持続可能な発展における FAO の 14 領域 FAO`s 14 themes in

持続可能な発展における FAO の 14 領域
FAO's 14 themes in sustainable development
●食料安全保障との権利 20150318
●栄養 20150603
●貧困の撲滅 20150504
●回復力 20150616
●社会的保護
●気候変動 20150330
●エネルギー 20150503
●漁業、養殖、海洋、海 20150511
●森林と山岳 20150517
●土地と土壌 20150525
●持続可能な農業 20150329
●就業権(Tenure rights)
●生態系、生物学的多様性、遺伝
●水 20150528
20150426
社会的保護
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Social protection
社会的保護は、食料安全保障と貧困削減に直ちに影響する直接収入の支援
を提供する。
社会的保護は、農業における食料生産と農場段階の投資に肯定的な影響を
与える財政上の制約克服とより適切なリスク管理において、農業者とその
他の農村世帯を支援する。
社会的保護は、農業生産、農村の雇用および貧困削減に肯定的な効果を有
する地域経済を刺激する傾向を持っている。
社会的保護は、持続可能な食料システム、天然資源管理および回復力のあ
る生活を推進できる。
社会的保護は、生活に長期的な有益な影響を与える人的資源の育成を強化
する。
概要
適切な社会的保護の利用は基本的人権の一つである。今日、世界人口の半分
は除外されており、27%だけが十分な社会的保護を享受している。さらに 30%
が部分的に利用しているが不十分であり、世界の半分が除外されている。伝統
的な社会保障政策は社会的保護の基本的な要素であるが、ほとんどの発展途上
国、とくに田舎における労働市場の非公式性の程度がきわめて高く、その潜在
的な寄与が最も脆弱な人々に届くのを制限している。
食料不足、栄養不良、ショックを起こし易く脆弱な人々の大半は、社会的保
護の範囲に含まれていない。世界で栄養不良と見なされる 7 億 9500 万人のごく
一部だけが、安全網プログラムを含む社会的保護の一部を利用している。それ
らのほとんどは、農村部に住み、農業に依存している。移民とともに農村の女
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性と若者は、貧しく、基礎的な社会サービスを利用できない人々と重なる傾向
がある。雇用機会や生産資源の利用の面で既に不利な立場にある彼らは、とく
に脆弱である。
リスク軽減やリスク分担のための手段を利用できない貧しい農村部の家族
は、資産を売却して低リスクになろうとするが、収穫量の減少や子供の就学取
止めは将来の生計の見通しを暗くしている。
社会的保護は、貧困と飢餓を減らし、より包括的かつ持続可能な成長を推進
しながら回復力を構築する際に、効果的であることが証明されている。困窮者
に対する保健医療、教育および所得補填の普遍的利用は、より健康的で、生産
的かつ公平な社会を育成する。
必要な政治的意思を伴う社会的保護は、高・中・低所得の全ての国に対して
財政的に手頃であり、様々なレベルの対策と両立する。社会サービス、とくに
健康と教育のより適切な利用と収入保障を結び付ける社会的な移転プログラム
は、栄養不良を大幅に減少させ、収入増加能力を強化する。最後に、これだけ
ではないが、社会的保護は、それまで疎外されていたグループに力を与えるこ
とによって社会を変革できる。
鍵となる課題
政府にとって主な課題は、最も貧困で脆弱な人々、とくに農村部と都市の隠
された部分に社会的保護を拡張することである。多くの発展途上国における社
会的保護計画の拡大の成功にもかかわらず、基本的な社会的保護の範囲にはそ
の他の主要な課題が残っている。社会的保護システムの拡大が成功していると
ころでは、比較的低コストできた。たとえば、ブラジルの Bolsa Família
programme 成功の費用は国民所得の 1%未満であった。
さらなる課題は、その他の経済・社会政策との区別においてしばしば断片化
した多くの社会保護の実行を克服することである。社会的保護は万能ではなく、
その永続的な発展の影響は広範な発展政策と調和した時により大きくなる傾向
がある。そのような調和を達成するために、社会的保護対策と発展成果の相乗
効果の可能性を慎重に査定する必要がある。その影響はそれぞれの部分で異な
る可能性があり、貧しい農村地域においては次の点で社会的保護の強化が見ら
れている。
● 貧しい世帯の子供や女性の栄養改善に関する現金や現物の移転政策を通
したとくに強力な効果を持つ食料入手の改善による食事エネルギー不
足を克服するための世帯支援
● 食料生産および農業における農場対象の投資に肯定的な影響を与える流
動性制約の克服とより適切なリスク管理における、農業者とその他の農
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村世帯に対する支援
● 就学率の増加(とくに女子)、児童労働の削減および保健サービスの利用
によって示される健康と教育のサービスの利用におけるかなりの改善
点の活用
● たとえば、農業生産、雇用および農村部の貧困削減に効果的な影響のあ
る現金給付の支出効果を通した地域経済発展の刺激
● 持続可能な食料システムと天然資源管理の推進:たとえば、社会的保護
が土地保全と住宅地の建設、水資源管理と水利用の改善、貧困世帯を対
象とした植林/再植林のための公共事業計画からなる時
社会的保護の介入策は、飢餓と貧困を削減する FAO の「両輪の」取組み方
における両方の側面の重要な要素である。短期および長期の介入策が必要であ
る。社会的保護は、両輪の間に橋を架けることを可能にする。第一に、世帯に
食料または食料を購入する手段を直接提供することにより、栄養不良を克服す
る手助けとなる。第二に、農業生産の成長を高め、生活と栄養を改善し、社会
的共生を推進することができる。
何をすべきか?
社会的保護、食料安全保障、農業の発展および農村部の貧困削減の間の関連
性を構築し、より大きな政策の一貫性と相乗効果を促進するための明らかな必
要性がある。これらの望ましい発展の影響を達成するために、社会政策は農業
および農村の発展政策と一体となって進める必要がある。また、政府の様々な
部門が社会的保護を適切に普及するため一緒に働くことが不可欠である。
社会的保護基盤の取組み方は、統合され、相互に関連した方法で多方面の脆
弱性と取組むまとまりのある一貫した政策の枠組みを提供する。国の社会的保
護基盤は、基本的な社会サービスの効果的な利用を、基本的な所得保障と結び
付けることができる。このことは、持続可能な発展の経済、社会、環境の各分
野を通した連携と相乗効果を強めるだろう。
訳注: 児童が教育を受けることもなく僅かな稼ぎに出ていることは、次の
世代においても生産性の高い社会が実現しないことを意味するが、多くの発展
途上国でその状態が続いている。その原因を作ったのが高度の文化と技術を持
った先進諸国による植民地政策であったことを踏まえて、第二次世界大戦後の
植民地解放・独立が実現したものの、急速に発展した世界経済からの遅れを取
り戻すことができていない。日本も「おしん」に描かれたような貧しい時代が
あったが、次世代を育成する先人たちの努力によって先進国の仲間入りを果た
した。
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