テニスのシングルスにおける プレースタイルの決定要因

テニスのシングルスにおける
プレースタイルの決定要因
9008057 成毛 宏充
はじめに
私は,幼い頃から多くのスポーツ種目を経験してきた.
なかでもテニスに長く携わり,そのキャリアの中で私のプ
でχ2 検定を行った.有意差が認められた場合は,残差分
析によって下位検定を行った.
レースタイルは大きく変化してきた.キャリアを積むこと
で技術は毎年向上しているが,プレースタイルが原因で勝
自分がテニスを始めてから現在までのテニス史を書きプレースタイルを変更および決定した理由を書いてください
てる時期と勝てない時期があった.
基本となるプレースタイルは,試合で最も使う選手の戦
術であり,自己のプレースタイルを見失うと試合には絶対
勝てないという経験から,基本のプレースタイルの大切さ
を感じ,それについて調査しようと考えた.
0
現在
学年( ) 大学名( ) 氏名( )
目的
図 1 質問紙の構成
本研究の目的は,選手のテニスライフの中で基本となる
プレースタイルを変更および決定した理由や,選手は何故
今のプレースタイルを選んでいるのかを調査することで
あった.そして,本戦選手を上位,中位,下位の 3 つにレ
ベル分けし,熟練度との関連を検討することとした.
方法
(1)調査対象者
調査結果
図1の質問紙の回答から,上位および中位レベルにおけ
る代表例を図 2,3 に示した.
●小学校5年テニス
を始める
週一回程度
●指導者・コーチが
付く
調査対象者は,中国四国学生テニス連盟に所属している
●中学入学
やる気が出てくる
練習週6回
●競技成績
県大会ベスト4
関西大会
8~16
プレースタイル特
になし。ただボー
ルを打つ感じ
学生のうち,本戦経験者とした.本戦を経験するには予選
●高校入学
練習環境の変化
(上下関係)
ダブルス練習メイン
●競技成績
S県16~32・D県4
あまりのびなかった
とにかく打ちまくる。
中学生はミスが多く、
これで勝てていた
ベースライン攻撃型
トーナメントを勝ち抜くことが必要で,本戦に出場すれば
●大学入学
つないでいるだけで
は勝てないと感じプ
レースタイルを変え
ようと思った
高校テニスのレベ
ルの高さに戸惑い
打たなくなった。
ベースライン守備
型
●守備が基盤
攻めるパターンも見つけ
てきた
●競技成績
中四国ベスト4
インカレ出場
少しずつ伸びてきている
だんだんとボレー
で決める形が身に
ついてきた。
オールラウンド型
中四国ベスト 64 である.本戦ベスト 4 経験者レベルを上
位,2 回戦から 3 回戦レベルを中位,1 回戦レベルを下位
0
現在
図 2 上位選手(ベスト 4 以上経験者)の回答
とした.人数は上位 4 名,中位 4 名,下位 4 名の 12 名(平
均年齢:20.8±1.0 歳)であった.
(2)調査内容および方法
●高校入学
硬式に興味
を持ち始め入
部をしようと
決意する
中四国大学テニス選手にプレースタイルの決定要因を
質問紙調査で実施した.図 1 の質問紙に選手のテニスライ
フとプレースタイルの変更および決定した理由を,自由記
とりあえ
ず速い
球を打
てれば
勝てると
思ってい
た
●大学入学
テニスをするつも
りはなかったが友
達に誘われいやい
や入部,だがしか
しテニスの楽しみ
がわいてきだして
夢中になる
●冬中本戦出場
●バックハン
ドを打つのに
嫌気がさし全
部スライスで
いこうと腹を
くくる
(技術不足の
ため)
大学に入り速い球だけ
では勝てないと悟り我流
でスピンをかけ始める
述形式によって回答させた.
ハードヒッター
●ストロークの
質が上がりフォ
アに絶対な自
信を持つように
なる
●中四国ベス
ト8に入る
●サーブがよく
なる
ベースライン攻
撃型
(バックハンドス
ライス)
●フォアが
徐々に狂い
出し全く入
らなくなり泣
きそうにな
る
●徐々に戻
りつつあ
り、自信を
取り戻しつ
ベースライ つある
ン攻撃型
(3)分析方法
プレースタイルについて,被験者のプレースタイルの変
更および決定した理由×レベル(3,上位,中位,下位選手)
1年後半
0
3年後
現在
図 3 中位選手(2 回戦~3 回戦)の回答
全 12 名の回答から選手がプレースタイルを変更および
決定した理由を,レベル別および選手別に表 1 に示した.
考察
本調査の目的は,テニスプレーヤーが,プレースタイル
を変更および決定する要因を調査することであった.
表 1 テニス選手がプレースタイルを
変更および決定した理由
選手
A
B
上位
C
D
A
B
中位
C
D
A
B
下位
C
D
プレースタイルを変更および決定した理由
ダブルスでレギュラーになった(練習環境の変化)
インカレなどで刺激をうけた
プレッシャーを感じて安全なテニスをみにつけた
練習環境の変化(高校入学)
まわりの選手の影響
練習環境の変化(大学入学)
主将になりプレッシャーがかかる
大学に入り環境が変化し周りの大学生の影響をうけた
中学時代の成績がプレッシャーになる
周りの選手の影響(高校)
大学入学にして環境がかわり周りの選手の影響をうけた(大学)
周りの選手の影響(大学)
技術がなかった(ストロークバックハンド苦手)
冬中四でベスト8に入り自信がつき攻撃的になる
技術向上(ストロークフォアハンドに自身がつく)
高校入学コーチの変更
技術がなかった(強く打てない)
新進で優勝して自信がつく
先輩に会って攻撃プレーを目指す
ライバルが中国大会出場
最後の大会のプレッシャー
後輩にあこがれた
新進で優勝して自信がつく
1回戦でまけてボレーがだめになる
最後の夢のため(王座一部昇格)
技術がなかった(フォアがうてない)
試合で勝ちボレーに自信がつく
周りの選手を見てまもるだけでは勝てないと思った(ボレーにでる)
練習環境の変化(大学入学)
他の選手を見てベースラインでの攻撃だけでは無理だと気付いた
体力・体格の変化
技術向上(ボレー上達)
コーチとの出会い
先輩に憧れる
技術向上(サーブ上達)
技術不足(ストロークがあまりうまくない)
上位選手は,
「まわりの選手の影響」
,
「環境の変化」で
プレースタイルを変更することがわかった.理由としては,
全国大会などのレベルの高い大会に出場し強い選手と対
戦することで,
「今のままでは勝てない」
,
「長い期間をか
けてもプレースタイルを変更し強い選手に勝とう」と思っ
たのではないかと考えられる.
中位選手は,
「競技成績」
,
「技術に問題がある」ために
プレースタイルを変更することがわかった.理由としては,
自分より強いと思っている選手に勝つと自信が付きその
プレースタイルを継続することができるが,自分より弱い
と思っている選手に負けると自信を無くし自分のプレー
スタイルを見失い,次の大会までの短い期間でプレースタ
イルが変えようとしているからだと考えられる.
下位選手は,
「技術に問題がある」ことでプレースタイ
ルを変更することがわかった.理由としては,本戦で戦う
程度の技術はあるが,上位,中位選手と比べると自分のシ
ョットに自信,安定性がなく.練習はするができないこと
に対して我慢して練習することができずすぐに諦めてし
分析結果
まうからだと考えられる.
表 2 に示したように,プレースタイルの決定要因につい
上位選手も下位,中位選手のレベルの時代もあったが,
て,被験者のプレースタイルの変更理由(11)×レベル(3)で
下位の時代が短いことがわかった.その理由としては,テ
χ2 検定を行った(χ2(20)=35.164,p<.05).有意差が認めら
ニスを始めた頃から基礎練習をしっかり行っており,どの
れたため,残差分析によって下位検定を行った.
年齢でも中位選手以上のレベルにいたため,自己よりも上
本調査において,選手がプレースタイルを変更および決
位の選手と対戦する機会が下位,中位選手に比べ多かった.
定した理由は,上位選手は,まわりの選手の影響,環境の
そのため,上位選手に勝つためにプレースタイルを変更お
変化,プレッシャーの順に多いという結果であった.中位
よび決定することに慣れているのでないかと考えられる.
選手は,競技成績,技術問題,憧れの順に多いという結果
中位選手も下位選手の時代があり,下位のレベルを中々
であった.下位選手は,技術問題,まわりの選手の影響の
抜け出せない選手が多かった.その理由としては,テニス
順に多いという結果が得られた.
を始めた頃は試合に勝つために練習していたのではなく,
遊び感覚で練習している期間が長く,基礎をしっかり行っ
表 2 プレースタイルの変更および決定した理由に関する
実側値と残差分析の結果
環境 競技成績 指導者 ライバル 体格
上位 実測値 5 1 0 0 0
残差分析の結果 ▲ ns ns ns ns
中位 実測値 0 5 1 1 0
残差分析の結果 ▽ ▲ ns ns ns
下位 実測値 1 0 1 0 1
残差分析の結果 ns ns ns ns ▲
技術 憧れ まわりの選手 プレッシャー グリップ変更 夢
0 0 6
3 1 0
ns ▽ ▲ ns ns ns
4 2 0
1 0 1
ns ns ▽ ns ns ns
3 1 2
0 0 0
ns ns ns ns ns ns
(▲有意に多い,▽有意に少ない,p<.05)
ている選手が少なかった.そのため後から練習を行っても
ショットが安定するまでに時間がかかり,思うように試合
を運べなかったからだと考えられる.
総合的考察
上位選手の真似をしても上手くなれるわけではない.選
手は,試合に勝つことを目標とし,テニスに長い間本気で
向き合い我慢することが大切で,その結果として経験や技
術が備わり,そこから上位選手に勝つためにプレースタイ
ルを変更する機会があるのだと考えた.