「知恵装備」し、`システム〔系〕`

“ロジ”達の‘モノ’ウォッチング
‘Object’-Watching by “Logistics’s”
MegumiCoLabo
IT 装備の深化でロジスティクス・プロセスも変質へ
れた二足歩行ロボや会話ロボ領域でも、高速走行や
-「見える化」に「知恵装備」し、‘システム〔系〕’へ-
自然な会話へと新しい開発が進みます〔日経産業〕。
NHK の紅白歌合戦もドローンやロボットが盛り上
げました。1970 年代からの産業用ロボットブームの
2015.1 “伴歩人 Co-Reflector” 相田 剛
後、2000 年からの犬型ロボットなどは産業として開
花しませんでしたが、ロボットサッカー大会「ロボカッ
新年がスタートし、一年の計を初め様々な夢や決
プ」はもう 20 年も経っています。今年は第 3次ブーム
心が飛び交います。今回は“ロジ”達が観る IT 装備
として、ロボットがビジネスとしての正念場を迎える、
の進展や深化について、日経産業新聞 2015.1 の記
といいます〔多部田俊輔氏 日経産業〕。
事〔以下、日経産業と略記〕を中心に観てみました。
日経テクノロジーと日経エレクトロニクスの各オンラ
今年は、ドローン〔無人飛行機〕を始め、ロボット・ビ
イン誌の編集長が注目するのは、それぞれ、「萌芽
ジネスの正念場の年であり、また IoT〔モノのインター
する新しい産業として、ウエラブル、ロボット、Social
ネット:Internet of Things〕が産業や事業、社会生活
Device、航空・宇宙、ビッグデータ、3D プリンターな
にまで広く浸透していく、といわれています。
ど」と「業界が進みつつある方向、IoT」です。
それは、‘モノ’や仕組みの 「スマート化」という方
日経産業新聞は、昨年末「ロボティクス」シリーズを
向であり、人と‘モノ’とをつなぐ「サービス」の深化で
特集し、年初には「IoT 商機をつかむ」と題したトップ
もあます。そして使用価値というサービスを担うロジス
インタヴューがシリーズで掲載されていました。
ティクスを大きく変質させるのです。新しく存在が創ら
米国ではドローンの商用利用に連邦航空局の許
れ、つながり、さらにそれらを見て考えるという新しい
可が必要ですが、ドローン・ジャーナリズム(鳥瞰撮影
Virtual Entity が創出され、グローバルワイドに「新し
した報道・スポーツ映像などの放送)や遠隔設備管理な
い関係性」をもった‘システム〔系〕’が産出されていき
どのニーズを背景に、議会や民間企業からの要請も
ます。デジタル社
あり、その飛行を航空管制システムに統合する準備
会の側面をもつ
が始まっています。前倒しの個別対応も含め「ドロー
‘生態系’として、
ン・ビジネス」は 2015 年に離陸すると見られているの
新たなソーシャル
です〔宮本和明氏 日経 ITpro 2015.1〕。
また、法整備の先行するカナダでは展開がさらに
&ビジネス・フェー
ズ〔相〕に相転移していくのです。
◆
さて、IT 装備の取り組み事例は、ビジネス、社会、
生活などあらゆる領域で枚挙にいとまがりません。
例えば、身体機能を補助する歩行アシストや荷物の
進んでいるとも聞きます。
米アマゾン・ドット・コム社は米国内の倉庫 10 ヵ所
に自走ロボット 15,000 台を導入しました。無線 LAN
の指示で、受注商品の保管された棚の下に入り込み、
自らその棚を持ち上げ自走してピッキング作業者の
持ち上げ補助のロボット、また農業や建設などの現場
前で降ろします。年末商戦に向け、コストを 20%削
で品質、効率、安全性などを向上させる、センサーや
減し、配送時間も短縮し、遅配などのトラブルも削減
IC チップを装備して通信・ネットを活用する実証実験や
するとのことです〔日経新聞オンライン 2014.12〕。
事業化といった記事が連日報道されています。
マンホールの蓋やネジにも IC タグが付くのです。
日本でも台車ロボットを量産するベンチャー企業
が出てきました。価格は 40 万円前後の見通しで、年
お掃除ロボは家庭に入り込み、高度な手術ロボット
内に 2000~3000 台、2017 年をめどに 10 万台の販
が医療現場では活躍しています。「米朝アンドロイド」
売を目指します。走行時速は 6km で、操作部を持ち、
や石黒浩氏のヒューマノイド型ロボットなどが、人との
スマホからブルートゥースで経路を指示します。タグ
接点でその親和性を試行しています。既に商品化さ
を付けた台車や作業員への追随機能や衝突防止ブ
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“ロジ”達の‘モノ’ウォッチング
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レーキもあり、実証実験で現場要望に対処し改良中
も、日本の IoT の取り組みは早く、日本の 19%が IoT
だといいます。大手電機メーカーからは無人で時速
を「投資済み・展開済み」(世界平均では 7%)と回答し、
約 5km で移動する自動搬送車が昨年発売されてお
「IT を独立したプロジェクト投資と考え、単独で評価
り、注目を浴びるドローンや自動運転車両などよりも
する」回答者は約 8 割に上るという(世界平均では「IT
早く工場の生産現場には浸透しそうだといいます〔蓬
を戦略プロジェクト投資の一部に含め、単独で評価しない」
田宏樹氏 日経産業〕 。
が 6 割)。この他、ロボティクスや 3D プリンティング、
自動運転では、独ダイムラー社が、2025 年までに
大型トラックで実用化する方針を昨年発表していま
す〔久米秀尚氏 日経エレクトロニクス 2014.10〕。
人工知能への関心も日本企業の方が高かった、とい
います〔竹居智久氏 日経産業〕。
ソフトバンク社は、携帯電話事業を手掛けるソフト
◆
バンクモバイルなど子会社 4 社を 4 月に合併し、ブラ
一方 IoT の進展・深化も加速しているようです。
ンドは維持しつつ、経営資源を統合・効率化し、IoT
1 月米国ラスベガスで開催された世界最大規模の
分野に集約・強化する、と発表しました〔日経産業〕。
家電見本市で、IoT でスマホとつながる「分身ロボット」
インダストリアル・インターネットの取組に注力して
などネット家電が、注目されているといいます。〔山村
いる GE 社のイメルト会長は、昨年来日した際に「久
哲史氏、高木真也氏、宮地ゆう氏 朝日新聞 2015.1〕
しぶりに日本が面白くなってきた」と指摘しました。日
IoT は、様々な場所に「遠隔性」や「情報」といった
本で燃料電池車、医療機器・サービス、再生可能エ
要素と一緒に「コネクタビリティ(接続)」を持ち込むこ
ネルギーなどの分野で注目すべきイノベーションが
とに他ならないのであって、今は、クラウドが出始め
次々と生まれ、これまでの「課題先進国」から「課題
た頃と同様、過剰期待のピークにあり、時期尚早だ、
解決先進国」になるだろうと予測します。日本の航空、
との指摘もあります〔米 VMware・ゲルシンガーCEO に
電機、ガス、通信会社との協力関係を深めたいとの
聞く 田中信一郎 日経ビジネスオンライン 2014.11〕。
思いでもあります〔日経新聞 電子版 2014.11〕。
一方昨年、2023 年実現を目指して、「1兆個セン
また、ドイツ政府が主導する「インダストリー4.0〔産
サー社会(Trillion Sensors Universe)」構築へ向けた
業革命、「T 型フォード」の大量生産、IT 革命に次ぐ第 4 次
ロードマップの作製が、日米欧の産業界・研究機関
産業革命〕」の構想は、3D プリンターを中核にし、原
を巻き込んで始動しました。現在使用中のセンサー
料の調達から工場での製造、物流・保管、そして販
は世界で約 100 億個といわれ、それを 100 倍にする
売までをネットで結び、極限まで効率化しようという試
ビジョンです。10 種類程度に大別されたセンサー候
みだといいます〔『「新しい産業革命」なのか』江渕崇、
補は大部分が新規で、ヘルスモニタリング、イメージ
Globe 特集「3D プリンター」朝日新聞 2014.11〕。そこに
ング、人工五感、環境センシング、食品関連センシン
は Logistics4.0 も含まれます〔日経ビジネス 2015.2〕。
グ、スマート発電と制御、デジタル製造・3D プリンタ
3D プリンティングは、米国ではボディ制作に使っ
ーなどのセンシング適用領域と、無線ネットワーク、
た電気自動車が年内に発売され、またエンジン部品
エネルギーハーベスティング・デバイス、IoT といった
の一部や補聴器のカスタム・メードなど、部品試作な
項目からなるものです。イメージ先行の観もあります
どの開発段階だけでなく、量産工程での導入や量産
が、高い関心を集めています。錠剤や下着にもセン
向けの開発が進んでいる、といいます 〔日経産業〕。
サーが付き、体内病院、食べるセンサーなどなど、
◆
医療・介護・健康分野やものづくりなどに変革をもた
IT 装備も IoT へと深化し、「知識装備」による「見え
らし、ゴールはおよそ 10 年後ですが日本勢に商機
る化」から「できる化」へと深化する「知恵装備」に向
があるともいいます〔日経新聞電子版 2014.6〕。
かいます。ローカルのリアルタイム「見える化」とマニ
昨年の米ガートナー社の調査〔世界 84 カ国の最高
情報責任者(CIO)2,810 人へのアンケート 2014.7-9〕で
ピュレータや手配などの「機動力」をセンターで統合
管理できる IoT に、解法の実装、インテリジェント化
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“ロジ”達の‘モノ’ウォッチング
‘Object’-Watching by “Logistics’s”
への取り組みが加わるのです。
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穫時期の予想と、その作物の市場での需給状況を
昨年の第 6 回ロボット大賞〔経済産業省、一般社
連携させる機能をもちます。それは農業を入り口に
団法人日本機械工業連合会の主催〕では、
「モジュー
ヘルスケア―を出口にする「スマートライフの実現」
ル型高速多機能装着機」が大賞に選ばれましたが、
に向けた中期計画(2015 年ゴール)の取り組みです
物流関連では、
「自働化コンテナターミナルシステム」
〔三宅常之氏・中島募氏 日経産業〕。
と「医薬品物流センター高度化ロボットシステム」
また、2015 年度の日本の経営者(106 社、内製造
が優秀賞に入賞しました。
‘モノ’の流れをマネジメ
業 47.2%)は、海外投資で 66.6%が昨年同等かそれ
ントするロジスティクスは、
その仕組みに留まらず、
以上を(77.3%の投資先は東南アジア)、海外 M&A で
機能や役割でも「IoT として深化」しているのです。
は 53.4%が昨年以上に積極的に取り組むといいま
タクシー配車アプリはさらなる展開を見せています。
す〔日経産業新聞 2015.1、日中韓 3 紙共同 2014.12 の
LINE でタクシーが呼べるようになりました〔朝日新聞
「日中韓経営者アンケート」〕。グローバル化という異質
2015.1〕。シンガポールでは同様のコンセプトで乗客
性への対応の中でも「新しい関係性」が生まれます。
がコストを分担できる「相乗り仲介サイト」の利用が広
◆
がっているといいます〔日経産業〕。ベトナムではスー
IT 装備は情報の形式知
マトフォンで GPS などの機能を使いバイクタクシー
化と共有化で「知識装備」
にもそのサービスが始まりました〔伊藤学 日経産業〕。
し、「見える化」を進展させ、
また、アントニ・ガウディ氏が約 100 年前に手がけ、
正しく「できる化」を深化さ
完成まで 300 年かかるといわれた未完のサグラダ・フ
せました。さらに現場力と
ァミリアも、鉄筋コンクリートの多用に加え、IT の成果
組織力とを高め、正しいこ
で工期は 144 年に短縮され 2026 年にも完成する見
とを「できる化」するために、属人的な暗黙知という
通しです。3D 設計ソフト・プリンタ、CNC 加工機、コ
「知恵」を装備する必要があります。「知恵装備」の方
ンピューターによる石材への応力数値解析などと合
向は、アルゴリズム化も方法ですが、 ‘個人’やアウ
わせ、設計・施行・管理などのプロセスでコンピュー
トソースとも繋がる参加型ネットワークを形成し、関係
ター内のバーチャル建築が貢献していると指摘しま
性を深化させていく、と考えます。それは、ロジスティ
す。〔家入龍太郎氏(建設ジャーナリスト) 日経産業〕。
クスという、注文充足を一貫マネジメントし、併せて時
「スマートロボ、人と協業」と題する、ドイツのフラウ
間距離の短縮やキャパシティ稼働率の向上を追求し、
ンホーファー生産技術・オートメーション研究所では、
「サービス【使用価値】」の創出・提供を本質価値とす
ドイツ発のインダストリー4.0 を実現させるための仕組
る ‘プロセス’を、異質性との共時的かつ綜合的な
みづくりやロボット活用技術を開発しています。ロボ
‘システム〔生態系〕’に変質させることになるのです。
ットを、さらに製造ラインそのものを「スマート化」し、
モジュール化することで、さらなる多品種少量に対応
できるようにする取り組みです〔日経産業〕。
Supply Chain も IoT 活用の新しい時代に入ります。
「農・ヘルスケア つなぐ」と題して、電機・IT・自動車
を主事業とするメーカーの農業領域への関与が紹介
されています。その中で、NTT ドコモ社は「サプライ
チェーン創造」を目指すといいます。相次ぐ企業買
収で布石を打ち、4000 の基地局に気温や湿度など
を測定する環境センサーを設置し、M2M〔機器間通
信〕サービスを提供するのです。地域間の作物の収
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