菅谷 信行

広島県庄原市立高野小学校
東京都目黒区立田道小学校
藤原 高江
菅谷 信行
『くっつく実でどんな遊びができるか考え
ねで観察させ,この気付きをみんなで確かめ
一人ひとりが操作できる流水実験器
る』をめあてとした授業で,気付きの質を高
た。こうして,オナモミがよく付くのは,と
「流れる水のはたらき」の学習では,流れ
める手立てとして,特に二つのことを考え
げの様子に関係があることに気付くことがで
る水の「削り,流し,積もらせる」働きを学
ていた。一つ目は,実際にくっつく実をい
きた。ほかの実についてもとげの様子に目を
び取らせることが学習の中心になる。しかし,
ろいろな物に付ける活動を取り入れることに
向ける言葉かけをしながら進めていった。
土山を流れる水の観察や川の流れの映像など
より,実の特徴に気付き,遊びを考えること
やっと本時のねらいとする
『遊びを考える』
で子どもが問題を意識しても,学級全体での
ができるようにすること。二つ目は,話し合
活動に入ったのは,ほとんど後半。真っ先に
いの場において,子どもの反応に対して少し
出たのは,
やはり的当てだった。
その中で,
「ヌ
つっこんだり,ゆさぶったりする言葉かけを
スビトハギで的当てがしたい」という意見に
流水実験では一人ひとりの問題解決にはなら
ない。ぜひ流水の働きを自ら確かめられるモ
個の考えを大切にしたモデル実験
デル実験をさせたいと考えた。そこで,一人
いよいよモデル実験である。「カーブの秘
行い,個々の気付きを全体に返し,気付きを
対して,
「オナモミは長丸で投げやすいけど,
ひとりが方法を工夫しながら実験を進められ
密」では,カーブの内側と外側の流れと削れ
共有することである。
ヌスビトハギは軽くて投げにくいので,的当
るように,理科室の机に置くことのできる小
方について,自分なりの予想を立て,方法を
型の流水実験器をアクリル板で作った。
子どもたちは,採集したくっつく実を紹介
てはオナモミでする方がいい」という体験を
工夫して実験するようにした。
した後,待ってましたとばかりに自分の服に
もとに二つの対象を比較した気付きが出され
付けたり,互いの服に投げ合ったりすること
た。しかし,この後,時間不足で深めていく
に夢中になっていった。いろいろな実(6種
ことはできなかった。
土山実験で問題を意識化
導入で,川の流れる様子のビデオを見た後,
赤土で作った土山で水を流し,流れる水は土
山をどう変えるか観察した。初めは少しずつ
水を流し,その後やや流す量を増やした。
「土山に変化が起きてきたかな」の問いに
「流れにそって土の粒がころころ転がってい
く」「山の上の方では川が削れて深くなって
いるよ」「カーブしているところで外側が削
れているみたいだ」「下の方で土がたまって
川の中の島みたいになっている」など,たく
さんの声が返ってきた。
次の時間,土山の実験から気づいたことを
もとにくわしく調べたいこと
を 出 し 合 い,
「カーブの秘
密 」,「 水 の 勢
いと力」の二
つについて問題
を設定して調べ
ることにした。
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A児のグループの実験の流れ
○カーブの外側の方が削れるか調べたい。
【土を入れた流水実験器に掘った溝の周りに 
  楊枝を立てて削られ方を調べた】
  ・ 「カーブの外側の土が流されている。
水が
ぶつかって土を削っている感じがする 」
○流れる水の速さや流れ方を調べたい。
【水にチョークの粉とおがくずを流して調べた】
  ・ 「水の流れが外側の方が速い。
水が外側の
土にぶつかって削っている」 ○丸い水槽に水を流しても外側の方が速く
流れるだろうか。遠心力かな?
【水槽の中央にジュース缶を立 
  て,水に小さいプラスチック 
  の玉を浮かせて一方向に水を 
  流した】
円の場合でも外側の方が速く流れてい
る。川が曲がっているときはカーブの外
が速く流れ,外側の土を削る。
一人ひとりが,どうして削られるのかとい
類 ) を 付 け る う ち,
この時間は,
『遊びを考える』
ことよりも
『実
次第にオナモミを付
の特徴に気付く』ことが主となる授業となっ
け合うことが多く
た。予定通りに進めようとする私の思いが先
なっていき,反面,
行してしまったからである。子どもたちがオ
くっつける物の質
ナモミを虫めがねで見て,
「本当だ。○○さ
にも気付いてほし
んの言った通りだ」と驚いたときに,しっか
い と, こ ち ら が
りと共感し,
その上で「これで何がしたい?」
準備していた材
「どんな的を作る?」とオナモミを中心とし
質の異なる布に
た言葉かけをしていたなら,くっつける物の
付ける子は少な
質にも目が向き,遊びの内容を高めていくこ
かった。
とができたであろう。ほかの実については,
感想や気付きの交流後,子
この時間にすべて取り上げなくても「○○も
どもたちがいちばんよく使っ
同じかな?」と言うことで,主体的にとげを
たオナモミについて,
「どう
観察したり,遊びを考えたりするようになっ
してよく付くのか」話し
ていたかも知れない。
合った。
「先がちくちくし
この実践を通して,気付きの質を高めるに
ているから」
「針みたいなと
は,まず,子どもたちの活動の様子や気付き
とで,川に行っての観察や実験でも「やっぱ
げがある」
「大きいとげがあるよ」
「と
をしっかり見取り,共感し,その思いを大切
り内側に小石がたまっているよ」「向こう岸
げの先が曲がっているからよく付くんだと思
にした展開を考えること。そして,子どもた
の方は川が波立っていて速く流れている」な
う」と,
とげに注目した発言が出てきた。
「ほ
ちの反応に合わせた柔軟な対応(言葉かけ)
ど,問題意識をもって活動することができた。
かの人もそう思う?」と全体に返し,虫めが
をしていかなければならないと痛感した。
う問題に自分なりの仮説を立てて実験したこ
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