音蔵 -伝え響くかたち- 指導教員 杉本 洋文 教授 7AEB3111 黒木 未来 4. はじまりとする蔵 1.消え行く文化 旧東海道は、街道交流とともに宿場町には商業が栄え、 対象とする蔵は、藤沢宿が栄えた江戸~大正時代の中 統一した街並みが形成された。多くの蔵が存在していた でも比較的多く造られた大正時代のものと考えられる。 この蔵は、3 間×12 間で3つの蔵が連蔵している。外装 が、現在ではほとんどが閉まり、活用されることなく減 はトタンで覆われているが土蔵造りで、屋根は瓦であっ 少し続けている。藤沢宿も例外でなく、現在は約 20 箇所 たことが分かった(Fig.3)。 が残っている。中でも、藤沢本町の周辺に残る蔵のほと んどが個人的な活用方法にとどまり、蔵は街との関係を 失っている。(Fig.1)。 Fig.1 藤沢本町での蔵の位置 2.文化の普及を目指す試み 5. 音を楽しむ場をつくる この蔵の空間性を活かして、用 途をホール、個人練習室、カフェ にコンバージョンし、新たに奏者 と聞き手の双方が音楽を楽しむ場 Fig.4 既存の蔵 をつくる。蔵の木造の架構をその まま残して、空間を確保するために、内部にボイドをつ くり、鉄骨フレームで補強しながら、新たな空間構造を 内包させ、新旧の架構、素材の対比で新たな2重構成の 空間を創出する(Fig.4) 。 藤沢市を代表文化の一つに音楽がある。「藤沢市民オペ ラ」は、1973 年に第 1 回公演が行われ、日本で最古の市 民オペラである(Fig.2)。その歴史から、現在でも藤沢音楽 祭が継続的に開催されるなど、市民の音楽活動も盛んで あり、市民への文化的価値の見 Fig.5 既存と新たな空間 直しの役割も担っている。活動 場所は主に公民館や藤沢駅前広 6. 蔵から広がる音楽の街へ 場だが、場所の不足も否めない。 街に点在する蔵をコンバージョンして、音のネットワ ークを形成する。蔵を繋ぐ裏の路地空間を、 「音ロード」 Fig.2 初公演時の写真 に位置付け、既存の路地空間の舗装を木・石・鉄などの 3. 継承の形 素材を変え、足音が多様な聞こえ方を生み出すフットサ 音楽の文化を継承するために蔵の活用を考える。音楽 ウンドスケープをつくる。それに神社の木々や生活の音 活動の日常的な場とし、地域の生活環境に近い拠点とす が加わり、「音ロード」に隣接する住宅は、庭の延長とし る。市民に地域価値を認識させ、文化の継承と蔵の保存 て管理され、維持とともにコミュニケーションの場とし 法を示す。 て交流を促す。蔵が音楽に溢れた「音蔵」として活用さ れることによって、市民が文化的な意識を高め、「音ロー Fig.3 既存の断面図 ド」によって街全体のコミュニケーションの潤滑油とな り、街を一体化させて行く。 OTOGURA Shape of sounds spread KUROKI miku 2010 年度卒業設計梗概集 東海大学工学部建築学科
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