補足プリント 18:平均の差の検定(母集団の分散が異なる場合) 松井宗也 南山大学経営学部 平成 27 年 10 月 29 日 母分散が等しくないとき平均の差の検定には工夫が必要である。今回は「統計学入門(基礎統計 学)」東京大学教養部統計学教室 編、東京大学出版会を参考にその方法を説明する。方法自体は簡 単である。 1 平均の差の検定 2つの母集団 X ∼ N (µx , σx2 ) と Y ∼ N (µy , σy2 ) から,標本サイズが nx と ny の標本 (X1 , X2 , . . . , Xnx ) と (Y1 , Y2 , . . . , Yny ) を得たとする。このとき平均の差の検定 H0 : µx − µy = 0, , H1 : µx − µy ̸= 0 を行う。分散の不偏推定量である不偏標本分散 x 1 ∑ = (Xi − X)2 , nx − 1 1 ∑ = (Yj − Y )2 ny − 1 ny n Sx2 Sy2 i=1 j=1 を用いる。母集団の分散が等しくない場合は、等しい場合と同様の考え方(教科書 8.2 節)をする。 つまり X − Y ∼ N (µx − µy , σx2 /nx + σy2 /ny ) だから、標準化するときは母平均と母分散を用いいれ ば良いが、2つの母分散は未知なので標本分散を使うというもの。平均の差は帰無仮説で 0 が正しい とおくので推定する必要はない。すると検定統計量 X −Y T =√ 2 Sy2 Sx nx + ny を考えればよいが、この統計量は母集団の未知の分散比 σx2 /σy2 の影響を受ける。つまり統計量の分布 がある一定の分布に従うのではなく、未知のパラメータの影響を受ける。この問題をベーレンスフィッ シャー問題 (Behrens-Fisher’s problem) という。 ここではウェルチの検定という近似解を用いる方法を紹介する。それは検定統計量 T の分布は、自 由度が (Sx2 /nx + Sy2 /ny )2 nw = 2 (Sy2 /ny )2 (Sx /nx )2 nx −1 + ny −1 にもっtも近い整数 n∗w の t 分布に従うとして検定を行うものである。 1
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