「JAいるま野」 を訪ねて いるま野農業協同組合様から、当協会に 多大な寄付をいただきました。 トラスト9号地 堀兼・上赤坂の森(狭山市) (左:宮岡代表理事組合長、右:筆者) JAいるま野は、その事業区域を入間郡域(川越市・所 ならないが、下草が生えないようになるとそれはまた別の モ、サトイモなどの芋類は潅水が必要。 その点、ヨーロッパは自然とうまく調和して農業が営ま 沢市・飯能市・狭山市など 10 市3町)とし、正准組合員 弊害もある。雑木林は適度の管理が必要である。ところが 農薬は散布回数が増えている。残存性の低い接触性農薬 れている。 数8万人を擁する農協です。同農協では環境に配慮したト 現在、雑木林の必要性は薄れてしまった。 に置き換わったためである。農薬には使用基準があって、 本来食料は自給すべきものである。今、農家は専業でな ラスト定期をはじめ、森林施業(植林)への助成など地域 もともとここは循環型農業で武蔵野の自然を守ろうとし 登録農薬(作物ごとに使用できる農薬が決まっている。) んとかやっていける。しかし米だけはどうしても難しい。 に密着した各種キャンペーンを実施しております。このた てきた地域である。なかなか課題が多い。雑木林にゴミを しか使えないようになっている。ナスやキュウリなどは出 米は兼業がほとんどである。日本は雨が多く米の生産に非 び、「緑のトラスト定期貯金」を今年の1月から2月に募 捨てるケースは減ってきている。 荷前日まで使用できるが、それは数時間しか効き目が続か 常に適している。稲作は連作障害もなく日本にはぴったり 集、残高の0・05%にあたる270万円を埼玉県をはじ 昔は小型トラックでゴミを撒いていくことが多くあった ない農薬の特性による。昔はDDTや有機水銀系農薬など、 の作物といえる。稲作は採算が維持しにくい作物ではある め、さいたま緑のトラスト協会、管内市町の各緑関連基金 が、今は見かけなくなった。環境保全が大きく取り上げら 2週間以上も残存する農薬が使われていた。今は全く使う が、日本としてしっかり確保していかなければならないの に寄付されました。当協会としては、代表者である宮岡組 れた効果が現れているものと考える。しかし雑木林をこの ことはない。 ではないか。 合長さんをはじめ皆様に感謝の意をお伝えすると共に、入 ままにしておいてよいものか考えてしまう。 アメリカで見学したことだが、遺伝子組み換え作物は病 農村環境はいままで個人の力で維持したきたが、課題も 害虫に強い。除草剤にも強い。特許はアメリカがみな握っ 多く、持ちこたえが難しくなっている。その典型は世代交 間郡域一帯の農業事情についてお話を伺うことができまし 「農業と環境」 たのでここにご紹介したいと思います。 ここは野鳥相も豊か。オオタカの生息が確認されて開発 ているが、除草剤などは1回撒くだけで十分というところ 代で発生する相続問題である。畑を手放すことはできない 「入間郡の自然環境」 が止まることがあった。オオタカは里山に棲む猛禽類。ス まで進歩している。日本は遺伝子組み換え作物を歓迎しな ので山林を手放す例が後を絶たない。以前ダイオキシンの 入間郡域は緑が多く、江戸時代からの家並み、畑、山林 ズメが減っているように思うが、これは巣をつくる瓦屋根 いが、アメリカでは日本向け輸出用として組み換えをしな 問題が起きたことがあったが、このあたりはインターチェ など、昔からの武蔵野の農村風景をよく残している。野菜 がなくなったことが原因か。カラスに攻撃されても隠れる い作物を特別に栽培している。これはどうしてもコスト高 ンジも近く、便がよいことから産廃業者も高い値をつける。 栽培が主流だがサツマイモやサトイモなど芋類の栽培も盛 ところがない。カエルは一時激減したが最近は回復傾向に になる。農作物が工業製品のように見える。 んなところ。昭和 30 年代までは養蚕も盛んで桑畑も多く、 ある。 甘味の乏しい時代、学校帰りの桑畑でドドメを口にほうば 歴史的にはここは水で苦労した地域である。開発の歴史 武蔵野の自然を守るのも農協の一つの仕事だと思ってい れている様子の一端を垣間見ることが出来ました。農業を りながら帰宅した印象は今でも強く残っている。口の中が は井戸の歴史でもあった。井戸を掘る技術が向上し、最初 る。今回もトラストの預金を企画し、その残高の0・05 取り巻く社会情勢は厳しいものがありますが、お話の中に 真っ青になるが自分では全く気づかない。あれは美味し 5m位だったものが、10 m掘れるようになった。しかし %を緑関連の基金に寄付しますということで募集したが、 あった「自然を守るのも農協の一つの仕事だ」という含蓄 かった。 三富新田あたりは 20 m以上掘らないと水が出なかったの 賛同する人は多かった。預金者も農協を通じて地域貢献が あるお話には感銘を受けました。今回のご寄付に対し、あ 武蔵野の雑木林というとアカマツとコナラがセットだっ で開発が最後になってしまった。ここは台地なので水稲は できるという意識の現れではないかと思う。武蔵野の緑を らためて厚く感謝を申し上げます。またJAいるま野の末 た。 無理。とにかく十分な水量がない。入間郡域には不老川、 減らしたくないという皆さんの想いの表れではないか。 永い発展をご祈念申し上げます。 ところがアカマツはほとんど全滅してしまった。マツク 砂川堀、柳瀬川があるが、冬場は水量が落ち、不老川のよ 農業は自然を守る、景観を守ることに大いに寄与してい イムシの仕業である。アカマツの目立つ山林は今ではゴル うに枯れてしまうこともある。今、畑作は雨が適当に降る ると思う。これからも自然との調和に意を注ぐ必要がある。 フ場くらいである。林は手入れをしないとたちまちヤブに ので潅水しないでもすむことが多い。 生産物の価格はできるだけ安いほうがよいが調和を無視し なってしまう。ある程度木が大きくなってしまえばヤブに もっとも夏場は大変なこともある。水は重要。サツマイ た経営は問題が多い。 「JA武蔵野の自然を守りたい」 * 短い時間の訪問でしたが、皆様が農業に真摯に取り組ま (公財)さいたま緑のトラスト協会 常務理事 牧野 彰吾
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