量を
算出し、それらの合計を全毒性等量とする。③定量下限以上の値と定量下限未満・検出下
限以上の測定値はその値を用いて毒性等量を算出、検出下限未満のものは検出下限値の
1/2 を 用 い て 各 異 性 体 の 見 積 り 毒 性 等 量 を 算 出 し 、 そ れ ら の 合 計 を 全 毒 性 等 量 と す る 。
本マニュアルでは、③の定量下限以上及び定量下限未満・検出下限以上の測定濃度に
TEFを 乗 じ て 毒 性 等 量 を 算 出 し 、 検 出 下 限 未 満 の 場 合 に は 検 出 下 限 値 の 1/2 に TEFを 乗 じ て
見積り毒性等量を計算し、それらを合計した全毒性等量を算出する。
表5にダイオキシン類の分析結果の記載例を示す。
(3) 数 値 の 取 扱 い
濃度の表示における数値の取扱いは、特に指定のない場合には次による。
a)濃 度 に つ い て は 、 JIS-Z8401に よ っ て 数 値 を 丸 め 、 有 効 数 字 を 2 桁 と し て 表 し 、 検 出 下 限
未満の場合には検出下限未満であったことを表示する。但し、試料ガスにおける検出下
限の桁までとし、それより下の桁は表示しない。
b)検 出 下 限 に つ い て は 、 JIS-Z8401に よ っ て 数 値 を 丸 め 、 有 効 数 字 を 1 桁 と し て 表 示 す る 。
c)毒 性 等 量 の 算 出 に 当 た っ て は 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 の 値 を も っ て 有
効 数 字 2 桁 で a)と 同 様 に 数 値 を 丸 め る 。 つ ま り 、 個 々 の 異 性 体 の 毒 性 等 量 に つ い て は 丸
めの操作は行わない。
- 10 -
表 5 ダ イ オ キ シ ン 類 (2,3,7,8-位 塩 素 置 換 PCDD s/PCDFs 等 及 び コ プ ラ ナ PCBs)
の測定結果の記載例
a) PCD Ds/PCDFs
測定項目
実測濃度
(pg/m 3 )
2,3,7,8-TeCDD
1,3,6,8-TeCDD
1,3,7,9-TeCDD
1,2,3,7,8- PeCDD
1,2,3,4,7,8-HxCDD
1,2,3,6,7,8-HxCDD
1,2,3,7,8,9-HxCDD
1,2,3,4,6,7,8-HpCDD
OCDD
2,3,7,8-TeCDF
1,2,7,8-TeCDF
1,2,3,7,8-PeCDF
2,3,4,7,8-PeCDF
1,2,3,4,7,8-HxCDF
1,2,3,6,7,8-HxCDF
1,2,3,7,8,9-HxCDF
2,3,4,6,7,8-HxCDF
1,2,3,4,6,7,8-HpCDF
1,2,3,4,7,8,9-HpCDF
OCDF
<0.003
0.080
0.040
0.010
(0.010)
0.020
0.020
0.14
0.60
0.010
0.040
0.040
0.040
0.040
0.040
<0.007
0.050
0.13
0.020
0.10
毒 性 等 量 (TEQ)
TEF (pg-TEQ/m 3 )
異性体
ジベンゾp-ジオキシン
ジベンゾフラン
x1
x1
x0.1
x0.1
x0.1
x0.01
x0.0001
x0.1
x0.05
x0.5
x0.1
x0.1
x0.1
x0.1
x0.01
x0.01
x0.0001
<0.0015>
0.01
0.001
0.002
0.002
0.0014
0.00006
0.001
0.002
0.02
0.004
0.004
<0.00035>
0.005
0.0013
0.0002
0.00001
同族体
ジベンゾp-ジオキシン
TeCDDs
PeCDDs
HxCDDs
HpCDDs
OCDD
全 PCDDs
ジベンゾフラン
TeCDFs
PeCDFs
HxCDFs
HpCDFs
OCDF
全 PCDFs
全 (PCDDs+PCDFs)
0.19
0.20
0.33
0.26
0.60
1.6
0.76
0.51
0.41
0.23
0.10
2.0
3.6
-
0.018 1)
0.038 2)
0.056 3)
1)PCDDsに お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 に つ い て 、 JIS-Z8401に よ り
数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
2)PCDFsに お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 に つ い て 、 JIS-Z8401に よ り
数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
3)全 (PCDDs+PCDFs)に お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 全 て の 合 計 に つ い て 、
JIS-Z8401に よ り 数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
- 11 -
b) コ プ ラ ナ -P C B s
測定項目
ノ
ン
オ
ル
ト
モ
ノ
オ
ル
ト
実測濃度
(pg/m 3 )
3,3',4,4'-TeCB (#77)
3,4,4',5-TeCB(#81)
3,3',4,4',5-PeCB (#126)
3,3',4,4',5,5'-HxCB (#169)
全 ノ ン オ ル ト PCBs
2,3,3',4,4'-PeCB (#105)
2,3,4,4'5-PeCB (#114)
2,3',4,4',5-PeCB (#118)
2',3,4,4',5-PeCB (#123)
2,3,3',4,4',5-HxCB (#156)
2,3,3',4,4',5'-HxCB (#157)
2,3',4,4',5,5'-HxCB (#167)
2,3,3',4,4',5,5'-HpCB(#189)
全 モ ノ オ ル ト PCBs
全 コ プ ラ ナ PCBs
1.2
1.4
1.4
1.6
5.6
1.2
1.5
2.5
<0.007
0.36
0.36
<0.007
0.98
6.9
13
毒 性 等 量 (TEQ)
TEF (pg-TEQ/m 3 )
x0.0001
x0.0001
x0.1
x0.01
0.00012
0.00014
0.14
0.016
0.16 1)
x0.0001
0.00012
x0.0005
0.00075
x0.0001
0.00025
x0.0001 <3.5x10 -7 >
x0.0005
0.00018
x0.0005
0.00018
x0.00001 <3.5x10 -8 >
x0.0001
0.000098
0.0016 2)
0.16 3)
全 毒 性 等 量 (TEQ)
0.21
1)全 ノ ン オ ル ト PCBsに お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 に つ い て 、 JISZ8401に よ り 数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
2)全 モ ノ オ ル ト PCBsに お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 に つ い て 、 JISZ8401に よ り 数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
3)全 コ プ ラ ナ PCBsに お い て 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 全 て の 合 計 に つ い て 、
JIS-Z8401に よ り 数 値 を 有 効 数 字 2桁 で 丸 め て 算 出 し て い る 。
(#) 内の番号は IUPAC No.; ( ) 内は定量下限値未満、検出下限値以上 ; < > 内は見積もり毒性等量
定量下限値 : Te-,PeCDD/CDF =0.01; Hx-,HpCDD/CDF =0.02; OCDD/CDF =0.04; Co-PCB =0.02(pg/m 3 )
検出下限値 : Te-,PeCDD/CDF =0.003; Hx-,HpCDD/CDF =0.007; OCDD/CDF =0.01; Co-PCB =0.007(pg/m 3 )
6
測定方法の精度管理の概要
測定値の信頼性を確保するためには、適切な精度管理を行う必要がある。精度管理の詳
細については次節に記す。図2に精度管理の概要のフローを示す。
7
測定方法の採用のための評価
本マニュアルは、ダイオキシン類に対してすでに開発された実績のある測定方法のうち、
検証試験によってその基本的性能が確認できた測定方法を提示したものである。しかし、
新規に開発されたり、本マニュアルには採用されていないが一般に用いられており、本マ
ニュアルに示した測定方法と同等の性能を有する方法は有効に活用されるべきである。
しかし、今後採用される方法としては、以下に示す事項について十分な検討がなされる
必要がある。
- 12 -
試料採取・前処理
各種装置等の事前評価
およびSOPsの作成
操作ブランク値(a)等による
定量下限値(b)の算出
*1
定量下限値
(b)と目標定量下限
値(c)との
比較
b≦c
b>c
メソッドの
見直し
機器の調整等
試料採取開始
(トラベルブランク、2重測定
試料等の採取を含む)
前処理操作
(抽出、クリーンアップ等)
機器分析開始
再分析
*2
分析機器の感
度、保持時間等の検量
線作成時から
の変動
≦20%
>20%
機器測定条件
の再調整
サンプ
リング回収率(Rs)の
評価
130>Rs>70
50>Rc
120<Rc
再捕集
70>Rs,130<Rs
再捕集
クリーン
アップ回収率(Rc)の
評価
120>Rc>50
測定値(d)
トラ
ベルブランク
値(e)と操作ブラ
ンク値(a)と
の比較
e>a
トラベルブランク値
(e)による定量下
限値(f)の算出
d<10s
e≒a
>30%
2重測
定における測定値と
の比較
≦30%
測定値(d)より操作ブラ
ンク値を差し引いて
濃度を算出(d−a)
トラベル
ブランク値によ
る定量下限値(f)と目標
定量下限値(c)と
の比較
f>c
測定値
(d)とトラベル
ブランクから算出した定
量下限値(10s)と
の比較
f≦c
d≧10s
測定値(d)よりトラベル
ブランク値(e)を差し引
いて濃度を算出(d−e)
毒性等量の算出
報告書の作成
*1 目標定量下限値;
原則としてダイオキシン類に対して基準値(TEQ濃度)の1/10が定量できること
*2 分析機器の感度変動;
①一連の測定における感度変動は検量線作成時の感度に対して20%以内であること。
②各塩素化合物の2つのモニタリングイオンのピーク面積比が標準物質のものと
ほぼ同じであり、同位体の天然存在比に対して±15%以内であること。
図2 精度管理の概要
- 13 -
(1) 試 料 採 取
a) 代 表 サ ン プ ル の 安 定 し た 採 取 が 行 わ れ る か 。
b) 低 沸 点 成 分 の ロ ス が な い か 。
c) 採 取 容 器 類 か ら の 試 料 の 回 収 は 十 分 か 。
d) 器 具 類 及 び 現 場 の 大 気 、 ダ ス ト 等 か ら の 汚 染 は な い か 。
(2) 前 処 理 (抽 出 )
a) 様 々 な 状 況 に 応 じ て 抽 出 効 率 が 良 く 、 安 定 し た 方 法 で あ る か 。
b) 添 加 し た 1 3 Cや 3 7 Clラ ベ ル 化 し た 内 標 準 物 質 の 回 収 は 十 分 か 、 ま た 実 際 の 試 料 中 に 存
在する測定対象成分の抽出効率は十分か。
(3) 前 処 理 (ク リ ー ン ア ッ プ )
a) 試 薬 ・ 器 具 の ブ ラ ン ク 値 の 確 認 。
b) 各 ク リ ー ン ア ッ プ の 溶 出 条 件 の 確 認 。
c) 確 実 で 効 果 的 に ク リ ー ン ア ッ プ で き る か 。
d) 実 試 料 で 確 認 さ れ る 可 能 性 の あ る 妨 害 成 分 の 影 響 を 分 離 ・ 除 去 で き る か 。
(4) GC-MS分 析
a) 塩 素 置 換 異 性 体 の Isomer specific analysis を 行 う こ と が で き る か 。
b) キ ャ ピ ラ リ -カ ラ ム の 異 性 体 分 離 能 は 良 い か 。 異 性 体 ・ 同 族 体 の 重 な り に 対 し て 対 処
できるか。
c) GC-MS装 置 の 校 正 、 試 料 の 濃 度 範 囲 と 定 量 可 能 範 囲 (検 量 線 )の 応 答 性 。
d) 装 置 の 絶 対 感 度 と 感 度 の 変 動 (ド リ フ ト )。
e) 高 分 解 能 質 量 分 析 計 (HRMS)の 使 用 分 解 能 が M/△ M> 10,000で あ る か 。
(5) 同 定 ・ 定 量
a) 操 作 ブ ラ ン ク 値 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 。
b) 検 出 下 限 値 及 び 定 量 下 限 値 。
c) 同 一 試 料 に つ い て の 再 現 性 。
d) 採 取 試 料 、 ブ ラ ン ク 試 料 の 安 定 性 。
また、本マニュアルに示す分析精度の各管理目標を満たし、かつ、システム全体として
50% 以 内 の 誤 差 で 精 度 が 確 保 さ れ る 必 要 が あ る 。 更 に 複 数 の 機 関 に よ る 検 証 試 験 の 結 果 が
公表され、ダイオキシン類に対する測定方法として広く認められることが望ましい。
8
安全管理
8.1
管理区域
ダイオキシン類は非常に有害であるので、全てその取り扱いは下記に示す実験室を有す
る管理区域内で行い、吸引や直接皮膚への接触を避け、かつ前処理室や分析室の換気及び
廃液や廃棄物の管理は十分に行う。
- 14 -
(1) 実 験 室
実 験 室 は 、 前 室 、 前 処 理 室 、 測 定 室 等 の よ う に 役 割 毎 に 2∼ 3の エ リ ア に 仕 切 っ て 行 う こ
と 。 各 エ リ ア は 、 室 内 圧 力 を -2 ∼ -5 mmAq以 下 の 負 圧 に 保 ち 、 室 内 の 空 気 が 外 部 に 漏 れ な
いようにする。
(2) 実 験 室 へ の 出 入
実験室への出入は、関係者に限定し、実験室のドアに関係者以外立入禁止の表示を行う。
(3) 実 験 室 の 排 気 、 排 水
実験室の換気は、排気装置やドラフトチャンバー等により行い、排気された空気は活性
炭フィルター等の処理装置により処理した後、排出する。
実験室からの排水は、活性炭処理槽等を通して有害物質を除去した後、排出する。
8.2
安全作業基準
ダイオキシン類の分析だけでなく、分析に使用する薬品、溶媒等は吸引や飲み込みによ
り分析者の健康を損なうものがあるので、取り扱いは慎重に行う。
(1) 実 験 室 で の 業 務
実験室内では専用の実験衣を着用し、作業中は手袋や安全眼鏡等を用いる。
(2) 標 準 物 質 の 取 り 扱 い
全ての標準物質、標準溶液の目録を作成し、全ての標準物質、標準溶液は二重栓容器に
入れ、冷蔵庫に保管する。
(3) 試 料 の 取 り 扱 い
分析用試料は密封して保管し、濃縮した抽出液は密閉できる容器に入れて冷蔵保管する。
(4) 廃 棄 物 の 処 理 ・ 保 管
有害化学物質測定に伴い発生する廃棄物は、安全の確認されているものを除いて管理区
域 外 に 持 ち 出 さ な い 。 有 害 固 形 廃 棄 物 (手 袋 、 マ ス ク 、 紙 タ オ ル 、 活 性 炭 フ ィ ル タ ー 等 )は 、
密 封 可 能 な 容 器 に 入 れ て 保 管 し 、 有 害 液 体 廃 棄 物 (廃 溶 剤 や 真 空 ポ ン プ の 廃 オ イ ル 等 )は 専
用の密封容器に入れて保管する。
(5) 作 業 記 録
①実験室立入者の記録、②分析従事者の作業時間等の作業日報への記録、③標準溶液に
ついて物質名、数量、濃度、入手先、供与先及び使用状況の記録、④廃棄物の保管状況や
処理状況の記録、⑤その他必要と考えられる事項の記録を行う。
(6) 健 康 診 断
有機溶媒等を使用するため労働安全衛生法に定められた特定化学物質に係る定期的健康
診断の実施とダイオキシン類等の影響に対する、血清中のトリグリセライド、コレステロ
ール等についての診断を実施する。
- 15 -
第2節
分析精度の管理
本マニュアルで対象とするダイオキシン類の測定分析は、超高感度分析が要求されるば
かりでなく、塩素置換異性体の多数の同族体を分離・定量するので、極めて高度な精度・
確度が要求されるため、分析精度の管理を十分に行う必要がある。
分 析 精 度 の 管 理 は 、 標 準 作 業 手 順 (SOP)の 作 成 、 メ ソ ッ ド ・ バ リ デ ー シ ョ ン (分 析 方 法 の
妥 当 性 、 器 具 、 装 置 の 性 能 の 評 価 と 維 持 管 理 )及 び シ ス テ ム 適 合 性 試 験 (測 定 値 の 信 頼 性 の
評 価 )に よ っ て 行 わ れ 、 実 際 の モ ニ タ リ ン グ に 先 立 っ て そ の 妥 当 性 に つ い て 検 証 し 、 か つ 、
定 期 的 (通 常 、 毎 日 )に 実 施 す る こ と が 望 ま れ る 。
1
標 準 作 業 手 順 (SOP)
試験機関においては以下の項目について作業手順を設定しておく。この作業手順は具体
的で分かりやすいこと、及び関係者に周知徹底しておくことが必要である。
(1) 試 料 採 取 及 び 前 処 理 用 試 薬 類 の 準 備 、 精 製 、 保 管 及 び 取 り 扱 い 方 法 。
(2) 分 析 用 試 薬 、 標 準 物 質 等 の 準 備 、 標 準 溶 液 の 調 製 、 保 管 及 び 取 り 扱 い 方 法 。
(3) 試 料 採 取 装 置 の 組 み 立 て や 、 機 器 、 器 具 の 校 正 、 操 作 方 法 。
(4) 分 析 機 器 の 測 定 条 件 の 設 定 、 調 整 、 操 作 手 順 。
(5) 測 定 方 法 全 工 程 の 記 録 (使 用 す る コ ン ピ ュ ー タ の ハ ー ド 及 び ソ フ ト を 含 む )。
2
器具・装置の性能の評価と維持管理
2.1
試料採取
試料採取に必要な器具類、材料及び試薬等は、あらかじめ測定に妨害を及ぼすことがな
い こ と を 確 認 す る と と も に 、 ブ ラ ン ク 値 を 可 能 な 限 り 低 減 し 、 目 標 定 量 下 限 値 (表 1 参 照 )
に相当する量を超えないように配慮する。
試料採取に当たっては、常に同一の品質を維持するために、器具類、材料及び試薬等の
管理方法について規格化しておき、その規格についての説明ができるようにしておく。
2.1.1
試料採取用機材の準備と保管
使用する石英繊維ろ紙はあらかじめ加熱等により、ポリウレタンフォームはソックスレ
抽出または超音波抽出により、それぞれブランク値を低減してから使用する。特に洗浄後
から試料採取までの保管において、周辺空気からの汚染等が無いよう密閉して保管する。
2.1.2
試料採取装置と試料の保管・運搬
各試料採取装置に使用する器具・部品等は洗浄し、器具等からの汚染を十分に低減する。
試料採取に当たっては、採取装置各部を固定し、気密性を点検し、装置の漏れが無いこと
- 16 -
を確認する。フィルタ捕集部は遮光する。採取後の試料の保管は周囲空気からの汚染や、
周囲への漏洩を防ぐために密閉して保管する。また、試料の保管・運搬時も遮光する。
2.1.3
試料採取の信頼性の確保
試料採取においては、目的とする試料に対して代表サンプルの採取が適切に行われるも
の で な け れ ば な ら な い 。 ま た 、 採 取 後 の 試 料 か ら PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ PCBsが 十 分 に 回 収
できることが大切である。
試 料 採 取 は 、 24時 間 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 し 、
1,000m 3 程 度 を 採 取 す る 。 週 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取
す る 操 作 を 7回 繰 り 返 し て 行 う か 、 100 ç /min程 度 の 中 流 量 で 7日 間 の 連 続 採 取 を 行 い 、
1,000m 3 程 度 を 採 取 す る 。
試料採取に用いる流量計は、所定の基準流量計を用いて定期的に校正を行い、必要に応
じて流量校正曲線を作成する。
2.2
前処理操作の信頼性の確保
前 処 理 終 了 後 、 試 料 溶 液 に 着 色 が 無 く ,不 溶 性 成 分 が 目 視 で 確 認 で き な い 状 態 ま で 十 分 に
クリーンアップを行う。着色していたり、残さが認められる場合には、キャピラリーカラ
ムにおける成分の分離能の低下、装置のイオン源の汚染に伴う感度変動等による精度の低
下、さらに質量校正用標準物質による正確なチューニングの妨害等の原因となる。
2.2.1
ソックスレ抽出
ろ紙が非常に湿っている場合には、抽出効率が悪くなるので、アセトンで十分水分を取
り除き、このアセトンも最終的に抽出液に加えて抽出する。あるいは水分除去機能を有す
る 抽 出 器 (例 え ば 、 ソ ッ ク ス レ /デ ィ ー ン ス タ ー ク 型 抽 出 器 )を 用 い て 抽 出 を 行 う 。
2.2.2
硫酸処理
抽出液の着色が完全に無くなることを確認する。
2.2.3
シリカゲルカラムクロマトグラフィ
カラムクロマトグラフィにおいて、分画条件は使用する充てん剤の種類や活性度、ある
いは溶媒の種類及び量によって異なるので、あらかじめ標準物質等の分画試験を行って条
件を決めなければならない。
2.2.4
多層シリカゲルカラムクロマトグラフィ
フライアッシュ抽出液のように全異性体が含まれたものを用いて、分画試験を行って溶
- 17 -
出位置を確認しておく。
2.2.5
アルミナカラムクロマトグラフィ
アルミナの極性は製造ロットや開封後の保存状態及び保存期間によってかなり変化が認
め ら れ る 。 活 性 の 低 下 し た も の で は 、 コ プ ラ ナ PCBs、 特 に # 81、 1,3,6,8-TeCDD及 び 1,3,6,
8-TeCDF等 が 第 1分 画 に 溶 出 す る 場 合 が あ る 。 ま た 八 塩 化 物 が 50%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有
ヘキサンの規定量では溶出しない場合もあり、これらについても分画試験で確認する。
2.2.6
活性炭カラム高速液体クロマトグラフィ
試料注入時に注入口等での試料の汚染の起こらないよう洗浄等に十分注意する。
分画試験で操作条件を前もって確認しておく。
2.2.7
活性炭埋蔵シリカゲルカラムクロマトグラフィ
ジ ク ロ ロ メ タ ン -ヘ キ サ ン に よ る 妨 害 物 質 の 除 去 及 び ト ル エ ン に よ る PCDDs/PCDFsと ノ ン
オ ル ト PCBsの 溶 離 が 確 実 に 行 わ れ て い る か ど う か を 分 画 試 験 で 前 も っ て 確 認 す る 。
2.3
機器測定
PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ PCBsは 多 数 の 異 性 体 が 存 在 す る の で 、 高 感 度 、 高 選 択 的 に 測 定 す
る た め に は 、 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 計 (HRGC-HRMS)を 用 い る 。
2.3.1
標準物質及び内標準物質
測定値は、採取試料と標準物質の測定結果を比較することによって得られるため、測定
値の信頼性を確保するためには、可能な限りトレーサビリティの保障された標準物質を用
いる必要がある。
PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsを 内 標 準 法 に よ り 同 定 及 び 定 量 す る 標 準 物 質 及 び 内 標 準 物
質 の 例 を 表 6 に 示 す 。 (注 1 )。
内標準物質は以下の操作を確認するために用いる。
①
試料採取の結果を確認するために用いるサンプリングスパイク。
②
前処理操作の結果を確認するために用いるクリーンアップスパイク。
③
GC-MSへ の 試 料 液 の 注 入 を 確 認 す る た め に 用 い る シ リ ン ジ ス パ イ ク 。
したがって、サンプリングスパイク、クリーンアップスパイク、シリンジスパイクはそ
れぞれ別の安定同位体標識の異性体を用いる。
サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク と し て は 、 例 え ば 、 揮 発 性 が 比 較 的 高 い 4塩 化 物 の 安 定 同 位 体 標 識
化合物のうち、毒性の低い
13
C 1 2 -1,2,3,4-TeCDD等 を 用 い る 。
クリーンアップ用の内標準物質として全ての化合物に対してその安定同位体標識化合物
- 18 -
を用いることが望ましいが、少なくとも各塩素数毎に最低1種類ずつ添加する。
PCDDs/PCDFsで は 1 3 C 1 2 -2,3,7,8-位 塩 素 置 換 PCDDs、 PCDFsを 用 い る 。 コ プ ラ ナ PCBsに つ い
て は ノ ン オ ル ト PCBsは 4 種 全 て を 使 用 し 、 モ ノ オ ル ト PCBsに つ い て は 各 塩 素 化 物 1 種 類 以
上を用いる。
表6 ダイオキシン類の標準物質と内標準物質の例
a) PCDDs及 び PCDFsの 標 準 物 質 の 例
同族体
PCDDs
PCDFs
四塩化物
2,3,7,8-TeCDD
2,3,7,8-TeCDF
五塩化物
1,2,3,7,8-PeCDD
1,2,3,7,8-PeCDF
2,3,4,7,8-PeCDF
六塩化物
1,2,3,4,7,8-HxCDD
1,2,3,6,7,8-HxCDD
1,2,3,7,8,9-HxCDD
1,2,3,4,7,8-HxCDF
1,2,3,6,7,8-HxCDF
1,2,3,7,8,9-HxCDF
2,3,4,6,7,8-HxCDF
七塩化物
1,2,3,4,6,7,8-HpCDD
1,2,3,4,6,7,8-HpCDF
1,2,3,4,7,8,9-HpCDF
八塩化物
1,2,3,4,6,7,8,9-OCDD
1,2,3,4,6,7,8,9-OCDF
b) PCDDs及 び PCDFsの 内 標 準 物 質 の 例
同族体
PCDDs
PCDFs
13
13
四塩化物
13
13
五塩化物
13
C 1 2 -1,2,3,4-TeCDD
C 1 2 -1,3,6,8-TeCDD
13
C 1 2 -2,3,7,8-TeCDD
37
Cl 4 -2,3,7,8-TeCDD
C 1 2 -2,3,7,8-TeCDF
C 1 2 -1,3,6,8-TeCDF
13
C 1 2 -1,2,7,8-TeCDF
C 1 2 -1,2,3,7,8-PeCDD
13
13
13
C 1 2 -1,2,3,4,7,8-HxCDD
C 1 2 -1,2,3,6,7,8-HxCDD
13
C 1 2 -1,2,3,7,8,9-HxCDD
六塩化物
13
七塩化物
13
C 1 2 -1,2,3,4,6,7,8-HpCDD
13
C 1 2 -1,2,3,4,7,8-HxCDF
C 1 2 -1,2,3,6,7,8-HxCDF
13
C 1 2 -1,2,3,7,8,9-HxCDF
13
C 1 2 -2,3,4,6,7,8-HxCDF
13
13
13
八塩化物
13
C 1 2 -1,2,3,4,6,7,8,9-OCDD
- 19 -
C 1 2 -1,2,3,7,8-PeCDF
C 1 2 -2,3,4,7,8-PeCDF
13
C 1 2 -1,2,3,4,6,7,8-HpCDF
C 1 2 -1,2,3,4,7,8,9-HpCDF
C 1 2 -1,2,3,4,6,7,8,9-OCDF
c) コ プ ラ ナ PCBsの 標 準 物 質 、 内 標 準 物 質 の 例
塩素置換体
標準物質
内標準物質
IUPAC
No.
ノ ン オ ル ト PCBs
3,3',4,4'-TeCB
3,4,4',5-TeCB
13
五塩化物
3,3',4,4',5-PeCB
六塩化物
3,3',4,4',5,5'-HxCB
四塩化物
C 1 2 -3,3',4,4'-TeCB
C 1 2 -3,4,4',5-TeCB
# 77
# 81
13
C 1 2 -3,3',4,4',5-PeCB
#126
13
C 1 2 -3,3',4,4',5,5'-HxCB
#169
13
モ ノ オ ル ト PCBs
2,3,3',4,4'-PeCB
2,3,4,4',5-PeCB
2,3',4,4',5-PeCB
2,3,4,4',5-PeCB
13
C 1 2 -2,3,3',4,4'-PeCB
C 1 2 -2,3,4,4',5-PeCB
13
C 1 2 -2,3',4,4',5-PeCB
13
C 1 2 -2,3,4,4',5-PeCB
#105
#114
#118
#123
13
六塩化物
2,3,3',4,4',5-HxCB
2,3,3',4,4',5'-HxCB
2,3',4,4',5,5'-HxCB
C 1 2 -2,3,3',4,4',5-HxCB
C 1 2 -2,3,3',4,4',5'-HxCB
13
C 1 2 -2,3',4,4',5,5'-HxCB
#156
#157
#167
七塩化物
2,3,3',4,4',5,5'-HpCB
13
#189
五塩化物
13
13
C 1 2 -2,3,3',4,4',5,5'-HpCB
シリンジスパイクには、サンプリングスパイクやクリーンアップスパイクで使用した
以 外 の 内 標 準 物 質 を 用 い る 。 例 え ば 、 PCDDs/PCDFsで は 、 3 7 Cl 4 -2,3,7,8-TeCDD、 1 3 C 1 2 1,2,3,4,7,8,9-HpCDFが 用 い ら れ る 。 コ プ ラ ナ PCBsで は 、 1 3 C 1 2 -2,3,4,4',5-PeCBが 用 い ら
れ る が 、 PCDDs/PCDFsと 同 じ も の を 用 い て も よ い 。
しかし、これらの内標準物質は、質量分析計の設定分解能によっては分析に妨害を与え
る場合があるので、その使用に際しては妨害しない条件を十分に検討・確認しておく。
2.3.2
分析機器の調整
使用する分析機器は目的に応じて測定条件を設定し、試料の測定が可能なように機器を
調整する。この際、感度の直線性、安定性等の他、測定の誤差となる干渉の有無の大きさ、
その補正法等、十分信頼できる分析ができるかどうか確認しておく。
(1) M S の チ ュ ー ニ ン グ
MSに 質 量 校 正 用 標 準 物 質 を 導 入 し 、 MSの 質 量 校 正 用 プ ロ グ ラ ム 等 に よ り マ ス パ タ ー ン 及
び 分 解 能 (10,000以 上 、 10%Valley)等 の 校 正 を 行 う と 共 に 、 装 置 の 感 度 等 の 基 本 的 な チ ェ ッ
クを行う。この際、チューニング結果を記録して保管する。
- 20 -
(2) G C の 調 整
カラム槽温度、注入口温度、キャリアーガス流量等の条件を設定し、応答が安定してい
ること、各塩化物の保持時間が適切な範囲にあり、かつ、ピークが十分に分離されている
こと等を確認する。スプリットレスの時間、パージガス流量等を適切な値に設定する。
キャピラリーカラムは、分析対象成分と他成分との分離が十分でない場合には新品と交
換 す る 。 た だ し 、 キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム を 300mm程 度 切 断 (両 端 ま た は 片 端 )す る 事 に よ り 分 析
対象物質と他成分との分離に問題がなくなれば交換しなくても良い。
(3) GC-MS装 置 の 操 作 条 件
キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム に よ っ て 得 ら れ る ピ ー ク の 幅 は 、 5∼ 10秒 程 度 で あ る が 、 ピ ー ク を 構
成 す る デ ー タ ポ イ ン ト を 確 保 す る た め に は SIM法 に お け る 周 期 は 最 大 で も 1秒 以 下 に し な け
れ ば な ら な い 。 1回 の 分 析 で 設 定 可 能 な モ ニ タ ー チ ャ ン ネ ル の 数 は 、 要 求 さ れ る 感 度 と の 兼
ね合いとなるので十分に検討した上で設定する必要がある。
クロマトグラム上の各ピークの保持時間を考慮して、時間分割によるグルーピング方式
によって分析しても良いが、この場合には各グループ毎に、適切な内標準物質ピークが出
現するように条件の設定を行う必要がある。
(注 1 )標 準 溶 液 や 内 標 準 溶 液 と し て 市 販 の 混 合 溶 液 が あ る 。
例 え ば 、 PCDDs/PCDFsで は 、 Cambridge Isotope Laboratories(米 国 )か ら 、
混 合 標 準 溶 液 (50± 5μ g/ ã ノ ナ ン 溶 液 )と し て 、
EDF-949 Native Quantifying Cocktail(2,3,7,8-PCDD/PCDF Isomers)
内 標 準 溶 液 (50± 5μ g/ ã ノ ナ ン 溶 液 )と し て 、
EDF-957 Carbon-13 Quantifying Cocktail(2,3,7,8-PCDD/PCDF Isomers)
あ る い は 、 Wellington Laboratories(関 東 化 学 販 売 )か ら 、
混 合 標 準 溶 液 (CILの EDF-949に 相 当 )
NK-ST-E; Native Stock E (Native PCDDs & PCDFs)
内 標 準 溶 液 (CILの EDF-957に 相 当 )
NK-LCS-H; Labeled Compound Solution H (Labeled PCDDs & PCDFs)
ま た 、 コ プ ラ ナ PCBsに 関 し て は 、 AccuStandard社 (関 東 化 学 )か ら 、
各 異 性 体 毎 の 標 準 液 (100μ g/ ã イ ソ オ ク タ ン 溶 液 )
ま た CSL/Wellington社 (関 東 化 学 )か ら 、
各 異 性 体 毎 の 内 標 準 溶 液 (50μ g/ ã ノ ナ ン 溶 液 )が 入 手 で き る (備 考 1 )
な お 、 PCBsは 化 審 法 の 第 1種 特 定 化 学 物 質 に 指 定 さ れ て お り 、 購 入 に あ た っ て 経 済 産 業 大 臣 の 許
可が必要になるため、入手には数ヶ月を要する。
(備 考 1 )こ こ に 示 す 商 品 は 、 こ の マ ニ ュ ア ル の 使 用 者 の 便 宜 の た め に 、 一 般 に 入 手 で き る も の
- 21 -
として掲げたが、これを推奨するものではない。これと同等以上の品質、性能のものを用いて
もよい。
3
測定の信頼性の評価
3.1
装置の感度変動
1日 1回 以 上 、 定 期 的 に 検 量 線 の 中 間 程 度 の 濃 度 の 標 準 溶 液 を 測 定 し て 、 内 標 準 物 質 の 感
度が検量線作成時に比べ大きく変動していないことを確認する。また、ダイオキシン類の
各 塩 素 置 換 体 と 内 標 準 物 質 の 相 対 感 度 の 変 動 が 、 検 量 線 作 成 時 の 相 対 感 度 に 比 べ て ± 20%以
内にあることを確認し、この範囲を超えて変動する場合には、その原因を取り除き、それ
以前の試料の再測定を行う。更に保持時間については、分離カラムの劣化等の場合のよう
に徐々に保持時間が変動する場合には、必要に応じて対応をとればよいが、比較的短い間
に 変 動 (通 常 、 1日 に 保 持 時 間 が ± 5%以 上 、 内 標 準 物 質 と の 相 対 保 持 比 が ± 2%以 上 )す る 場 合
には、その原因を取り除き、それ以前の試料の再測定を行う。
3.2
検量線の検定
各塩化物標準物質の濃度とピーク面積について内標準物質との比の関係から検量線を作
成 し 、 次 式 に よ り 相 対 感 度 係 数 (RRF; Relative Response Factor)を 算 出 す る 。
Cis
RRF =
As
Cis: 標 準 溶 液 中 の 内 標 準 物 質 の 濃 度
Cs : 標 準 溶 液 中 の 分 析 対 象 物 質 の 濃 度
As : 標 準 溶 液 中 の 分 析 対 象 物 質 の ピ ー ク 面 積
Ais: 標 準 溶 液 中 の 内 標 準 物 質 の ピ ー ク 面 積
×
Cs
Ais
検 定 用 の 検 量 線 の 作 成 で は 、 1つ の 濃 度 に 対 し て 最 低 3回 の 分 析 を 繰 り 返 し て 行 い 、 全 濃
度 領 域 で は 合 計 で 15点 の デ ー タ を 得 る 。 こ れ ら の デ ー タ か ら 算 出 さ れ る RRFは 、 分 析 し た 全
ての濃度でばらつきがない、すなわち、変動係数が5%以内に収まるように、装置等の設
定条件をあらかじめ検討する必要がある。
最小二乗法による一次直線回帰式の切片が限りなく0に近づくようにする。
定常的な検量線の検定は、検量線作成時に実試料を同時に分析して得た試料を標準とし
て常に同時に分析して行う。もしその定量結果に誤差が生じるときには装置の調整に問題
があるので検討し、再度検量線の検定及び試料を分析する。
3.3
検出下限値、定量下限値の測定
検出下限値及び定量下限値については、以下の3種類について測定する。
(1)
装 置 の 検 出 下 限 値 (ADL)及 び 定 量 下 限 値 (AQL)
検 量 線 作 成 時 の 最 低 濃 度 (定 量 下 限 付 近 )(注 2 )の 標 準 溶 液 を G C /M S に 注 入 し 、 得 ら れ
- 22 -
た 測 定 値 か ら 通 常 の 試 料 を 採 取 し た 場 合 の 最 終 液 量 、 吸 引 ガ ス 量 を 用 い て PCDDs/PCDFs及 び
コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 試 料 ガ ス 濃 度 を 算 出 す る 。 こ れ を 5 回 以 上 測 定 し て 求 め た
標 準 偏 差 (s a )か ら 次 式 に よ り PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 検 出 下 限 値
(ADL)及 び 定 量 下 限 値 (AQL)を 算 出 す る 。 た だ し 、 操 作 ブ ラ ン ク 値 の あ る 場 合 に は 操 作 ブ ラ
ンク値を測定し、標準溶液と操作ブランク値測定の内、大きい方の標準偏差を用いて計算
す る 。 こ の 測 定 は 機 器 の 分 析 条 件 を 設 定 し た 場 合 な ど 必 要 に 応 じ て 必 ず 1回 以 上 行 う 。
(2)
検 出 下 限 値 (ADL)
=
3s a (pg/m 3 )
定 量 下 限 値 (AQL)
=
10s a (pg/m 3 )
測 定 方 法 の 検 出 下 限 値 (MDL)及 び 定 量 下 限 値 (MQL)
試料測定に用いるのと同量のフィルター及びポリウレタンフォームからの抽出液に、
第 3 節 7.1の 各 塩 素 置 換 体 濃 度 の 算 出 式 に お い て 、 試 料 ガ ス 濃 度 に (1)の 装 置 の 定 量 下 限 値
(AQL)を 代 入 し て 逆 算 さ れ る Qs(ng)に 相 当 す る 標 準 物 質 を 添 加 し ( Qt=0と す る ) 、 ク リ ー ン
ア ッ プ 後 、 GC-MS測 定 を 行 う 。 得 ら れ た 測 定 値 か ら 通 常 の 試 料 を 採 取 し た 場 合 の 最 終 液 量 、
吸 引 ガ ス 量 を 用 い て PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 試 料 ガ ス 濃 度 を 算 出 す
る 。 こ れ を 5 回 以 上 行 っ た 時 の 標 準 偏 差 (s m )か ら 次 式 に よ り PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PC
Bsの 各 塩 素 置 換 体 の 検 出 下 限 値 (MDL)及 び 定 量 下 限 値 (MQL)を 算 出 す る 。 こ の 測 定 方 法 の 検
出下限値及び定量下限値は、前処理操作及び測定条件によって変動するため、ある一定の
周期で確認し、常に十分な値が得られるように管理する。また、前処理操作及び測定条件
を変更した時には必ず確認する。
(3)
検 出 下 限 値 (MDL)
=
3s m (pg/m 3 )
定 量 下 限 値 (MQL)
=
10s m (pg/m 3 )
試 料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)及 び 定 量 下 限 値 ( SQL)
試 料 測 定 の ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に お い て 、 ピ ー ク の 近 傍 ( ピ ー ク の 半 値 幅 の 10倍 程 度 の 範
囲 ) の ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ を 計 測 し 、 そ の 標 準 偏 差 の 2 倍 を ノ イ ズ 幅 (N)と す る か 、 経 験
的 に ノ イ ズ の 最 大 値 と 最 小 値 と の 幅 は お よ そ 標 準 偏 差 の 5 倍 と な る た め 、 そ の 幅 の 2/5 を
ノ イ ズ 幅 (N)と す る 。 一 方 、 ノ イ ズ の 中 央 値 を ベ ー ス ラ イ ン と し 、 ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ を
基 に ピ ー ク ト ッ プ を 決 め て こ の 幅 を ピ ー ク 高 さ (S)と す る 。 ノ イ ズ 幅 に 対 し て 3 倍 (S/N
= 3)に 相 当 す る 高 さ に 相 当 す る ピ ー ク の 面 積 を 標 準 液 の ク ロ マ ト グ ラ ム か ら 推 定 す る 。 そ
の ピ ー ク 面 積 を 用 い て 定 量 式 よ り Qsを 求 め 、 7.1の 塩 素 置 換 体 濃 度 の 算 出 式 に 代 入 し て 、 試
料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)を 算 出 す る ( Qt=0と す る ) 。
同 様 に し て ノ イ ズ 幅 の 10倍 (S/N=10)に 相 当 す る 高 さ の ピ ー ク 面 積 を 推 定 し 、 そ の ピ ー ク
- 23 -
面 積 か ら 試 料 測 定 時 の 定 量 下 限 値 (SQL)を 算 出 す る 。
ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に お い て 、 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 の 中 で ピ ー ク の 検 出 さ れ な か っ
た も の に つ い て は 、 そ の 異 性 体 の ピ ー ク の 近 傍 の ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ (N)を 測 っ て 、 ノ イ
ズ 幅 を 求 め 、 上 と 同 様 に 試 料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)及 び 定 量 下 限 値 (SQL)を 算 出 す る 。
検出下限値や定量下限値は使用する測定機器や測定条件により異なるため、機器の分析
条 件 を 設 定 し た 場 合 等 、 必 要 に 応 じ て 1回 以 上 測 定 し 、 定 量 下 限 値 が 目 標 定 量 下 限 値 (表 1
参 照 )以 下 で あ る こ と を 確 認 す る 。 し か し 、 基 準 値 の 高 い も の で は 、 目 標 定 量 下 限 値 に 関 係
なく、将来の濃度変化を見るためには、定量下限値はできるだけ小さくして低濃度まで測
定 す る こ と が 望 ま し い 。 ま た 、 検 出 下 限 値 や 定 量 下 限 値 は 、 試 料 量 、 前 処 理 操 作 (濃 縮 比
等 )に よ り 異 な る た め 、 試 料 毎 に 算 出 す る 必 要 が あ る 。
3.4
操作ブランク値の測定
操作ブランク試験は、試験液の調製又は分析機器への導入操作等に起因する汚染を確認
し、試料の分析に支障のない測定環境を設定するために行うものである。
操作ブランク値が大きいと測定感度が悪くなるばかりでなく、定量下限値が大きくなっ
て測定値の信頼性が低下する。したがって、操作ブランク値は極力低減を図り、試料濃度
へ の 換 算 値 が 目 標 定 量 下 限 値 (表 1 参 照 )以 下 に な る よ う に 管 理 す る 。
本試験は、操作ブランク値を管理しておけば毎回行わなくてもよい。しかし、試料採取
における信頼性を確保するため、前もって操作ブランク値について十分検討しておき、必
要 に 応 じ て そ の デ ー タ が 提 示 で き る よ う に し て お く (注 3 )。
3.5
トラベルブランク値の測定
トラベルブランク試験は、試料採取準備時から試料分析時までの汚染の有無を確認する
ためのものであり、採取操作以外は試料と全く同様に扱い持ち運んだものを分析し、トラ
ベ ル ブ ラ ン ク 値 と す る 。 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 は 、 一 連 の 試 料 採 取 に お い て 試 料 数 の 10%程
度 の 頻 度 で 、 少 な く と も 3試 料 以 上 行 い 、 そ の 平 均 値 (e)及 び 標 準 偏 差 (s)を 求 め て 以 下 の よ
う に 測 定 値 の 補 正 を 行 う 。 (図 2 参 照 )
① ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 の 平 均 値 (e)(以 降 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 と い う )が 操 作 ブ ラ ン ク 値
(a)と 同 等 (等 し い か 、 小 さ い )と み な せ る (e≒ a)時 に は 、 移 送 中 の 汚 染 は 無 視 で き る も の と
し て 、 測 定 値 (d)か ら 操 作 ブ ラ ン ク 値 (a)を 差 し 引 い て 濃 度 を 計 算 す る 。
② 一 方 、 移 送 中 に 汚 染 が あ り ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 (e)が 操 作 ブ ラ ン ク 値 (a)よ り 大 き い (e
> a)場 合 に は 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 を 測 定 し た と き の 標 準 偏 差 (s)か ら 求 め た 定 量 下 限 値
(10s)の 試 料 濃 度 へ の 換 算 値 (毒 性 濃 度 )の 合 量 (f)が 目 標 定 量 下 限 値 (c)の 以 下 (f≦ c)の 時 は 、
測 定 値 (d)か ら ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 (e)を 差 し 引 い て 濃 度 を 計 算 す る 。
- 24 -
③ ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 に よ る 定 量 下 限 値 の 合 量 (f)が 目 標 定 量 下 限 値 (c)よ り 大 き く て も
(f> c)、 試 料 の 測 定 値 (d)が ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 に よ る 定 量 下 限 値 (10s)以 上 の 時 (d≧ 10
s)に は 、 測 定 値 (d)か ら ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 (e)を 差 し 引 い て 濃 度 を 計 算 す る 。
④ し か し 、 移 送 中 に 汚 染 が あ り (e> a)、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 に よ る 定 量 下 限 値 の 合 量
(f)が 目 標 定 量 下 限 値 (c)よ り 大 き く (f> c)、 し か も 試 料 の 測 定 値 (d)が ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値
に よ る 定 量 下 限 値 (10s)よ り 小 さ い (d< 10s)場 合 に は 、 測 定 値 の 信 頼 性 に 問 題 が あ る た め 、
原則として欠測扱いとする。このような場合には、汚染の原因を発見して取り除いた後、
再度試料採取を行う。
本試験は、トラベルブランク値を管理しておけば毎回行わなくてもよい。しかし、試料
採取における信頼性を確保するため、前もってトラベルブランク値について十分検討して
おき、必要に応じてそのデータが提示できるようにしておく。
移 送 中 に 汚 染 が 考 え ら れ る 場 合 (EP灰 等 に よ る 汚 染 )に は 必 ず 実 施 す る 。
3.6
2重測定
試料採取、前処理操作及び機器分析における総合的な信頼性を確保するために、同一条
件 で 採 取 し た 2つ 以 上 の 試 料 に つ い て 同 様 に 分 析 し 、 算 出 し た 2 つ の 全 毒 性 等 量 濃 度 の 差 が
平 均 値 の 30%以 下 で あ る こ と を 確 認 す る 。 こ の 判 定 基 準 値 (30%)よ り 大 き い 時 に は 測 定 値 の
信頼性に問題があるため、原則として欠測扱いとする(注4)。
管理基準を超した場合に、測定試料があれば前処理を含めて各々もう1回測定を繰り返
して測定する。再測定の結果が判定基準値以内であればその値を使用する。しかし、再測
定でも判定基準を超した場合には試料採取に問題がある恐れが高い。
このような場合には、捕集流量、系の漏れの有無、分析機器の安定性等種々の必要事項
についてチェック、改善した後、再度試料採取を行う。
本 試 験 は 、 大 気 試 料 の 採 取 に お い て 2重 測 定 用 の 試 料 採 取 が 不 可 能 な 場 合 に は 、 省 略 し て
もよい。しかし、試料採取における信頼性を確保するため、前もって試料採取について十
分検討しておき、必要に応じてそのデータが提示できるようにしておく。また、毎回測定
は困難であるため、試料採取法について管理しておけば毎回行わなくてもよいが、一連の
試 料 採 取 に お い て 試 料 数 の 10%程 度 の 頻 度 で 行 う 。
3.7
回収率測定
GC-MS分 析 の 直 前 に 回 収 率 測 定 の た め の シ リ ン ジ ス パ イ ク を 既 知 量 添 加 し 、 こ れ を も と に
内 標 準 法 で 使 用 し た ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク を 定 量 し 回 収 率 を 求 め る 。 回 収 率 が 50∼ 120%
の範囲内でない場合には、再度粗抽出液からクリーンアップをやり直す必要がある。
その結果、回収率が規定の範囲に達しない場合は、抽出操作に問題があるので原則とし
て欠測扱いとする。
- 25 -
また、クリーンアップスパイクを基にサンプリングスパイクを定量し、サンプリングの
回 収 率 を 求 め る 。 回 収 率 が 70∼ 130%の 範 囲 内 で な い 時 に は 、 測 定 の 信 頼 性 に 問 題 が あ る た
め、原則として欠測扱いとし、その原因を取り除いた後、再度試料採取を行う必要がある。
(注 2 )コ プ ラ ナ PCBsは ブ ラ ン ク 値 が 高 い 場 合 も あ り 、 し か も 一 定 し な い た め 定 量 下 限 値 が 変 動 す
る恐れがある。やや高めの濃度の標準溶液を用いることにより少し高めであるが一定の定量下限
値を得ても良い。
(注 3 )特 定 の 異 性 体 の み が 汚 染 さ れ た 時 は 、 原 則 と し て そ の デ ー タ は 使 用 で き な い 。 し か し 、 そ
の 異 性 体 を 除 い て 計 算 し た 時 の 値 と 元 の 値 の 差 が 元 の 値 の 30%以 下 で あ れ ば 、 そ の デ ー タ を 使 用
してもよい。
(注 4 )各 異 性 体 に つ い て は 、 定 量 下 限 以 上 の 2 つ の 測 定 値 が 平 均 値 の ± 30% 以 内 で あ る こ と を 確
認する。
4
データの管理及び評価
4.1
試料採取に関する留意事項
本マニュアルにおける試料採取は、試料の性状で異なっているが、いずれの試料でもそ
の試料が測定目的に合致し、測定する試料の環境を代表するものである必要がある。
試 料 採 取 は 、 24時 間 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 し 、
1,000m 3 程 度 を 採 取 す る 。 週 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 す
る 操 作 を 7回 繰 り 返 し て 行 う か 、 100 ç /min程 度 の 中 流 量 で 7日 間 の 連 続 採 取 を 行 い 、 総 吸 引
量 が 1,000m 3 程 度 と な る よ う に す る 。
4.2
異常値、欠測値の取り扱い
分析機器の感度の変動が大きい場合、トラベルブランク値が大きく試料の汚染の問題が
あ る 場 合 、 2重 測 定 の 結 果 が 大 き く 異 な る 場 合 等 は 、 測 定 値 の 信 頼 性 に 問 題 が あ る た め 、 再
測定を行ったり、欠測扱いとして再度試料の採取を行うこと等を示した。このような問題
が起こると、多大な労力、時間、コストがかかるだけでなく、異常値や欠測値が多くなる
と、調査結果全体の評価に影響するため、事前のチェックを十分に行う等、異常値や欠測
値を出さないように注意する。また、異常値や欠測値が出た経緯を十分に検討し、記録に
残して、以後の再発防止に役立てることが重要である。
4.3
測定操作の記録
以下の情報を記録し、整理・保管しておく。
(1) 試 料 採 取 に 使 用 す る 装 置 や 器 具 の 調 整 、 校 正 及 び 操 作 。
(2) 容 器 、 捕 集 用 フ ィ ル タ 、 ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム 等 の 準 備 、 取 り 扱 い 及 び 保 管 の 状 況 。
- 26 -
(3) 採 取 対 象 の 条 件 及 び 状 況 (採 取 方 法 、 採 取 地 点 、 採 取 日 時 )。
温度、湿度、風向風速等調査地点に関する詳細な各種情報。
(4) 試 料 採 取 条 件 。
採取流量、採取時間、採取空気量。
(5) 分 析 装 置 の 校 正 及 び 操 作 。
(6) 測 定 値 を 得 る ま で の 各 種 の 数 値 。
5
精度管理に関する報告
精度管理に関する以下の情報を記録し、データと共に報告する。
(1) SOPに 規 定 さ れ て い る こ と 。
a) 日 常 的 点 検 、 調 整 の 記 録 (装 置 の 校 正 等 )。
b) 標 準 物 質 等 の メ ー カ 及 び ト レ ー サ ビ リ テ ィ 、 分 析 機 器 の 測 定 条 件 の 設 定 と 結 果 。
(2) 検 出 下 限 値 及 び 定 量 下 限 値 の 測 定 結 果 。
(3) 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 及 び ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 の 結 果 。
(4) 試 料 採 取 、 前 処 理 操 作 等 の 回 収 試 験 の 検 証 結 果 。
(5) 分 析 機 器 の 感 度 の 変 動 。
(6) 測 定 操 作 記 録 (試 料 採 取 か ら 前 処 理 ・ 分 析 に 関 す る 記 録 )。
- 27 -
第3節
1
環境大気中のダイオキシン類の測定分析方法
測定方法の概要
環境大気中のダイオキシン類を石英繊維ろ紙及びポリウレタンフォームに捕集し、適切
な 抽 出 、 前 処 理 を 行 っ た 後 、 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 計 (HRGC-HRMS)を 用 い て
定量する。
2
試薬及び材料
分析に用いる試薬及び材料はブランク試験を行い、ダイオキシン類の分析に影響を及ぼ
す妨害成分が含まれていないことを確認してから使用する。
(1) ヘ キ サ ン 、 メ タ ノ ー ル 、 ア セ ト ン 、 ト ル エ ン 、 ジ ク ロ ロ メ タ ン : 残 留 農 薬 試 験 用 ま た は 残 留 PC
B試 験 用 。 分 析 時 の 濃 縮 倍 率 に 応 じ て 濃 縮 し た も の 1μ ç を GC-MSに 注 入 し た と き 、 ダ イ オ キ
シン類の標準物質及び内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。
(2) ノ ナ ン 、 デ カ ン 、 イ ソ オ ク タ ン : 試 薬 特 級 。 分 析 時 の 濃 縮 倍 率 に 応 じ て 濃 縮 し た も の 1 μç を
GC-MSに 注 入 し た と き 、 ダ イ オ キ シ ン 類 の 標 準 物 質 及 び 内 標 準 物 質 の ク ロ マ ト グ ラ ム に 妨 害
を生じないもの。
(3) ヘ キ サ ン 洗 浄 水 : 蒸 留 水 を ヘ キ サ ン で 十 分 洗 浄 し た も の 。
(4) 硫 酸 、 塩 酸 : 試 薬 特 級 又 は 同 等 以 上 の も の 。
(5) 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム : 残 留 農 薬 試 験 用 又 は 残 留 P C B 試 験 用 。
(6) 水 酸 化 カ リ ウ ム 、 硝 酸 銀 : 試 薬 特 級
(7) シ リ カ ゲ ル : カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 シ リ カ ゲ ル (ワ コ ー ゲ ル S-1(PCB分 析 用 )0.063∼
0.200mm、 70∼ 230mesh)(和 光 純 薬 工 業 )(備 考 1 )を メ タ ノ ー ル 洗 浄 後 、 ビ ー カ ー に 入 れ 、 層
の 厚 さ を 10mm以 下 に し て 、 130℃ で 約 18時 間 乾 燥 し て 活 性 化 し た 後 、 デ シ ケ ー タ 内 で 30分 間
放冷したもの。
(8) 2 %水 酸 化 カ リ ウ ム 被 覆 シ リ カ ゲ ル (以 後 水 酸 化 カ リ ウ ム シ リ カ ゲ ル と 略 称 ) : シ リ カ ゲ ル に
1 mol/ ç 水 酸 化 カ リ ウ ム 水 溶 液 を 2 %(w/w)に な る よ う に 加 え 、 ロ ー タ リ ー エ バ ポ レ ー タ で 約
50℃ で 減 圧 脱 水 し 、 水 分 の ほ と ん ど が 除 去 さ れ た 後 、 80℃ で さ ら に 1時 間 続 け て 粉 末 状 に し
たもの。調製後、密閉できる試薬瓶に入れデシケータ中に保存する。
(9) 44%及 び 22%硫 酸 被 覆 シ リ カ ゲ ル (以 後 硫 酸 シ リ カ ゲ ル と 略 称 ) : シ リ カ ゲ ル に 硫 酸 を 44%及
び 22%(w/w)に な る よ う に 添 加 後 、 十 分 振 と う し 粉 末 に し た も の 。 調 製 後 、 密 閉 で き る 試 薬
瓶に入れデシケータ中に保存する。
(10) 10%硝 酸 銀 被 覆 シ リ カ ゲ ル (以 後 硝 酸 銀 シ リ カ ゲ ル と 略 称 ) : シ リ カ ゲ ル 1g当 た り に 40%
(w/w)硝 酸 銀 (試 薬 特 級 )水 溶 液 を 0.25 ã 加 え た 後 、 ロ ー タ リ ー エ バ ポ レ ー タ で 水 分 を 完 全 に
除去したもの。調製中は褐色フラスコを使用し、極力遮光すること。調製後、密閉できる
褐色瓶に入れデシケータ中に保存する。
- 28 -
(11) ア ル ミ ナ : カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 ア ル ミ ナ : Aluminium oxide 90(塩 基 性 、 活 性 度 1)
70∼ 230mesh(メ ル ク 製 )(備 考 1 )。 あ ら か じ め 活 性 化 し た も の が 入 手 で き る 場 合 は 、 そ の ま
ま使用してもよいが、保存期間や保存状態により活性度が著しく異なるので、活性化した
方 が よ い 。 活 性 化 す る 場 合 に は 、 ビ ー カ ー に 層 の 厚 さ を 10mm以 下 に し て 入 れ 130℃ で 約 18時
間 乾 燥 、 も し く は 、 シ ャ ー レ に 層 の 厚 さ を 約 5mm程 度 に し て 入 れ 500℃ で 約 8時 間 加 熱 処 理 し
た後、デシケータ内で室温まで放冷する。調製後密閉できる試薬瓶中に保存する。
(12) 標 準 物 質 : 内 標 準 法 に よ る ダ イ オ キ シ ン 類 の 同 定 及 び 定 量 に 使 用 す る 標 準 物 質 は 第 Ⅰ
章 の 表 1-4の も の を 使 用 す る 。
(13) 標 準 溶 液 : 市 販 の 混 合 溶 液 を 用 い て 検 量 線 作 成 に 応 じ て 希 釈 し た も の を 用 意 す る 。
(14) 内 標 準 物 質 : 安 定 同 位 元 素 ( 1 3 Cや 3 7 Cl)で 標 識 化 さ れ た PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ PCBsを
用 い る (表 4 参 照 )(注 1 )。
(15) 内 標 準 溶 液 : 市 販 の 混 合 溶 液 を 用 い て 、 内 標 準 と し て 添 加 す る 量 及 び 検 量 線 作 成 に 応
じて希釈したものを用意する。
(注 1 )サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク 、 ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 、 シ リ ン ジ ス パ イ ク は そ れ ぞ れ 別 の 安 定
同位体標識の異性体を用いる。サンプリングスパイクとしては、例えば、揮発性が比較的高い4
塩化物の安定同位体標識化合物のうち、毒性の低い
13
C 1 2 -1,2,3,4-TeCDD等 を 用 い る 。 ク リ ー ン
アップ用の内標準物質として、全ての化合物に対してその安定同位体標識化合物を用いることが
望 ま し い が 、 少 な く と も 各 塩 素 数 ご と に 最 低 1種 類 ず つ 添 加 す る 。 PCDDs/PCDFsで は
13
C 1 2 -2,3,7,
8-位 塩 素 置 換 PCDDs、 PCDFsを 用 い る こ と 。 一 方 、 コ プ ラ ナ PCBsに つ い て は ノ ン オ ル ト PCBsは 4種
全 て を 使 用 し 、 モ ノ オ ル ト PCBsに つ い て は 少 な く と も 各 塩 化 物 毎 に 一 種 類 は 必 要 で あ る 。
シリンジスパイクには、サンプリングスパイクやクリーンアップスパイクで使用した以外の内標
準 物 質 を 用 い る 。 例 え ば 、 PCDDs/PCDFsで は 、
Fが 用 い ら れ る 。 コ プ ラ ナ PCBsで は 、
13
37
Cl 4 -2,3,7,8-TeCDD、
13
C 1 2 -1,2,3,4,7,8,9-HpCD
C 1 2 -2,3,4,4',5-PeCBが 用 い ら れ る が 、 PCDDs/PCDFsと 同
じものを用いてもよい。しかし、これらの内標準物質は、質量分析計の設定分解能によっては分
析に妨害を与える場合があるので、その使用に際しては妨害しない条件を十分に検討・確認して
おく必要がある。
(備 考 1 )こ こ に 示 す 商 品 は 、 こ の マ ニ ュ ア ル の 使 用 者 の 便 宜 の た め に 、 一 般 に 入 手 で き る も の と
して掲げたが、これを推奨するものではない。これと同等以上の品質、性能のものを用いてもよ
い。
3
器具及び装置
分析に用いる器具及び装置類はブランク試験を行い、ダイオキシン類の分析に影響を及
ぼす妨害成分が含まれていないことを確認してから使用する。器具の組み立てにはグリー
- 29 -
スを使用してはならない。
(1) 試 料 採 取 装 置
図3に例示するように、ポリウレタンフォーム採取筒を装着したハイボリウムエアサン
プ ラ に 石 英 繊 維 ろ 紙 1枚 及 び ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム 2個 を 装 着 し た も の 。
ハ イ ボ リ ウ ム エ ア サ ン プ ラ (以 後 HVと 略 称 )は 、 フ ィ ル タ ホ ル ダ 、 ポ ン プ 、 流 量 測 定 部 及
び保護ケースよりなる。
417
ステンレスメッシュ
シ ェ ル タ ー (ア ル ミ 製 )
締め付け金具
ろ 紙 ホ ル ダ ー (200× 254mm)
ウレタンフォーム用ホルダー
ウレタンフォーム
ステンレス又はアルミ製
1227
(内 径 84mm× 長 さ 200mm)
(直 径 90mm× 厚 さ 50mmを 2枚 充 填 )
ステンレスメッシュ
吸引ポンプ
締め付け金具
ガスメーター接続口
575
図3
環境大気試料採取装置の例
a) フ ィ ル タ ホ ル ダ
約 20× 25cmの 寸 法 の フ ィ ル タ を 破 損 す る こ と な く 、 漏 れ の 無 い よ う に 装 着 で き 、 ポ リ ウ
レ タ ン フ ォ ー ム 用 ホ ル ダ (内 径 84mm× 長 さ 200mm)を 連 結 で き る も の 。
ろ 紙 は 石 英 繊 維 ろ 紙 を あ ら か じ め 600℃ で 6時 間 程 度 加 熱 処 理 等 を し た も の を 用 い る 。
ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム は 下 記 の 性 状 の も の を 、 あ ら か じ め 水 及 び ア セ ト ン 洗 浄 後 、 約 16
∼ 24時 間 ア セ ト ン ソ ッ ク ス レ 抽 出 ま た は ア セ ト ン を 用 い た 超 音 波 抽 出 (30分 × 3回 )に よ り 洗
浄 し 、 十 分 に 乾 燥 し (注 2 )、 密 閉 し て 保 存 し た も の で 、 2個 充 て ん す る 。
性 状 : ポ リ エ ー テ ル タ イ プ ; 密 度 : 0.016g/cm 3 ; 大 き さ : 直 径 9∼ 10cm、 厚 さ 5cm
b) ポ ン プ
高 流 量 で 24時 間 の サ ン プ リ ン グ を 行 う 場 合 に は 、 フ ィ ル タ 装 着 時 に 、 700 ç /min程 度 の 流
量 で 吸 引 で き る 能 力 を 持 ち 、 流 量 調 整 機 能 を 有 し 、 24時 間 以 上 連 続 的 に 使 用 で き る も の 。
- 30 -
中 流 量 で 7日 間 の 連 続 サ ン プ リ ン グ を 行 う 場 合 に は 、 フ ィ ル タ 装 着 時 に 、 100 ç /min程 度 の
流 量 で 吸 引 で き る 能 力 を 持 ち 、 流 量 調 整 機 能 あ る い は 定 流 量 装 置 を 有 し 、 7日 間 以 上 連 続 的
に使用できるもの。
c) 流 量 測 定 部
指示流量計として差圧検出方式流量計、熱線方式流量計、フロート型面積流量計等を用
い る 。 高 流 量 で 24時 間 の サ ン プ リ ン グ を 行 う 場 合 に は 、 700 ç /min程 度 の 流 量 を 50 ç /minま で
測 定 で き る も の 。 中 流 量 で 7日 間 の 連 続 サ ン プ リ ン グ を 行 う 場 合 に は 、 100 ç /min程 度 の 流 量
を 5 ç /minま で 測 定 で き る も の 。 指 示 流 量 計 の 目 盛 り は 、 HVの 通 常 の 使 用 状 態 の も と で 基 準
流量計により校正しておく。
d) 保 護 ケ ー ス
HVの 捕 集 面 を 上 に し て 水 平 に 固 定 で き 、 風 雨 に よ り 捕 集 用 フ ィ ル タ が 破 損 さ れ な い 構 造
で耐蝕性の材質で作られているもの。
(2) 前 処 理 用 器 具
a) シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト 管
内 径 10mm、 長 さ 300mmの カ ラ ム ク ロ マ ト 管 に 活 性 化 し た シ リ カ ゲ ル 3g を ヘ キ サ ン で 湿 式
充 て ん し 、 そ の 上 に 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム を 約 10mm積 層 し た も の (注 3 )。 ヘ キ サ ン で 充 て ん
物を十分洗浄する。
b) 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト 管
図 4 の よ う に 内 径 15mm、 長 さ 300mmの カ ラ ム ク ロ マ ト 管 に シ リ カ ゲ ル 0.9g、 2 %水 酸 化 カ
リ ウ ム シ リ カ ゲ ル 3g、 シ リ カ ゲ ル 0.9g、 44%硫 酸 シ リ カ ゲ ル 4.5g、 22%硫 酸 シ リ カ ゲ ル 6g、
シ リ カ ゲ ル 0.9g、 10%硝 酸 銀 シ リ カ ゲ ル 3g及 び 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム 6gを 順 次 充 て ん し 、 多 層
シ リ カ ゲ ル カ ラ ム を 作 製 す る (注 3 )。 ヘ キ サ ン で 充 て ん 物 を 十 分 洗 浄 す る 。
10 % (w/ w) AgN O 3 /Sili ca (3 g)
S ilica( 0.9g)
22% (w/w ) H 2 SO 4 / Silica (6g)
44 % (w/ w) H 2 SO 4 /Silic a (4.5 g)
2% (w/w) KOH/si lica ( 3g)
Qu artz w ool
図4
多層シリカゲルカラムクロマト管
- 31 -
c) ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト 管
内 径 10mm、 長 さ 300mmの カ ラ ム ク ロ マ ト 管 に 活 性 化 済 み ア ル ミ ナ 10gを ヘ キ サ ン で 湿 式 充
て ん し 、 そ の 上 に 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム を 約 10mm積 層 し た も の (注 3 )。 ヘ キ サ ン で 充 て ん 物
を十分洗浄する。
d) 活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル ク ロ マ ト 管
内 径 10mm、 長 さ 300mmの カ ラ ム ク ロ マ ト 管 に 、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム 10mm、 活 性 炭 埋 蔵 シ リ
カ ゲ ル (ダ イ オ キ シ ン 用 ; 和 光 純 薬 (備 考 1 ))1g、 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム 10mmを 積 層 し た も の
(注 3 )。
e) 濃 縮 器
ク デ ル ナ -ダ ニ ッ シ ュ (KD)濃 縮 器 ま た は ロ ー タ リ ー エ バ ポ レ ー タ 。
(3)活 性 炭 カ ラ ム 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ
a)分 離 カ ラ ム
活 性 炭 ( Porous Graphite Carbon)充 て ん カ ラ ム ( 注 4 ) 。
b)溶 離 液
溶 離 液 流 量 を 2 ã /minに 設 定 す る 。
c)流 路 切 換 バ ル ブ
分離カラム内での移動相の流れの向きが換えられるもの。
d)検 出 器
吸光光度検出器、検出器出口から溶出液を分取できるもの。
(4) ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 装 置 (GC-MS)
二 重 収 束 形 の 質 量 分 析 計 を 用 い る 高 分 解 能 ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ 質 量 分 析 計 (HRGC-HRMS)で 、
4∼ 5塩 化 物 0.1pg、 6∼ 7塩 化 物 0.2pg、 8塩 化 物 0.5pg、 コ プ ラ ナ PCBs 0.2pg以 下 ま で の 測
定感度を有するもの(注5)。
a) カ ラ ム 恒 温 槽
恒 温 槽 の 温 度 制 御 範 囲 が 50∼ 350℃ で あ り 、 測 定 対 象 物 質 の 最 適 分 離 条 件 の 温 度 に で き る
ような昇温プログラムの可能なもの。
b) キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム
内 径 0.25∼ 0.32mm、 長 さ 25∼ 60mの 溶 融 シ リ カ 製 の も の で あ っ て 、 PCDDs/PCDFsに つ い て
は 内 面 に シ ア ノ プ ロ ピ ル 系 の 強 極 性 の 液 体 を 被 覆 し た も の 。 コ プ ラ ナ PCBsで は 、 メ チ ル シ
リ コ ン 系 無 極 性 カ ラ ム や 微 極 性 カ ラ ム が 一 般 的 で 、 最 近 で は シ ロ キ サ ン -カ ル ボ ラ ン を ベ ー
ス に し た カ ラ ム が 用 い ら れ る (注 6 )。
c) 検 出 器 (M S )
- 32 -
二 重 収 束 形 の も の で 分 解 能 (10,000以 上 )の 高 分 解 能 で 測 定 で き る も の 。
イ オ ン 源 は 、 温 度 を 250∼ 350℃ に 保 つ こ と が で き 、 電 子 衝 撃 イ オ ン 化 法 (以 後 EI法 と 略
称 )が 可 能 で 、 イ オ ン 化 電 圧 が 35∼ 70V 程 度 の も の 。
検 出 法 と し て 選 択 イ オ ン 検 出 法 (以 後 SIM法 と 略 称 )で 定 量 で き る も の 。 SIM法 に お け る 周
期 を 最 大 1秒 以 下 に で き 、 ロ ッ ク マ ス 方 式 が 可 能 な も の 。
d) 試 料 導 入 部
試 料 の 全 量 を 再 現 性 良 く 導 入 で き る も の (ス プ リ ッ ト レ ス 又 は オ ン カ ラ ム 方 式 )。
e) キ ャ リ ア ー ガ ス
高 純 度 ヘ リ ウ ム (純 度 99.999%以 上 )。
f) 質 量 校 正 用 標 準 物 質
ペ ル フ ル オ ロ ケ ロ セ ン (PFK)な ど の 質 量 分 析 用 高 沸 点 成 分 。
(注 2 ) 減 圧 乾 燥 法 を 用 い て も 良 い 。 溶 媒 が 残 っ て い る と ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム が 柔 ら か く な り 、
ホルダに入れて吸引するとき、圧力損失が起こり、所定の吸引流量が得られなくなる恐れがある。
(注 3 )カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ に お い て 使 用 す る 充 て ん 剤 や 溶 媒 の 種 類 及 び 量 は 標 準 物 質 の 分 画
試験を行って決めなければならない。
(注 4 )例 と し て 、 内 径 4.6mm、 長 さ 100mmの Hypercarb S(porous graphitized carbon)(Shandon社
製 )が あ る (備 考 1 )。
(注5)目標定量下限値が達成できれば全ての異性体で必ずしもこの量を満たす必要はない。
(注 6 )全 て の 異 性 体 に つ い て そ れ ぞ れ 分 離 が 良 好 で 、 そ れ ら の 異 性 体 の ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に お け
る 溶 出 順 位 の 判 明 し て い る カ ラ ム の 使 用 を 標 準 と す る 。 様 々 な 要 因 を 考 慮 し 、 2種 以 上 の 極 性 の
異 な る キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム の 併 用 が 望 ま し い 。 PCDDs/PCDFsで は 、 SP-2331(ス ペ ル コ 社 製 )、 HP-5
(HP社 製 )、 DB-5、 DB-17(J&W社 製 )、 CP-Si188( ク ロ ム パ ッ ク 社 製 ) が あ る 。 コ プ ラ ナ PCBsで は 、
DB-1、 DB-5、 DB-5MS(J&W社 製 )、 Ultra #1、 Ultra #2(HP社 製 )、 SPB-1、 SPB-5(ス ペ ル コ 社 製 )、
HT-8(SGE社 製 )等 が 使 用 で き る (備 考 1 )。
4
試料採取及び前処理
4.1
試料の捕集
試料ガスを採取する前に、サンプリングスパイクとしてろ紙にサンプリングスパイク用
の 内 標 準 物 質 を 添 加 す る ( 注 1 ) (注 7 )。
(1) 試 料 採 取 は 、 第 3 節 第 3 項 (1)試 料 採 取 装 置 (30ペ ー ジ )に よ り 定 め ら れ た 装 置 に よ り
行う。
24時 間 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 し 、 1,000m 3 程 度 を 採
取 す る 。 週 平 均 値 を 求 め る 場 合 は 、 700 ç /min程 度 の 高 流 量 で 24時 間 採 取 す る 操 作 を 7回 繰 り
返 し て 行 う か 、 100 ç /min程 度 の 中 流 量 で 7日 間 の 連 続 採 取 を 行 い 、 総 吸 引 量 が 1,000m 3 程 度
- 33 -
となるようにする。
捕 集 開 始 し 5分 後 に 再 度 流 量 (Fs)を 調 整 し て 記 録 し 、 終 了 直 前 に 流 量 (Fe)を 読 み 取 る 。 積
算 流 量 計 が 付 属 し て い る 場 合 は 、 そ の 読 み か ら 捕 集 量 (m 3 )を 求 め る 。
採取した試料は、周辺空気からの汚染や、周囲への漏洩を防ぐために密閉して保存する。
また、試料の保管・運搬時も遮光する。
(2) ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 と し て 試 料 採 取 に 際 し て 、 試 料 採 取 用 と 同 一 ロ ッ ト の 石 英 繊
維ろ紙及びポリウレタンフォームを試料採取以外は試料と全く同様に扱い持ち運ぶ。この
操 作 は 一 連 の 試 料 採 取 に お い て 試 料 数 の 10%の 頻 度 で 、 3試 料 以 上 に つ い て 実 施 す る 。 別 に
操作ブランク試験用に試料採取用と同一ロットの石英繊維ろ紙及びポリウレタンフォーム
を 用 意 す る (注 8 )。
(3) 2重 測 定 用 と し て 、 同 一 地 点 で 2つ 以 上 の 試 料 を 同 時 に 捕 集 す る 。 こ の 試 料 採 取 は 一 連
の 試 料 採 取 に お い て 試 料 数 の 10%程 度 の 頻 度 で 行 う (注 9 )。
4.2
抽出操作
採取した試料のポリウレタンフォームとろ紙はそれぞれクリーンアップスパイクとして
内標準物質を添加した後、別々に抽出する。
(1) 試 料 採 取 し た ポ リ ウ レ タ ン フ ォ ー ム を ソ ッ ク ス レ 抽 出 器 に 入 れ 、 内 標 準 物 質 を 添 加 し
( 注 1 ) (注 10)、 ア セ ト ン 300 ã で 約 16∼ 24時 間 ソ ッ ク ス レ 抽 出 を 行 う 。 高 流 量 で 24時 間 の
採取を繰り返して行い、試料が複数個存在する場合は、試料を合わせて抽出してもよい。
(2) 石 英 繊 維 ろ 紙 も 同 様 に 、 ソ ッ ク ス レ 抽 出 器 に 入 れ 、 内 標 準 物 質 を 添 加 し ( 注 1 )
(注 10)、 ト ル エ ン 300 ã で 約 16∼ 24時 間 ソ ッ ク ス レ 抽 出 を 行 う 。 高 流 量 で 24時 間 の 採 取 を
繰り返して行い、試料が複数個存在する場合は、試料を合わせて抽出してもよい。
(3) 各 試 料 か ら 得 ら れ た 抽 出 液 を 濃 縮 器 で 濃 縮 し て 混 合 後 、 定 容 (100 ã )に し 、 そ の 1/2量
程 度 を 正 確 に 分 取 し て (注 11)、 濃 縮 器 で 5 ã 程 度 に 濃 縮 す る 。 次 い で 窒 素 気 流 (注 12)に よ り
溶 媒 の ほ と ん ど を 除 去 し 、 ヘ キ サ ン に 溶 解 後 、 最 終 液 量 を 0.5 ã 程 度 に し た も の を 硫 酸 処 理
又は多層シリカゲルカラムクロマトグラフィの試料とする。
(4) 別 に 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定 用 の ろ 紙 、 ポ リ ウ レ タ
ン フ ォ ー ム も 同 様 に 操 作 し て 抽 出 す る (注 8 )(注 9 )。
4.3
クリーンアップ
抽 出 液 は 濃 硫 酸 処 理 -シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 又 は 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ
マ ト グ ラ フ ィ で 妨 害 物 質 を 取 り 除 い た 後 (注 13)、 液 を 二 分 し 、 一 方 を PCDDs/PCDFs用 に 、 他
方 を コ プ ラ ナ PCBs用 と し 、 そ れ ぞ れ ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ で PCDDs/PCDFsと コ プ
ラ ナ PCBsの 分 画 を 行 う 。 GC-MS分 析 で 妨 害 が あ り 更 に ク リ ー ン ア ッ プ が 必 要 な 時 、 又 は 、 ア
ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ の 替 わ り に 活 性 炭 カ ラ ム HPLCま た は 活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル
- 34 -
カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ を 行 う が 、 特 に PCDDs/PCDFsと ノ ン オ ル ト PCBsを 分 画 す る 時 に は H
PLCが 有 効 で あ る 。
4.3.1
硫酸処理
(1) 4.2(3)の 抽 出 液 を 分 液 漏 斗 (300 ã )に ヘ キ サ ン 50∼ 150 ã で 洗 い 込 み な が ら 移 し 入 れ 、
濃硫酸を適量加え、穏やかに振とうし、静置後、硫酸層を除去する。この操作を硫酸層の
着 色 が 薄 く な る ま で 3∼ 4回 繰 り 返 す (注 14)。
(2) ヘ キ サ ン 層 を ヘ キ サ ン 洗 浄 水 50 ã で 3∼ 4回 洗 浄 し 、 ほ ぼ 中 性 に な っ た ら 、 無 水 硫 酸 ナ
ト リ ウ ム で 脱 水 後 、 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し 、 窒 素 気 流 に よ り 最 終 溶 液 100μ ç と し 、 こ れ に
ヘ キ サ ン 約 2ã 加 え た も の を シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ の 試 料 液 と す る 。
(3) 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定 用 の 抽 出 液 も 同 様 に 操 作 し
て シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ の 試 料 液 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.2
シリカゲルカラムクロマトグラフィ
(1) シ リ カ ゲ ル カ ラ ム の 充 て ん 物 を ヘ キ サ ン で 洗 浄 後 、 液 面 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 上 面
まで下げる。
(2) 4.3.1(2)の 濃 縮 試 験 液 を パ ス ツ ー ル ピ ペ ッ ト 等 で カ ラ ム に 静 か に 注 ぎ 入 れ 、 液 面 を カ
ラム上端まで下げる。
(3) ヘ キ サ ン 5 ã で 濃 縮 器 を 洗 浄 し 、 洗 液 は カ ラ ム 内 壁 を 洗 い な が ら 入 れ る 。 こ の 洗 浄 操
作をもう一度繰り返す。
(4) ヘ キ サ ン 3 ã を カ ラ ム に 流 入 し た 後 、 ヘ キ サ ン 150 ã の 入 っ た 滴 下 用 分 液 ロ ー ト を ク ロ
マ ト 管 の 上 部 に 装 着 し 、 ヘ キ サ ン を 約 2.5 ã /min(毎 秒 1滴 程 度 )の 速 度 で 流 下 さ せ る 。
(5) 溶 出 液 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し た も の を 2分 し 、 そ れ ぞ れ ダ イ オ キ シ ン 類 と ノ ン オ ル
ト PCBs及 び ノ ン オ ル ト PCBs以 外 の コ プ ラ ナ PCBsの ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 の 試
料 液 (注 13)と す る 。 充 て ん 部 の 着 色 が ひ ど い 場 合 は 、 再 度 、 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ
ラフィの操作を繰り返す。
(6) 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定 用 の 抽 出 液 も 同 様 に 操 作 し
て ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 の 試 料 液 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.3
多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (注 15)
(1) 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム の 充 て ん 物 を ヘ キ サ ン で 洗 浄 後 、 液 面 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の
上面まで下げる。
(2) 4.2(3)の 抽 出 濃 縮 液 を パ ス ツ ー ル ピ ペ ッ ト 等 で カ ラ ム に 静 か に 注 ぎ 入 れ 、 液 面 を カ ラ
ム上端まで下げる。
(3) ヘ キ サ ン 5 ã で 濃 縮 器 を 洗 浄 し 、 洗 液 は カ ラ ム 内 壁 を 洗 い な が ら 入 れ る 。 こ の 洗 浄 操
- 35 -
作をもう一度繰り返す。
(4) ヘ キ サ ン 3 ã を カ ラ ム に 流 し た 後 、 ヘ キ サ ン 120 ã の 入 っ た 滴 下 用 分 液 ロ ー ト を ク ロ マ
ト 管 の 上 部 に 装 着 し 、 ヘ キ サ ン を 約 2.5 ã /min(毎 秒 1滴 程 度 )の 速 度 で 流 下 さ せ る 。
(5) 溶 出 液 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し た も の を 2分 し 、 そ れ ぞ れ ダ イ オ キ シ ン 類 と ノ ン オ ル
ト PCBs及 び ノ ン オ ル ト PCBs以 外 の コ プ ラ ナ PCBsの ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 の 試
料 液 (注 14)と す る 。 充 て ん 部 の 着 色 が ひ ど い 場 合 は 、 再 度 、 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ
トグラフィの操作を繰り返す。
(6) 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定 用 の 抽 出 液 も 同 様 に 操 作 し
て ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ 用 の 試 料 液 と す る (注 8 )(注 9 )。
A.
PCDDs及 び PCDFs
4.3.4-A
ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (注 16)
(1) ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト 管 の 液 面 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 上 面 ま で 下 げ 、 4.3.2ま た
は 4.3.3で 調 製 し た 試 料 液 の 適 量 を 静 か に 移 し 入 れ 、 少 量 の ヘ キ サ ン で 数 回 洗 い 込 み 、 液
面 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 上 端 ま で 下 げ た 後 、 2 %(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 100 ã
を 約 2.5 ã /min(毎 秒 1滴 程 度 )で 流 し て 第 1画 分 を 得 る 。 こ の 画 分 に は PCBsが 含 ま れ る 。 こ の
画分は分析が終了するまで保管する。
(2) 次 に 50%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 150 ã を 約 2.5 ã /minで 流 し て 第 2画 分 を 得
る 。 こ の 画 分 に PCDDs/PCDFsが 含 ま れ る 。
(3) 第 2画 分 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 後 、 更 に 窒 素 気 流 に よ り 0.5 ã 程 度 ま で 濃 縮 し た も の
を 測 定 用 溶 液 又 は 4.3.5-Aや 4.3.6-Aで の ク リ ー ン ア ッ プ 用 溶 液 (注 17)と す る 。
測 定 用 溶 液 は 、 PCDDs/PCDFsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)に
な る よ う 添 加 し 、 ノ ナ ン (注 19)0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 で 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し た も
の を PCDDs/PCDFsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(4) 4.3.2又 は 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定
用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 溶 液 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.5-A
活 性 炭 カ ラ ム 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (HPLC) (注 20)
(1) HPLCに 活 性 炭 カ ラ ム を 装 着 し (注 4)、 あ ら か じ め ト ル エ ン で 十 分 に カ ラ ム を 洗 浄 し 、
次 に ヘ キ サ ン を 流 し て 十 分 に ヘ キ サ ン で 置 換 し た 後 、 4.3.4-Aの (3)で 得 た 第 2 画 分 の 濃 縮
液 (0.1 ã )(又 は 4.3.2(5)や 4.3.3(5)で の PCDDs/PCDFs用 の 試 験 液 を 濃 縮 し た も の )を HPLCカ
ラ ム に 注 入 し 、 溶 離 液 を 30%(v/v)ト ル エ ン 含 有 ヘ キ サ ン と し て 20分 間 流 し 、 そ の 時 の 溶 出
液 40 ã を 分 取 し 第 1 画 分 と す る 。 4.3.2又 は 4.3.3の 試 験 液 の 場 合 、 こ の 画 分 に は PCBsが 含
まれる。
(2) 次 に オ ー ブ ン を 50℃ に 加 温 し 、 reverse flowで ト ル エ ン を 移 動 相 と し て 15分 間 流 し 、
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そ の 時 の 溶 出 量 30 ã を 分 取 し て 第 2 画 分 と す る 。 こ の 画 分 に は PCDDs/PCDFsが 含 ま れ る 。
(3) こ の 画 分 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し ,更 に 窒 素 気 流 で 0.5 ã 程 度 ま で 濃 縮 後 (注 12)、
PCDDs/PCDFsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)に な る よ う に 添 加 し 、
ノ ナ ン (注 19) 0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 に よ り 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し た も の を PCDDs/
PCDFsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(4) 4.3.4-Aの (4)又 は 4.3.2や 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試
験 用 、 2重 測 定 用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 試 料 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.6-A
活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (注 20)
(1) ト ル エ ン で 十 分 洗 浄 し 、 ヘ キ サ ン で 置 換 し た カ ラ ム に 、 4.3.4-Aの (3)で 得 た 第 2画 分
の 濃 縮 液 (0.1 ã )(又 は 4.3.2(5)や 4.3.3(5)で の PCDDs/PCDFs用 の 試 験 液 を 濃 縮 し た も の )を
カ ラ ム に 注 入 し 、 25%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 150∼ 200 ã を 2.5 ã /minで 第 1 画 分
を 溶 出 す る 。 4.3.2や 4.3.3の 試 験 液 の 場 合 こ の 画 分 に は コ プ ラ ナ PCBsが 含 ま れ る 。
(2) 次 い で 、 ト ル エ ン の 200 ã で 第 2 画 分 を 溶 出 す る 。 こ の 画 分 に PCDDs/PCDFsが 含 ま れ る 。
(3) ト ル エ ン 層 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し 、 更 に 窒 素 気 流 に よ り 0.5 ã 程 度 ま で 濃 縮 後 (注
12)、 PCDDs/PCDFsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)に な る よ う に
添 加 し 、 ノ ナ ン (注 19)0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 に よ り 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し た も の を
PCDDs/PCDFsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(4) 4.3.4-Aの (4)又 は 4.3.2や 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試
験 用 、 2 重 測 定 用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 試 料 と す る (注 8 )(注 9 )。
B.
コ プ ラ ナ PCBs
4.3.4-B
ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (注 16)
(1) ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト 管 の 液 面 を 無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 上 面 ま で 下 げ 、 4.3.2又 は
4.3.3で 調 製 し た 試 料 液 の 適 量 を 静 か に 移 し 入 れ 、 少 量 の ヘ キ サ ン で 数 回 洗 い 込 み 、 液 面 を
無 水 硫 酸 ナ ト リ ウ ム の 上 端 ま で 下 げ た 後 、 ヘ キ サ ン 40 ã を 約 2.5 ã /min(毎 秒 1滴 程 度 )で 流
し て 第 1画 分 を 得 る 。 こ の 画 分 に は 直 鎖 炭 化 水 素 が 含 ま れ る 。
(2) 次 い で 、 5%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 120 ã を 約 2.5 ã /minで 流 し て 第 2画 分 を
得 る 。 こ の 画 分 に は コ プ ラ ナ PCBsが 含 ま れ る 。
(3) 第 2画 分 を 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し 、 更 に 窒 素 気 流 に よ り 0.5 ã 程 度 ま で 濃 縮 し た も の
を 測 定 用 溶 液 又 は 4.3.5-Bや 4.3.6-Bで の ク リ ー ン ア ッ プ 用 溶 液 (注 17)と す る 。
測 定 用 溶 液 は 、 コ プ ラ ナ PCBsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)
に な る よ う に 添 加 し 、 ノ ナ ン (注 19)0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 で 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し
た も の を コ プ ラ ナ PCBsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(4) 更 に 50%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 160 ã を 約 2.5 ã /minで 流 し て 第 3画 分 を 得
- 37 -
る 。 こ の 画 分 に PCDDs/PCDFsが 含 ま れ る 。 原 則 と し て こ の 画 分 は 測 定 し な い が 、 分 析 が 終 了
するまで保管する。
(5) 4.3.2又 は 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 、 2重 測 定
用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 溶 液 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.5-B
活 性 炭 カ ラ ム 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (HPLC) (注 20)
(1) HPLCに 活 性 炭 カ ラ ム を 装 着 し (注 4 )、 あ ら か じ め ト ル エ ン で 十 分 に カ ラ ム を 洗 浄 し 、
次 に ヘ キ サ ン を 流 し て 十 分 に ヘ キ サ ン で 置 換 し た 後 、 4.3.4-Bの (3)で 得 た 第 2画 分 (0.1 ã )
(又 は 4.3.2(5)や 4.3.3(5)で の コ プ ラ ナ PCBs用 の 試 験 液 を 濃 縮 し た も の )を HPLCカ ラ ム に 注
入 し 、 移 動 層 と し て ヘ キ サ ン を 4 分 間 流 し 、 そ の 間 の 溶 出 液 8 ã を 分 取 し て 第 1画 分 と す る 。
こ の 画 分 に は ノ ン オ ル ト お よ び モ ノ オ ル ト 体 以 外 の PCBsが 含 ま れ る 。
(2) 次 い で 移 動 相 と し て 50%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン を 20分 間 流 し 、 そ の 間 の 溶
離 液 40 ã を 分 取 し て 第 2 画 分 と す る 。 こ の 画 分 に は モ ノ オ ル ト 体 PCBsが 含 ま れ る 。
(3) 更 に 溶 離 液 を 30%(v/v)ト ル エ ン 含 有 ヘ キ サ ン と し て 20分 間 流 し 、 そ の 時 の 溶 出 液 40 ã
を 分 取 し 第 3 画 分 と す る 。 こ の 画 分 に は ノ ン オ ル ト 体 PCBsが 含 ま れ る 。
(4) 最 後 に オ ー ブ ン を 50℃ に 加 温 し 、 reverse flowで ト ル エ ン を 移 動 相 と し て 15分 間 流 し 、
そ の 時 の 溶 出 量 30 ã を 分 取 し て 第 4 画 分 と す る 。 こ の 画 分 に は PCDDs/PCDFsが 含 ま れ る 。
(5) 第 1 ∼ 第 3 画 分 を そ れ ぞ れ 濃 縮 器 で 約 5 ã に 濃 縮 し 、 更 に 窒 素 気 流 で 0.5 ã 程 度 ま で 濃
縮 後 (注 12)、 コ プ ラ ナ PCBsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)に な
る よ う に 添 加 し 、 ノ ナ ン (注 19)0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 に よ り 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し
た も の を 各 コ プ ラ ナ PCBsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(6) 4.3.4-Bの (4)又 は 4.3.2や 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試
験 用 、 2重 測 定 用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 試 料 と す る (注 8 )(注 9 )。
4.3.6-B
活 性 炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (注 20)
(1) ト ル エ ン で 十 分 洗 浄 し 、 ヘ キ サ ン で 置 換 し た カ ラ ム に 、 4.3.4の (3)で 得 た 第 2画 分 の
濃 縮 液 (0.1 ã )(又 は 4.3.2(5)や 4.3.3(5)で の コ プ ラ ナ PCBs用 の 試 験 液 を 濃 縮 し た も の )を カ
ラ ム に 注 入 し 、 25%(v/v)ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン 150∼ 200 ã を 約 2.5 ã /minで 溶 出 す
る 。 4.3.2や 4.3.3の 試 験 液 の 場 合 こ の 画 分 に は コ プ ラ ナ PCBsが 含 ま れ る 。
(2) こ の 画 分 を 濃 縮 器 で 5 ã に 濃 縮 し 、 更 に 窒 素 気 流 で 0.5 ã 程 度 ま で 濃 縮 後 (注 12)、 コ プ
ラ ナ PCBsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 検 量 線 作 成 時 と 同 程 度 の 濃 度 (注 18)に な る よ う に 添 加 し 、
ノ ナ ン (注 19)0.5 ã を 加 え 、 再 度 窒 素 気 流 に よ り 一 定 量 (20∼ 100μ ç )に し た も の を コ プ ラ ナ
PCBsの GC-MS分 析 用 溶 液 と す る 。
(3) 4.3.4-Bの (4)又 は 4.3.2や 4.3.3で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 用 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試
験 用 、 2重 測 定 用 の 試 料 液 も 同 様 に 操 作 し て GC-MS分 析 用 試 料 と す る (注 8 )(注 9 )。
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(注 7 )サ ン プ リ ン グ 時 に 内 標 準 物 質 を 添 加 す る 操 作 を 、 サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク と 呼 ぶ 。 サ ン プ リ
ングスパイクは、試料ガス採取前にろ紙に内標準物質を添加する。内標準物質の添加量は、測定
溶 液 中 の 濃 度 が 検 量 線 作 成 用 標 準 溶 液 と 大 体 同 濃 度 に な る よ う に す る 。 通 常 は 2分 割 を 前 提 と し
て 0.2∼ 4ngを 添 加 す る が 、 分 取 操 作 を 行 う 場 合 に は 、 そ の 割 合 だ け 多 く 添 加 す る 必 要 が あ る 。
ま た 、 試 料 中 の PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ P C B sの 濃 度 が 非 常 に 高 く 、 通 常 の 内 標 準 物 質 の 添 加 量
では定量範囲を超え、希釈を行うことが予想される場合には、この範囲を超えて添加しても良い。
(注 8 )本 試 験 は 、 操 作 ブ ラ ン ク 値 や ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 を 管 理 し て お け ば 毎 回 行 わ な く て も よ い 。
しかし、試料採取における信頼性を確保するため、前もって操作ブランク値及びトラベルブラン
ク値について十分検討しておき、必要に応じてそのデータが提示できるようにしておく。特にト
ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 は 、 年 間 を 通 じ て 3回 位 は 測 定 し 統 計 処 理 が で き る よ う に 計 画 す る が 、 移 送
中 に 汚 染 が 考 え ら れ る 場 合 (EP灰 等 に よ る 汚 染 )に は 、 ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 を 必 ず 実 施 す る 。
(注 9 ) 本 試 験 は 、 大 気 試 料 の 採 取 に お い て 2重 測 定 用 の 試 料 採 取 不 可 能 な 場 合 に は 、 省 略 し て も
よい。また、毎回測定は困難であるため、試料採取法について管理しておけば毎回行わなくても
よい。しかし、試料採取における信頼性を確保するため、前もって試料採取について十分検討し
ておき、必要に応じてそのデータが提示できるようにしておく。
(注 10)ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の 添 加 量 は 、 各 部 に 添 加 し た 合 計 量 の 測 定 溶 液 中 の 濃
度 が 検 量 線 作 成 用 標 準 溶 液 と 大 体 同 濃 度 に な る よ う に す る 。 通 常 は 2分 割 を 前 提 に TeCDD∼ HpCDD
及 び TeCDF∼ HpCDFで は 0.4∼ 2ng、 OCDD∼ OCDF及 び コ プ ラ ナ PCBsで は 0.8∼ 4ngで あ る 。 分 取 操 作 を
行う場合には、その割合だけ多く添加する必要がある。
ま た 、 試 料 中 の PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ PCBsの 濃 度 が 非 常 に 高 く 、 通 常 の 内 標 準 物 質 の 添 加 量
では定量範囲を超え、希釈することが予想される場合には、この範囲を超えて添加しても良い。
た だ し 、 試 料 中 の PCDDs/PCDFsや コ プ ラ ナ PCBsの 濃 度 が 予 想 で き ず 、 内 標 準 物 質 の 添 加 か ら 再 度
行う可能性が考えられる場合には、粗抽出液の分取液に添加しても良い。その場合には、あらか
じめ抽出操作の回収率を十分確認しておく必要があるし、分取の割合に応じて添加量を減らし、
5.4.1(5)の 定 量 式 及 び 5.4.2(2)の サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク の 回 収 率 の 式 に (V/V')を 乗 じ 、 逆 に 、
5.4.2(1)の ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク の 回 収 率 の 式 か ら (V/V')を 削 除 す る 。
(注 11)再 分 析 の 必 要 な 場 合 も あ る の で 、 一 定 期 間 粗 抽 出 液 を 保 存 す る 。 ま た 、 抽 出 を ま と め て 行
っ た 場 合 は 、 1/2よ り 少 な い 分 取 量 で 分 析 し て も よ い 。
(注 12)窒 素 気 流 に よ る 濃 縮 作 業 に よ っ て 溶 液 が 飛 散 し な い よ う に 、 ま た 、 完 全 に 乾 固 さ せ な い よ
うに注意する。
(注 13) ガ ス ク ロ マ ト グ ラ ム に 妨 害 の な い 試 料 に つ い て 、 コ プ ラ ナ PCBsの み を 分 析 す る 場 合 は 、
妨 害 物 を 取 り 除 い た 溶 液 に コ プ ラ ナ PCBsの シ リ ン ジ ス パ イ ク を 添 加 し 、 濃 縮 後 、 ノ ナ ン に 転 溶 し
て 測 定 し て も よ い 。 た だ し 、 そ の 時 は ガ ス ク ロ マ ト グ ラ フ の カ ラ ム と し て 必 ず 全 PCBs異 性 体 を 良
好 に 分 離 で き る も の (例 え ば 、 HT-8や DB-5MS等 )を 用 い る 必 要 が あ る 。
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(注 14)濃 硫 酸 の 添 加 作 業 は 硫 酸 と 有 機 物 の 反 応 に よ る 溶 媒 の 突 沸 に 十 分 注 意 し 、 数 ã 程 度 か ら 始
め、着色の度合いにより徐々に添加する。また、必ず手袋やマスク等の保護具を使用すること。
(注 15)硫 酸 処 理 と 同 様 な 効 果 は 硫 酸 シ リ カ ゲ ル の み を 用 い た 処 理 で 得 ら れ る た め 、 試 料 に よ っ て
は 多 層 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ の 代 わ り に 22%硫 酸 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ
ィでも構わない。
(注 16)ア ル ミ ナ の 極 性 は 製 造 ロ ッ ト や 開 封 後 の 保 存 期 間 に よ っ て か な り 変 化 が 認 め ら れ る 。 活 性
の 低 下 し た も の で は 、 モ ノ オ ル ト PCBs、 1,3,6,8-TeCDD及 び 1,3,6,8-TeCDF等 が 第 1画 分 に 溶 出 す
る 。 ま た 八 塩 化 物 が 50%ジ ク ロ ロ メ タ ン 含 有 ヘ キ サ ン の 規 定 量 で は 第 2画 分 に 溶 出 し な い 場 合 も あ
り、これについても分画試験で確認する。
(注 17)ア ル ミ ナ カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ に よ る 方 法 で GC-MS分 析 に 妨 害 等 の 支 障 を き た す 場 合 、
又 は 更 に ク リ ー ン ア ッ プ を 目 的 と し て 高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ ィ (HPLC)に よ る 方 法 あ る い は 活 性
炭 埋 蔵 シ リ カ ゲ ル カ ラ ム ク ロ マ ト グ ラ フ ィ に よ る 方 法 を 用 い る 。 特 に PCDDs/PCDFsと ノ ン オ ル ト
PCBsを 分 画 す る と き に は HPLC法 が 有 効 で あ る 。
(注 18)注 入 量 の 補 正 を 行 う た め シ リ ン ジ ス パ イ ク を 行 う 。 添 加 量 は TeCDDs∼ HpCDDs及 び TeCDFs∼
HpCDFsを 0.2∼ 1ng、 OCDD、 OCDF及 び コ プ ラ ナ PCBsで は 0.4∼ 2ngで あ る 。
(注 19)ト ル エ ン 、 デ カ ン ま た は イ ソ オ ク タ ン を 用 い て も よ い 。
(注 20)こ こ に 示 す 測 定 条 件 は 、 使 用 す る 機 器 、 カ ラ ム 等 に よ り 若 干 異 な っ て く る の で 、 あ ら か じ
めフライアッシュ抽出液等を用いて分画試験を行って確認しなければならない。
5
試験操作
5.1
GC-MSの 分 析 条 件 の 設 定 と 機 器 の 調 整
GC-MSの 分 析 条 件 と し て 、 以 下 の 例 示 は 本 マ ニ ュ ア ル 等 の 作 成 に 際 し て 実 施 さ れ た 検 証 試
験 等 で 用 い ら れ た も の で あ る 。 こ れ を 参 考 に し て 適 宜 設 定 す る (注 6 )。
(1) GC-MS条 件
a) 分 析 対 象 物 質 : TeCDDs、 TeCDFs、 PeCDFsの 同 族 体 及 び 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体
[GC]
使 用 カ ラ ム : SP-2331、 0.32mm(内 径 )× 60m (長 さ )、 0.2μ m(膜 厚 )
カ ラ ム 温 度 : 100℃ (1.5 分間保持 )→ (20℃ / 分昇温 )→ 180℃ → (3℃ / 分昇温 )→ 260℃ (25 分間保持 )
注 入 口 温 度 : 260℃
注入方法
: ス プ リ ッ ト レ ス (ス プ リ ッ ト 保 持 時 間 : 90秒 )
[MS]
分 解 能 (M/△ M) : 10,000以 上
イオン化電圧
: 25∼ 70V
イオン化電流
: 500∼ 1000μ A
イオン源温度
: 280∼ 300℃
- 40 -
イ オ ン 加 速 電 圧 : 8kV
b) 分 析 対 象 物 質 : PeCDDs、 HxCDDs、 HxCDFsの 同 族 体 及 び 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体
[GC]
使 用 カ ラ ム : SP-2331、 0.32mm(内 径 )× 60m (長 さ )、 0.2μ m(膜 厚 )
カ ラ ム 温 度 : 100℃ (1.5 分間保持 )→ (20℃ / 分昇温 )→ 210℃ → (3℃ / 分昇温 )→ 260℃ (25 分間保持 )
注 入 口 温 度 : 260℃
注入方法
: ス プ リ ッ ト レ ス (ス プ リ ッ ト 保 持 時 間 : 90秒 )
[MS]
a)に 同 じ
c) 分 析 対 象 物 質 : HpCDDs、 HpCDFs、 OCDD、 OCDF同 族 体 及 び 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体
[GC]
使 用 カ ラ ム : DB-17、 0.32mm(内 径 )× 30m (長 さ )、 0.15μ m(膜 厚 )
カ ラ ム 温 度 : 100℃ (1.5 分間保持 )→ (20℃ / 分昇温 )→ 200℃ → (10℃ / 分昇温 )→ 280℃ (5 分間保持 )
注 入 口 温 度 : 280℃
注入方法
: ス プ リ ッ ト レ ス (ス プ リ ッ ト 保 持 時 間 : 90秒 )
[MS]
a)に 同 じ
d) 分 析 対 象 物 質 : TeCB、 PeCB、 HxCB、 HpCBの 同 族 体 及 び 異 性 体
[GC]
使 用 カ ラ ム : DB-5MS、 0.32mm(内 径 )× 60m(長 さ )、 0.25μ m(膜 厚 )
カ ラ ム 温 度 : 150℃ (1 分間保持 )→ (20℃ / 分昇温 )→ 180℃ → (2℃ / 分昇温 )→ 245℃ (3 分間保持 )
→ (6℃ / 分昇温 )→ 290℃ (3 分間保持 )
注 入 口 温 度 : 290℃
注入方法
: ス プ リ ッ ト レ ス (ス プ リ ッ ト 保 持 時 間 : 60秒 )
[ MS]
分 解 能 (M/△ M) : 10,000∼ 15,000
イオン化電圧
: 35∼ 40V
イオン化電流
: 600μ A
イオン源温度
: 290℃
イ オ ン 加 速 電 圧 : 8kV
e) 分 析 対 象 物 質 : コ プ ラ ナ PCBsの 同 族 体 及 び 異 性 体
[GC]
使 用 カ ラ ム : HT-8、 0.22mm(内 径 )× 50m(長 さ )、 0.25μ m(膜 厚 )
カ ラ ム 温 度 : 130℃ (1 分間保持 )→ (20℃ / 分昇温 )→ 220℃ → (5℃ / 分昇温 )→ 320℃ ( 保持 )
注 入 口 温 度 : 280℃
- 41 -
注入方法
: ス プ リ ッ ト レ ス (ス プ リ ッ ト 保 持 時 間 : 60秒 )
[MS]
分 解 能 (M/△ M) : 10,000∼ 15,000
イオン化電圧
: 30∼ 50V
イオン化電流
: 600μ A
イオン源温度
: 335℃
イ オ ン 加 速 電 圧 : 7∼ 8kV
(2) 検 出 法
SIM検 出 法 (ロ ッ ク マ ス 方 式 )
MSに 質 量 校 正 用 標 準 物 質 を 導 入 し 、 質 量 校 正 用 プ ロ グ ラ ム に よ り 、 マ ス パ タ ー ン 、 分 解
能 (10,000以 上 、 10%Valley)等 を 測 定 目 的 に 応 じ て 所 定 の 値 に 校 正 す る 。 質 量 校 正 結 果 は 保
存する必要がある。
5.2
SIM測定
(1) PCDDs及 び PCDFsで は カ ラ ム の a)∼ c)の う ち の 測 定 対 象 物 質 に 適 し た も の を 取 り 付 け る 。
一 方 、 コ プ ラ ナ PCBsで は カ ラ ム d)又 は e)を 取 り 付 け 、 い ず れ も 十 分 に エ ー ジ ン グ す る 。
(2) 測 定 対 象 物 質 と 内 標 準 物 質 の 各 塩 化 物 毎 の モ ニ タ ー イ オ ン 及 び ロ ッ ク マ ス 用 の 質 量 数
を 設 定 す る (表 7 参 照 )(注 21)。
(3) 質 量 校 正 用 標 準 物 質 ガ ス を 流 し な が ら ロ ッ ク マ ス の 応 答 が 安 定 し た ら 、 分 析 用 試 験 液
を GC-MSに そ れ ぞ れ 1∼ 2μ ç を 注 入 し て 、 測 定 を 行 う 。
(4) (2)で 設 定 し た PCDDs/PCDFs、 コ プ ラ ナ PCBs及 び 内 標 準 物 質 の 各 塩 化 物 の 質 量 数 に つ い
てクロマトグラムを記録する。
(5) 分 析 終 了 後 、 定 量 作 業 に 入 る 前 に 個 々 の 試 験 液 毎 に 質 量 校 正 用 標 準 物 質 の ロ ッ ク マ ス
の モ ニ タ ー チ ャ ン ネ ル の 変 動 の 有 無 (注 22)、 妨 害 成 分 の 有 無 、 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体
や コ プ ラ ナ PCBsの 各 異 性 体 の 分 離 (注 23)の 確 認 を 行 う 。
5.3
検量線の作成
(1) PCDDs/PCDFsで は 各 測 定 対 象 物 質 の 各 塩 化 物 に 対 し て 0.2ng/ ã ∼ 1μ g/ ã の 濃 度 範 囲 で
0 を 含 め て 5 段 階 程 度 の 標 準 濃 度 系 列 を 調 製 す る (注 24)。 こ の 標 準 濃 度 系 列 に は 定 容 前 に
あ ら か じ め ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 及 び シ リ ン ジ ス パ イ ク と し て PCDDs/PCDFsの 内 標 準 物 質
の 一 定 量 (TeCDDs∼ HpCDDs及 び TeCDFs∼ HpCDFsを 10∼ 50ng/ ã 、 OCDD及 び OCDFで は 20∼ 100
ng/ ã の 濃 度 に な る 量 )を 添 加 し て お く 。
一 方 、 コ プ ラ ナ PCBsで も 、 各 塩 化 物 に 対 し て 0.2ng/ ã ∼ 1μ g/ ã の 濃 度 範 囲 で 0 を 含 め て
5 段 階 程 度 の 標 準 濃 度 系 列 を 調 製 し (注 24)、 定 容 前 に あ ら か じ め ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク
及 び シ リ ン ジ ス パ イ ク と し て コ プ ラ ナ PCBsの 内 標 準 物 質 の 一 定 量 (20∼ 100ng/ ã の 濃 度 に な
- 42 -
る 量 )を 添 加 し て お く 。
(2) (1)で 調 製 し た PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 標 準 濃 度 系 列 の 1μ ç を そ れ ぞ れ の GCMSの 対 応 す る カ ラ ム に 注 入 し 、 5.2の SIM測 定 操 作 を 行 っ て 、 PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCB
sの 各 塩 化 物 の ク ロ マ ト グ ラ ム を 記 録 し 、 各 標 準 濃 度 系 列 毎 に ロ ッ ク マ ス の モ ニ タ ー チ ャ ン
ネ ル の 確 認 (注 22)及 び 各 異 性 体 イ オ ン の ピ ー ク の 分 離 の 確 認 (注 23)を 行 う 。
(3) PCDDs/PCDFs又 は コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 質 量 数 及 び 内 標 準 物 質 (注 25)の 質 量 数 の
イ オ ン の ピ ー ク 面 積 を 求 め 、 各 塩 化 物 の 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )に
対 す る ピ ー ク 面 積 の 比 と 注 入 し た 標 準 溶 液 中 の 各 塩 化 物 と 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ
イ ク )の 濃 度 の 比 を 用 い て 検 量 線 を 作 成 し 、 相 対 感 度 係 数 (RRFcs)(第 2 節 3.2参 照 )を 算 出
す る (注 26)。
- 43 -
表7
ダ イ オ キ シ ン 類 等 の 設 定 質 量 数 (モ ニ タ ー イ オ ン )の 例
a) PCDDs及 び PCDFs
M+
( M+ 2 ) +
( M+ 4 ) +
TeCDDs
PeCDDs
HxCDDs
HpCDDs
OCDD
319.8965
353.8576
321.8936
355.8546
389.8157
423.7766
457.7377
357.8516*
391.8127*
425.7737
459.7348
TeCDFs
PeCDFs
HxCDFs
HpCDFs
OCDF
303.9016
305.8987
339.8597
373.8207
407.7818
441.7428
341.8567
375.8178
409.7789
443.7399
C 1 2 TeCDDs
C 1 2 PeCDDs
13
C 1 2 HxCDDs
13
C 1 2 HpCDDs
13
C 1 2 OCDD
331.9368
365.8978
13
315.9419
塩素置換体
試
料
13
13
内
標
準
物
質
C 1 2 TeCDFs
C 1 2 PeCDFs
13
C 1 2 HxCDFs
13
C 1 2 HpCDFs
13
C 1 2 OCDF
333.9339
367.8949
401.8559
435.8169
469.7779
13
369.8919
403.8530
471.7750
317.9389
351.9000
385.8610
419.8220
453.7830
353.8970
387.8580
421.8191
455.7801
* PCBsの 妨 害 を 受 け る 恐 れ あ り
b) コ プ ラ ナ PCBs
塩素置換体
M+
( M+ 2 ) +
( M+ 4 ) +
TeCBs
PeCBs
HxCBs
HpCBs
289.9224
291.9194
325.8804
359.8415
393.8025
327.8776
361.8385
395.7995
C 1 2 TeCBs
C 1 2 PeCBs
13
C 1 2 HxCBs
13
C 1 2 HpCBs
301.9626
303.9597
337.9207
371.8817
405.8428
339.9178
373.8788
407.8398
試
料
内
標
準
物
質
13
13
c) ロ ッ ク マ ス 用
質量校正用標準物質
330.9792
380.9760
430.9729
442.9729
(4,5-塩 化 物 定 量 用 )
(5,6-塩 化 物 定 量 用 )
(7,8-塩 化 物 定 量 用 )
(7,8-塩 化 物 定 量 用 )
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ま た 、 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の 内 標 準 物 質 (シ リ ン ジ ス パ イ ク )に 対 す る
濃 度 の 比 と ピ ー ク 面 積 の 比 を 用 い て 相 対 感 度 係 数 (RRFrs)を 算 出 す る 。 同 様 に 内 標 準 物 質
(サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク )の 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )に 対 す る 濃 度 の 比 と ピ ー
ク 面 積 の 比 を 用 い て 相 対 感 度 係 数 (RRFss)を 算 出 す る 。
即ち、
Ci(cs)
RRFcs
=
As
×
Cs
Ai(cs)
Cs : 標 準 溶 液 中 の 分 析 対 象 物 質 の 濃 度
Ci(cs): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の 濃 度
As : 標 準 溶 液 中 の 分 析 対 象 物 質 の ピ ー ク 面 積
Ai(cs): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の
ピーク面積
Ci(rs)
RRFrs
=
Ai(cs)
×
Ci(cs)
Ai(rs)
Ci(rs): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る シ リ ン ジ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の 濃 度
Ai(rs): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る シ リ ン ジ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の ピ ー ク 面 積
Ci(cs)
RRFss
=
Ai(ss)
×
Ci(ss)
Ai(cs)
Ci(ss): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の 濃 度
Ai(ss): 標 準 溶 液 中 の 対 応 す る サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 の ピ ー ク 面 積
5.4
5.4.1
試料の測定
各異性体の同定及び定量
(1) PCDDs/PCDFsは 4.3.4-A(3)又 は 4.3.5-A(3)や 4.3.6-A(3)で 調 製 し た GC-MS分 析 用 試 料 液
を GCの カ ラ ム a)、 b)及 び c)を 装 着 し た GC-MSに 、 コ プ ラ ナ PCBsで は 4.3.4-B(3)又 は 4.3.5B(5)や 4.3.6-B(2)で 調 製 し た GC-MS分 析 用 試 料 液 (注 13)を 所 定 の カ ラ ム d)又 は e)を 装 着 し た
GC-MSに そ れ ぞ れ 1∼ 2μ ç を 注 入 し て 、 5.2の SIM測 定 を 行 い 、 PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ
PCBsの 各 塩 化 物 の ク ロ マ ト グ ラ ム を 記 録 す る 。
(2) 試 料 毎 に ロ ッ ク マ ス の モ ニ タ ー チ ャ ン ネ ル の 変 動 の な い こ と を 確 認 す る (注 22)。
(3) PCDFs又 は コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 質 量 数 及 び 内 標 準 物 質 (注 25)の 質 量 数 の イ オ ン
のピーク面積を求め、試料液中と標準液中のシリンジスパイク内標準物質のピーク面積を
比 較 し て 試 料 液 が 確 実 に GC-MSに 注 入 さ れ た こ と を 確 認 す る (注 27)。
(4) PCDDs/PCDFsと コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 2つ の 質 量 数 の モ ニ タ ー イ オ ン の ピ ー ク 面 積
の 強 度 比 が 、 標 準 液 中 の 強 度 比 及 び 天 然 存 在 比 と ほ ぼ 一 致 す る こ と を 確 認 す る (注 23)。
- 45 -
(5) PCDDs/PCDFs又 は コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 質 量 数 と そ れ に 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ
ー ン ア ッ プ ス パ イ ク : cs)の 質 量 数 の イ オ ン の ピ ー ク 面 積 の 比 を 計 算 し (注 25)、 5.3 で 求 め
た 対 応 す る 相 対 感 度 係 数 (RRFcs)を 用 い て 次 式 に よ り 試 料 抽 出 液 全 量 中 の 各 対 象 塩 化 物 の 量
(Qs;ng)を 算 出 す る (注 10)。
As
Qs
Qcsi
=
×
Acsi
RRFcs
Qs : 試 料 抽 出 液 全 量 中 の 各 分 析 対 象 塩 化 物 の 量 (ng)
As : 試 料 液 中 の 分 析 対 象 塩 化 物 の ピ ー ク 面 積
Acsi: 試 料 液 中 の 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積
Qcsi: 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の 試 料 へ の 添 加 量 (ng)
RRFcs: ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク に 対 す る 分 析 対 象 物 質 の 相 対 感 度 係 数
5.4.2
回収率の算出
(1) 5.4.1で 得 ら れ た 結 果 か ら 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積 と 内 標
準 物 質 (シ リ ン ジ ス パ イ ク :rs)の ピ ー ク 面 積 の 比 及 び 対 応 す る 相 対 感 度 係 数 (RRFrs)を 用 い
て 次 式 に よ り 回 収 率 を 計 算 し 、 ク リ ー ン ア ッ プ の 回 収 率 (Rc)を 確 認 す る (注 10)(注 28)。
Acsi
Rc(%)
=
Qrsi
×
V x F
×
Arsi
100
×
RRFrs
V'
Qcsi
Acsi : 試 料 液 中 の 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積
Qcsi : 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の 試 料 へ の 添 加 量 (ng)
Arsi : 試 料 液 中 の 対 応 す る 内 標 準 物 質 (シ リ ン ジ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積
Qrsi : 対 応 す る 内 標 準 物 質 (シ リ ン ジ ス パ イ ク )の 試 料 液 へ の 添 加 量 (ng)
RRFrs: シ リ ン ジ ス パ イ ク に 対 す る ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク の 相 対 感 度 係 数
V : 粗 抽 出 液 量 (ã )
V': 粗 抽 出 液 の 分 取 量 ( ã )
F : PCDDs/PCDFs測 定 用 と コ プ ラ ナ PCB測 定 用 の 分 割 比 (通 常 は 2分 割 F=2)
(2) 同 様 に 内 標 準 物 質 (サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク : ss)の ピ ー ク 面 積 と 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン
ア ッ プ ス パ イ ク : cs)の ピ ー ク 面 積 の 比 及 び 対 応 す る 相 対 感 度 係 数 (RRFss)を 用 い て 次 式 に
よ り 回 収 率 を 計 算 し 、 サ ン プ リ ン グ の 回 収 率 (Rs)を 確 認 す る (注 10)(注 29)。
Assi
Rs(%)
=
Qcsi
×
Acsi
100
×
RRFss
Qssi
Assi : 試 料 液 中 の 内 標 準 物 質 (サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積
Qssi : 内 標 準 物 質 (サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク )の 添 加 量 (ng)
Acsi : 試 料 液 中 の 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の ピ ー ク 面 積
- 46 -
Qcsi : 対 応 す る 内 標 準 物 質 (ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク )の 試 料 へ の 添 加 量 (ng)
RRFss: ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク に 対 す る サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク の 相 対 感 度 係 数
5.5
検量線の検定
検 量 線 作 成 用 標 準 液 を 5.2の SIM操 作 を 行 っ て 測 定 し 、 5.3と 同 様 に し て 各 異 性 体 の そ れ に
対 応 し た ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク 内 標 準 物 質 に 対 す る 相 対 感 度 係 数 (RRFcs)及 び ク リ ー ン ア
ップスパイク内標準物質のそれに対応したシリンジスパイク内標準物質に対する相対感度
係 数 (RRFrs)を 求 め る 。 こ の 確 認 は 一 日 に 一 回 以 上 行 う (注 30)。
5.6
GC-MS装 置 の 感 度 試 験
標 準 濃 度 系 列 の 中 か ら 中 間 程 度 の 濃 度 の も の 選 び 、 5.4.1の 操 作 を 行 っ て 測 定 し 、 感 度 の
変 動 の な い こ と を 確 認 す る 。 こ の 確 認 は 一 日 に 一 回 以 上 行 う (注 31)。
5.7
操作ブランク試験液の測定
4 で 調 製 し た 操 作 ブ ラ ン ク 試 験 液 に つ い て 5.4.1の 操 作 を 行 っ て 、 PCDDs/PCDFs又 は コ プ
ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 操 作 ブ ラ ン ク 値 を 測 定 す る (注 8 )(注 32)(注 33)。
5.8
トラベルブランク試験液の測定
4 で 調 製 し た ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 液 に つ い て 5.4.1の 操 作 を 行 っ て 、 PCDDs/PCDFs又 は
コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 化 物 の 量 を 測 定 す る 。 本 試 験 は 3試 料 以 上 を 測 定 し 、 平 均 値 を ト ラ ベ ル
ブ ラ ン ク 値 (Qt;ng)と す る (注 8 )(注 33)(注 34)。
5.9
2重測定試験液の測定
4 で 調 製 し た 2重 測 定 用 試 験 液 に つ い て 5.4.1の 操 作 を 行 っ て 、 PCDDs/PCDFs又 は コ プ ラ ナ
PCBsの 各 塩 化 物 の 量 を 測 定 す る (注 9 )(注 35)。
(注 21)キ ャ ピ ラ リ ー カ ラ ム に よ っ て 得 ら れ る ピ ー ク の 幅 は 、 5 ∼ 10秒 程 度 で あ る が 、 1 つ の ピ ー
クに対して十分な測定点を確保するためには選択イオン検出のサンプリングの周期は1秒以下に
しなければならない。1回の測定で設定可能なチャンネルの数は、要求される感度との兼ね合い
となるので、十分に検討した上で設定する必要がある。
クロマトグラム上の各ピークの保持時間を考慮して、時間分割によるグルーピング方式によっ
て測定してもよい。この場合には各グループ毎に、適切な内標準物質ピークが出現するように条
件を設定する必要がある。
(注 22)ロ ッ ク マ ス チ ャ ン ネ ル の ク ロ マ ト グ ラ ム が 波 を 打 つ な ど の 変 動 が あ っ た 場 合 で 、 特 に 分 析
対象成分の出現位置においてこの現象が認められた場合には、正確にピークを捕らえていない可
- 47 -
能性があり大きな精度低下が生じているため、その成分については定量してはならない。主な要
因として、試料の前処理が不十分であることが考えられるので、試料の前処理を再度十分に行い、
ロックマスの変動を最小限に抑える必要がある。
(注 23)SIMク ロ マ ト グ ラ ム 上 の 2つ 以 上 の モ ニ タ ー イ オ ン の ピ ー ク 面 積 比 が 標 準 物 質 の も の と ほ ぼ
同 じ で あ り 、 同 位 体 の 天 然 存 在 比 に 対 し て ± 15%(定 量 下 限 値 未 満 の 濃 度 で は ± 25%)以 内 で あ れ ば
定 量 す る 。 (表 8 参 照 )
ま た 、 得 ら れ た SIMク ロ マ ト グ ラ ム 上 の ピ ー ク の 良 好 な 分 離 と 共 に 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体
とコプラナPCBsの異性体の保持時間が標準物質とほぼ同じであり、対応する内標準物質との
相対保持時間も標準物質と一致することで同定を行うが、標準物質のない異性体の同定について
は 、 文 献 な ど を 参 照 し て 同 定 す る 。 特 に コ プ ラ ナ PCBsで は 、 異 性 体 の 保 持 時 間 に 高 塩 素 化 PCBsの
有 意 に 高 い ピ ー ク が な い こ と 、 フ ラ グ メ ン ト イ オ ン M-Cl、 M-2Clが 影 響 し て い な い こ と 等 を 確 認
す る 。 ま た 、 ノ ン オ ル ト PCBsは カ ラ ム や イ オ ン 源 が 汚 れ て く る と テ ー リ ン グ や 吸 着 現 象 を 起 こ す
ので、ガードカラムの使用・交換やイオン源の洗浄を行う。
表8
塩素原子数による同位体ピークの天然存在比
a) PCDD s及 び PCDFs
M
M+2
M+4
M+6
M+8
M+10
M+12
M+14
TeCDDs
PeCDDs
HxCDDs
HpCDDs
OCDD
77.43
62.06
51.79
44.43
35.54
100.00
100.00
100.00
100.00
88.80
48.74
64.69
80.66
96.64
100.00
10.72
21.08
34.85
52.03
64.48
0.94
3.50
8.54
16.89
26.07
0.01
0.25
1.14
3.32
6.78
0.07
0.37
1.11
0.02
0.11
TeCDFs
PeCDFs
HxCDFs
HpCDFs
OCDF
77.55
62.14
51.84
44.47
34.61
100.00
100.00
100.00
100.00
88.89
48.61
64.57
80.54
96.52
100.00
10.64
20.98
34.72
51.88
64.39
0.92
3.46
8.48
16.80
25.98
0.24
1.12
3.29
6.74
0.07
0.37
1.10
0.02
0.11
b) コ プ ラ ナ PCBs
TeCBs
PeCBs
HxCBs
HpCBs
M
M+2
76.67
61.42
51.22
43.93
100.00
100.00
100.00
100.00
M+4
M+6
49.11
65.29
81.48
97.67
10.83
21.43
35.51
53.09
M+8
M+10
0.93
3.56
8.75
17.38
1.17
3.43
Mは最低質量数の同位体
各 塩 素 数 毎 に そ れ ぞ れ 最 大 強 度 を 示 す イ オ ン を 100%と し た 値
- 48 -
(注 24)こ の 濃 度 範 囲 は 検 出 下 限 付 近 の 値 に 近 い 低 濃 度 を 含 み 、 GC-MSの ダ イ ナ ミ ッ ク レ ン ジ 内 で
なければならない。
(注 25)PCDDs/PCDFsの 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 の 定 量 は 、 対 応 す る 標 準 物 質 を 用 い て 行 う 。
そ の 他 の 異 性 体 と コ プ ラ ナ PCBsの 定 量 に つ い て は 、 PCDDs及 び PCDFsで は 各 塩 化 物 毎 に 存 在 す る
2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 、 コ プ ラ ナ PCBsで は 各 塩 素 置 換 異 性 体 と 同 じ 感 度 を 持 つ も の と し て 計
算する。
(注 26)通 常 の 測 定 で 得 ら れ る RRFと の 比 較 や 濃 度 既 知 の 標 準 試 料 を 同 時 に 分 析 し て 検 量 線 の 検 定
を行う。
(注 27)試 料 液 が 確 実 に 注 入 さ れ た か ど う か を チ ェ ッ ク す る た め 、 試 料 中 の シ リ ン ジ ス パ イ ク の ピ
ー ク 面 積 が 標 準 液 の ピ ー ク 面 積 の 70% 以 上 で あ る こ と を 確 認 す る 。
この範囲から外れた場合は、原因を調査し、その原因を取り除いて再度測定する。
(注 28)ク リ ー ン ア ッ プ ス パ イ ク の 回 収 率 が 50%以 上 120%以 下 の 範 囲 か ら 外 れ る と き は 再 度 粗 抽 出
液から前処理を行い再測定する。その結果、回収率が規定の範囲に達しない場合は、抽出操作か
ら問題があるので原則として欠測扱いとする。
(注 29)サ ン プ リ ン グ ス パ イ ク の 回 収 率 が 70∼ 130%の 範 囲 に な い 場 合 に は 、 測 定 の 信 頼 性 に 問 題 が
あるため、原則として欠測扱いとし、その原因を取り除いた後、再度試料採取を行う必要がある。
(注 30)検 量 線 作 成 時 の 相 対 感 度 (RRFcs及 び RRFrs)に 対 し て ± 20% 以 内 で あ る こ と を 確 認 す る 。 こ
れを超えている時には、その原因を取り除き、再測定を行う。
(注 31)内 標 準 物 質 の 感 度 が 検 量 線 作 成 時 の 感 度 と 大 き く 異 な ら な い こ と を 確 認 す る 。 ま た 、 内 標
準 物 質 と の 相 対 感 度 が 検 量 線 作 成 時 の 相 対 感 度 に 対 し て ± 20%以 内 の 変 動 で あ る こ と を 確 認 し 、
これを超えて感度が変動する場合はその原因を取り除き、それ以前の試料の再測定を行う。
さ ら に 、 保 持 時 間 に つ い て は 比 較 的 短 い 間 に 変 動 (通 常 、 一 日 に 保 持 時 間 が ± 5%以 上 、 内 標 準 物
質 と の 相 対 保 持 比 が ± 2%以 上 )す る 場 合 に は 、 そ の 原 因 を 取 り 除 き 、 そ れ 以 前 の 試 料 の 再 測 定 を
行う。
(注 32)こ の 操 作 は 試 料 測 定 に 先 立 っ て 行 い 、 操 作 ブ ラ ン ク 値 を 大 気 濃 度 に 換 算 し た 値 が 目 標 定 量
下 限 値 (表 1 )を 超 え る 場 合 に は 、 再 洗 浄 や 機 器 の 調 整 を 行 っ た 後 、 再 度 測 定 し 、 操 作 ブ ラ ン ク 値
を十分低減してから試料を測定する。
(注 33)特 定 の 異 性 体 の み が 汚 染 さ れ た 時 、 原 則 と し て そ の デ ー タ は 使 用 で き な い 。 し か し 、 そ の
異 性 体 を 除 い て 計 算 し た 時 の 値 と 元 の 値 の 差 が 元 の 値 の 30%以 下 で あ れ ば 、 そ の デ ー タ を 使 用 し
てもよい。
(注 34)PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 が 操 作 ブ ラ ン ク 値 と 同 等 (等 し い か 小
さ い )と み な せ る 場 合 に は 、 移 送 中 の 汚 染 は 無 視 で き る も の と し て 試 料 の 測 定 値 か ら 操 作 ブ ラ ン
ク 値 を 差 し 引 い て 濃 度 を 計 算 す る 。 移 送 中 の 汚 染 が あ る 場 合 に は 、 3試 料 以 上 の ト ラ ベ ル ブ ラ ン
ク 値 を 測 定 し た 時 の 標 準 偏 差 (s)か ら 求 め た 定 量 下 限 値 (10s: 大 気 濃 度 へ の 換 算 毒 性 濃 度 )の 合 計
量が目標定量下限値以下の場合、およびトラベルブランク値による定量下限値の合計量が目標定
- 49 -
量 下 限 値 よ り 大 き く て も 、 5.4の 測 定 値 が ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 に よ る 定 量 下 限 値 以 上 の 場 合 に は 、
試料の測定値からトラベルブランク値を差し引いて濃度を計算する。
しかし、移送中に汚染があり、またトラベルブランク値による定量下限値の合計量が目標定量
下 限 値 よ り 大 き く 、 し か も 5.4の 測 定 値 が ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 値 に よ る 定 量 下 限 値 よ り 小 さ い 場 合
は原則として欠測扱いとする。この場合には、汚染の原因を取り除いた後、再度試料採取を行う。
図2を参照のこと。
(注 35)測 定 結 果 か ら 算 出 し た 2 つ の 全 毒 性 等 量 濃 度 の 差 が 平 均 値 の 30%以 下 で あ る こ と を 確 認 す
る。この判定基準より大きい時には、測定試料があれば前処理を含めて各々もう1回測定を繰り
返して判定する。再測定の結果が判定基準値以内であればその値を使用する。しかし、再測定で
も判定基準値を超した時には試料採取に問題があるので、原則として欠測扱いとし、その原因を
チ ェ ッ ク し 再 度 併 行 採 取 を 行 う 。 本 測 定 は 、 一 連 の 試 料 採 取 に お い て 試 料 数 の 10% 程 度 の 頻 度 で
行う。
各 異 性 体 に つ い て は 、 定 量 下 限 以 上 の 2 つ の 測 定 値 が 平 均 値 の ± 30% 以 内 で あ る こ と を 確 認 す る 。
6
検出下限値、定量下限値
検出下限値及び定量下限値については、以下の3種類について測定する。
(1)
装 置 の 検 出 下 限 値 (ADL)及 び 定 量 下 限 値 (AQL)
検 量 線 作 成 時 の 定 量 下 限 値 付 近 の 標 準 溶 液 (0.2∼ 0.5ng/ ã )(注 36)の 1μ ç を GC-MSに 注 入
し、得られた測定値から通常の試料を採取した場合の最終液量、吸引ガス量を用いて
PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 試 料 ガ ス 濃 度 を 算 出 す る (注 37)。 こ れ を 5
回 以 上 測 定 し て 求 め た 標 準 偏 差 (s a )か ら 次 式 に よ り PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素
置 換 体 の 検 出 下 限 値 (ADL)及 び 定 量 下 限 値 (AQL)を 算 出 す る 。 た だ し 、 操 作 ブ ラ ン ク 値 の あ
る場合には操作ブランク値を測定し、標準溶液と操作ブランク値測定の内、大きい方の標
準偏差を用いて計算する。
こ の 測 定 は 機 器 の 分 析 条 件 を 設 定 し た 場 合 な ど 必 要 に 応 じ て 必 ず 1回 以 上 行 う (注 38)。
(2)
検 出 下 限 値 (ADL)
=
3s a (pg/m 3 )
定 量 下 限 値 (AQL)
=
10s a (pg/m 3 )
測 定 方 法 の 検 出 下 限 値 (MDL)及 び 定 量 下 限 値 (MQL)
試料測定に用いるのと同量のフィルター及びポリウレタンフォームからの抽出液に、
7.1の 各 塩 素 置 換 体 濃 度 の 算 出 式 に お い て 、 試 料 ガ ス 濃 度 に (1)の 装 置 の 定 量 下 限 値 (AQL)を
代 入 し て 逆 算 さ れ る Qs(ng)に 相 当 す る 標 準 物 質 を 添 加 し ( Qt=0と す る ) 、 ク リ ー ン ア ッ プ
後 、 GC-MS測 定 を 行 う 。 得 ら れ た 測 定 値 か ら 通 常 の 試 料 を 採 取 し た 場 合 の 最 終 液 量 、 吸 引 ガ
ス 量 を 用 い て PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 試 料 ガ ス 濃 度 を 算 出 す る
- 50 -
( 注 37) 。 こ れ を 5 回 以 上 行 っ た 時 の 標 準 偏 差 (s m )か ら 次 式 に よ り PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ
ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 の 検 出 下 限 値 (MDL)及 び 定 量 下 限 値 (MQL)を 算 出 す る 。 こ の 測 定 方 法
の検出下限値及び定量下限値は、前処理操作及び測定条件によって変動するため、ある一
定の周期で確認し、常に十分な値が得られるように管理する。また、前処理操作及び測定
条件を変更した時には必ず確認する。
(3)
検 出 下 限 値 (MDL)
=
3s m (pg/m 3 )
定 量 下 限 値 (MQL)
=
10s m (pg/m 3 )
試 料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)及 び 定 量 下 限 値 (SQL)
試 料 測 定 の ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に お い て 、 ピ ー ク の 近 傍 ( ピ ー ク の 半 値 幅 の 10倍 程 度 の 範
囲 ) の ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ を 計 測 し 、 そ の 標 準 偏 差 の 2 倍 を ノ イ ズ 幅 (N)と す る か 、 経 験
的 に ノ イ ズ の 最 大 値 と 最 小 値 と の 幅 は お よ そ 標 準 偏 差 の 5 倍 と な る た め 、 そ の 幅 の 2/5 を
ノ イ ズ 幅 (N)と す る 。 一 方 、 ノ イ ズ の 中 央 値 を ベ ー ス ラ イ ン と し 、 ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ を
基 に ピ ー ク ト ッ プ を 決 め て こ の 幅 を ピ ー ク 高 さ (S)と す る 。 ノ イ ズ 幅 に 対 し て 3 倍 (S/N
= 3)に 相 当 す る 高 さ に 相 当 す る ピ ー ク の 面 積 を 標 準 液 の ク ロ マ ト グ ラ ム か ら 推 定 す る 。 そ
の ピ ー ク 面 積 を 用 い て 定 量 式 よ り Qsを 求 め 、 7.1の 塩 素 置 換 体 濃 度 の 算 出 式 に 代 入 し て 、 試
料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)を 算 出 す る ( Qt=0と す る ) ( 注 37) 。
同 様 に し て ノ イ ズ 幅 の 10倍 (S/N=10)に 相 当 す る 高 さ の ピ ー ク 面 積 を 推 定 し 、 そ の ピ ー ク
面 積 か ら 試 料 測 定 時 の 定 量 下 限 値 (SQL)を 算 出 す る 。
ク ロ マ ト グ ラ ム 上 に お い て 、 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 の 中 で ピ ー ク の 検 出 さ れ な か っ
た も の に つ い て は 、 そ の 異 性 体 の ピ ー ク の 近 傍 の ベ ー ス ラ イ ン の ノ イ ズ (N)を 測 っ て ノ イ ズ
幅 を 求 め 、 上 と 同 様 に 試 料 測 定 時 の 検 出 下 限 値 (SDL)及 び 定 量 下 限 値 (SQL)を 算 出 す る 。
これらの検出下限値及び定量下限値は、測定方法の検出下限値及び定量下限値以下でな
ければならない。超える場合は、前処理操作、測定操作に問題がなかったかどうかを確認
し 、 再 測 定 す る 。 ま た 、 こ の 検 出 下 限 値 や 定 量 下 限 値 は 、 試 料 量 、 前 処 理 操 作 (濃 縮 比 等 )
に よ り 異 な る た め 、 試 料 毎 に 算 出 す る 必 要 が あ る (注 39)。
(注 36)コ プ ラ ナ PCBsは ブ ラ ン ク 値 が 高 い 場 合 も あ り 、 し か も 一 定 し な い た め 定 量 下 限 値 が 変 動 す
る恐れがある。むしろやや高めの濃度の標準溶液を用いることにより少し高めでも大体一定の定
量下限値を得た方が良い。
(注 37)原 則 と し て 、 通 常 用 い る 条 件 で 算 出 す る が 、 実 試 料 が こ れ と 極 端 に 異 な る 場 合 に は 、 そ の
条件を用いる。
(注 38)PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩 素 置 換 体 か ら 算 出 し た 定 量 下 限 値 (全 毒 性 等 量 濃 度 )
が 目 標 定 量 下 限 値 (表 1 参 照 )よ り 大 き い 時 に は 、 器 具 、 機 器 等 を チ ェ ッ ク し て 、 目 標 定 量 下 限 値
- 51 -
以下になるように調整する。しかし、定量下限値は目標定量下限値に関係なく、将来の濃度変化
を見るためにできるだけ小さくしておく。
(注 39)低 濃 度 試 料 の 場 合 、 定 量 下 限 値 が 目 標 定 量 下 限 値 を 満 た し て い る こ と を 確 認 す る 。 満 た し
ていない時には試料のクリーンアップからやり直す。
7
濃度の表示
7.1
塩素置換体濃度の算出
5.4.1で 得 ら れ た 定 量 値 か ら 次 式 を 用 い て 大 気 中 の PCDDs/PCDFs及 び コ プ ラ ナ PCBsの 各 塩
素置換体の濃度を算出する。
(Qs− Qt) × 1000
C
=
V
×
293/(273 + t) × P/101.3
C: 20℃ に お け る 大 気 中 の 各 塩 化 物 の 濃 度 (pg/m 3 )
Qs: 粗 抽 出 液 全 量 中 の 各 塩 化 物 の 量 (ng)
Qt: ト ラ ベ ル ブ ラ ン ク 試 験 用 粗 抽 出 液 全 量 中 の 各 塩 化 物 の 量 (ng)
トラベルブランク試験、操作ブランク試験を行わない場合には、前もって管理し
ているトラベルブランク値または操作ブランク値を用いる。
V: 試 料 採 取 量 (m 3 )、 即 ち 、 (Fs + Fe) × St/2
こ こ で 、 Fs: 開 始 時 の 流 量 (m 3 /min)、 Fe: 終 了 時 の 流 量 (m 3 /min)、 St: 捕 集 時 間
(min)。 積 算 流 量 計 を 使 用 し た 時 は 、 そ の 読 み を 採 取 量 と す る
t: 試 料 採 取 時 の 平 均 気 温 (℃ )、 湿 式 型 積 算 流 量 計 を 使 用 し て い る 時 に は 積 算 流 量 計 の
平 均 水 温 (℃ )(注 40)。
P: 試 料 採 取 時 の 平 均 大 気 圧 (kPa)(注 40)。
PCDDs及 び PCDFsの 同 族 体 濃 度 は 、 四 塩 化 物 か ら 八 塩 化 物 の 各 同 族 体 と そ の 総 和 を 表 示 す
る 。 各 同 族 体 濃 度 は 、 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 濃 度 と そ れ 以 外 の 異 性 体 濃 度 の 総 和 で 表
示 し 、 異 性 体 濃 度 は 、 各 2,3,7,8-位 塩 素 置 換 異 性 体 (17異 性 体 : 表 2 参 照 )の 各 濃 度 に つ い
て 表 示 す る 。 汚 染 の 由 来 を み る 場 合 等 、 必 要 に 応 じ て 1,3,6,8-TeCDD、 1,3,7,9- TeCDD、
1,2,7,8-TeCDF等 そ の 他 の 異 性 体 の 各 濃 度 に つ い て も 定 量 し 表 示 す る 。
コ プ ラ ナ PCBsは 、 異 性 体 (ノ ン オ ル ト 異 性 体 4種 、 モ ノ オ ル ト 異 性 体 8種 )の 濃 度 と ノ ン オ
ル ト 置 換 体 濃 度 の 総 和 、 各 オ ル ト 置 換 体 濃 度 の 総 和 及 び 全 コ プ ラ ナ PCBsに つ い て 表 示 す る 。
各異性体の濃度は、定量下限以上の値はそのまま記載し、定量下限未満の値については
以下のようにする。検出下限以上・定量下限未満の値は定量下限以上の値と同等の精度が
保証できない値であることが分かるような表示方法(例えば、括弧付きにする等)、検出
下 限 未 満 の 値 は ( < 検 出 下 限 値 (数 値 )) の よ う に 記 載 す る 。 全 測 定 濃 度 を 算 出 す る 時 に は 、
検 出 下 限 以 上 で は そ の 測 定 濃 度 、 検 出 下 限 未 満 の も の は 検 出 下 限 値 の 1/2 を 用 い て そ の 総
和を求める。
表示方法は表3の通りとし、表5に測定結果の例を示した。
- 52 -
7.2
毒 性 等 量 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Quantity;T E Q )
定 量 さ れ た 濃 度 は 毒 性 等 価 係 数 (2,3,7,8-TeCDD Toxicity Equivalency Factor;TEF)を 乗
じ て 毒 性 等 量 (pg-TEQ/m 3 )を 算 出 す る 。
検 出 下 限 以 上 の 測 定 値 で は 、 測 定 濃 度 に TEFを 乗 じ て 毒 性 等 量 を 算 出 し 、 検 出 下 限 未 満 の
場 合 に は 検 出 下 限 値 の 1/2 に TEFを 乗 じ て 見 積 り 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ れ ら の 総 和 を 全 毒
性 等 量 と す る 。 ダ イ オ キ シ ン 類 の TEFは 表 4 の 通 り で あ る 。
7. 3
数値の取扱い
濃度の表示における数値の取扱いは、特に指定がない場合には以下のようにする。
a) 濃 度 に つ い て は 、 JIS-Z8401に よ っ て 数 値 を 丸 め 、 有 効 数 字 を 2 桁 と し て 表 し 、 検 出 下
限未満の場合には検出下限未満であったことを表示する。但し、試料ガスにおける検出
下限の桁までとし、それより下の桁は表示しない。
b) 検 出 下 限 に つ い て は 、 JIS-Z8401に よ っ て 数 値 を 丸 め 、 有 効 数 字 を 1 桁 と し て 表 示 す る 。
c) 毒 性 等 量 の 算 出 に 当 た っ て は 、 各 異 性 体 の 毒 性 等 量 を 計 算 し 、 そ の 合 計 の 値 を も っ て
有 効 数 字 2 桁 で a)と 同 様 に 数 値 を 丸 め る 。 つ ま り 、 個 々 の 異 性 体 の 毒 性 等 量 に つ い て は
丸めの操作を行わない。
(注 40)最 寄 り の 気 象 台 等 、 適 切 な 観 測 機 関 の デ ー タ を 用 い て も よ い 。
- 53 -