なぜリバウンドするのか、どう対応すべきか

第3回西日本肥満研究会肥満症治療講習会講演要旨 2015
〜体重リバウンドへの対策〜
なぜリバウンドするのか、どう対応すべきか
大 分 医 科 大 学 名 誉 教 授 坂 田 利 家
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第3回西日本肥満研究会肥満症治療講習会講演要旨 2015
講演要旨
体 重 の リ バ ウ ン ド が 肥 満 症 で 重 視 さ れ る の は 、 病 態 悪 化 の 一 因
と な る か ら で あ る 。こ の こ と は 生 活 習 慣 病 に お い て も 当 て は ま る 。
従って、肥満症を含む生活習慣病の治療ではもっとも重要な課題
なのである。それだけに効果的な治療法の開発が強く求められて
いる。この医療や社会の要請とは裏腹に、現状を顧みると残念な
ことに事態は変わらず、改善の萌さえみえない。
こ の よ う な 現 況 を 考 慮 し 、 本 講 習 会 で は こ の 難 問 を あ え て 取 り
上げることにした。体重リバウンドはなぜ起こるのか、その真の
原因とは何か、これまで取り組んできた対応策に誤りはなかった
のか等々、治療の在り方を改めてじっくりと見直してみる、これ
が今回の目的である。通常、講習会と名打った集会では、聴衆者
が既知の知識を少しでも多く習得し、具体的な実施方法を習熟出
来るようにという目的で開催される。この趣旨からすると、今回
の試みは既知の学識や手段を学ぶという本来の目的にそぐわない
のかもしれない。体重リバウンドそのものの本質でさえ把握でき
ているとは言えないのが現状だからである。とはいえ、体重リバ
ウンドを避けた治療など在り得ない。講習会でありながら、この
難題を取り上げた由縁がここにある。
体 重 の リ バ ウ ン ド に は 大 別 す る と 、 ① 暴 飲 暴 食 に 象 徴 さ れ る 生
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第3回西日本肥満研究会肥満症治療講習会講演要旨 2015
活リズムの乱れで誘発されるタイプ、②過激な運動や過度な節食
を契機に起こるタイプ、この2種類がある。治療が難航するとい
う特徴から、いずれも同質のように受け取られるが、治療の成否
という観点からすると、まったく質を異にする。前者の治療は可
能だが、後者の治療は不可と断定できるからである。
肥 満 症 治 療 に と っ て 大 切 な の は 、 減 量 し た 体 重 を 如 何 に し て 長
期間維持するかにある、そう私は主張してきた。治療者は誰でも
そ う 確 信 し て い た の で 、こ の 原 則 に 合 致 す る 治 療 法 を 求 め 、5 0 年
近く悪戦苦闘した。しかし実用に耐える治療法を開発することは
できなかった。その最大の原因は、タイプ②に起因するリバウン
ドは生命維持のために誘発される生体防御機能の一環なのだとい
う、この洞察を欠いていたことによる。
本 会 で は 、 治 療 崩 壊 に つ な が る タ イ プ ② の リ バ ウ ン ド は な ぜ 起
こるのか、この危険をおかさないための方策、治療の主目的が内
臓脂肪の燃焼にあることの意義、タイプ①リバウンドも踏まえな
がら内臓脂肪という標的を見据えた治療の枠組みをどのように創
るか、このような内容に添って話しを進めたい。リバウンド対策
には的確なコンセプトが必要である。しかしそれに劣らず、治療
法が継続に耐えるパワーと具体性を備えているかも重要である。
その意味で、可能な限り症例を提示しながら理解を深めたい。
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