太陽光発電システム複数台連系時における運転特性 −電圧上昇抑制

太陽光発電システム複数台連系時における運転特性
−電圧上昇抑制特性のモデル化−
石川 崇*, 黒川 浩助(東京農工大学) 岡田 有功, 滝川 清(電力中央研究所)
Operation Characteristics in Multiple Interconnection of Photovoltaic Power Generation System
- Modeling of Grid Voltage Control Performance Takashi Ishikawa, Kosuke Kurokawa (Tokyo University of Agriculture and Technology)
Naotaka Okada, Kiyoshi Takigawa (Central Research Institute of Electric Power Industry (CRIEPI))
1
はじめに
近年、低圧系統連系型太陽光発電システム(以下PV
システム)は、コスト低減や国の補助政策などもあり、
1km
1 Zs 2 Zs 3
0 Tr0
Tr1 12
一般需要家に普及が進んでいる。本システムの普及が進
むと、同一フィーダ内に複数台のPVシステムが連系さ
11
Tr2 13
Tr11 21
負荷
PV
れる可能性が生じる。複数台連系時には、系統連系ガイ
ドライン(1)に基づいて、配電線の電圧を適正値(101V
図 1 配電線モデル
±6V、202V±20V)に保つよう定められている。その
Fig.1 Distribution system model
ため、PVシステムは進相無効電力制御または、有効電
P 入力電力
を減らす
P
0
適正値
を満たす?
が実際の系統に複数台連系された場合、配電系統側から
No
1
P
2
見た適正値を越える地点の数や、PVシステム側から見
Yes
t1 t2 時間
結果出力
た発電出力の抑制の程度は、定量的に把握されていない。
そこで、本研究では、複数台連系時のPVシステムの
図 2 ガイドラインモデルフローチャート
Fig.2 Flow chart of guide line model
運転特性について、シミュレーション解析した。
低圧ノード
10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
シミュレーションモデル
7.4
217
2.1 配電線モデル
示す。高圧配電線を 11 区間(ノード)に分割し、各区
間に柱上変圧器を介して低圧配電線を配置した。低圧ノ
ード 1 つあたり 180 戸の需要家が連系するとし、1 軒あ
たりのPVシステム設置量は 3kW と仮定した。
配電線モデルに連系するPVシステムは、日射量を入
7.2
212
7.0
207
6.8
202
最小需要時(高圧)
6.6
6.4
192
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10 11 12
高圧ノード
力データとする機能及び、ガイドラインによる電圧抑制
図 3 配電線モデル電圧分布
機能を付加した。ガイドラインモデルについて図 2 に
Fig.3 Grid Model Voltage
示す。ノード電圧が適正値を越えていた場合、PV発電
電力を減少させ、ノード電圧を維持するものである。
197
低圧配電線電圧(V)
複数のPVシステムが連系した配電線モデルを図 1 に
最小需要時(低圧)
高圧配電線電圧(kV)
2
入力
電力
潮流計算
力制御による電圧抑制機能(2)(3)を持つ。
しかし、これらの電圧抑制機能を有するPVシステム
2.2 計算条件
実際の配電系統は、電圧を適正値に維持するよう設計
配電線モデルの全ノード電圧を求めるために、電力潮
されている(4)。配電線モデルにおいても、電圧を適正
流計算を行った。入力データとして、中間期における 1
値に維持するようにノード 16 で、変圧器のタップを
日の日射量と負荷量(住宅地域)を与えた。これは、負
6750V/210V から 6450V/210Vに切り替えた。また、ノ
荷量が夏期に比べて少ない中間期に、電圧が適正値を越
ード 0 からの送り出し電圧を負荷量に応じて変化させ、
えることが多くなるからである。解析パラメータとして、
最大需要(2100kW/フィーダ)時は送り出し電圧を 6900
PVシステムの普及率(戸数に対する割合)を 0∼50%
Vとした。配電線モデルの電圧分布を図 3 に示す。
と変化させた。
シミュレーション結果
3.1 適正値超過地点
PV普及率に対して適正値を越える地点の割合を図 3
に示す。この場合、ある時刻において、配電線電圧が適
正値を越える割合を適正値超過率とする。普及率の増加
に伴い、適正値超過率が増加している。これは、PV普
及率が増加すると、PVシステムの電圧上昇を抑制する
機能が働く地点が増えることを意味している。
普及率 40%と 50%の適正値超過率が等しい。これは、
PV発電電力(kW/軒)
3
2
1.6
ノード16で
タップ切り替え
1.2
0.8
0.4
0
0
電圧が適正値を超える地点は、タップ切り替え後のノー
4
ノード12
ド 16∼ノード 21 の 6 ヶ所に限られているためである。
20
24
時刻(時)
図 4 PV発電電力パターン(中間期)
14
Fig.4
適正値超過率(%)=
12
適正値を超えた地点の数
10
6
4
2
0
0
10
20
30
PV普及率(%)
40
40
PV発電抑制量
Pl
oss
= 損失率(%)
時刻
30
20
Pm ax
最大PV発電量
時刻
10
50
0
図 3 適正値超過率(中間期)
Fig.3
50
PV発 電 電 力 量
損失率(%)
<低圧ノード数(
10)
×時間(24)⇒240>
8
Pattern of PV generated power
60
適正値を超える可能性のある地点の数
PV発 電 電 力 量
超過率(%)
8
12
16
ノード16 ノード21
0
10
ノード12
The rate of exceeding suitable value
20
ノード16
30
40
50
%)
ノード21 PV普及率(
図 5 損失率(中間期)
3.2 PV発電電力抑制
Fig.5
The rate of loss
PV普及率 40%におけるPV発電電力(1 軒あたり)
り、13 時になると抑制が終わる。これは、住宅地域で
4 むすび
本論文では、電圧上昇抑制モデルを追加した、PVシ
は 13 時から負荷量が増加しはじめ、PVシステムが発
ステム複数台連系時の配電線モデルにおける運転特性を、
電した分は負荷ですべて消費され、電圧上昇が起きない
特に有効電力制御に注目してシミュレーション解析評価し
ためである。
た。この結果より、
の日変化を図 4 に示す。9 時からPV出力の抑制が始ま
ノード 16 と 21 の変化を比べると配電線末端部であ
(1) 同一フィーダ内に、PVシステムが複数連系され
るノード 21 の方が抑制量が大きいことがわかる。これ
は、配電線末端電圧は、本来、線路インピーダンス等に
る場合、配電線電圧が適正値を越える地点が現れる。
(2) PVシステムの普及が進むと、ガイドラインによ
より減少する。しかし、複数台連系時ではPVシステム
による逆潮流により電圧が底上げされ、フェランチ効果
が起きたことと同じ状態になる。その状態で、底上げさ
れた電圧が柱上変圧器によって昇圧されることで、適正
る抑制量が増加する。
ことが定量的に明らかになった。
今後、無効電力制御による電圧上昇抑制方式をモデル化
し、解析を行う予定である。
値を越えてしまうためである。
PV普及率に対する損失率の変化を図 5 に示す。損失
文献
率とは、日射量による最大発電電力量に対する発電抑制
(1)
量の割合とする。PV普及率の増加に伴い、損失率が増
(2)
(3)
松岡他:
「太陽光発電システムの電圧調整機能特性試験結果」
、
平 10 日本太陽/風力エネルギー学会、pp89−92(1998)
発電抑制量が増加していることを示している。同一フィ
ーダ内でPV普及率が 40%の場合、配電線末端(ノー
嶋田他:「PV複数台連系時における無効電力による連系点
電圧制御特性」
、平 10 電気学会B部門大会、pp474−475
加している。これは、本来PVシステムにおいて発電さ
れるべき発電量が、電圧上昇抑制機能によって制限され、
資源エネ庁:「系統連系技術要件ガイドライン解説書」
(平9)
(4)
電力中央研究所、関西電力:平成 10 年度 NEDO 委託業務
ド 21)に設置されたPVシステムの発電量は、最大 26%
成果報告書 太陽光発電システム実用化技術開発「太陽光発
の損失が生じる可能性がある。
電システムの実証研究」(高密度連系技術の研究)