差圧法による 差圧法による水蒸気 による水蒸気バリア 水蒸気バリア性測定 バリア性測定 井口恵進 株式会社 テクノ・ テクノ・アイ代表取締役 1) 差圧法の歴史的位置づけと DELTAPERM(デルタパーム) 水蒸気等のガスの透過性を測定する手段として対象物の片側から圧力をかけて 通過する ガス量を測る方法は 100 年前に既に米国で特許申請がなされているくらい古くから種々の 試みがなされてきた。 しかし近年 優れた測定センサーの開発に伴って 水蒸気透過率測定に使われている多く の装置は一般に等圧方式と称し、サンプルの両面にかかるキャリアガス圧を等圧にして、 各ガス分圧濃度差を駆動力として通過した水蒸気を各種のセンサーに搬送し分析する装置 が多い。 それに対し、極めてシンプルでわかりやすい差圧法を見直し、特に電子デバイス用ハイバ リアフィルム測定に特化した装置 として改良され、急速に実績をあげている英国 Technolox 社の DELTAPERM について解説してみたい。 2)今なぜ DELTAPERM なのか? この装置は発売開始3年で、太陽電池用バックシート、有機EL保護膜等の機能フィルム業界の 国内主要客先十数社に多数の実績をあげており、既に一部の客先では生産管理用にも使われてお り 近い将来この分野における実質的な標準装置になる要素は十分との客先からのコメントも 頂いている。 その理由を一言で言うと、測定結果が短時間で出るユニークな手法と、管理が簡単で維持費が極 めて安価であるという生産現場での高い実用性にあると思われる。 3)DELTAPERM の測定原理 この装置は サンプルの片面に 設定された温度、湿度の水蒸気を入れ、もう片面は真空にする とその圧力差によりサンプル面を通過した水蒸気により反対側のセル内の圧力が上昇する。その 速度上昇率を測定し透過率を出すという極めてシンプルな構造でありながら 測定下限は 5x10-5 g/m2/day 以下 で、多くの等圧法の装置下限より高い精度を実現している。 その基本的な操作は下記の Fig.1 のようなステップとなる。 Fig.1 DELTAPERM の測定手順 4)具体的な特徴 このような単純な原理と測定手順でありながら、具体的には下記のような特徴をもっている。 4-1) 水蒸気透過による 水蒸気透過による圧力上昇値 による圧力上昇値の 圧力上昇値の直接変換による 直接変換による WVTR 値の算出が 算出が出来るため 出来るため、 るため、間 接的方変換による 接的方変換による累積誤差 なく極めて精度 めて精度が による累積誤差が 累積誤差が少なく極 精度が高い。 下室の圧力上昇値(Δp)から通過した水分子量, すなわち水の重量(g)が計算され、それ に要した時間(Δt)から WVTR として《 g/m2/day 》が直接演算できる。 圧力センサーはΔp を出すだけで zero 補正が不要なため、再現精度が極めて高い。 他の方式で使われる電気量、赤外線量、化学的変化量の換算、質量分析等の間接因子を経 由するための誤差の累積、推定要素がない。 多くの装置で必要とされている標準フィルム等による測定前キャリリブレーション(校正) も不要である。またキャリアガス不要なので、その流量精度、ガス温度制御、ガス成分純 度などによる誤差の問題も全くない。 4-2)水蒸気発生源、 水蒸気発生源、サンプル室 サンプル室、圧力センサー 圧力センサー、 センサー、パイプ配管 パイプ配管の 配管の総てが恒温室 てが恒温室の 恒温室の中に在り、 40℃ 40℃x90%RH から 85℃ 85℃x85%RH までの水蒸気透過率 までの水蒸気透過率と バリア特性が 連続的に測定でき 測定でき 水蒸気透過率とバリア特性 特性が連続的に る。 水蒸気の発生源から接ガス部とサンプル自体まですべての場所が常に設定された同じ温度 と湿度に維持され、内部に温度/相対湿度勾配がない事により、測定精度に大きく影響する 部分的結露が全く無い緻密な設計とノウハウを駆使した構造になっている。 4-3)総ての測定条件を恒温室外からパソコンで指示し、サンプルに触れることなく種々の測定 条件を繰り返し測定できるので、測定値 測定値の 測定値の再現性が 再現性が自己確認できる 自己確認できる。 できる。またこれで得 またこれで得られた WVTR 値と温度の 温度のアレニウスプロットを アレニウスプロットを描くことにより温度 くことにより温度と バリア強度等の 特性、繰り返 温度とバリア強度等 強度等の特性、 しによる再現性 しによる再現性の 再現性の確認等種々 確認等種々の解析が 解析が可能である 可能である。 である。 一例として、下記仕様のハイバリアフィルムを用い、測定温度と相対湿度を連続的に変化させた 時のアレニウスプロットを サンプル仕様: 材質;PEN バリア膜構造;SiON 系 設定温度履歴 Fig.2 に例示し、それから得られた情報の一部を公開する。 厚さ:100μm 単層薄膜 厚さ:100nm CVD コーティング : サンプルA。。 。40℃ー60℃ー40℃ー85℃-40℃ サンプルB。。 。40℃ー50℃ー60℃ー85℃ー40℃ー60℃ー80℃ー100℃ー40℃ 相対湿度はいずれも100%RHに設定した。 測定所要時間 : サンプル A。。 。。コンディショニングを含め約 サンプル B。。 。。コンディショニングを含め 1,900 min.(32 hr) 2,400 min. ( 40 hr ) Fig.2 温度と 温度と透過率 WVTR の変化の 変化のアレニウスプロット (考察の一部抜粋) ① サンプルA,B共全体としてはアレニウスプロットの直線に乗っており、活性化エネルギー が求められる。 ② 40℃から昇温度、降下を繰り返した後の40℃でのWVTR値は 2.4-2.0x10-3 g/m2/day ③ に集約しており、再現性と信頼性は極めて高い事が確認出来た。 サンプルBの100℃においては直線から外れ、明らかにバリア膜に非可逆的現象が発生し た。その後温度を40℃に戻したが、WVTR 値は 9.0x10-3 g/m2/day と復帰出来てなかったこ とによっても組成の変質が窺える。この間の詳細データは 60ses.毎に記録されている。 このように部材相互間の物性変化の対温度評価も可能である。 4-4) サンプルの サンプルのコンディショニング時間 コンディショニング時間が 全測定時間が早いため、 いため、品質管理に 品質管理に適して 時間が短く全測定時間が いる。 いる。 サンプル基板からのアウトガス、システム内部の付着水分等の追い出しには装置全体を ヒートアップして付属の真空ポンプで減圧すれば、他の方式のようなドライガスをパージ するより遥かに早くコンディショニング出来るので、短時間で品質管理データが得られる。 一般的に等圧法で1週間以上、カルシウム法で1-2ヶ月とされる 10-4g/m2/day レベルの ハイバリア膜の品質チェックが本装置では1日以内で完了する実績も出ている。 ある対象製品のアレニウスプロットの活性化エネルギー等の特性を分析し、高温下での対応 WVTR データを利用して合否判断を短時間で得る事が可能となる、という方式である。 4-5)各種ガス 各種ガス透過率 ガス透過率が 透過率が測定できる 測定できる差圧法 できる差圧法ならではの 差圧法ならではの特徴 ならではの特徴を 特徴を利用した 利用した種 した種々の評価解析に 評価解析に 利用され 利用され始 めている。 され始めている いる。 水蒸気と酸素との混合ガスによる相互作用、水素やヘリウム透過率による促進シミュレー ション、基板材樹脂のアウトガス量およびガス吸収量の測定など新しい評価解析のツール としての展開が始まっている。 これも差圧法ならではの独特な機能である。 不活性ガスを含め、色々なガスがどんな透過率を示すかの興味深いグラフを示す。 これらの相関関係を分析して短時間での品質チェックが出来る可能性も試行されている。 Fig.3 各種ガス 各種ガスの ガスの透過率測定結果 4-6)保守が 保守が簡単で 簡単で、ランニングコストが ランニングコストが大幅に 大幅に低減できる 低減できる。 できる。 キャリアガスが不要で、消耗部品も年間で数万円が通常であり、従来の測定装置に比べ極 端に少ない。 また圧力センサーは一定時間の差圧を計測するだけなので校正も通常不要で極めて長寿命 (3年以上の実績)である。 5)差圧法の顕著な改良 なお、差圧法に対して従来より一般に欠点として指摘されていた項目に対し、本装置では既に下 記のように対応済みであることをご紹介したい。 5-1)差圧法は 差圧法はサンプルの サンプルの両面の 両面のガス圧 ガス圧が異なるので、 なるので、サンプルに サンプルに歪みやクラック みやクラックが クラックが生じ易 いのでは? のでは? 本装置では通気性のある特殊な平板によりフィルムはサポートされており、フィルムダメー ジは発生致し難い構造となっている。 本装置では発売後に多数のお客様のサンプルフィルムをテストしたが、差圧によると思われるフ ィルムダメージは発生していない。 むしろ多くの他社装置ではサンプルの端面クランプにOリング等を用いているがこの局部的機 械的締め付け圧力のほうがバリア面に影響を与える可能性が高い。 当社製品はこのクランプ方法にも独自の工夫を施している。 5-2)水蒸気透過量を 水蒸気透過量を圧力センサー 圧力センサーで センサーで検知する 検知する方法 する方法は 方法は、他のガス分子 ガス分子が 分子が紛れ込んでいても区 んでいても区 別出来ず 別出来ず、全圧力を 全圧力を採るため不正確 るため不正確な 透過率となる可能性 あるのでは?。 不正確な透過率となる となる可能性が 可能性があるのでは?。 確かに本システムは真空系であるので空気がリークインするのは絶無ではない。 しかし本システムは最新の高真空に対応した設計がされており、発生するリーク量は水蒸気透過 量に対し無視できるレベルに抑え込んでいる為、他のガス分子が測定値に与える影響は通常無視 できる水準である事が確認されている。 また実際の相対湿度を直接測定するセンサー開発もされており、測定の信頼性をさらに向上させ ている。 4-7)高機能向 高機能向けハイバリアフィルムの ハイバリアフィルムの簡易な 簡易な生産現場の 生産現場の業界標準器としての 業界標準器としての推進 としての推進 太陽電池用バックシート、有機EL等の高機能フィルム開発に取り組んでいる主要客先に、発売 開始3年弱で多数台の御使用を頂き、既に生産管理用にも使われ始めている。 短時間の計測、高い再現性、平易な操作、低価格と安い維持費、高い市場占有率を具現化してお り、この分野の簡便な標準測定器として信頼される技術とサービスの向上に取り組んでいる。 高機能フィルム 高機能フィルム用 フィルム用ガスバリア測定技術 ガスバリア測定技術は 測定技術は 現状では 現状では製品開発 では製品開発に 製品開発に対して先行 して先行していると 先行していると は言い難く、何らかの座標軸 らかの座標軸が 座標軸が早急に 早急に確立されることが 確立されることが業界発展 されることが業界発展のためにも 業界発展のためにも必須 のためにも必須である 必須である。 である。 “Simple is Best “ 差圧法を 差圧法を進化させたこの 進化させたこの装置 させたこの装置は 装置は、まさにこの格言 まさにこの格言に 格言に沿った技術 った技術 の流れに沿 れに沿っており、 っており、今後の 今後の水蒸気透過率測定の 水蒸気透過率測定の標準化に 標準化に必ずや貢献 ずや貢献できると 貢献できると確信 できると確信してい 確信してい る。 以上
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