農委、JA、関係機関の連係プレーで、 多様な担い手の営農とくらしに応じた加入推進 高知県 四万十町農業委員会 四万十農業協同組合 農業委員会やJAの担当者に加え、町農林水産課や県農業 振興センター(農業改良普及所)など、農業関係機関の職員 が各々の担当分野での役割を発揮して加入推進に関わったこ とが大きな成果を生みました。 日常的に農業者と接している営農指導員が対象者を年金担 当者へつなぎ、農業委員会や町は受け皿となる認定農業者連 絡協議会の場を活用しながら説明の機会をつくり、農業振興 センターは家族経営協定の効果を話すとともに、協定を結ぶ ことで配偶者や後継者も農年加入できることを対象者へ伝え るなど、関係者の連係プレーが新規加入者の増加に大きく貢 献しました。 ○ 地域農業の特徴と農業者年金の歴史 四万十町は平成18年3月に2町1村が合併し、四万十川中流域の田園地帯や中山 間地域において水稲や施設園芸、畜産など多様な農業経営が展開する高知県を代表す る農業地帯です。農畜産物の価格低迷と重油など農業資材の高騰により町の基幹産業 である農業の維持が大きな課題となっていますが、園芸などでは後継者が残っている 農家も少なくありません。多様な営農構造を支える担い手の、将来にわたっての持続 的な農業経営と老後生活を保障するために、農業者年金が果たす役割は大きなものが あります。 全国に例を見ない多くの特例脱退一時金請求があった高知県において、当町は旧制 度からの移行者が相当数残っている数少ない地域の一つであり、国民年金の上乗せと なる農業者年金への理解と愛着が残っていました。しかし、新しい農業者年金制度の 認知度は低く、町内に存在する多様な担い手の状況に即したきめ細かいアプローチが 欠かせません。 ○ 勉強会で関係機関が意志結集 農業委員会やJAは加入推進活動計画において、農業委員自身の研修会の開催や農 業委員会・JAの職員で構成した加入推進班によるハウス巡回、認定農業者を対象と した相談会、さらには広報誌への掲載やパンフレットの大量配布などに各種方法で制 度の周知を図ることとしました。 さらに、町農林水産課、県農業振興センターなどの関係機関職員も交えた勉強会を 通じて意思結集を図り、担当する分野で各々の役割を発揮しながら加入推進を行って いくこと確認しました。 -1- ○ 多様な担い手の営農とくらしに寄り添って 制度を広く周知しようと、手始めに町内を2つに分け認定農業者連絡協議会の研修 会の場などを活用して農家への説明会を開きました。説明では、①国民年金だけでは 老後生活は安定しない、②農業者年金には政策支援制度があり、同じく積立方式の「み どり年金」より有利、などを強調しました。そして、加入推進活動をさらに前へ進め るためには戸別訪問が必要だとして、JA、農業委員会、町農林水産課、県農業振興 センターの担当者が集まって農業会議、JA中央会とともに勉強会を開きました。そ の際、農家からの質問を想定してどう答えるかに重点を置いて意見交換を行いました。 その成果が直後に開いた説明会の場で表れ、農家の実情に即し政策支援を希望する場 合には家族経営協定の締結をアドバイスするなど、その後大勢の加入者を迎えること となりました。 なかでも、JAの営農指導員は農業者と接する機会(営農指導・税務指導、青色申 告研修会など)が多く、農業者の家族構成や営農事情にも詳しいため、その中で農業 者年金の税制上のメリットなどを説得力を持ってアピールできます。さらに、その営 農指導員が対象者をピックアップして説明会への参加を募るなど、効果的な活動が実 を結びました。また、農林水産課の職員も農業者と接する機会を利用して年金制度を 紹介するなど、意識的な取り組みを行っています。 その結果、21年度の新規加入は7人で、内訳は加入推進部長や農業委員会役員等 からの勧めによるもの4人、県や町、JAからの家族経営協定締結の勧めによるもの 2人、認定農業者連絡協議会での説明を聞いたことによるもの1人。22年度の加入 者は9人で、内訳は農業委員会役員等からの勧めによるもの4人、県や町、JAから の家族経営協定締結の勧めによるもの3人、認定農業者連絡協議会での説明を聞いた ことによるものが2人と、多彩な加入ルートがありました。 加入者の類型をみても、通常加入が5人、政策支援加入区分1が6人、区分3が5 人で、その中には夫婦での加入が3組含まれていることからもわかるとおり、加入に 至る経緯は農業者により様々です。多様な担い手の営農とくらしの状態に即して加入 推進を行うこの地域の活動が、他地域での取り組みにも好材料を提供しています。 ※ JA四万十で開かれた年金説明会 -2-
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