平成26年度地熱部事業成果報告会 【地熱資源ポテンシャル調査】 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 平成27年7月10日 地熱部 0 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 ヘリコプターを用いたTEMの原理 解析された比抵抗構造の 3次元表示(霧島地域) 1 (霧島地域) HeliTEM飛行経路図 ① コイルに電流を流し、磁場を発生させる。(アンペールの法則) ② ①の電流遮断時の磁場変化に対応する渦電流(エディーカレント)が 地下に流れる。(ファラデーの電磁誘導の法則) ③ ②で生じた電流自体も磁場を生み出す。(アンペールの法則) ④ ③によって生じた磁場を観測し、地下の比抵抗分布を推定する。 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 SQUITEMの調査概要 2 ① SQUITEM調査の目的 地熱資源ポテンシャル調査における空中電磁探査データの比較検証 SQUITEMの地熱資源調査における有用性の検討 ② 調査担当 三井金属資源開発株式会社 ③ 調査地点・調査期間 調査地域 :大霧地熱発電所周辺地域 調査(測定)期間 :平成26年5月20日~6月8日 (20日間) 霧島地域 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 SQUITEMについて 3 ・ センサーに高温超電導磁気センサー(SQUID※)を利用した時間領域電磁探査システム。 ・ JOGMEC金属資源開発本部の資源探査部が(公財)国際超電導産業技術研究センター (ISTEC)と三井金属資源開発㈱(MINDECO)に委託して開発した。 高温SQUIDを用いた精度の高い測定 広い周波数帯域で安定した特性 → 浅部から深部まで安定した測定が可能 dB/dtでなく、B-fieldの測定 → 一般的な誘導コイル方式より深部の情報を取得できる 磁気センサー/受信装置 SQUIDセンサー(先端部分) ※SQUID:Superconducting Quantum Interface Device SQUITEM配置例 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 4 霧島地域の地質概要 九州の活火山分布 霧島地域の地質図 地質概念モデル A A’ A A’ HeliTEM 「霧島」調査範囲 活火山 大霧地熱発電所 (30MW) 火口 ( Uchida, 2010 ) 霧島地域は、宮崎県と鹿児島県の県境付近に広がる霧島連山の西方に位置する。 霧島地域では、白亜紀~古第三紀の四万十層群を基盤岩とし、その上部を第四紀の火山岩類および 湖成堆積物が広く被覆している。 当地域に存在する大霧地熱発電所の主要な地熱貯留層である銀湯断層の上部には熱変質を受けた 粘土鉱物の難透水層(キャップロック)が分布する。 このキャップロックは、既存の電磁探査や坑井調査によって低比抵抗帯として検知されることがわかっており 、HeliTEMやSQUITEM探査は、これらの比抵抗構造をターゲットとする。 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 対象地域における既存調査 5 霧島地域では、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による研究開発プロジェクトが実 施されたことにより、種々の電磁探査データが存在する。 NEDO調査、Uchida (2005; 2010)、高倉(2014)によって、当地域における比抵抗解析結果 が多数報告されており、SQUITEMやHeliTEMの検証地として最適な地域となっている。 年 調査手法 実施内容 1997 - 2001 MT法 CSAMT法 MTモニタリング SP法 電気探査 2002 AMT法 MT法 AMT法の地熱探査に対する有効性の評価 産業技術総合研究所 2004 AMT法 MT法 新たな地熱貯留層の抽出を目的としたAMT探査 日鉄鹿児島地熱㈱ 2014 TEM法 SQUITEMを用いた時間領域電磁探査 JOGMEC 2014 空中TEM法 地熱資源ポテンシャル調査における空中電磁探査 JOGMEC MT法、CSAMT法による精密比抵抗構造探査 MT法を用いた長期比抵抗連続モニタリング MT法モニタリングの有効性検証を目的とした繰り返し3次元電気探査 自然電位モニタリング 自然電位と比抵抗による貯留層変動予測手法の開発 実施者 NEDO 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 調査位置と既存調査測定点との位置関係 • • 6 霧島地域におけるHeliTEM調査域西部に位置する大霧地熱発電所周辺。 大霧地熱発電所周辺ではNEDO調査によってMTやAMT、CSAMTによって比抵抗構造が調べられており、 比較検討のため既存の解析測線上に測点を配置した。 大霧地熱発電所 HeliTEM調査範囲 1km 比抵抗 [ohm-m] E D C A B 既存CSAMT測線(NEDO) 計画測点位置 ※NEDO平成10年度 地熱探査技術等検証調査 貯留層変動探査法 (開発テーマ3 電気・電磁気探査法開発) E A B C 比抵抗断面 (NEDO, 1999) D 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 SQUITEM調査仕様 7 SQUITEM測定システム概略図 100m ・作業者数 ・調査進捗 (平均) : 6名 : 5-6点/日※ ※休日、荒天待機日を除く測定日で算出。最大8点。 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 SQUITEMの測定データ 8 測定時間が長くなるほど、深部の情報を有する磁場を測定できる。 低比抵抗域に対しては緩やかな減衰を、高比抵抗域は急激な減衰 を示す。 既存のMT法で求められた比抵抗構造からフォワードモデリング(順 解析)で推定されたTEMの減衰曲線とSQUITEMの観測データは 10-4秒以降でよく一致している。 t 0.3Hz 30Hz 低比抵抗 経過時間[sec] 測定点L2_07の測定データ 磁束密度(B-field[nT]) B field (nT) 磁束密度(B-field[nT]) 1.E+01 1.E+00 0.3Hz ML1_26 1.E-01 30Hz 30Hz 1.E-02 MT法 順解析結果 0.3Hz 1.E-03 1.E-04 1.E-05 1.E-06 1.E-05 1.E-04 1.E-03 1.E-02 1.E-01 1.E+00 Time (sec) 経過時間[sec] SQUITEMデータとMT法準解析による減衰曲線の比較 (測定点L1_26) ※左図が低比抵抗域、右図が高比抵抗域で得られる減衰曲線 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 TEMの信号とスタッキングによるノイズ処理 観測波形を切り出し、交互に反転させて スタック(重合)すると・・・ 送受信信号と商業用電源ノイズ 送信波形 30Hz 観測データ 9 商業用電源 60Hz 強調 in スタック i n 1 反転 相殺 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 解析結果 (Line 1) と既存坑井対比図 10 Line 1 CSAMT比抵抗断面(NEDO, 1999) • Resistivity [ohm-m] • E • 測線中央(銀湯断層付近)で浅部に至る10Ωm以下の 低比抵抗分布と、その他の範囲での標高500m程度まで数 10~数100Ωmの中~高比抵抗の分布は既存CSAMTの 解析結果と調和的。 銀湯断層付近のCSAMTの結果では一様に低比抵抗を示 すが、SQUITEMの解析結果では、深度200mに100Ωm の高比抵抗領域が捉えられている。 比抵抗検層プロファイル(KE1-22)とも整合的である。 A B SQUITEM解析結果 検出限界? 御幸ほか(1995)の第7図を対比 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 解析結果(Line 2) と既存坑井対比図 11 Line 2 CSAMT比抵抗断面(NEDO, 1999) • Resistivity [ohm-m] • E A B 銀湯噴気帯(銀湯断層)の浅部では低比抵抗領域が存 在し、その下では約200m程度の100Ωm程度の高比抵抗 帯があり、深部へ向け低比抵抗化しており、CSAMTでも同 様な分布を示す。 白水越断層付近においても浅部から低~高~低の比抵抗 分布を示し、CSAMTの解析結果とは異なっている。 SQUITEM解析結果 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 解析結果(Line 2) と既存地質断面図 12 SQUITEMの解析断面と御幸ほか(1995)の解釈断面を対比したところ、10Ωm以下の低比抵 抗を示す構造の上面と推定されている難透水層の形状が整合している。 銀湯断層と白水越断層の地表付近まで低い比抵抗が分布するが、地熱流体の局所的な経路を示 唆する分布を示している。 御幸ほか(1995)の第3図を対比 御幸ほか(1995)の第10図を対比 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 HeliTEMの解析結果との比較 Heli-borne TEM 1000 SQUITEM Elevation (m) 浅部における低比抵抗の形状はよく対応しており、 HeliTEMが、既存の比抵抗構造と整合する構造をとら えていることを確認した。 HeliTEMの解析結果では、浅部に低比抵抗が分布す ると、探査深度が小さくなり、SQUITEMや坑井で確認 されている比抵抗パターンがとらえられていない。 13 0 0 距離 (m) 1500 新しい電磁探査法「SQUITEM」の適用 まとめ / 今後の展望 14 まとめ 電磁的ノイズを発生させる地熱発電所周辺というノイズ環境下での調査であったが、必要に応じてデー タを多く測定し、スタック数を増加させることで、解析に支障のないデータを得ることができた。 SQUITEM調査によって得られた比抵抗構造は、既存のMT法によって得られた比抵抗モデルから計算 されるTEMの減衰曲線とも一致するなど、他の電磁探査の結果とも整合している。 比抵抗検層との対比においては、SQUITEMが浅部の詳細な比抵抗構造を捉えられていることがわか ったが、坑井調査や既存の電磁探査によって高比抵抗することが予想されている地表下1000m付近 ではその傾向が捉えられておらず、検出限界に至っていると考えられる。 HeliTEMで得られた結果との対比では、浅部の低比抵抗構造の上面(30Ω・m)の形状が一致し ており、HeliTEMが浅部低比抵抗構造の上面をよく捉えられていることが示された。 今後の展望 地熱貯留層探査への応用については、貯留層周辺の比抵抗構造の精査という位置づけでの利用など が考えられるが、貯留層構造の把握のためには探査深度を大きくする必要がある。 送信ループの面積を100m×100mから200m×200mにすることで送信信号の強度(モーメント) を強めることが可能であり、また、ラインソース型の送信方法を用いることで、1000~2000m程度の深 部探査も期待できる。 地熱探査における位置づけも含めて、探査深度を大きくする方法を検討したい。 現地関係者のご理解とご協力により、調査を遂行することができました。 ここに記して感謝の意を表します。 霧島第一牧場 日鉄鉱業株式会社 九州電力株式会社
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