iPS由来組織の安全性に関する考察

資料1-4
iPS由来組織の安全性に関する考察
国立がん研究センター研究所 エピゲノム解析分野
牛島 俊和
1
がんのバイオロジー:多段階発がん
臨床がん
正常
突然変異
エピジェネティック異常
2
がんはクローナルな疾患 => 少数細胞での異常も重大な影響をもつ場合がある
化学物質のリスク評価に必要とされる主な試験
対象
遺伝毒性
試験
反復投与
毒性試験
一般工業
化学品
in vitro
(Ames,
染色体異
常)
28日間反復
投与
+
14日回復期
(哺乳類)
医薬品、医薬
部外品、化粧
品及び医療機
器
in vitro
(Ames,
染色体異
常)
in vivo
亜急性
慢性
(げっ歯類、
非げっ歯類)
食品添加物等
in vitro
(Ames,
染色体異
常)
in vivo
亜急性
慢性
(げっ歯類、
非げっ歯類)
農薬
in vitro
(Ames,
染色体異
常)
in vivo
亜急性
慢性
(げっ歯類、
非げっ歯類)
がん原性
試験
△
げっ歯類〜-
げっ歯類
生殖発生
毒性試験
分解性・蓄積
生態毒性
性または
試験
動態試験
△
微生物によ
る分解や魚
類への蓄積
等
藻類、甲殻
類、魚類へ
の影響
げっ歯類
他
げっ歯類、非
げっ歯類、ヒ
トの薬物動
態
-
げっ歯類
他
げっ歯類、非
げっ歯類、ヒ
トの薬物動
態
-
藻類、甲殻
げっ歯類
類、魚類、
げっ歯類
他
昆虫、鳥類
への影響
3
(国立食品医薬品研究所 病理部 小川部長 ご提供)
土壌、植物、
動物体内運
命試験
反復投与毒性・発がん性試験の群構成・投与期間
雌雄 毎日投与
高用量
3ヶ月
投与 13週
開始 90日 6ヶ月
n=5
12ヶ月
18ヶ月
24ヶ月
2年
投与(28日)+回復期(14日)
n=10
中用量
n=10 亜急性毒性試験
n=10
慢性毒性試験(ラット、イヌ)
低用量
n=50
無投与
考慮点
n=50
用量
投与経路
(混餌・飲水・強制経口)
発がん性試験(ラット)
発がん性試験(マウス)
用量依存性
統計学的有意差
背景値との比較
投与との関連性
ヒトへの外挿
4
(国立食品医薬品研究所 病理部 小川部長 ご提供)
変異原性試験の感度
Reversion test in S. typhimurium
Transgenic mice for a marker gene
(Ames test)
(Big Blue, Gpt-Delta, Muta-mouse, etc.)
Mortelmans, Mutat Res, 455:29, 2000
Suzuki, Mutat Res, 369:45, 1996
1/107-104の変異を検出する方法が用いられている
5
エピジェネティック制御 - iPS化、分化における重要性
Nat Biotech, 28:1079, 2010
Cell, 151:1617, 2012
6
エピジェネティック制御 – がん化における重要性
1. がん細胞の初期化が可能な場合がある。
2. 全ゲノム解析でも、がん化を説明できるだけのドライバー変異
が見つからない腫瘍も多い。
3. エピジェネティック治療は現実の医療で効果を発揮している。
4. エピジェネティック調節遺伝子の突然変異は多くのがんに存
在。
5. リプログラミングの失敗はがん化につながる。
6. 組織のエピジェネティック異常の蓄積は発がんリスクとよく相
関する。
7
我が国のエピゲノム・エピジェネティクス研究振興の施策
JST Sakigake (PRESTO) 2009Epigenetic Control and Biological Function
(10 M USD over 5 years)
NEDO 2011Epigenetic drug discovery
(20 M USD over 5 years)
JST CREST 2011Development of Fundamental Technologies for Diagnosis and Therapy
Based upon Epigenome Analysis
(45 M USD over 7 years)
8
エピゲノム変化を検出する技術
DNAメチル化
ヒストン修飾変化
• 全ゲノムをカバー (482,421 CpG sites)
クロマチン
断片化
• 遺伝子領域毎のアノテーション
• 非CpG部位も (3,091 Non-CpG sites)
• 高い再現性
ヒストン修飾
特異抗体
WCE DNA
IP DNA
9
考
察
1. 「正常」エピゲノムは細胞種毎に異なる
分化後細胞の正常エピゲノムを解析しておく必要性
2. エピゲノム状態には生理的なふらつきがある
細胞種毎、遺伝子領域毎に異なる
移植する細胞に許容される「ふらつき」の程度は不明
3. 現状のエピゲノム解析法は10-20%程度の感度
変異原性試験のような高感度は実現されていない
現状では、不明のこと、検出できないことが多い
• 再生医療の推進と同時に、リスクコミュニケーション
とリスク評価の研究が必要。
• 不明が多い分、品質管理、安全性で世界をリードす
10
る戦略も。