第 41 回とちぎ観光資源活用研究会が 7 月 26 日に宇都宮大学の UU プラザで開催された。 今回は、当研究会に加入された新会員である(株)ファーマーズ・フォレスト社長の松本 謙(ゆずる)氏に、 「これからの地域経済活性化の展望とは――東京スカイツリ―・とちま るショップの役割を踏まえて――」という題目で 90 分にわたってご発表いただいた。今 回は東京スカイツリーに係わる重要なテーマなので、県内の観光関連事業に従事している 方々にも呼びかけ、多くの方々が参加された。 松本氏の発表内容を以下に概括するが、まとめを担当した者の観点に引きつけすぎた面 があるかもしれない。どうかご容赦願いたい。 地域経済の活性化は全国的課題ではあるが、成功した事例は点として存在するに過ぎな い。松本氏はその困難な課題に、現実に従事している企業経営の事業モデルを踏まえて挑 戦し、地域経済活性化の可能性を摘出しようとしている。従ってすべてはその事業モデル (ビジネス・モデル)に基礎を置く。モデルの基盤は、農業である。そのモデルを理解す るにあたって、単なるビジネス・モデルではなく、基盤に地域・地域で農業を含む多様な 業種に従事している人間に松本氏の<眼差し>が注がれていること、これが重要である。 ソーシャル・ビジネス・モデルと言った方が良いかもしれない。 農業生産・物とファーム・ツーリズムとの接合➞農業生産・物と地域プロデュースの連 接による生産物・地域価値の創造➞価値創造された農産物と地域商社機能を連接し販売➞ 観光連動型の販売拠点を形成し消費者と連接。これら一連のフローの核にファーマーズ・ フォレスト・グループを置き、これらフローを正のスパイラル効果に誘導する。これが松 本氏の事業モデルである。 そうであるとすれば、ビジネスとして成立しない農業の現状をどのようにして持続可能 な農業に転換していくのか。松本氏は、一方で、耕作地放棄の打開策として、耕作放棄地 を生み出さないプランを構想推進する。 (1)地域で循環する農業経営の仕組みを構築(地 域若手営農集団で放棄地を受託)、(2)体験を通してエンターテインメントで放棄地を活 用する仕組みの構築(各種ニューツーリズムの活用)、(3)地域の力を地域で育て、守る 仕組みの構築(担い手継承プログラムの活用)である。これらをファーマーズ・フォレス ト・グループが全面支援する。これでは片手落ちであり、他方で、農業をビジネスとして 成立させるプランを計画・推進する。 (1)これからの農業経営は選択肢の多様性創造が必 要(系統以外の選択肢を持つ)、(2)原価提示販売を可能とする出口戦略の構築(効率的 経営化・付加価値経営化)、(3)地域全体で農業経営と連携し付加価値を創造する仕組み の構築、である。これら一連の計画推進をファーマーズ・フォレスト・グループが全面支 援する。松本氏はこれらの計画の成功のキー・ワードは<出口戦略>にあると主張する。 その根拠をロマンティック村の一定の成功に求めている。 農業を軸とした地域活性化拠点を栃木県内に複数の<点>として育成できれば(例えば 上都賀地域内)、それら点を線で結びつける(えにしトラベル)。<点と線>を増加・拡大 することによって<面>的地域活性化に連接する。スカイツリー・とちまるショップは、 地域活性化拠点を活用した観光プランに心を動かした人々が世界、国内から栃木県を訪れ るための情報の受発機能を持つ。 松本氏の発表後、フロアから多くの質問が出され、氏はそれらに丁寧に答えていただい た。非常に有意味な研究会であった。(文責北島)
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