抗がん剤の副作用に伴う 皮膚障害のスキンケア

抗がん剤の副作用に伴う
皮膚障害のスキンケア
平成27年5月18日
緩和ケア病棟看護師
皮膚障害が起こるのはなぜ?
抗がん剤の投与
皮膚や爪の新陳代謝を行う細胞
汗腺、皮脂腺がダメージを受ける
正常なターンオーバーが
妨げられる
表皮のバリア機能が低下
皮膚の乾燥・落屑・亀裂・菲薄化・
色素沈着などが起こる
手足症候群とは・・・
抗がん剤によって、
手や足の皮膚細胞が障害され
ることにより起こる副作用
手足症候群アトラス<第3版>
手足症候群にみられる症状
・手足のしびれ、痛みなどの感覚の異常
・手や足の皮膚の乾燥発赤・紅斑、腫れ、色素
沈着、角化(皮膚表面が硬く厚くなりガサガサ
の状態)
・亀裂、水疱
・爪の変形や色素沈着など
手足症候群グレード判定基準
↓
日常生活に支障を
きたしていない
↓
↓
痛みをともない日常
生活に制限をきたす
強い痛みがあり
日常生活ができない
EGFR阻害薬による皮膚障害(RASH)とは・・・
• 症状としては、発疹(ざ瘡様皮疹など)、皮膚
乾燥、爪囲炎などが主に観察される。
• 皮膚障害の発生機序として、EGFRは、皮膚、
毛包、爪の増殖や分化に関与していると言わ
れており、活性化EGFRが著しく減少すると角
化異常が起こり、毛包の炎症、皮膚の乾燥、
皮膚炎及び爪囲炎が生じると言われている。
• アレルギー性や中毒性の皮膚障害とは区別
される。⇒再投与可能
コンセンサス癌治療 VOL.12NO.4
予防的スキンケアの実際
1.清潔
2.保湿
3.外的刺激からの保護
1.清
潔
・低刺激性、弱酸性の石けんを使用
・泡立てた泡で優しく洗う
・石けん成分が残らないように洗い流す
・拭きとりは擦らずおさえながら、優しく拭き取る
・乾燥を防ぐため、入浴やシャワーはぬるめの
お湯にする
泡がpoint!
2.保
湿
・シャワーや入浴の後、水分を拭き取った後に
保湿剤を塗る(できれば5~10分以内がよい)
・保湿剤はたっぷりと塗る
・手洗いや水仕事の後はその都度塗る
・就寝前は多めに塗り、手袋や靴下を着用する
※1日に5回以上が望ましい
3.外的刺激からの保護
・靴は柔らかい素材で足に合ったものを履く
・きつい靴下、締め付ける衣類は着用しない
・長時間の歩行や立ち仕事は控える
・外出時には日傘や帽子を着用し、日焼け止め
クリームを使用して日焼けを予防する
事
例
61歳 女性
病名:肺癌、癌性胸膜炎、
転移性肝腫瘍、腹膜播種
現病歴
呼吸困難、背部痛出現し、A病院にて肺癌の
診断を受ける。
X+1年 ゲフィチニブを開始したが、薬剤性肝機能障害
出現し休薬。セカンドオピニオンでBセンター、C病院、D
病院受診。
ゲフィチニブを隔日投与で開始するも肝機能障害
出現し、エルロチニブへ変更。CEA上昇、多発骨転移、
貧血もありエルロチニブ継続し、アファチニブマレイン酸塩を
開始。
呼吸困難、腹部膨満にて当院に緊急入院となった。
x年
入院時の皮膚の状態
・爪囲炎~グレード2~
爪囲炎
【病態】
・指趾の爪甲周囲に紅斑に伴う色素沈着が見
られ、陥入爪の後発部位に亀裂を生じて疼痛
を伴うようになる。
・さらに腫脹や肉芽を生じるが、細菌感染によ
る炎症性肉芽形成ではない。出血や浸出液が痂
皮を形成するようになると疼痛は著明となり、
QOLは極めて低下する。靴を履くことや手仕事が
困難となることもある。
通常の陥入爪との相違点
①母趾以外にも(手指でも)
見られる。
②爪甲が薄くなり、軟化して
いる事が多い。
③陥入爪の後発部位(肥満
や運動による過度な荷重、
きつい靴、外反母趾、深爪
などの合併)がない場合で
も発症することがある。
皮膚障害のグレードごとの処置
~爪囲炎~
看護の実際
• 入院前の10/8、A皮膚科を受診し、軟膏の
処方あり
• 全身の保湿:尿素軟膏
• 爪囲炎:石鹸洗浄後、テーピング、
ジフルコルトロン吉草酸エステル軟膏+
ナジフロキサシン軟膏Mix塗布
テーピングの手順
①伸縮性のあるテープを必要量カットする
・手指:幅1~1.5㎝、長さ5~6㎝
・足趾:幅1~1.5㎝、長さ10㎝
②炎症部位側の爪の
横にテープを貼り、
爪と皮膚を引き離す
ように引っ張る。(炎
症部位は覆わない)
③引っ張りながら、ら
せん状に巻き付ける。
結
果
今回は、患者の全身状態悪化により、
皮膚障害の治癒までの過程は得られ
なかった。
まとめ
・適切な予防的スキンケア(清潔、保湿、
外的刺激からの保護)を継続して行うこと
で、皮膚症状を軽く抑えたり、予防するこ
とができる。
・入院時や日々の観察で皮膚症状をアセ
スメントし、必要な処置を早期に行うことが
大切である。