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根圏制御栽培法導入にかかる経費例 (2012年度)
根域を制限。樹に適した生育環境とすることで
樹体生育、果実生長を良好にして高品質な果実生産を可能とします
また、樹形改造(2本主枝Y字仕立)により
らくらく楽な姿勢で効率的な作業環境と収量アップを実現します
盛土式根圏制御栽培法
Soil Mound Rhizosphere Restricted Culture System
根圏
❶
移植翌年に収穫開始
購入苗をそのまま利用しても、移植翌年
(2年目)には1~2t/10a、3年目に2~
4tが収穫できます。
25a当り
10a換算
40a当り
10a換算
1 定植用培土等
195,265
612,500
245,000
946,740
236,685
2 シート等資材
330,400
457,260
182,904
866,080
216,520
3 Y字棚資材
208,309
359,610
143,844
849,730
212,433
4 潅水装置
678,000
655,470
262,188
747,990
186,998
5 潅水関連資材
213,728
415,071
166,028
776,646
194,162
6 種苗費
140,000
245,000
98,000
357,000
89,250
50,000
208,050
83,220
314,250
78,563
1,815,702
2,952,961
1,181,184
4,858,436
1,214,609
1,906,488
3,100,609
1,240,244
5,101,358
1,275,339
1,906,488
1,334,640
533,856
2,223,330
555,832
7 装置設置工事
合計(税込み)
(自己資金)
❷
高品質多収(収量倍増)
幸水で
5~6t
移植5年目には成園化し、慣行の2倍
※栃木農試は樹間2m×列間2.5m
(200本/10a)、現地は樹間2m×列間3m(167本/10a)。
※自己資金は、栃木県単事業、 中央果実基金事業を利用。
※苗の植付け、棚設置にかかる人件費は含まれていません。
※井戸設置、電気工事は含んでいません。
程度が収穫できます。果実糖度もかん
※慣行は成園化まで約10年
(2~3t;幸水)
❸
作業の効率性・軽労化
コンパクトなY字樹形により、上向きの
れます。また、直線的な作業が中心と
なり、見落としや無駄な動きが減り作
業時間が短縮されます。
紋羽病を回避
もり ど しき
根圏制御
盛土式
栽培法
盛土式
根圏制御
ん
せ
い
ぎ
ょ
さい ばいほう
栽培法
根域を制限してコンパクトなY字樹形を実現。
密植と適切な養水分管理によりニホンナシで優れた多収性を示します。
■ニホンナシの主要品種「幸水」
「豊水」の高樹齢化が進み、生産量は1970 年代の約半分に落
ち込んでいます。生産向上のためには植替えが必要ですが、成木になり移植前の収量に回復
するまで十年程度が必要なこと、紋羽病等による枯死の懸念ため、改植が進んでいません。
■そこで、栃木県農業試験場では早期成園化および高品質多収栽培技術の確立を目的として、
2008年に遮根シートにより地面と隔離した盛土に苗を植付け、樹齢・生育時期ごとに測定した吸
能にした新技
可
を
収
術
超多
水量に基づき、樹の成長に合わせて設定したかん水を行う盛土式根圏制御栽培法(以下,根
圏)を開発しました。
■ニホンナシの根圏は、樹形をY字形とし「二年成り育成法」で養成することで、移植翌年(2年
目)に結実し、3年目に成園並の収量、5年目以降慣行の2倍程度の多収を実現しました。
■Y字樹形により上向きの作業が大幅に少なくなることで、作業姿勢が楽になります。また、樹
を並木植えに配列することで、効率的に作業できるため、作業時間が短縮され、労働単価(収入
経営改善効果(現地実証より)
/労働時間)が向上します。
■導入後、3年目には収入が導入前の水準に回復し、その後は大きく向上します。経営向上を
■収量:移植翌年に1~2t/10a、3年目2~4tを実証。
■経営改善:導入翌年は、改植した分が収入減とな
るが、3 年目は収入が導入前の 103%、所得は 117%
と向上。
■労働時間:作業の 1,500 所得100%→ 57% → 88% → 117%
効率性が良く、剪定・ 1,200 収入100%→ 84% → 92% → 103%
900
誘引が省力となり
根圏25a
地植146a
地植121a
600
全体で約2割削減。
労働単価は、約2倍 300
T氏
に。
0
志向される方に活用していただけるものと期待しています。
収入(万円)
作業が少なくなり身体の負担が軽減さ
次世代のなし栽培法
現地40a導入
(参考)
水管理により高まります。
※慣行は 4年目に 0.4t程度
❹
項 目
計
5つの特徴
現地25a導入
栃木農試10a
こ ん け
ガイドブック
❺
品種更新が容易
盛土が地面から隔離されるため、紋羽
コンパクトな樹形のため、新品種への
病等の土壌病害から回避できます。
切替えや、消費ニーズに連動した品種
更新などが容易にできます。
■移植3年目の収量
かん水制御盤
導入前
(H23) 1年目
(H24) 2年目
(H25) 3年目
(H26)
導入後年数
実証農家名
幸水
あきづき
根圏全体
T氏
2.5t/10a
4.8
3.0
2.2
M氏
1.8
2.5
2.1
2.1
W氏
2.5
3.9
2.2
2.3
目標値
2.0
2.5
2.0
(参考)
地植 成園
かん水ノズル
根圏制御栽培法実証グループ
(代表)栃木県農業試験場
320-0002 栃木県宇都宮市瓦谷町 1,080
HP:http://www.pref.tochigi.lg.jp/g59/
(2015 年 7 月作成)
かん水チューブ
培地
培土
遮根シート
ビニルシート
原水
電磁弁
流量計
かん水制御盤
(コンピューター制御)
生研センターが実施する
「攻めの農林水産業の実現に向けた革新的技術緊急展開事業(うち産学の英知を結集した革新的な技術体系の確立)」
を活用
かん水キット
正面図
根圏の優位性
栽培方法と仕立て方
■LAI:Y字根圏は4.9で他の処理区の2倍程度と大きい。
結果
結果枝
100~140㎝
■着果数:Y字根圏は㎡当たり18.5果と他の処理区の約2倍。
100~140㎝
25 ㎝
45度
主枝
主幹
■葉果比:すべての処理で35 程度と差がない。
■10a換算収量:Y字根圏で6.1tと最大。
主枝 主幹
80㎝
30㎝
盛土
植付け方法
30㎝
100㎝
80㎝
■糖度:根圏の処理が0.5~1%程度高い。
遮根シート
ビニルシート
正面図
慣行の平棚地植の2.2倍と多収。
■樹勢:Y字根圏の新梢発生程度は中程度。
側面図
優良な発育枝が確保され、花芽数も多い。
170㎝
25 ㎝
主幹
200㎝
6.1
Y字根圏栽培
結果枝
主枝
結果枝
主枝
100~140㎝
180㎝
45度
主枝
㎝
主枝
60㎝
遮根シート
35 ㎝
支柱
平棚地植栽培(慣行)
2.2 m
㎝
■均平にした地面に、厚さ0.1㎜以上、幅0.8mのビニル
シートを敷き、その上に、耐久性の高いトスコ社製ルー
トラップ(厚さ0.5㎜、幅1.0m)等の遮根シート設置し
根圏を地面から完全に遮断する。。
結果枝誘引線
(小張線を3本まとめ
て利用する)
Y字支柱
(19 ㎜直管)
結果枝誘引線
35 ㎝
主枝支持管
マルチ
(タイベック等)
7.2 m
4.0m
結
果
枝
主幹
主幹
ニホンナシ樹
遮根シート
結
果
枝
盛土
ビニル
250〜300 ㎝
植付け
250〜300 ㎝
亜主枝
側面図
2.0 m
結果枝
主枝
主枝
上面図
平棚地植栽培(慣行)
主枝
上面図
Y字地植栽培
平棚根圏栽培
1
結果枝誘引線
(既存の棚線を利
用する
平棚根圏栽培
2
■主枝を誘引し、第1主枝から次年度
の結果枝候補を養成する。
■第1主枝に果実が着果する。同時に
第 2 主枝に結果枝を養成する。
■樹形が完成し、慣行の成園と同程度
の収量が得られる。
植付け2 年目の夏
植付け3 年目の夏
初結実で 1~2 t/10a
※慣行の地植栽培(0t/10a)
樹形が完成:2~3 t/10a
※慣行の地植栽培(0t/10a)
※慣行の樹形完成は約10年
移植 1 年目の管理
結果枝誘引線
10a 換算乾物生産量
■乾物生産量:Y字根圏で大きい。
■果実への同化産物分配率:Y字根圏で43.0%、平棚根圏で
39.1%と極めて高い。
■細根への分配率:細根の発生が多く、根圏制御で高い。
■根圏:仕立て方をY字仕立てにすることにより、糖度が高く慣行
の2倍の収量となる。
■要因:根圏では細根の発生が多く、樹体生育が良好になるととも
に、Y字仕立てにすることで葉層が厚く、LAI が大きくなり乾物生
産量が増加する。また、果実への同化産物分配率が高まり、収量
および糖度の向上が図られた。
マルチ
(タイベック等)
盛土
■慣行の2倍程度で糖度が高く、高品質多収
となります。
遮根シート
200 ㎝
200 ㎝
100 ㎝
■花芽が十分にあるので、受粉は1果そう1花とする。
■2年目25果、3年目40果(葉果比50程度)。4年目以降は
葉果比35を目安に着果させる(60~80果/樹)。
❶木枠を置き、中心に苗を配置し根を広げる。
❷培土、肥料は 2 度に分けて入れ、その都度外周付近を強
く固め盛土が崩れないようにする。
3
❸木枠を上に引き上げ、か
ん水用のドリッパーを苗
の周囲に設置する。
❹盛土にマルチを被覆す
る。
樹齢別の着果数と収量(幸水の場合)
2年目
3年目
4年目
着果数(果/樹)
25
40
60
80
着果数(果/㎡)※
5
8
12
16
1.9
3.0
4.5
6.0
❸第1主枝から8本程度の
結果枝を養成する。
❹主幹
(第1主枝の湾曲付
近)
から発生した新梢は、
第2主枝候補枝として、垂
直に誘引し新梢伸長を促
す。
結果枝の確保
【Uターン予備枝】
■主枝基部からの新梢は強
勢化しやすいので、Uター
ン予備枝を利用する。
夏期管理
【くさび処理】
■結果枝基部から新梢を発生
させるために、剪定時に切
込み(くさび)を入れる。
■主枝から発生する発
育枝は、誘引や切り戻
しを行い育成を図る。
■結果枝上の新梢は果
そう葉を残して摘除
する。
❼第1主枝に 25 果程度着果させる。
(葉果比50程度)
❽第 2 主枝から8 本程度の結果枝を養成する。
❾新梢管理:主枝から発生する新梢は、誘引や切り戻しを行い育成を図る。
結果枝上の新梢は果そう葉を残して摘除する。
養水分管理
(かん水管理)
成木で 5~6 t/10a
※慣行の地植栽培(2.5t/10a)
※「幸水」の場合
■剪定後の管理(写真は開花期)
❺第1主枝から結果枝8本程度、予
備枝数本を配置する。
❻第2主枝を約 30 度に誘引する。
■夏期の着果・新梢管理
※
5年目以降
※樹間2m×列間2.5m(200本/10a)換算
■夏期の新梢管理
ニホンナシ樹
ビニル
100 ㎝
受粉・着果管理
■結果枝は3年を目安に更新する。
■結果枝は、主枝から8本程度を配置する。
■結果枝間隔は25㎝程度とする。
■次年度の結果枝を確保するため予備枝を配置する。
4 年目以降
主枝
主枝支持管
(19 ㎜直管)
剪定・誘引
収量(㎏/㎡)
移植 2 年目の管理
結果枝
上面図
3 年目
❶苗は盛土上面から150㎝
程度で切り返す。
❷苗は地面から80㎝の位
置を支点とし、30度に誘引
し、
第一主枝とする。
シートの設置
棚柱
2 年目
■植え付け直後
正面図
既存の棚線
7.2 m
■盛土を作成するために、木枠を製作しておく。
■木枠はコンパネ等を用い、下底105㎝×上底90㎝×高さ
30㎝の台形を2枚、下底60㎝×上底45㎝×高さ30㎝
の台形を2枚用意し、
ビス等で固定する。最後に、上面に
支え板を斜めに固定する。
に直管パイプ(19㎜程度)で主枝を誘引する主枝支持
管を設置する。
■Y字支柱は 45°の角度とし、2~3 樹毎に設置する。
30~40㎝間隔で被覆鋼線を張り結果枝を誘引する。
■苗木を植付け、盛土への雨水の浸入を防ぐため、マルチ
正面図
正面図
1 年目
植付け1 年目の夏
成木の年間作業
(幸水の場合)
木枠の作成
30㎝
ビニルシート
正面図
■赤玉土とバーク堆肥を容積比2:1で混ぜ合わせたもの
を用い、培土量は150リットルとする。
■赤玉土は、大粒
(8㎜以上)
:中粒:細粒
(2㎜未満)
の割合
が体積比で1:2:1のものを用いる。
■バーク堆肥は、完熟したもの(窒素2.0%、りん酸1.1%、
加里1.4%、炭素率25程度)とする。
を被覆する。
㎝
主幹
120㎝
土
■足場パイプや直管でY字支柱を組み、高さ 100 ㎝の位置
主枝
主枝
■ほ場の選定
日当たりが良好で強風が当たらず、傾斜の少ないほ場が
望ましい。
■水源の確保
根圏制御栽培された樹が最も多くの水量を要するのは満
開後 90 日頃であり、10a当たり1日約 6 ㎥必要である。この
ため、
十分な水量の確保が必要である。
■電気工事
自動かん水を行うためには、かん水制御装置と電磁弁に
供給する100V(又は200Vの三相)の電源が必要である。
【露地で既存の平棚を利用する場合】
幸水
上面図
培
ほ場準備
設置例
結
果
枝
移植後の生育
■樹体の窒素吸収量に応じて樹齢別の施肥量
を設定した。
【移植時】
■緩効性肥料(シグモイド100日タイプ:窒素
12-リン酸14-加里12)
:窒素成分で30g。
■土壌改良材:ようりん180g、苦土炭酸カルシ
ウム肥料96g、FTE(微量要素)7.5g。
【2年目以降】
■緩効性肥料を催芽期に、窒素成分で2年目
50g、3年目75g、4年目以降100g施用する。
■土壌改良資材は、隔年ごとに移植時と同量
を催芽期に施用する。
■樹体の吸水量は葉の展葉、
果実肥大に伴い増加するた
め、生育ステージ別、樹齢別
のかん水量を設定した。
■培地が小さいため、かん水
は1日20回以上に分けて行
う(概ね40分間隔)。
生育ステージ(1日の灌水量、L/樹)
樹齢
1
2
3年以降
催芽~
満開後30日
3.0
7.5
10.0
31~60日
5.0
7.5
10.0
61~90日
91~収穫期
7.5
20.0
30.0
(施肥管理)
収穫後
7.5
20.0
30.0
※3年目以降、糖度向上を図る場合は91~105日に10Lとする。
※晴れが5日以上続く場合は、盛土が乾燥するため、半日程度連続かん水する。
5.0
15.0
20.0
【液肥の利用】
■施肥労力の削減を図るため、緩効性肥料の
かわりに、同量の液肥をかん水同時施用す
ることも可能である。
※使用する液肥は、現在調査中(H27.6月現在)