土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅲ-508 改良型バキュームディープウェル工法による粘性土地盤改良の試験施工 西松建設技術研究所 正会員 ○宮崎 啓一 西松建設技術研究所 萩原 敏行 (有)アサヒテクノ 高橋 茂吉 1. はじめに 韓国釜山市の施工中の開削工事現場を利用して、施工機械のトラフィカビリティーの確保を目的として、粘 性土地盤に対して改良型バキュームディープウェル工法(以下スーパーウェルポイント(SWP)工法1)と記 す)による試験施工を実施した。本報文では、試験施工の概要、および試験結果について報告する。 2.試験施工の概要 施工機械のトラフィカビリティーの確保を目的として、釜山市の開削工事現場を利用して、平成 20 年 2 月 から 5 月までの間 SWP 工法による揚水試験の試験施工を実施した2)。試験位置の平面図、および断面図を図- 1に示す。試験ヤードは、幅 20.0m、延長 50.0mの範囲で、上下両サイドは地中連続壁(t=1.0m、L=20.0 m)で囲まれていた。また、左右延長方向の開削部はオープン掘削で釜場排水が行われていた。試験位置の地 盤構成は、図-2に示すように地上より埋め立て層(GL 0m~GL-5.3m)、シルト質粘土層(GL-5.3m~GL-10.5 m)、礫質粘土層(GL-10.5m~GL-13.1m)、風化土層(GL-13.1m~GL-25.0m)の順となっている。 試験施工の対象土層はシルト質粘土層(K=2.5×10-5cm/s)で、図-1に示す位置に揚水用 SWP 井戸(Φ= 400mm、L=20.5m)1本を施工した。今回の試験施工では、SWP 工法の基本システムに加えて、地下水位面 上の不飽和層の含水比低下の補助を行う目的で地上部に吸気量の多いボルテックスポンプを用いた。このポ ンプは、SWP のフィルター部に設置した2本の小孔付きパイプ(Φ=25mm、L=20.0m)と接続しており、 試験中-0.01MPa の低真空圧で不飽和層中の気化した水蒸気を含む空気を吸引した。 排気 排気消 ゲートバルブ 排水ホース 409K395 冷却ホース 409K400 SK-2 +2.047 真空ポンプ 冷却水槽 200V、11.0kw ノッチタンク V≒1.0m³ エア吸引パイプ (Φ=25mm×2) 409K415 409K432 21,300 BH‐1 揚水管 φ100mm,L=16.5m SWP +2.824 BH‐3 BH‐2 SMW (L=20 m) 地中連続壁 +2.813 +2.552 18,000 鋼管 14.0m(6.0m×2+2.0m) 全井戸長 20.5m 平面図 真空計 1,000 ▼ -1.602 A A' 5,000 フィルター材 5~10mm 豆砂利 20,00 37,000 19,500 BH-1 +2.813 SWP +2.824 1,000 上蓋H=0.5m 動力線 ボルテックスポン プ +2.187 SK-1 BH-2 +2.552 BH-3 -1.602 揚水ポンプ Φ100mm、200V,60Hz,11.0kw 吸水孔 H≒0.5m φ100 mm、4 穴 4 段 含水比、地盤硬度計測面 GL- 7 .5 20,000 基本スクリーン 6.0m 砂溜 2.0m スクリーン 4.0m ストレーナーパイプ 14.0 Screen 18.0 A -A'断面 Unit:m 20.0 Φ400mm 掘削径 φ600mm 図-1 SWP 井戸拡大図 試験施工位置 キーワード 試験施工、バキュームディープウェル工法、地盤改良、トラフィカビリティー、粘性土地盤 連絡先 〒105-8401 東京都港区虎ノ門 1-20-10 西松建設株式会社技術研究所 -1015- TEL03-3502-0274 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅲ-508 3.試験結果および考察 4 試験施工前後の N 値分布の比較を図-2に示す。 シルト質粘土層では、試験後に N 値の増加が認めら 0 9 K 3 9 5 4 0 9 K 4 0 0 37.0 37,000 0 9 K 1 4 5 0 4 20.0 20,000 5.0 5,00 0 SWP N-value BH-2 +2.552 ▽ 5 10 15 20 25 0 N-value BH-1 +2.813 ▽ 5 10 15 20 25 0 +2.84 ▽ れた。N 値は、SWP に近い位置の方がより高い増加割 BH-3 BH-3 埋め立て土 -1.602 ▽ 合を示している。試験中、ボルテックスポンプから 55 0 55 気化した水が回収できた2)。従って、N 値の増加には シルト質粘土 55 10 10 SWP 工法による揚水効果に加えて、不飽和層からの水 蒸気の吸引効果が寄与したと考えられる。 4 10 10 砂質粘土 14.0 10 10 15 15 スクリーン 図-3は、GL-7.5mの深度での含水比の測定結果 l 風化粘土 l 15 15 18.0 である。試験後の含水比は、試験前自然含水比に比 試験後 20.0 15 15 試験後 20 20 べて、SWP からの離隔距離約 15mまでの範囲で低下 20 20 試験前 試験前 しており、SWP の稼動による地盤改良効果が認められ 25 25 る。また、含水比の低下割合は、SWP 井戸に近い位置 図-2 程大きくなっている。 試験位置の地層断面および N 値分布 50 試験後の含水比 (%) 図-4は、地盤硬度の測定結果を示している。SWP からの離隔距離 40m付近の地盤硬度と比較して、SWP 近傍で試験後に明らかな地盤硬度の増加が認められ る。SWP 位置から離隔距離 15mまでを影響範囲と仮 定すると、この範囲の平均地盤硬度は 320kPa である。 この値は、影響範囲外の地盤硬度に比べると、約 2.5 自然含水比 w= 4 6.0 (%) 40 30 20 10 0 倍の増加となっている。また、地盤硬度の増加は SWP 0 に近い程大きく、図-3の SWP からの離隔距離の増 5 10 15 20 図-3 GL-7.5m位置での試験後含水比 図-5は、試験施工後のシルト質粘土層での掘削 の十分なトラフィカビリティーが確保できているこ とがわかる。 以上の N 値、含水比、および地盤硬度の計測結果 より、SWP 工法による粘性土地盤の地盤改良効果が、 SWP より離隔距離約 15mまでの範囲内で確認された。 5 地盤硬度 ( X 98 kPa) 機械の施工状況を示している。同図より、施工機械 4 3 2 1 0 4.おわりに 韓国では、今回初めてとなる SWP 工法の施工を実 施した。その結果、SWP 工法が粘性土地盤に対して、 0 図-4 10 20 30 SWPからの水平距離 (m) な補助工法であることが明らかとなった。 参考文献 1)スーパーウェルポイント協会編:スーパーウェル ポイント工法-技術資料-,2000 年. 2)Hagiwara, T. et al:A trail test by using improved vacuum deep well method in South Korea, Second Japan-Korea Geotechnical Engineering Workshop, Tokyo, 2008, pp.55-60. -1016- 40 簡易式地盤硬度計による地盤硬度の変化 施工機械のトラフィカビリティーを向上できる有効 of 25 SWPからの距離 (m) 加に伴う含水比の減少傾向と対応している。 Proc. 20 20 Unit:m 25 25 図-5 試験施工後のシルト質粘土地盤
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