平成 24 年度 家庭用品健康被害防止調査 有機顔料を用いた

平成 24 年度 家庭用品健康被害防止調査
有機顔料を用いた家庭用品中の PCB の実態調査
国立医薬品食品衛生研究所生活衛生化学部 河上強志、伊佐間和郎、五十嵐良明
-------------------------------------------------------------------------------概要
平成 24 年 2 月および 3 月に経済産業省より、製造過程で副生したポリ塩化ビフェニル
(Polychlorinated biphenyls: PCBs)が 50 mg/kg を超えて含まれる有機顔料の製造等の中
止および回収等の行政指導が実施され、新規に 50 mg/kg を超える副生 PCBs を含有する有
機顔料が流通する可能性は低くなった。一方で、これまでに製造された副生 PCBs を含む
有機顔料の家庭用品への使用実態は不明であるため、本研究では主に文具や印刷物を対象
に 60 製品中の PCBs 量を調査した。その結果、27 試料から PCBs が同族体として 0.01 μ
g/g 以上で検出された。
また、総 PCBs 濃度として 0.1 μg/g 以上検出されたのは 7 試料で、
最も濃度が高かったのはクレヨン(黄色)の 6.1 μg/g であった。調査対象とした 4 色(赤・
緑・黄・青)では、青以外の 3 種類から総 PCBs 濃度として 0.1 μg/g 以上の PCBs が 1
試料以上検出された。検出された PCBs の同族体・異性体については、有機顔料中の代表
的な副生 PCB として知られている 3,3'-dichlorobiphenyl(#11-DiCB)が主要な成分であっ
た。そのため、本調査で検出された PCBs は主に有機顔料中の副生 PCBs であると考えら
れた。最も PCBs 濃度の高かったクレヨン(黄色)を代表例として、乳幼児の経皮暴露量、
mouthing 並びに誤食による経口曝露量を推定した。その結果、誤食による経口曝露量での
み WHO の一日耐容摂取量(0.02 μg/kg 体重/day)を上回った。誤食による経口曝露量の
推定は、PCBs を含有するクレヨンを毎月 2 cm 誤食する暴露シナリオに基づいている。し
かし、実際には誤食されるクレヨンが常に高濃度の PCBs を含有する可能性は低いと考え
られ、その他の曝露経路も含めて、副生 PCBs を含む有機顔料を用いたクレヨンによる健
康リスクは小さいものと推察された。
-------------------------------------------------------------------------------学会発表
河上強志・伊佐間和郎・岩田直樹・高菅卓三・五十嵐良明:家庭用品に含まれる有機顔料
由来 PCBs の実態調査, 第 22 回環境化学討論会 (2013.7, 府中)
河上強志・伊佐間和郎・岩田直樹・高菅卓三・五十嵐良明:有機顔料に由来するポリ塩化
ビフェニル
(PCBs)
の家庭用品中での実態, 第 50 回全国衛生化学技術協議会年会 (2013. 11,
富山)