「ざんさんのおはなし劇場」

「ざんさんのおはなし劇場」
~想像力はコミュニケーションの源~
<事業の背景と目的>
ほっと・すぺーす 21 の主事業の「子どもほっとライ
ンもしもしにゃんこ
」の電話の内容から見えたコミ
ュニケーション力の低下。この課題に対応として平成
19年から、コミュニケーション力を高めたい、楽し
く学ぶ場を提供したいと様々な講座を企画実施してき
ました。
今年度は、コミュニケーションに一番大切な想像力を高めることを目的として「ざんさんおはなし劇場」を松
江市内の小学校と協働で実施しました。
講師は、NPO 法人あそび環境 Museum アフタフ・バーバン専任スタッフ 金子ざんさん。
巧みな話芸で子どもたちの心を大きな物語の世界に連れていく名手です。
<実施会場と対象>
松江市立内中原小学校の5年生 129 名(6/23)
鹿島東小学校の全校児童 90 名(6/24)
恵曇小学校の全校児童 89 名(6/25)
朝酌小学校 1~3 年生 36 名(6/26)と各学校の教職員の皆様 計365名
<事業の概要と様子>
見慣れたホール中央に現れた藍色の舞台、そこをとり囲
むように風呂敷で飾られた会場は、いつもと全く違った雰
囲気で、まるで寄席のようです。
「これから何が始まるんだ
ろう!」と、期待に満ちたニコニコ顔もあれば、
「この、ま
あるいおじさん、ダレ!?」と、怪訝そうな顔も。
いよいよ“ざんさんのおはなし劇場”の始まりです!鐘
を鳴らしながらのざんさんの登場。
「さぁさ、は~じまるよ
~!はじまるよっ!」と、節に乗った誘い文句に引き込ま
れるように、子ども達の集中が高まります。ミカンのオバ
ケに間違えられて逃げられたというお話や、子どもの頃に
はお祖母さんからおはなしをたくさんしてもらったという
エピソードに、子ども達の心とざんさんの心がグッと近づいていきます。
まずは、「うまうま殿様」という、ちょっぴりドジだけど可愛らしくて憎めないキャラクターの殿様と、それ
を呆れながらも優しく諌める家来のお話。意表を突いてくる殿様の発言の数々に子ども達は大笑いし、声色や話
し方を変えながらのざんさんの一人二役に、子ども達はすっかり夢中な様子。馬に乗るのにも四苦八苦し、挙句
の果てには落馬し逃げられる殿様。馬を見送ったところでお話は終わり、子ども達は拍手の音で現実の世界に戻
ってきたようでした。
ここでちょっとブレイクタイム。前に出てくれる人を募っ
て大人も子どもも入り混じってのショータイムです。出てき
た人はみんなから「○○ちゃーん!」と名前で呼んでもらい、
呼ばれた人は元気に返事をする。いつもは恥ずかしがり屋の
子も、みんなに名前を呼んでもらい、照れながらも嬉しそう
に返事をしていました。ざんさんの歌に合わせ、並んだメン
バーで扇子を背中の方でやり取りし、歌と同時に止まる。止
まったところで誰が持っているのかを当てるゲームに、見逃
すものかと釘付けです。持っていた人が扇子を大きく振り上
げると、当たった人は大喜び。当てられた人は会場を回って、
正解者とハイタッチし、会場は一体感を増し、ますます盛り上がりました。
次のお話は「和尚と飴玉」
。小僧さんの就寝後に飴玉を
「ペロペロ」とこっそり舐めていた和尚を、偶然見てし
まった小僧さんが、翌日、自分に「ペロペロ」と名前を
付けてほしいと願い出ておいて、夜中に「ペロペロ」と
舐める音が聞こえたところで「お呼びでしょうか!」と
起きだし、和尚さんの秘密の楽しみがすっかり見つかっ
てしまう、というお話です。ここまでは次につつなぐ導
入のお話です。
ざんさんの一人芝居し終わったところで、
「次は“和尚
とラーメン”で、誰かに小僧役をやってほしい」と告げ
ます。児童からたくさん手が上がりました。指名された
子は、前に出て、ざんさんに合わせ面白おかしく修行をしていきます。お堂の掃除をする雑巾も、それをかける
物干し竿も、仏様も地蔵様も、もちろんそこには何もありません。小僧さん役の子どもは、あたかもこれらがそ
こにあるように、そして見る側の子ども達も、想像力をめいっぱい膨らませてそこに同じ物を見て、協力したり
応援したりする姿がありました。物干し竿が・・といった言葉を待ちうけるように立ちあがり両手を広げ物干し
竿になる子ども(たち)。誰も指示もお願いもしていないのに、当然のように手を広げ成り切ります。最後に「つ
るつる」というキーワードになる言葉が小僧役の子どもから飛び出すと拍手と歓声です。前に出た子どもだけで
なく全員がひとつの世界に入り、その中ではみんなが小僧さんであり演じ者です。
最後は
「飴かいゆうれい」
、小泉八雲のお話が題材です。
内容を知っているという子も多かったようです。飴屋の
主人、見習いの小僧、お寺の住職そして飴を買いにくる
幽霊と、一人四役を演じきるざんさんの話術に、すっか
り引き込まれていました。飴を買って帰ろうとする幽霊
を小僧が引き留めようとする場面では、多くの子ども達
がざんさんの視線の先に、本当に幽霊がいるんじゃない
かと、その方角を背伸びして見る子までいる程でした。
金子ざんさんは松江入りした後、この舞台となった「大
雄寺」など松江の怪談噺にでる場所を実際に訪れ、その
際の印象、松江の良さも当日の話の中に盛り込む等、熱が入りました。
一時間という時間はあっという間にすぎ、もっと聞きたい、もっと浸れたいという、顔が溢れていました。
<児童の感想>
・今日ざんさんにあって、お話を聞いて思ったことは「すごい」と言う言葉です。それにざんさんの表現力に感
心しました。かいくんと二人で劇をやっていたとき、「そこにあるバケツをもってきてくれ」というシーン、本
当にあるような感じ、みている人きいている人が話のなかに引きこまれるようなお話でした。
(女子)
・笑い声がいっぱい聞こえたし、私もいっぱい笑って、すごくおもしろかったです。(女子)
・一緒に手伝ってくれる人と一緒にやる時もあったけど、
ほとんど一人でやっているのに、三、四人でやっている
ようでした。初めて見て、すごいと思いました。(男子)
・持つものが重い時は本当に重いようにしていたし、雑
巾をしぼったりするときに顔を赤くしていたり、いろん
なことをする時に、本当は無いのにあるように感じまし
た。
(男子)
・私の心に一番残ったお話は、
「あめかいゆうれい」です。
幽霊が赤ちゃんのために葉っぱをお金に変えてあめを買
いに行っていて、子どものことを大切にしているんだな
と思いました。(女子)
・動いていても大きな声で言っていたので、すごいなぁと思いました。私は人の前では恥ずかしがってしまうけ
ど、ざんさんは恥ずかしがっていなかったので、これからはざんさんを見習いたいです。
(女子)
・劇がすごく面白かったです。劇は人を誘ったらもっと楽しくなるということが分かりました。(男子)
・楽しいお話で、たくさん笑ってしまいました。私も一緒にやりたかったです。(女子)
・お友達をお話に入れてくれましたね。私は恥ずかしがり屋なので、手を挙げられませんでした。またざんさん
が来た時に手を挙げるので、当ててみてください。すごくすごく面白くて楽しかったです。(女子)
<事業を振り返って>
「ざんさんのおはなし劇場」は、言葉やしぐさによって登場人物が演じ分けられていたり、大掛かりな仕掛け
などはなく、扇子と手ぬぐいのみの小道具を様々なものに見立てて使ったりするなど、落語的要素がふんだんに
盛り込まれています。そのため、見る側は必然的に想像を膨らませなければなりません。「みんなの反応によっ
て、自分の中から色々なものが引き出されて、今日のお芝居の形になったんだと思います。」というざんさんの
言葉が示すとおり、想像力によって生まれた、見る側の一体感と演じ手の想いが響きあうことで、その場の雰囲
気を一緒に作り上げていたのだといえるでしょう。
見ていた誰もが、ざんさんの作り出す空間や世界に引
き込まれ、自ずからそこに「あるであろうもの」を見、
登場人物の気持ちになりきっていましたが、これこそが
相手の気持ちや考えに思いを馳せるという、コミュニケ
ーションの根底につながっているのではないでしょう
か。
今回の経験を通して、子ども達にはどの場面でどんな
風に笑ったり楽しんだりしても良いのだと認めてもら
える時間を共有することや、自分の想いや考えを、思う
とおりに表現する楽しさ良さを知ってもらえたと考え
ています。
体験や経験を重ね何かを感じたり考えたりする時間
をたくさん持ち、また本や物語の世界もいっぱいふれ、たくさんの人の生き方にふれ、喜び哀しみ、苦しみを想
像することをたくさんしていってほしいと思います。想像力とは優しさ、人に思いを馳せるということ。今回の
子ども達の生き生きとしたまなざしに、改めて気付かされたことでした。
(文 ほっと・すぺーす 21 運営スタッフ 高橋莉央)