新しいシステム、新しいサービス、新しい顧客: ボッシュモビリティ

2015 年 9 月 15 日
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新しいシステム、新しいサービス、新しい顧客:
ボッシュ モビリティ ソリューションズ
2015 年 9 月 15 日、IAA フランクフルト国際モーターショーでの
記者会見におけるボッシュ取締役会会長フォルクマル・デナーの
スピーチ原稿
本稿は実際の講演内容と異なる場合があります。
Robert Bosch GmbH
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上級副社長:Dr. Christoph Zemelka、
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ご来場の皆さま、
IAA の季節が再び巡ってきました。そして今、私たちが全力で取り組んでいるのは
自動車の未来です。ボッシュはその未来の形作りに携わってきましたが、このとこ
ろ活動のペースが一段とスピードアップしています。バッテリーの開発では、大きな
前進の可能性が見えてきました。それについては、このあとまもなくご紹介させて
いただきます。
基本的な戦略として、私たちは 3 つの重要なトレンドを追いかけています。そのトレ
ンドとは、自動車の電動化、自動化とネットワーク化です。自動車開発にとって重
要なこれら 3 つの領域のすべてで、当社は誇るに足る前進を遂げています。これ
については、ボッシュの戦略に関する私のスピーチの後に、取締役のブーランダー
がこのブースで新しいソリューションをいくつかご紹介させていただくことになってい
ます。
少なくとも大都市では、車両は他の輸送手段とリンクされようとしています。ボッ
シュはこれを新しいサービスの出発点として、新しい顧客を自動車以外の業界から
も迎え、新しい事業を興す好機と見ています。私たちが自動車機器テクノロジーセ
クターの呼称をモビリティ ソリューションズ セクターに変更した理由のひとつはそこ
にあります。ボッシュは車両と将来のインターモーダル輸送の両面で、安全性と利
便性、そして効率の向上を追求していきたいと考えています。
2015 年:自動車生産が停滞する中でボッシュはなおも成長
ですがその前に、当社の事業の現況についてご説明させていただきたいと思いま
す。私たちは今年も成長軌道を維持しています。中国の経済情勢のため、先行き
に慎重にならざるを得ない側面はありますが、全体としてボッシュ・グループの業績
は私たちが予想したゾーンのほぼ上限で推移しています。なかでもモビリティ ソ
リューションズ セクターが好調です。2015 年にその売上高は前年比で約 10%前
後増加する見通しで、為替調整後でも 5%の増収を期待できます。世界の自動車
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生産高の伸びはわずかなレベルにとどまる見通しですが、私たちは成長を続けて
います。
ボッシュでは今年再び、主力システムの販売が数量ベースで急成長しており、エレ
クトロニック スタビリティ コントロール(ESC)は 25%、ガソリン直噴システムは
15%、コモンレールディーゼル燃料噴射システムは 10%の成長が予想されます。
さらに、ドライバー アシスタンス システムの成長が極めて著しく、レーダーセンサー
とカメラの販売台数は 2015 年に再び倍増する見込みです。
モビリティソリューションが秘める可能性:新しい顧客、新しいサービス
ボッシュにとって、モビリティソリューションとは事業規模の拡大を伴う新規顧客の
獲得です。
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米国カリフォルニア州に本社を置くグーグルとテスラが、自動車業界に新規参
入してきました。その両社に私たちは部品を納入しています。
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ボッシュは、二輪車向け部品市場の開拓も進めており、自転車用電動アシスト
システムにおいては、欧州市場のマーケットリーダーでもあります。また、2 年
前には、二輪車用として世界初の ESC であるモーターサイクル用スタビリティ
コントロール(MSC)を発表しました。そして最近、私たちは横浜に新事業ユ
ニット「モーターサイクル・パワースポーツ」を設置しました。
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私たちは保険会社やカーリース会社のフリート管理コスト低減に向けて、車両
の走行データとサービスデータをボッシュのサーバーに自動的に伝送するコネ
クティビティコントロールユニット(CCU)を提供しています。ボッシュは受け取っ
たデータを処理・評価して顧客企業に戻し、顧客はそれを利用してサービス予
約プランの精度向上を図ったり、ダウンタイムを最小限にとどめたりすることが
できます。私たちはすでに、この領域で 5 件の大口契約を獲得しました。
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さらに、私たちのお客様には個人のドライバーがいます。この方たちは、ボッ
シュのリペアショップを利用するときだけがお客様というわけではありません。
たとえば、私たちのモビリティポータル「Drivelog Connect」は、彼らの運転スタ
イルをリアルタイムで解析し、その結果をフィードバックするとともに、燃費向上
のヒントを提供します。そのために必要なツールは、スマートフォンアプリと車
載ネットワークからデータを読み出すためのコネクターだけです。
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そして最後は、交通インフラのオペレーターです。つまりは A 地点から B 地点
に移動する人は全員がボッシュのお客様となりうることを意味しています。私た
ちのソフトウェアソリューションでは、乗用車とモーターサイクルのシェア、列車
やバスの予約をワンクリックで行うことができます。現に、シュトゥットガルトでこ
のサービスのパイロットプロジェクトが進行中です。
これまで挙げた例は、モビリティソリューションが秘める可能性の大きさを物語って
います。ここから来る私たちの事業セクターの新しい名称も、中身を伴わない看板
ではありません。それが意味するのは、自動車だけにとどまらず、交通システム全
体をカバーする新しいソリューションで、そこにはサービスも含まれます。それどこ
ろか、サービスの占めるウェイトが次第に高まってきています。私たちはこうしたモ
ビリティサービスを通じて、前途有望な新しいビジネスエリアを切り拓こうとしていま
す。
私たちは新しいサービスのアイデアを生み出すために、既存の技術ノウハウも動
員しています。その典型的な例が、ボッシュのアクティブ駐車場管理システムです。
ウェブ対応のマイクロメカニカルセンサーを舗装路面に埋め込み、それで駐車ス
ペースが空いているか使用中かを検知し、その情報がリアルタイムの駐車マップに
送られ、駐車スペースを探しているドライバーに伝えられます。市街地では、ドライ
バーはクルマを運転する時間の 30%を駐車スペース探しに費やしていると言われ
ますが、このサービスでその時間を短縮することができます。すでにボッシュのセン
サー技術とソフトウェアを使った最初のテストゾーンの整備が終わり、年内に生産
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開始に漕ぎ着けられると予想しています。このソリューションはまた、駐車場の管理
者が駐車設備の稼働率アップを図れるよう支援することができます。
このサービス事業には、ボッシュが蓄える多様な産業関連の専門知識が役立って
います。自動車業界広しといえども、モビリティとエネルギー、ビル管理、産業技術
を結びつける能力の高さでボッシュの右に出る企業はないと私たちは自負していま
す。また、当社にはクロスドメインサービスの開発に適した広大な基盤があります。
どのようなサービスが考えられるかですが、ネットワーク化された車両がネットワー
ク化された住宅、つまりスマートホームに帰り着く場面を想像してください。ガレージ
の扉を開き、セントラルヒーティングシステムやオーブンのスイッチを入れるなど、
帰宅後行なわなければならない家事のあれこれを、車両が自動的に、我が家にた
どり着く前に処理してくれるようになっていきます。
未来のクルマ:3 つの開発路線のすべてを追求
ボッシュにとって、ネットワーク化は未来のクルマへと連なる 3 本の開発路線のひ
とつであり、これは残る 2 本の開発路線である電動パワートレインと自動運転を支
える働きも担っています。私たちはこれら 3 つの路線のすべてで革新的なソリュー
ションを生み出し、前進を遂げたいと考えています。また、システムに関する私たち
の深い理解を駆使し、必要な技術的前提条件を整えていくつもりです。
未来のクルマは、電動化、自動化とネットワーク化が進みますが、それ以前に、ク
ルマそのものが「走るコンピューターネットワーク」と化しているはずです。車両が処
理するデータ量は急増する傾向にあります。車両がインフラと情報交換するからと
いうこともありますが、それだけでなく、車内でやりとりするデータ量も増えています。
今後 5 年間で自動車の電装品は革命的な変化を遂げる見込みで、その兆候がす
でに表れています。記憶容量は少なくとも 4 倍、プロセッサーの演算処理能力は 3
倍に増加し、一部のコントロールユニットについては性能が 20 倍に向上するとま
で予想されています。そして、データバスシステムの帯域幅も指数的に広がるに違
いありません。そうした中で、私たちが目指す先ははっきりしています。ひとつは、
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あらゆるレベルでデータセキュリティを確保すること、そしてもうひとつは、IT のイン
テリジェンスを自動車工学の信頼性と組み合わせることです。当社ではこうしたモ
ビリティソリューションの開発のために、約 4 万人の従業員が研究開発部門で働い
ており、その 3 分の 1 はソフトウェアエンジニアです。これからすると、ボッシュは今
やソフトウェア会社であると言っても差し支えないかもしれません。このように、ソフ
トウェアはますます重要性を増し、それに伴って優秀なソフトウェアスペシャリスト
のニーズも増大しています。
ここまで耳を傾けてくださった皆様は、これら 3 つの開発領域で私たちが何をして
いるのかをより具体的に知りたいとそろそろお思いの頃ではないでしょうか?ブー
ランダーがこのあと数々の技術革新の成果を紹介することになっていますが、その
前に少しお時間をいただき、私たちの活動概要を説明させてください。
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パワートレインの電動化は今後のバッテリー技術の開発に大きくかかっていま
す。そして、私たちが大きな飛躍を期しているのもこの分野です。ボッシュはこ
のほど、米国の新興企業である SEEO を傘下に迎えました。この SEEO はリ
チウムアノードを持つ全固体バッテリーセルの開発に成功した企業で、この技
術は日本のパートナーとの共同開発作業を補完するものとなります。これまで
の目標は、2020 年までにバッテリーのエネルギー密度を倍に引き上げ、コスト
を半分に引き下げることでしたが、SEEO の画期的な技術を駆使すれば、エネ
ルギー密度をさらに引き上げられるのではないかと予想しています。ボッシュ
はこうした e モビリティの大きな進展のために、ノウハウと少なからぬ資金を投
入しています。
しかしながら、2020 年代に入っても、内燃機関か電動モーターのどちらかを選
ぶという二者択一ではなく、共存関係が今後も続くであろうということは明らか
です。燃費性能の優れたディーゼルなくして、EU が掲げる地球温暖化防止に
向けた意欲的な 2021 年目標はおそらく達成できないでしょう。実際のところ、
2021 年までに私たちは自動車の燃費をさらに 15%改善しようとしています。
また、ディーゼル車のシェアが高まれば、CO2 排出量が減少します。この手法
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は、大都市の大気の質をめぐる昨今の議論との兼ね合いからも無視できない
ものだと考えています。もうひとつ、ディーゼルは以前から、電気掃除機のよう
に空気中の粒子状物質(PM)を除去する働きをしてきたことを指摘しておく必
要があります。さらに、ディーゼルの増加は必ずしも窒素酸化物(NOx)の増加
を意味するものではありません。ボッシュには、ディーゼルの窒素酸化物(NOx)
の排出を、現実の走行条件下でも極めて低いレベルに抑える技術があります。
そして私たちは、最新の排出規制をテストベンチ上だけでなく、路上走行時にも
満たせるようにすることを開発目標としています。
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自動運転は、ドライバー アシスタンス システムの技術進歩の延長線上で達成
されるものです。当社で自動運転を実現するため、開発に尽力しているエンジ
ニアは現在 2,000 人ほどで、2 年前に比べて約 700 人以上増強されました。
私たちは 2018 年までに、完全自動駐車を実現したいと考えています。これが
可能になると、駐車場の外で車両を停止させ、降車すれば、そこから先は車両
が自ら空きスペースを探し、駐車操作を行うようになります。さらにボッシュは、
2020 年までにハイウェイパイロットの量産化の準備を整える予定です。このシ
ステムは、高速道路で自動運転を可能にする「電子制御化されたドライバー」と
もいうべきもので、すでに米国とドイツの公道で私たちのテスト車両が走行試
験を繰り返しています。つまりボッシュは、米国で高速道路の入り口から出口ま
での自律走行を可能にした、最初のプロトタイプ車を生み出した自動車機器サ
プライヤーでもあります。私たちはまた、TomTom と協力し、高度な自動運転
に必要となる非常に高精度なマップデータの作成を進めています。
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ただ、車両が進路の前方をセンサーの視界よりはるか先まで見通し、どんな
マップから得られるものよりも鮮度の高い情報を入手できるようにするには、運
転がネットワークに接続する必要があります。ネットワーク化が進めば、クルマ
はコーナーの先の光景を、視界に入る前に現実さながらに見通せるようになり
ます。私たちはそのために、交通渋滞、交通事故、工事現場などのダイナミック
な情報により eHorizon の強化を図っています。それにより自動運転が一段と
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安全なものとなります。またハイブリッド車であれば、どこで減速し、制動エネル
ギーを電力に回生すれば走行距離を延ばせるかを把握できるようになります。
未来のクルマは、ネットワーク化されたとき、最高の性能を発揮します。サービ
スを受けるタイミングも、警告灯が故障の可能性を知らせる前に、クルマが自
分で判断することが可能になります。すでに私たちは、インターネットベースの
診断により、ディーゼルインジェクターの状態を遠隔監視する技術を開発して
います。
以上をまとめると、数々のモビリティソリューションを擁するボッシュは、技術的に強
力な立場にあります。その強みを活かし、私たちは自動車業界の変革を形づくろう
としています。では、今回の IAA で私たちが発表する重要な技術革新の成果には
どのようなものがあるのでしょうか?この質問に答えるのは、ブーランダーです。時
間になりましたので、彼にバトンタッチすることにいたします。
ご静聴ありがとうございました。
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