年金数理人 No.38 C O N T E N T S 002..........日本年金数理人会 新役員・委員長等 Å 006..........平成 27 年度 特別講演会 「これからの日本経済、財政を見る視点」 木下 康司 氏 Å 026..........平成 26 年度実務研修会が開催される Å 050..........IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 スイス・チューリッヒ 国際委員会 委員長 藤井 康行 Å 064..........IAA Colloquium への参加報告 ノルウェー・オスロ 国際委員会 片寄 郁夫 Å 078..........国際アクチュアリー会コロキアムの発表者募集 国際委員会 Å 082..........大学教育推進委員会の設置について 副理事長 大学教育推進委員長 枇杷 高志 Å 084..........年金数理人の輪 Å 088..........日本年金数理人会の活動状況 Å 094..........会員異動 表紙題字 小泉純一郎氏 年金数理人・1 日本年金数理人会 新役員・委員長等 (H 27 年6月末現在) 1.役員・顧問・評議員 理 事 長 和 田 貴 一 阿久津 太 副理事長 理 事 監 事 2・年金数理人 顧 問 吉 原 健 二 坪 野 剛 司 小 川 伊知郎 浅 野 紀久男 中 田 正 今 福 愛 志 枇 杷 高 志 菊 池 武 久 安 藤 章 夫 木 下 康 司 江 村 弘 志 楠 岡 成 雄 大 野 浩 神 代 和 俊 小 西 陽 評 議 員 近 藤 師 昭 下 島 敦 坪 野 剛 司 谷 口 則 秋 宮 島 洋 堀 田 晃 裕 森 戸 英 幸 加 古 雅 之 吉 原 健 二 高 市 幸 夫 若 杉 敬 明 野々下 勝 行 渡 辺 俊 介 日本年金数理人会 新役員・委員長等 2.委員長等 ・常任委員会 企画調整委員会 総務委員会 教育・研修委員会 広報委員会 国際委員会 事務管理委員会 調査研究委員会 財政運営実務基準委員会 紀律委員会 試験委員会 退職給付会計基準委員会 大学教育推進委員会 委 員 長 阿久津 太 副委員長 佐 藤 章 宏 委員会顧問 小 川 伊知郎 委 員 長 小 川 伊知郎 副委員長 荒 井 昭 委 員 長 江 村 弘 志 副委員長 岩 本 陽 巧 委 員 長 大 野 浩 副委員長 酒 巻 敦 志 委員会顧問 上 原 尚 担当理事 和 田 貴 一 委 員 長 藤 井 康 行 副委員長 上 谷 敏 章 委 員 長 谷 口 則 秋 副委員長 橋 詰 丈 裕 委 員 長 枇 杷 高 志 副委員長 井 川 孝 之 委員会顧問 中 田 正 委員会顧問 渡 部 善 平 委 員 長 小 西 陽 副委員長 澤 崎 勝 委員会顧問 阿久津 太 委 員 長 谷 口 則 秋 副委員長 下 島 敦 委 員 長 安 藤 章 夫 副委員長 小 澤 幸 一 委 員 長 堀 田 晃 裕 副委員長 日下部 健 一 委員会顧問 大 山 義 広 委員会顧問 稲 葉 雅 博 委員会顧問 藤 井 康 行 委 員 長 枇 杷 高 志 副委員長 小 西 陽 委員会顧問 近 藤 師 昭 年金数理人・3 ・特別委員会 委 員 長 大 野 浩 副委員長 酒 巻 敦 志 委員会顧問 上 原 尚 委 員 長 和 田 貴 一 副委員長 阿久津 太 委員会顧問 鈴 木 博 司 委 員 長 小 西 陽 副委員長 澤 崎 勝 委員会顧問 小 野 正 昭 試験・教育制度改正 委 員 長 安 藤 章 夫 特別委員会 副委員長 江 村 弘 志 委 員 長 畑 聡 副委員長 小 澤 幸 一 委 員 長 堀 田 晃 裕 担当理事 谷 口 則 秋 事務局長 喜 多 俊 也 副事務局長 岡 田 尚 士 情報通信技術(ICT)活用 検討特別委員会 企業年金部会関連検討 特別委員会 企業年金関連提言特別委員会 ・小委員会 試験運営小委員会 死亡率小委員会 ・事務局 事務局 ・経理規程第9条第2項に定める理事長が指名した者 出納責任者 4・年金数理人 上 村 誠 一 日本年金数理人会 新役員・委員長等 年金数理人・5 平成 27 年度 特別講演会 「これからの日本経済、財政を見る視点」 木下 康司 氏 東京大学名誉教授 ○司会 お待たせしました。ただいまから、平成 27 年度 けですが、若いころですね、実は平成元年、1989 年から 特別講演会を開催いたします。 2年間ほど主計局の年金担当の主査というものをさせてい 講師は、前財務事務次官の木下康司様にお願いしており ただきました。お聞きすると日本年金数理人会の設立が ます。演題は、 「これからの日本経済、財政を見る視点」 ちょうど 89 年4月ということでございますので、その2 でございます。 ~3か月後に年金担当の主査ということになったわけです 最初に、木下様の略歴を御紹介させていただきます。 が、当時は年金の元年改正法が、まだ通過してなくて、そ 木下様は、東京大学法学部を御卒業後大蔵省に入省さ の夏に猛勉強させられた記憶がございます。今日もお出で れ、国際局長、主計局長を歴任後、2013 年6月に財務事 の年金綜合研究所の坪野理事長は、当時たしか数理課長 務次官に御就任されました。2014 年7月に財務事務次官 で、私はすっかりもう今は白髪が多くなりましたが、坪野 を辞職された後、財務省顧問、コロンビア大学客員研究員 さんとか畑さんは当時からあまり今の風貌は変わられてい を経て、現在は東京海上日動火災保険株式会社顧問を務め ないので、懐かしく思っておりますが、実はその前に私は ておられます。 大蔵省、銀行局の銀行課というところで信託銀行の担当を それでは、木下様、よろしくお願いします。(拍手) したりしておりましたし、今損害保険会社の顧問もやって おりますので、そういう意味ではかなり皆さんとは御縁が ○木下 初めまして、木下でございます。 あるのかなと思います。 自己紹介をいたしますと、大蔵省に入りまして、最後は 本日は、アクチュアリーという数理統計の大変な知的集 財務省ですが、35 年勤めまして、昨年7月に退官したわ 団を前にして話をする機会をいただき、大変光栄でござい 6・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 ます。きょうは日本経済とか財政にとって、今何が課題で 収支黒字を貯めていますので、常に通貨切り上げ圧力と金 あって、政府は何を目指しているのか、そして今後長期的 融の自由化圧力に、特にアメリカ、日本、ヨーロッパから に、今 21 世紀前半ですけど、それこそ後半に向けて、数 さらされるということになっています。 理の皆さんなので長期的なお話が大事だと思いますので、 それから、人口に占める高齢者の比率も当然上昇してき 21 世紀後半、さらには 22 世紀に向けて何を考えていくべ ていて、社会保障費用も確実に増加します。今はデットG きかと、その視点について触れられればと思います。 DP比も低いですけれども、放置すればいずれ大幅な赤 まず、最初に、よく「課題先進国、日本」というような 字になるということだろうと思います。これも全て日本 ことを申しますけれども、あるアメリカの経済学者が言う が 1990 年代に経験したことだし、確かに日本というのは、 には、今アメリカでは非常に多くの学者や学生が中国経済 金融危機、財政赤字、デフレ、高齢化といった問題が各国 を勉強したがっている。だけど、その学者は日本経済専門 より一足早く深刻化したという意味で、課題先進国なのだ なのですけど、自分は日本経済のほうが圧倒的におもしろ ろうと思います。 いし、多くの人がもっと日本経済を勉強すべきだと、そう 90 年代の日本について言うと、金融危機は皆さん覚え 言うのです。どうしてですかと聞くと、中国で今起きてい ておられると思いますけれども、特に、97 年に三洋証券 ることというのはある意味で単純というか、これまで先進 がつぶれ、山一がつぶれ、北海道拓殖銀行、徳陽相互がつ 国が経験してきたことが起きているわけで、確かに見てい ぶれ、翌年には長期信用銀行、日債銀もつぶれるというこ ると、デジャビューと言いますか、そういう感じが非常に とを経験しました。あれから随分たつわけですけれども、 いたします。したがって、学生、学者にとっても、それは マクロ経済政策としては結局何をやったかといえば、金融 ある意味で前例があるわけですから説明もしやすいし、学 緩和と財政刺激です。特に 2001 年からは、日本銀行が世 生もとっつきやすいわけです。だけど日本経済の問題とい 界に先駆けて、金利がゼロに張り付いていましたから、い うのは、より複雑でかつ前例もないので、だからおもしろ わゆる量的緩和。金利をもう目的としないでこの当座預金、 いし、多分先進国にとっても研究する意義が大きいと彼は 日銀の口座にある各銀行からの当座預金の量をターゲット 言うわけです。 にする、量的緩和を世界に先駆けて開始したわけです。 確かに日本の処方箋というのは、金融の異次元緩和にし それから、銀行行政としては何をやったかといえば、覚 ても、それから膨大な財政赤字に今苦しんでいるわけです えておられますでしょうか、公的資金を大量に投入して、 が、そういう問題の対応にしても、ある意味で解決策も実 預金を全額保護して、それから資本注入ということをやっ 験台という感じですよね。特に金融政策は本当に世界中 たわけです。国が優先株の取得をして、ほとんど今銀行は が、これ本当にうまくいくのかということで見ているわけ 返しつつありますけれども、金融システムも守ったという ですから、財政赤字だってこれどうなるのだと見ているわ ことです。 けですから、言葉は悪いかもしれませんが、ある意味で実 実はアメリカも、リーマンショックの後、発足直後のオ 験台でありますし、よく言えば日本は、課題解決のトップ バマ政権も、リーマンショックに際して実に似たような政 ランナーを走っているということなのだろうと思います。 策をとっています。当時のガイトナー財務長官が昨年「ス アメリカも御承知のように 2008 年に、リーマンショッ トレステスト」という著書を出されまして、これはアメリ ク、金融危機に見舞われました。欧州も 2011 年に欧州危 カの金融危機との戦いを書いている本なのですけれども、 機というのに直面した。欧州は今やデフレに陥る直前まで その中に、2009 年当時、有名な元財務長官サマーズさん 来ていると言われます。中国も高い成長率を享受してきま という人も、当時は国家経済会議の委員長でオバマ政権の したけれども、徐々に成長率は低下して、また巨大な経常 中に入っていて、どうやってアメリカの金融危機を処理し 年金数理人・7 ていくのか議論するという場面が出てくるのですが、そこ とについて、内閣府が 2013 年になかなかいいレポートを で、ガイトナー長官たちが考えていた金融危機対応を甘い 出しています。それを読むと3つ書いてあって、1つは、 と批判する場面が出てくるのです。 デフレのもとで各企業がコストの削減とか内部留保の蓄積 サマーズが言うには、 「その計画はゾンビ銀行を排除し に努めるわけですが、それは個々の企業にとっては合理的 ないで、臆病さの報いを受けることになった日本をほう でも、経済全体としてはデフレを長引かせたと。いわゆる ふつとさせる」なんて書いてあるわけですよ。それから、 「合成の誤謬」が生じているのだということが書いてあり 「銀行を国有化して力強い景気回復を実現した、スウェー ます。 デンを見習うべきだ」と、そんな場面が出てくるのです 確かに、これはよく使われる表なのですけれども、日本 が、これは僕に言わせると彼らの認識の間違いですね。御 企業の内部留保のGDP比は、今や7割近くになっていま 承知のように日本も長銀と日債銀を国有化しましたし、そ して、どんどんたまって非常に大きな数字になって、活用 れから日本では、いわゆる銀行の数が 97 年に 900 あった されていないと言われています。それから、日本企業のR ものが、もう今や 600 以下になっているわけです。つまり OEも確かに、これを見ていただくとわかるように安倍内 アメリカ以上に厳しい対応が行われたことは御承知のとお 閣になってから上がってはいるものの、まだまだ欧米に比 りです。 べて低いままです。こんな数字を見ると、この分析には説 それから、ヨーロッパでも今何が議論になっているかと 得力があります。 いうと、いわゆる預金保険制度です。特に税金を使わない 3つのうち2つ目は、結局デフレマインドが形成される で銀行の負担で破綻処理する制度がきちんとしたものがな 中で、アニマルスピリットを喪失し、その結果プロダクト いので、それを今つくろうという議論がG 20 でも急ピッ イノベーションも不足したということ。 チで進んでいるわけですが、日本はそのときの金融危機を 3番目に、正規雇用から非正規雇用への雇用転換が進ん きっかけにして、今世界で最も整備された預金保護とか破 で平均賃金が低下した。その3つを主たる要因として挙げ 綻処理制度を持っているわけです。そういう意味で、特に ております。 日本はリーマンショックや欧州金融危機と違って、ほかの いわゆるアベノミクスは、こういう要因の除去を目指し 国に全く御迷惑をかけずに、日本の中だけでうまく金融危 ているのだと考えると、大変理解しやすいと思います。結 機を処理してきたという、ここは世界に誇っていい点だと 局アベノミクスの本質は何かというと、いわゆるQQME 思います。 (Quantitative and Qualitative Monetary easing) 、超金融緩 金融危機はそういうことでうまく収束してきたわけです 和によってインフレ期待を醸成するところに最大の本質と が、御承知のように財政赤字と高齢化の問題については、 いうか、コアがあると思います。 まだまだ解決の目途がたっていないというのが現状だと思 20 年も続いたデフレの中で、物価も賃金も低下したの います。だが、デフレについては、かなり克服間近という で、家計や企業も一生懸命コストカットに励んできた。そ ところまで来ていると思います。原油価格が下がっている れから個人も、株なんかに投資しないで預金や現金の形で ので、2013 年の4月に黒田総裁が、2年間で2%という 保有するほうが確かに合理的だったわけですね。そういう ことを言われたところはちょっと難しくなっているので 形でリスクを避けてきた。企業も、金融危機があったせい しょうけれども、CPIは明らかにプラスの領域で定着し もあるのですが、とにかく内部留保を蓄積してきた。こう ていることは確実だと思います。 いう個々の人々にとっては合理的な行動なのだけれど、デ 日本は 20 年ぐらいずっとデフレだったとよく言います フレを悪化させた、だから、人々がもう一度、アニマルス けれども、これだけ長引いた原因は何だったのかというこ ピリットを取り戻して、新しいビジネスへチャレンジし 8・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 て、そして潜在成長率を高めていく必要がある。 みれば原油価格が高いことを前提に投資していたので大変 日本銀行が強力な緩和を長期に続けるという非常に強い だという企業はもちろんありますけれども、全体として見 コミットメントと企業収益の改善によって物価や賃金が今 れば大いに歓迎すべきことです。日本は原油輸入が約 14 後上昇していくという予想が定着すれば、家計や企業も必 兆円あるので、仮に 50%原油価格が落ちれば7兆円輸入 ず行動を変えるはずだ。具体的には消費、投資も増えてい 金額が減る。簡単に言うとGDPの 1.5%に当たるものが くはずだ。そういう発想です。ある意味では相当強いこと 天から降ってくるということなので、非常にいいことだと を言わないと効果のない政策なわけです。実際順調に物価 思います。 や賃金も上昇し始めています。この人々の心理を変える。 もう一つは、2020 年の財政の黒字化目標です。プライ 行動を変える。これがアベノミクスの最も重要な本質だと マリーバランスを 2020 年にゼロにしますという目標が果 思います。 たして達成できるのかという点です。これはまさに今諮問 それからもう一つの特徴は、アベノミクスは、第一の 会議等で議論していますけれども、この6月までに、新た 矢、第二の矢、第三の矢とよく言いますが、金融政策、財 な財政計画が発表されることになっています。どこまで社 政政策、成長政策からなる総合的な政策パッケージだとい 会保障効率化の枠組みがつくれるか。これは新聞で最近よ うことです。これは 90 年代以降深刻化した社会的な諸問 く書いてありますけれども、この点はまた後で述べたいと 題、デフレ、人口減少、高齢化、財政赤字、そういうもの 思います。 に対する解決策の集大成だということです。 それから、第3によく指摘されるのが、第一の矢、第二 実は最近の国際会議では、先進国経済の回復の遅さとい の矢に比べて、第三の矢は進捗が遅いということがよく言 うのが一つの常に議論の焦点になるわけですが、例えば今 われます。これはある意味で当たり前なのですが、金融緩 年の4月から、ヨーロッパで、ECBもついに本格的な金 和とか財政刺激には別に国民の痛みは何もないわけです。 融の量的緩和に乗り出しました。ずっと渋っていたわけで みんなハッピーということですが、第三の矢はどうしたっ すけれども、いわゆる国債購入を始めました。こういう3 て痛みを伴うので、時間がかかるのは当たり前だろうと思 つの政策パッケージの処方箋というものは、今やある意味 います。しかし、経済指標は明確に変わり始めているし、 で日米欧共通に求められているものだと思います。そうい いろいろな制度改正で状況はかなり明確に変わりつつある う中で日本が、政策の先頭を走ってきたわけです。 と言えると思います。 アベノミクスの課題として、1つは、2年以内のCPI 日本は変わりつつあるという具体例を挙げますと、典型 の2%上昇は、守れないのではないかといった声がよくあ 的には賃金、ベアです。物価上昇が賃金上昇に波及して消 るわけですが、原油価格の低下によって達成が後ろにずれ 費、投資が拡大していく、経済が好循環になっているかに るということですから、それ自体はあまり本質的な問題で ついて政府は注目してきたわけですが、企業収益が史上最 はないと思います。むしろ原油価格の低下は非常に歓迎す 高水準に達する中、経団連の調査では、大企業の春闘によ べきことで、結局原油価格の上昇とか行き過ぎた円安は、 る賃上げ率は 2.59%と 16 年ぶりの高さになった去年を上 いわゆる国富が外国に流れていることを意味するわけで 回る率になっています。 す。別の言葉で言うと、交易条件が悪化していることを意 それから、非正規社員を正規社員にする動きもよく新聞 味します。 に載っています。例えば全日空が新規採用客室乗務員を全 この 10 年間、主要国はほとんど交易条件が一定ですが、 て正社員化するという報道もありますし、スターバック 日本だけが低下し続けてきたのです。この交易条件が好転 ス、ユニクロといった企業が、よく正社員化という動きで するということですから、基本的には個々の企業にとって 取り上げられますが、そういう企業も目立ってきました。 年金数理人・9 それ以外にも、企業マインドの変化を示す動きは多く見 2つ目がいわゆる政労使会議です。これは 2013 年に経 られています。例えば自社株の取得です。これは 2014 年 団連の会長、連合会長、政府側は総理もお出になりますけ には、去年に比べて倍増しています。それから、特にアウ れども、そういう政労使の会議が5回開催されました。そ トバウンドのM&A、つまり外の企業を買うというM&A の取りまとめが、近年にない賃上げの動きにつながってい も円安にもかかわらず盛んで、今年の第1四半期だけで約 ることは明らかだと思います。去年も 12 月に政労使の共 5兆円というレベルで歴史的に非常に高い水準になってい 通認識が取りまとめられて、そこには経済界による賃金引 ます。それに伴って国内に還流してくる配当金も、2014 き上げに向けた最大限の努力が書かれ、かつ仕入れ価格上 年は 19%も増えているとか、海外で再投資される収益も 昇の適正な価格転嫁と。要するに下請をたたくなという意 前年に比べて約3割ぐらい増えているとか、こういう明確 味ですけれども、そういうことが盛り込まれています。今 な動きが出てきています。設備投資も、日銀短観では平成 年4月にも政労使会議が開かれて、このような動きを中小 26 年度は 4.4%のプラスを見込むということで、明らかに 企業にもきちんと及ぼしていこうということが合意されま 指標はよくなってきていると思います。 した。 また、主要企業でROEの目標値を設けるというところ 政労使会議については当初、政府がそんなことをやるの も随分出てきました。新聞に出ているのは日立、伊藤忠、 かという批判、あるいは疑問がないわけではなかったので 三菱重工など、そういう大どころの企業がそういうものを すが、かつ各企業にとって、本来人件費は上げたくないの 設けている。 が本音なのだろうと思うのですが、先程申し上げたよう こういう成長に向けた収益性と生産性を高める企業の取 に、各企業にとって合理的な行動でも、こういう状況のも り組みを後押しするために政府は何をやっているのかとい とで各企業が同じような行動をとると、内部留保のような うと、大きく言うと4つあると思います。 話になる。いわば合成の誤謬が発生することを考えれば、 1つは、本当に最近よく取り上げられるコーポレートガ ある意味で異例だけれども、政府が音頭を取ってみんなで バナンス改革です。例えば典型的にはスチュワードシップ 賃上げしようという取り組みをするのも、合理的だろうと コードです。機関投資家に対して、投資先企業との対話を 思いますし、実際にそれが成果を出しつつあるということ 通じて顧客に対する受託者としての義務を果たすよう促す なのだと思います。 もので、金融庁のホームページに、これを受け入れた企業 3つ目は法人税改革です。日本の法人税の実効税率、実 名を昨年6月から公表しています。3月現在では、もう 効という意味は国と地方を合わせたという意味なのですけ 既に 184 もの機関投資家がGPIFを含め、信託銀行さん れども、34.6%は、欧州主要国とか中国、韓国に比べて高 等々の機関投資家が受け入れを表明しています。この結 いということがよく言われることなのです。ところが意外 果、議決権行使の基本方針と結果の開示が求められること に思われるかもしれませんけれども、国と地方の法人税収 になります。 を分子において法人所得で割った数字、ある意味では実質 それからコーポレートガバナンス・コードも本年6月を 的な法人負担率は実は日本は低いのです。アメリカ、英 めどに導入されます。主要な点は2つありますが、そのう 国、ドイツ、フランス、中国、韓国に比べてもこれは低い ちの1つが独立社外取締役です。上場企業は少なくとも2 ですね。これは非常に意外な感じを持たれるのではないか 名以上の独立社外取締役を選任するか、しないならその理 と思います。 由を説明しろということになります。現在この条件を満た 現に、去年の1月現在では日本企業の約3割しか法人税 す企業は、東証の一部上場で2割しかないので、残り8割の を払っていなかったのです。これはなぜかというと、結局 企業は何らかの対応をしなければならないことになります。 日本の法人税の課税ベースが、各種控除があるものですか 10・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 ら、これで狭くなっているのです。したがって、一見、税 なります。税率が高いと実際の税負担率がそうでなくて 率は高いのですけれども、その税率がかかるベースが非常 も、海外からの進出の障害になっているという問題が指摘 に狭くなっている。そういう構造になっていたわけです。 されてきましたが、それに対する一つの答えです。 したがって、この課税ベースを拡大して、その税率を下げ 4番目は規制緩和などの動きです。御承知のように、例 ようというのが今回の改革の趣旨です。 えば農協改革法案。つまり全農、全中を抜本的に見直す法 34%を、いずれ 20%台まで下げます。第一歩として、 案が今国会で審議されます。それから、ホワイトカラーエ 今年の税制改正ではこの 34.6 を約3%、2年ぐらいかけ グゼンプションに関する法案も今国会で審議されることに て下げます。どうやって下げるかというと、1つはいわゆ なっています。 る外形標準課税の強化、もう一つは繰越欠損控除を変える 女性の活用の動きも非常に活発です。日本の人口減に対 という中身です。外形標準課税は、既に地方法人事業税に する対策について、女性の労働力としての活用がよく言わ 入っていますが、今4分の3は所得に連動させ、4分の1 れますが、今 63.4%をスウェーデン並み、77.9%に上昇さ をその企業の資本や付加価値、つまり企業の黒字、赤字に せると、単純計算で日本の労働力人口は 500 万人ぐらい増 関係ないものに連動させて取っているのです。したがっ えるわけです。最近の動きを見ると、25 歳から 44 歳にか て、赤字法人課税という言い方をされることもありますけ けてこれまでは労働参加率がガクッと落ちる、いわゆるM れども、その4分の1の割合を2分の1に上げていくとい 字カーブを描いていたのが、このところそこがフラットに うことです。 なっているのがよくおわかりいただけるだろうと思います。 もう一つの繰越欠損控除は、今は法人所得の一定割合、 それから、300 人以上の従業員を雇う企業には、女性参 一定割合というのは現在8割、これを9年間控除できるの 加の数値的な目標の設定を求める法案も今国会で出てくる ですけれども、それを 50%にする。そのかわり 10 年間に ことになっています。各企業も役所も今一生懸命女性の活 延ばします。実は繰越欠損が多いことが日本の法人税収が 躍を期待する動きが出ています。私がおりました財務省 上がらない一つの理由でもあったわけです。直近の数字 は、実は女性活用があまり進んでいなかったところで、正 ではありませんが、去年ぐらいまでは 70 兆円以上企業の 確に言いますと財務省の職員、国税や税関を入れますと、 繰越欠損がたまっていて、所得があってもそれを差し引け 何万人もいて、国税や税関ではかなり女性の比率が多いの るものですから、なかなか納税にまで至らなかったわけで ですが、本省キャリアは大体国家公務員試験に受かる女性 す。簡単に言うとそれを縮小していこうという話です。そ の割合が、年によって違いますけれども、2~3割なのに ういう改革を決めています。 財務省の本省キャリアの比率は6%ぐらいでした。非常に これは一体何を期待しているかというと、まず、赤字大 低い。中には大変有名な女性キャリアだった方もおられる 法人にとっては負担増になります。逆にいうと、わざわざ わけですが、そういう意味では遅れていると言われても仕 赤字にすることへのインセンティブが薄れるということで 方がない。そこで去年の4月から 22 人中、女性を5人採 す。それからもう一つは、稼ぐ黒字の大企業にとっては、 りました。今年は 23 名のうち7人採りました。3割を女 現状より負担減になって利益を増加させるインセンティブ 性にしています。 が増加するということです。ある意味で攻めの経営に適し 金融庁は、2012 年から新卒キャリアのほぼ半数が女性 た税制、企業の構造改革を推進する税制だと言えます。 で、コンサーバティブだと言われる役所も、かなり舵を それから、経済的に中立的な税制になるということで 切っているということだと思います。 す。それから、日本に進出しようとする外国企業にとって 特に、私はこの4月まで半年ニューヨークで研究活動を は、結局表面税率が下がりますので、非常にわかりやすく しておりましたけれども、ヘッジファンドの人が、アベノ 年金数理人・11 ミクスについて状況をよく聞きに来られました。彼らの関 とです。 心が非常に高いのは、日本の賃金の動向です。それから、 日本人は英語ができないとよく言われますよね。それは 雇用規制がどれだけ緩和されるか。それから、女性活用と 英語教育が悪いとかいろいろな意見があるのですけど、結 言っているけど、本当に進むのか。それからもう一つは、 局最大の原因は、必要がないからです。ある英語学の先生 TPPに伴う農業改革の進展といったことをよく聞かれま にお話を聞いたことがありますが、明治の日本人のインテ した。 リというのは今よりも英語ができたとおっしゃるのです。 結局こういうものが、日本の改革の本気度をはかる一つ それはなぜかというと、英語ができないと海外の最先端の の象徴になっているのだろうと思います。これらについ ことを当時は学べなかったからだと。ところが日本はあら て、従来見られないような動きがどんどん出ているという ゆる分野において、日本語だけで最先端のことを学べる。 ことは、株価には明らかに好影響を与えていると思いま こういう国は意外に少なくて、ドイツとかフランスとか日 す。その背景としては、感じますのは政界、財界、官界の 本ぐらいなんだそうです。ある意味では非常に心地よいわけ 全ての人が、今回がデフレ脱却のラストチャンスではない です。これも一種のゆでガエル状態なのだろうと思います。 かと強く思っている人が非常に多いということ、だから、 もう一度、人口減少とかどうやって食べていくのかと 思い切ってやってみようという強い思いがいろいろな人か いう点について戻りますけれども、アクチュアリーの皆 ら感じます。 さん、当然数 10 年先のことを考えて仕事をされるのがお また、総理が毎年毎年交代していたという非常に不幸な 仕事なのでしょうけど、現実問題として、21 世紀後半と 政治状況が変化したということもあると思います。 か 22 世紀の日本は一体どういう社会になっているのかと ただ、今申し上げたのは足元の動きです。この先何 10 いう点について、何かイメージをお持ちでしょうか。恐ら 年のことを考えると、やっぱり何かもやもやしたものが残 く国民共通のコンセンサスとかイメージはないのだろうと る。そういう不安な感じを自分自身は持っています。根本 思うのです。人口問題については、当然女性活用をしなけ 的に日本の何かが変わりつつあるのではないか。それは一 ればいけない。外国人技能労働者も活用しなければいけな 体何なのか。昨年の退官以来ずっと考え続けてきたわけで い。人口そのものを増やす努力もしなければいけない。け すが、恐らく私は2つあるだろうと思います。 れども、昔のようにどんどん人口が増えるということはな 1つは、よく言われる話ですが、人口が減少していく、 かなか期待できないわけです。 国内市場が縮小していく中で、日本は一体どうやって稼ぐ それから、今円安もあって、日本企業の一部に国内回帰 のか、食べていくのかという点について、まだはっきりし の動きが見られてほっとすることもあるのですが、長期的 た答えが必ずしもないという点です。2つ目は、財政赤字 に国内でどんどん需要が大きく伸びていく時代ではないこ について、たとえ 2020 年黒字化がうまく達成できたとし とは明らかです。そういう中で中国のGDPは、既に日本 ても、その後どうなるのだという点について、まだ国民に の倍になりました。この前抜かれたと思ったら、あっとい コンセンサスがないという点と思います。この2点がもや う間に倍になった。それから瞬間風速ではインドが中国の もやした感じの真の原因かなと思っています。 成長率を抜いたり、韓国、ASEAN諸国も、どんどん日 この2点に共通するのは、結局日本に内在する又は、取 本に追いついてきます。 り巻く環境の変化に、根本的な変化に多くの人は気づいて ニューヨークに行かれた方は多いと思うのですけれど いるのだけど、そのうち何とかなるだろうとか、先のこと も、アジアの顔をした人が本当に多い。コロンビア大学の はわからないという感覚で、思考停止に陥ったまま、心地 ビジネススクールでも、1学年 600 人のMBAコースに、 よいゆでガエル状態を続けているのではないのかというこ 100 人程度のアジア人がいる。本当にアジアの人が多い。 12・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 でも、日本人はたった5人でした。そういう状況なので は、まさに今がそういう時期なのではないかと、非常に社 す。土日に図書館に行くと、白人や黒人はいなくて、アジ 会の大きな流れが変わっている時期ではないかという気が アの顔をした人ばかりなのです。特にアジア人はよく勉強 します。 しますし、そういうアジア人が席巻する中で、日本人はこ アメリカを見ると、デフレに苦しむことはないわけで れからどうやって食べていくのか、まだはっきりと自信を す。それから移民増加によって人口が増えている。それ もって言えるものが必ずしもないと思います。 から、シェールガスオイルの開発に支えられて経済は非 課題先進国とよく言いますけれども、結局、その意味 常に好調。それが日本では、人口が減る。それからエネル するところは、日本はまねるべきモデルがもうないとい ギー、とにかく原発停止でたくさん高い油を買わなければ うことです。しかし 21 世紀後半、さらには 22 世紀にかけ いけない。それがネックになっているわけですが、日本が て、人口減少にはこうやって対処して、こういう産業を育 苦しんでいるその2つの要因が、アメリカの場合は逆に経 てて、地方も限界集落とか言うけど、こうやって雇用を確 済の好調を支えているという真逆の構造になっているわけ 保して過疎化を防いで、それが無理なら再整理するとか抽 ですね。 象的には言われるのだけれども、まだまだ明確な処方箋が しかし、よくよく考えてみると、アメリカとて移民に支 はっきりないし、共通のコンセンサスもない。昔はみんな えられている結果、2040 年には白人がマイノリティーに に見えた「坂の上の雲」が見えなくなっている。工場を海 なるわけです。皆さんも御関心があったら、ぜひアメリ 外につくるのか、日本に残しておくのかということについ カの統計局のサイトを検索できるので見てみられるとお ても、それは企業によっても喧々諤々だろうと思うのです。 もしろいと思うのですが、例えば 2012 年から 13 年にかけ それから、共通のイメージが明確でないことは、霞が関 てアメリカの人口は約 140 万人増えている。移民ではなく で政策、立案していく上でも調整に時間がかかるわけ。例 て、自然増がです。そのうち、おもしろいことに子供が生 えば、法人税減税の議論が一昨年の夏から強く起きてき まれる数でいうと、アジアの人、ヒスパニックの人、ヒス た。法人税減税をやるのはいいけど、一体どういう法人 パニックでない白人の人と3分類になっていまして、一番 を育てたいと思うのか。どういう地域に育てたいと思うの たくさん子供が生まれているのがヒスパニックではない白 か。日本の企業と競合するような企業を呼び込むだけの法 人、昔からの白人が一番多く生まれているのです。これは 人税減税だったら意味がないじゃないか、という議論など 調べると 200 万人ぐらい生まれているのです。しかしネッ 調整に時間がかかるわけです。 トでいうと、このノンヒスパニックの白人が減っているの ここにおられるかなりの方は、バブルを経験されている です。 と思うのですけれども、90 年代にバブルが絶頂期を迎え つまり、死んでいる人が生まれている数以上に多いとい て、崩壊していく時期に私自身行政やっていて恥ずかしな うことです。ところがヒスパニックやアジアの人は、生ま がら当時は、あ、今崩壊しているという意識はあまり明確 れる数は白人に及ばないのだけど、死んでいる数が少ない にはありませんでした。後で振り返ってみれば、ああ、あ ものですから、ネットで増えている。要するに人口構成が のときだったなということです。けれども、そのときに大 若いのです。これは何を意味しているかといえば、どんど きな流れを見きわめる眼力というものを持っていたら、も ん若い人が入ってこない限り、移民が入ってこない限り、 う少し行政でも違った手が打てていたのに、つまりバブル そういう構図は維持できないということを意味しているわ 崩壊の過程で、高度成長と結びついてきたいろいろな制度 けです。それが本当にサステーナブルなのかという話です。 や価値観の変更を迫られたわけですが、もう少し早く大き それから、世界人口を見ても、これは国連の統計ですけ な流れの変化に気づいていたらという思いがあります。僕 ど、アジアの人口が世界の4割ぐらいですが、2030 年代 年金数理人・13 になるとこれが6割になる。21 世紀後半になると、イン 一つの成長戦略のコアになっている考え方だろうと思いま ドや南米やアフリカが、今の中国のように栄耀栄華をきわ す。これが1つ目のもやもやに対する考えです。 めている可能性もあるわけです。つまり、今の景色とは全 2つ目のもやもやは財政です。これは長期戦だと思いま く違ったものになっている可能性がある。日本が人口減少 す。この図を見ていただくとわかるように日本は圧倒的に を食いとめる努力はもちろんするのだけれども、そういう デットGDP比が高い。日本、ギリシャ、改めて大変なこ 国々と同じ土俵、同じ価値観でいつまで勝負するのかとい とだなということがこれを見てわかると思います。 う根本的な問題に実は直面しているはずなのです。 国の債務は現在 837 兆。税収は今年 54 兆。たとえて言 いろいろな考え方がありますが、例えば目指すべきは、 えば、年収 500 万円の人が、金利 1.2%の変動ローンで GDPというよりも一人当たりではないかという考え方 8000 万円の住宅ローンを背負っているということです。 が恐らく出てくると思います。今日本は 24 位です。アメ だから、金利が上がったらどうしようもないという構造。 リカが9位、中国に至っては 83 位ですけど、こういうも 特に 837 兆円の金利が1%上がると、いずれ満年度に効い のが1位になることが重要だと思います。結局「一人ひ てくると、最終的に8兆円利払い費が増えるということで とり」に価値観と目標を変えられれば、ロボットや人工知 す。8兆円というと公共事業が6兆円、防衛関係費が5兆 能といった技術開発で生産性を上げて、労働力人口の減少 円ですから、これが吹き飛ぶ規模。それで税収が 54 兆で、 を理論的には補えるはずだし、加えて一人当たりの所得が 毎年8兆ずつ税収が自然増収で上がって利払い費の増加を 世界トップクラスになれば、消費の減少が補われるはずで 帳消しにできるかというと、税収が好調な 2015 年度でも す。また消費者の「数」の減少を補う観光客や海外からの 自然増収は3兆円に満たないのです。つまり債務残高に比 滞在者、そういう消費需要の開拓にもっと正面から熱が べて税収の規模が小さいので、追いつかないのです。財政 入って、人口問題に過度にナーバスにならなくて済むので 当局が金利金利というのはそういう構造だから、というこ はないか。人口問題はなかなか先が見えないので隘路に とです。 陥っている感じにとらわれるけれども、必ずしも過度に神 内閣府試算では 2020 年に経済再生ケースでも、なお 9.4 経質にならなくてもいいのかもしれない。つまり新興国の 兆円の赤字が残ります。これをどうするのだというので、 ように単なる頭の数ではなくて、豊かで能力と人間味あふ 今経済財政諮問会議で喧々諤々の議論をやっています。2 れる人材が大事だということになるだろうと思うのです。 種類の経済前提があります。1つは経済再生ケースで、名 その流れで考えると、ROEや生産性を高めようという 目が3以上、実質が2以上、これが赤の線です。 今の政策や方向性は、長期的に見ても全く正しいと思いま もう一つ、ベースラインは、今の潜在成長率では1%に す。結局それらが求めているのは、利益率がもっと高い海 行くか行かないかぐらいなので、名目1%台半ば、実質 外で仕事しようという話でしょうし、途上国と同じ土俵の 1%弱の今の前提をプロットしたのがこうなる。そうする 価格競争ではなくて、高くても売れるもっと付加価値の高 と、もっと消さなければいけない赤字が増えるわけです。 いものを作ろう、あるいは高く見えるようなものを作ろう これは消費税 10%への引き上げが既に前提になってい ということです。ブランドとか、ワインとか、芸術品のご ます。何でプライマリーバランスの黒字化が必要か、もう とく。それから、子会社で利益を出していないところは、 一回言っておきますと、金利と成長率が同じという前提を 過去のしがらみを断って、整理するなりスピンオフするな 置いた場合に、このプライマリーバランス、いわゆる税収 りしてコストを下げて、高い価値を生むところに資源を集 とその他の歳入と国債費以外の歳出の差額をプライマリー 中しようという政策です。そういうものが数字であらわれ バランスといいますけれども、これがゼロであれば、金利 るROEや株価をもっと気にしよう、そういうことが今の と成長率が一緒である限りにおいてデットGDP比が上が 14・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 らない。下がらない。要はフラットになる。そういう計算 言うと消費税、今 10%まで一応決まっているわけですが、 になる。だから財政がコントロールされているというの その後どうするのということについてはまだ本格的に議論 は、デットGDP比が上がり続けるというのは発散してい が始まっていません。IMFは 15%、同友会は 17%と言っ くことなので、これはコントロールできていない。これは ていますが、欧州並みの 20%なのか、あるいは何として 国際的にもそういうことです。したがって、最低限フラッ も 10%にとどめるという前提で突き進むのか。では 10% ト。ただし永遠にフラットということはないので、むしろ ならその場合歳出ですね、特に中心は社会保障ですけれど 上がらない、下げぎみになるということが、財政がコント も、それが具体的にどんな姿になっているのかという点に ロールされているということで、それを目指しているから ついて、あまりみんな具体的なイメージを共有していない です。 ことが非常にもやもやした原因です。 当然、金利が成長率を上回るような局面では、プライマ 非常に大ざっぱなことを言いますと、プライマリーバラ リーバランスの黒字を出していかないとフラットにはなり ンス黒字を達成した後、その黒字を徐々に増やしていくの ません。そこは、かつて小泉政権時代に、金利が高いのが が望ましいのですが、最低限今言ったようにマイナスにし 普通か、成長率が高いのか、喧々諤々与謝野大臣と竹中大 ない、悪化させないためには、歳出の伸びが税収の伸びを 臣が議論されましたけれども、結果はドローです。両方あ 超えてはだめだということなのです。税収弾性値 1.1 では り得るということだと思います。 低いという意見もあるが、長期的にはGDPの伸びとそん したがって、せめて最低限デットGDP比が上がらな なに変わらないだろうという前提で考え、かつ、増税にあ いためにはどうすればいいかということになるわけです。 まり頼らないということになると、簡単に言えば、結局歳 仮に 2020 年の黒字化目標が達成できたにしても、別に債 出はGDPの成長率より伸びてはいけないということにな 務残高そのものが実額で減っていくということを意味し る。それが可能かどうかが問題なのです。 ない。かつ債務残高のデットGDP比が、恐らく 10 年や 社会保障関係費は、今、国の予算の基礎的な支出の4割 そこらで 100%になるということは、今のペースで行くと 以上、31 兆円もあって、毎年1兆円ずつ増えているわけ ちょっと考えにくい。 です。日本の社会保障は御承知のように年金、医療、生活 実は第2次大戦直後のイギリスも、債務残高のGDP比 保護、介護、子育てなどから構成され、オールジャパンで が 200%を超えていましたが、これが 50%台に戻ってくる 大体毎年 110 兆円金がかかっている。このGDP比 23%。 のに実に 50 年の歳月がかかっています。恐らく相当長期 この比率がせめて上昇しないようにすることができるのか 的な取り組みが必要なのだと思います。そうすると何が重 ということです。 要かというと、その間に金利が暴れられると困るというこ これは逆に言うと経済成長率並みの伸びに抑えられるか となのです。がんと同じように、膨大な財政赤字と共に生 ということです。社会保障支出全体は保険料7割、税金3 きながら、それが暴れないように徐々に徐々にコントロー 割で賄っていて、その税金部分が毎年1兆増えている。今 ル可能な規模にしていくということなのだろうと思いま 年も 2015 年度予算では 3.3%増えました。改革をやってい す。だからこそ欧州債務危機のときのように、約束事を守 ないわけではないですよ。介護報酬をマイナス改定にする れなかったことがマーケットに狙われるということは避け とか相当評判の悪いことをやっても 3.3%伸びました。名 なければいけないと思います。 目成長率は2.7%ですから、名目成長率以上に伸びています。 さて、財政に関するもやもや感は、2020 年にたとえ黒 これをせめて成長率並みに抑えられるのかという点は、 字化が達成できたとしても、その後どうするかということ 小泉内閣のときにさんざんこの議論をやりましたが実現 が明らかではないことだと申し上げました。ありていに できなかったわけです。それはなぜかというと非常に単純 年金数理人・15 で、年金についてはマクロ経済スライドができているの 給付の対象から外れているのですが、依然、そうではない で、将来的にもGDPの1割程度でとどまるのですが、医 ビタミン剤とかうがい薬が入っていますし、よく議論にな 療や介護がそれ以上に伸びていくためです。 るのは湿布、目薬。また、これは相当議論がありますが、 これは、仕組みがそうなっているからなのですが、医療 漢方をどうするか。全部の漢方ではないですよ。市販され については、結局一人当たりの国庫負担、予算で関係ある ているような漢方で効き目の緩やかなものということです のは国庫負担ですからそれを見ていただくと、大体 65 歳 が、これもどうするかという話。 以前は一人当たりが3万円ぐらいなのが、65 才になると それから、受診時定額負担。現在の定率負担で取ってい 3倍になり、75 才になるとさらに4倍になり、したがっ る以外に、行くたびに例えば 100 円取りましょうとか、こ て 65 才以前と 75 才以降を比べると 12 倍になる。介護も似 れも民主党時代に議論になりましたが、結局、できません た状況。高齢者医療制度では、75 歳以上になると公費負 でした。 担が一挙に5割になるという制度を仕組んでいますから、 それから、ここに出ている柔道整復師。例えば3カ所以 当たり前ですがそうなるわけです。一方で、負担の支え手 上悪い部分がある、3部位以上の請求というのがありまし も減っていくので、ダブルパンチです。 て、これは非常に地域差があって、3カ所以上悪いところ 社会保障支出全体の伸び率を名目GDPに伸び率を抑え がありましたという請求書が、岩手あたりだと2割ぐらい る場合に一人当たりどうなるかを考えてみると、全体の人 なのですが、大阪だと8割が3カ所以上悪いという請求に 口は減るのだけれども、高齢者の数は大きく増加するの なっているなど、確かにいろいろな問題があります。しか で、高齢者一人当たりの社会保障支出は、名目GDP以下 し、全てがすんなり実現するという話では恐らくないだろ に抑えないと辻褄が合わないということになる。さらに、 うと思います。 社会保障予算で1つ関係があるのは国庫負担ですが、これ 結局その理由は、何が無駄なのかという尺度がないから を名目GDPの伸び率並みにすると、高齢者一人当たりど です。単に要りますか、要らないですかと聞けば、それは うなるかというと、今の仕組みのもとでは、名目GDPよ 要るよねということになります。尺度がはっきりしない理 りかなり低い伸びにならないと辻褄が合わないということ 由として、税と社会保障の一体改革、消費税を上げるとき になります。増税に大きく頼らないとするとそうなります。 に議論した「中福祉・中負担」の具体的イメージがはっき その際、サービス水準を落とせないとすれば、最低限無 りしないことがあるだろうと思います。当時は、中福祉・ 駄を削りましょうということになる。具体策のメニューは 中負担は、高福祉・高負担のヨーロッパは嫌、低福祉・低 既に提示されていて、先日財務省の財政制度審議会で、こ 負担のアメリカも問題、それでは中福祉・中負担というこ れは一例ですけれどもわかりやすいのでつけてきたのです とだったと思うのです。しかし社会保障の中身が複雑なの が、医療の保険給付の範囲について、こういう無駄の削減 で、一体何が中福祉なのかという点について必ずしもはっ 案があるということで提示されています。例えば、ジェ きりコンセンサスができていない。また、こういうサービ ネリックの使用目標を今の6割から8割に上げる。それか ス内容で不十分なら、消費税は何%まで確保するのかしな ら、ジェネリックの価格までしか保険給付しない、それ以 いのか。確保するなら 15%なのか、20%もいいのかにつ 上は自己負担にしてもらう。これは民主党時代も議論しま いてもコンセンサスがないということだろうと思います。 したけれども、実現できませんでした。 アメリカもオバマケアのもとで、個人に医療保険の加入 それから、市販品類似薬の保険給付対象からの除外と書 を義務づけたわけです。それで民間医療保険を選択購入で いてありますけれども、これまでできたのは、栄養補給目 きるサイトというのが各州にあります。これは皆さん御関 的のビタミン剤やうがい薬だけの処方という場合には保険 心あったら、日本から閲覧できますから、見てみるとなか 16・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 なかおもしろい。例えばニューヨーク州のものを見てみる る。それによって、このもやもや感は解消していくのでは と、民間保険ですよ、月額いろいろな選択肢があって、こ ないかという気がいたします。 ういう内容ですと月額何ドル。例えば歯医者を入れるなら 以上、2つのもやもやということを申し上げました。最 高くなります。歯医者も、金パラかプラチナかによって全 後は繰り返しになりますけれども、今明らかに日本では大 然値段が違ったりするわけです。非常にアメリカ的なので きな流れが変わりつつあると思います。国内の人口がどん すが、結局このように負担が幾らならこういうサービス内 どん増える段階も過ぎましたし、アジア、南米の国々が力 容ということがセットで示されて初めて、そのサービスが をつけて、G7だけで全て仕切れる時代というのは明確に 無駄かどうか判断できるということだろうと思います。つ 去った。それから、多くの人々が 80 歳以上まで生きられ まり負担が尺度だと思うのです。逆に言うと、そのお金を るようになって久しいが、まだ日本の中には、心地よいぬ 自分で払っても欲しいものは無駄でないし、そんなものに るま湯を前提にした仕組みが、あるいは人口がどんどん増 お金払いたくないというのであれば、それは無駄なものだ えていくことを前提とした仕組み、あるいは 60 から 65 歳 ということだと思います。 でリタイアすることを前提とした仕組み、そういうのがま 政府は御承知のように 10%に上げるときに、社会保障 だまだ社会保障制度でも教育制度でも、それから地方のい の使い道を全部示しています。これは 2.8 兆円と載ってい ろいろな制度でも残っていると思います。 ますけれども、大体5%から 10%に上げると消費税は 14 現実を直視して、選択と集中を進めて、子どもたちに社 兆円増えます。14 兆円のうち年金の国庫負担を3分の1 会保障のつけ回しをするようなずるはやめて、ぬるま湯か から2分の1上げるのに3兆円余り使うということになっ ら一刻も早く出て、アニマルスピリットを取り戻すことが ています。それから、消費税を上げると、必然的に国も消 日本経済全体としても必要だろうと思います。ゆでガエル 費税も払わなければいけないので、診療報酬などが自動的 となって死なないように、今ならまだ間に合うというふう に、物価も上がれば物価スライドで上がりますので、自 に思っています。 動的に伴連れで上がるものが 8000 億円ぐらいあるのです。 御清聴、ありがとうございました。(拍手) あとは、ある意味で「止血」ですが、社会保障の自然増が あります。その部分をせめて、国債ではなくてこの消費税 ○司会 ありがとうございました。 を充てようと。いわば止血ですね、そういうものに約7兆 これからの日本経済、財政をめぐる視点について、具体 円ぐらい使うことになっています。残る3兆円ぐらいを社 的な例を用いて大変わかりやすく、示唆に富んだお話を頂 会保障の充実に充て、そのうち子育てに 7000 億円、医療・ 戴いたしました。それでは時間の関係もございますので、 介護に 1.5 兆円、年金に 6000 億円程度というメニューが全 御講演はここまでとさせていただきます。 部できています。 それでは、木下様に改めて盛大な拍手をお送りして、お しかし、将来的なプライマリーバランス、黒字達成後の 礼としたいと思います。木下様、ありがとうございまし 負担水準とそれに対応した社会保障サービスの内容につい た。(拍手) ては、まだ示されていません。こういう姿になるのだから 幾らかかるということに関して、政府だけではなくて、シ ンクタンク、マスコミ、大学、いろいろなところが中福 祉・中負担のさまざまな「組み合わせ」を提案して、これ をできるだけ具体的に出してくれて、それをみんなでいろ いろ議論し、質問し合ってようやくイメージができてく 年金数理人・17 18・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 年金数理人・19 20・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 7.2%→ 6.0% 25.5%→ 23.9% ・欠損金繰越控除 (80%→ 65%) ・受取配当不算入 ・租税特別措置 年金数理人・21 22・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 年金数理人・23 24・年金数理人 平成 27 年度特別講演会「これからの日本経済、財政を見る視点」 年金数理人・25 平成 26 年度実務研修会が開催される さる 3 月 5 日、6 日の両日、平成 26 年度の実務研修会が行われました。 20 の講座が開設され、延べ参加者数は 2,070 人と、盛況裏に終了いたしました。 昨年度までの実務研修会同様に、年金数理人だけでなく、会員外の方の参加もありました。 初日午前は、理事長から「日本年金数理人会の取組み」についてのお話があり、引き続き、国際委員長、教育・研修委員 会からの報告がありました。 なお、各講座のテーマ、要旨および講義の状況等は以下のとおりでした。 ■金利について(21) 講師:笠利 宏氏(みずほ信託銀行) とを説明いただいた。 ・割引関数を用いて年率平均成長率 f_n を表現した。こ こで n をゼロに近づけた極限 f(T1,T2)について T1 を一定としたものが、インプライド・スポットレート (f(c,T2) ) 、T2 を一定としたものが、フォワードレ ート(f(T1,d))であることを説明いただいた。 ・インプライド・スポットレートについて、c=0 とした ものがスポットレートである。 ・フォワードレートについて、d をゼロに近づけた時の 極限を瞬間フォワードレートといい、結局、スポット レートは瞬間フォワードレートの区間(0,t)に関す る平均値であることを説明いただいた。 金利の期間構造について、講義の前半では関数の定義や 各レートの意味するところ、および主要な仮説について説 ○期間構造の意味(その 1:期待仮説) 明いただいた。また、講義の後半では短期金利のモデルに ・インプライド・スポットレートが意味するもの ついて説明いただいた。 投資開始時点のインプライド・スポットレートに対し て、終了時点での実現スポットレートが上回れば超過 ○割引関数、インプライド・スポットレートとフォワード レート ・割引関数(D(T1,T2) )の定義を行ったうえで、曲面 である割引関数のもつ情報は曲線に集約されているこ 26・年金数理人 損失を生じ、下回れば超過収益を生む。 ・リスク中立と期待仮説 インプライド・スポットレートが将来のスポットレー トの期待値であること(=期待仮説)を仮定すると、 平成 26 年度実務研修会が開催される リスク中立な世界となり、逆にリスク中立な世界を仮 まっている。当講義では金利の期間構造に関する話題を中 定すると、期待仮説が成立する世界となる。 心に、金利の基本的な事項について解説いただき大変有意 義な講義であった。 ○期間構造の意味(その 2:リスク・プレミアム仮説) ・スポットレートが不変のときの収益率(=ローリン グ・イールド)はフォワードレートと一致する。 ■企業会計(22) 講師:井上雅彦 氏(有限責任監査法人トーマツ) ・残存期間の異なる割引債の無リスク運用を上回るため の金利上昇余地の大小は対応するフォワードレート・ カーブの傾きで判断することができる。 ・期待超過収益率を収益率の標準偏差で除したものが 「リスクの市場価値(=シャープ比) 」であり、割引債 の期待超過収益率、即ちリスク・プレミアムは、 「リ スクの市場価格」とスポットレートの変動性と修正デ ュレーションの積として表現される。 ・慣性世界を仮定すると、 「フォワードレート=無リス ク金利+リスク・プレミアム」となり、リスク・プレ ミアム仮説が成立する世界となり、 逆にリスク・プレミアム仮説を仮定すると慣性世界と なる。 2012 年(平成 24 年)5 月に改正された日本の退職給付 会計基準について、この 3 月期は多くの企業で期首から新 基準が適用されることとなる年度末を迎えつつある。今回 は改正の概要を復習するとともに、企業での取り扱い方針 ○期間構造の理論(短期金利モデル) の変更例や考え方を随所に交えて全体像を概観していただ ・経済状態の推移は二項モデルで記述可能であると仮定 いた研修であった。 する。 ・全ての基本証券が市場価格 q(n,m)を有するものと 仮定する。このとき q(n,m)は状態価格と呼ばれる。 ○会計基準改正の概要 ・改正された基準の主な 5 項目について解説いただいた。 ・割引債は満期の経済状態にかかわらず利得 1 を支払う ASBJ(企業会計基準委員会)では、IAS(国際 証券であるから、その現在価格は状態価格の和に等し 会計基準)の動向を踏まえて改正の検討がされていた い。従って、 「満期の異なる基本証券の間で裁定機会 が、今回改正された主要事項はステップ 1 と言われる が生じなければ、それらのポートフォリオである割引 ものであること、またリサイクルや重要性基準の是非 債についても裁定機会が生じない」こととなる。 などを問う検討項目であったステップ 2 の内容は課題 その時の価格を無裁定価格という。 のままとして残されているが、今後の取扱いの改正に ・無裁定価格が実現していれば、任意の確率下、全ての ついては見通しは不明のままであること。 割引債でリスクの市場価格が一致する。また、割引債 ・今回の基準改正では、長年使用していた退職給付会計 の無裁定価格は短期金利の経路積分が関係するリスク にかかわる象徴的な用語の見直しも行なわれたが、そ 中立確立下の期待値である。 の事情を説明いただくことで理解が進み易くなるもの であった。 平成 24 年の退職給付会計基準の改正により割引率の設 ○財務諸表の取扱い 定方法が変更されたこともあり、年金数理人業務を行うう ・未認識項目の即時認識は今回改正の大きな事項であ えでも金利の期間構造について理解することの重要度は高 り、貸借対照表では数理計算上の差異や過去勤務債務 年金数理人・27 すべてを一時に負債と認識するという点が大きな変更 ○退職給付債務・勤務費用の計算方法 点である。 ・期間帰属方法の見直しでは今回期間定額基準と給付算 ・改正前は数理計算上の差異など貸借対照表では計上さ 定式基準との選択適用となったが会計上の考え方で発 せず、債務として保持しているにもかかわらず発生し 生主義を原則としているため、期間帰属をどう規定す た翌期から一定の期間で少しずつ費用処理させること るかということが考え方の軸になっている(割引計算 により引当金を増やしていく処理であった。これは決 はそのあとの問題)ということで、同様の計算をして 算時の市場価格の激変などの影響を避けるための所謂 いる年金財政上の数理債務計算等との対比をしていた コリドールール(米国基準やIASでは既に廃止済 だいた。 み)に準じてできるだけ一時の損益に反映させないほ ・課題としている給付算定式基準では均等補整の適用是 うがいいのでないかという考え方であった。 非についても含めて企業・会計監査での考え方や米国 ・今回の改正では、連結財務諸表だけであるが考え方が での例なども含めつつ、比較的多くの企業で給付算定 変わっていると言える。以前未認識としていた部分も 式基準を採用した模様であることなどの現実的な話を 貸借対照表の負債の部で一時にそのまま計上する。損 していただいた。 益計算書での処理は従前どおりであるが包括利益計算 ○割引率の見直し 書では費用処理されずに残った額を貸借対照表の純資 ・割引率の見直しも大きな課題であるが、従前基準は使 産の部でその他包括利益累計額として計上されること えなく、単一の加重平均方式かイールドカーブ方式か になっている。この額は、その後の各時期において損 の二者択一が実態となったこと。 益計算書に振り替えていく処理も求められる(リサイ ・後者を採用する場合の課題や解決例、前者の場合のデ クル) 。 ュレーションの算定方法、あわせて諸外国での動向な ・このあたりは連結損益及び包括利益計算書での表示例 どを織り込みつつ、ここまでの採用動向としては前者 と新旧基準について簡単な設例を使用して理解を助け の方式でデュレーションの算定方法としては退職給付 ていただいたが、同じことを別の角度で、連結財務諸 の金額で加重した平均期間による方法が多く用いられ 表と個別財務諸表との結果的な相違点として解説いた ている模様である。 だいた。 ○重要性基準について ○開示の充実 ・今回、情報開示が拡充されたが、見本としたIASの ・重要性基準は現在のところ、日本の会計の独自基準と 開示項目から意義深いと考えられるものを選んで採用 して残存したことになった。期末での割引率が変動し たと推定して債務等について再計算を行なわなければ している。 ・開示要請項目が増えたため、各企業とも事前に準備し ならないとした基準の考え方を例示を用いて説明いた だいたが、今後基準の全体的な見直しのなかでは廃止 た上で臨みたいことが説明された。 ・年金資産の開示を求められたことについてはガバナン の方向であろうとのことであった。併せてこの重要性 スに資するためであることが主旨である。 基準の適用は任意とされている中で、適用した場合と 適用しなかった場合との考え方や基準改正時の期首で 今年度は、昨年度と同じ資料を使った研修であったが、 の特例などを説明いただいた。 具体的な例示・実務上での動向や考え方の例など細部に ○実務への影響 わたって補足いただいたことで、実務上有用な研修であっ ・今回の会計基準の改正全般について考えた場合、一定 た。 の範囲で実務も変わるがそれにともなって企業経営に どういう影響が出るかまたそれらの意味するところな どを 5 項目に集約して解説いただいた。 28・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される ■財政運営実務基準(23、52) また、確定給付企業年金については、①厚生年金制度 講師:山下 厚氏(みずほ信託銀行) 見直しに伴う改正、②DB制度に関するQ&A(日本 遠藤武昭氏(第一生命保険) 年金数理人会作成)の内容を実務基準に統合すること に伴う改正の 2 点が主な改正内容であった。 これらの内容に基づく個々の改正箇所について詳細に 解説いただいた。 (以下、詳細説明については主な内容を抜粋して記載) ○厚生年金基金の財政運営の実務基準の改正内容 ・改正後の財政検証は、原則平成 27 年 3 月 31 日から適 用するが、解散計画等を実施中の基金についての積立 目標の検証は平成 26 年 3 月 31 日から 1 年前倒しで適 用する。 ・最低責任準備金は継続基準においても期ズレ解消後を 用いるため、最低責任準備金調整額を廃止する。 ・非継続の財政検証について、純資産額が最低責任準備 金の 150%を下回っていないかの検証を追加する。た だし、基準は 105%から 150%まで段階的に引き上げ る。 ・解散計画等を実施中の基金は、解散代行返上予定日に おける積立目標の達成が可能かどうかの観点から検証 する。 ・改正後の財政計算は、原則平成 26 年 3 月 31 日以降か 当講座は、財政運営実務基準の改正内容について解説を ら適用する。ただし、解散計画等に関連した内容は、 行うクラスである。当年度は平成 26 年 11 月に実施した厚 平成 26 年 4 月 1 日以降の基準日から適用する。また、 生年金基金・確定給付企業年金の実務基準改正について、 掛金計算については平成 25 年 4 月 1 日から適用可であ 主な改正内容をご説明いただいた。 り、平成 26 年 3 月末は改正前の規定を適用可である。 非継続基準については平成 27 年 3 月末以降の基準日 ○概要説明 から適用する。 ・講義は 2 部構成となっており、前半は厚生年金基金実 ・平成 26 年 3 月末基準の財政計算における最低責任準 務基準の第 2 号「厚生年金基金の財政運営に関する実 備金については、原則として精緻化後を用いるが、精 務基準」の主な改正内容について、後半は確定給付企 緻化前も使用可である。 業年金(DB)実務基準及び厚生年金基金実務基準の ・解散計画等を実施中の基金は代行保険料率の算定は不 第 1 号・第 4 号・第 7 号の主な改正内容についてご説 要であり、また通常の継続・非継続の対応も不要とな 明いただいた。 る。 ・厚生年金基金については①平成 26 年 4 月の厚生年金 ・平成 26 年 4 月からの基本部分の連合会への移換停止 保険法等の一部改正を受けた改定、②厚生年金基金実 については、遅くとも基本部分の標準掛金を算出する 務基準補足事項の一部の項目を本則に反映した上での 財政計算からこれを織り込む。 廃止の 2 点が主な改正内容であった。 ・平成 24 年度末において代行割れ状態の基金は、原則 年金数理人・29 として平成 26 年度以降における掛金率が平成 24 年度 ○厚生年金基金実務基準第 1 号、4 号、7 号の改正内容 の当該比率を下回らないようにする。 ・実務基準補足事項の内容を実務基準第 1 号の内容に統 ・解散計画等の作成時及び変更時に係る、①年金数理人 合した。(内容は変更なし。) の確認対象について、②解散計画適用時の最低責任準 ・基金解散時に残余財産を分配するに当たって、従来は 備金の計算の際の選択肢について、③解散計画適用後 最低積立基準額を基準とする方法のみが認められてい の財政計算の取扱いについて、を新たに記載した。特 たが、それ以外の方法も認められたため、当該事項を に、解散計画適用後に財政計算に基づく掛金変更を行 明記した。 う際は、標準掛金を適用しないことが適当であると年 ・年齢別 3 段階係数については、平成 17 年 4 月以降の支 金数理人が判断した場合、その合理的な理由を記載し 給分に遡及適用できるが、遡及適用年月日の変更につ た所見を添付することで財政計算による標準掛金を適 いては原則できないことを記載した。また、遡及適用 用しないことができる。 する場合には代議員会において説明を行う旨を加筆し た。 ○確定給付企業年金(DB)の実務基準の改正内容 ・キャッシュバランスプランの指標について、有価証券 指標や、新たに認められるようなった積立金の運用利 ■企業年金に関する裁判例の動向及び最近の法的論点(31) 講師:森戸英幸氏(慶應義塾大学法科大学院) 回りの実績についても、指標の予測の例示を記載し た。 ・給付の額の改定に用いる予定利率について、指標の下 限がゼロに緩和されているが、一時金として支給する 老齢給付金の額は下限予定利率で算定した現価相当額 を上回らないというルールは残っているため、留意事 項に記載した。 ・キャッシュバランスプランの再評価率は単年度でマイ ナスになることが許容されたが、再評価の指標の見込 みについては、直近 5 年間の実績値の平均値がゼロを 下回る場合はゼロとすることを加筆した。 一昨年裁判例に関する講義が復活。はじめに裁判例・判 ・積立比率の回復計画を作成して積立不足を回復する方 例の読み方と意義について解説が行われ、続いて裁判例 3 法については、適用できる期限が「平成 30 年 3 月 30 件と企業倒産時における企業年金債権について講義が行わ 日」から「当分の間」に変更された。 れた。 ・回復計画を策定する際の翌々事業年度以後の積立金の 額の見込み額の計算に用いる運用利回りについては、 「直近 5 事業年度における積立金に係る運用利回りの Ⅰ 企業年金受給方式に関する説明義務 ( 株式会社明治事 件) 実績の平均と掛金算定に用いた予定利率のうち、いず 【事案の概要】 れか低い率」とすることとなった。 ・原告Xが被告Y社の実施するA基金に対し、給付金を ・解散した厚生年金基金の残余財産をDBに交付する場 一時金で受け取る旨の裁定請求書を提出した後年金へ 合、①交付する者を限定できること、②個人ごとに残 の変更を申し出たが、これを認められなかったことか 余財産の一部を持ち込んで、残りを一時金として受け らY社に対して①企業年金の受給方式(年金か一時金 取ることができることの 2 点を追記した。 か)に関する説明義務、②受給方式変更申出締切日を 告知する義務、③A基金への指導等を怠ったとして債 30・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される 務不履行に基づく損害補償を請求したもの。 【判決のポイントと考察】 ・請求棄却となったが結論は妥当。事業主(スポンサ ー)と基金(実施者)の連携のあり方など参考とな る。 ・①は、義務はあるが責任を果たしている。②および③ はそもそも義務がないとの判断。 ・①について、判旨で受給方式に関するメリット・デメ 裁(第 3 事件、第 1・第 2 事件とは別地裁の控訴審) で判断が異なった。 【事案の概要】 ・組合員間の公平を図る観点から退職一時金の給付を受 けた者が退職共済年金等の支給を受ける権利を有する ことになったときは退職一時金の返還が法律で規定さ れ、その利息は政令で定める利率(年 5.5%)によ る複利計算とされた。 リットは個々の受給者により様々であり受給者一人ひ ・上記に基づき原告X基金は被告(個人)に対し、約 とりの生活状況を把握するのは現実的ではないとの判 26 万円(退職一時金支給額約 5 万円、第 1 事件)、約 9 断であったがいずれにしても十分な説明が必要。 万円(退職一時金支給額約 1 万円、第 2 事件)、約 61 ・③について、Y社とA基金は別法人であり業務指導を 万円(退職一時金支給額約 12 万円、第 3 事件)と支 行う義務はないとの判断であったが、形式論が前面に 給額に対して約 5 倍~ 8 倍の額を返還するよう提訴し 出過ぎたきらいがあったのでは等のコメントがあっ たもの。 た。 【判旨】 ・第 1・第 2 事件では公正な年金制度の運用のためその Ⅱ 確定給付企業年金とバッド・ボーイ条項(中日本ハイ ウェイパトロール東京事件) 目的は正当とされが、第 3 事件は支給額のみ返還が認 められた。 【事案の概要】 【判決のポイントと考察】 ・被告Y社は退職金の内枠でDB(おそらく規約型)を ・地裁判決(第 1・第 2 事件)は法令の定めどおりの判 実施 ・退職金支給規程には不支給規程が、DB規約には支給 制限規定がそれぞれ規定されている。 ・原告Xは強盗事件を引き起こし懲戒解雇となり、退職 一時金も脱退一時金も支給されなかったため、これを 断であったが、“何かおかしい”という素朴な感覚を 高裁(第 3 事件)が理屈付けした感がある。 ・当時の立法の経緯を詳細に検討する必要はあるが、一 旦支給された退職金を返還させるということは財産権 の侵害ではないか等のコメントがあった。 不服としてY社を提訴したもの。 【判決のポイントと考察】 Ⅳ 企業倒産時における企業年金債権 ・判決は、XのY社に対する請求権は退職金不支給規定 ・企業倒産時において、企業年金に関する各種の債権は および脱退一時金支給制限規定により、それぞれ消滅 どのような扱いを受けることになるかに関して、対象 したとして棄却。 となる制度(退職一時金、規約型・基金型DB、企業 ・DB規約における減額没収規定が発動された初めての 型DC)、対象となる債権(給付債権、掛金債権) 、対 ケースと思われる。退職金と同様な判断となったこ 象となる倒産手続(破産、会社更生)それぞれの場合 と。ただし、内枠・外枠、規約型・基金型で異なる判 について解説が行われた。 断となる解釈もありうるのでは等のコメントがあっ た。 解説が丁寧で非常に分かり易く、大変有意義な講義であ った。 Ⅲ 旧公共企業体職員等共済組合法下で支給された退職一 時金の返還請求(エヌ・ティ・ティ企業年金事件) ・3 つの事件があり、地裁(第 1 事件と第 2 事件)と高 年金数理人・31 ■エイジフリーの人材活用のポイント(32) の 3 段階に分け、一人前のプロになってからプロとし 講師:元井 弘氏(公益財団法人 日本生産性本部) て活躍する間をプロフェッショナルステージとする。 制限なくエイジフリーとするのではなく、プロフェッ ショナルステージをエイジフリーとする。 ○エイジフリー組織・人事の実現のポイント ・脱年功・タテ社会、プロフェッショナル指向のため年 齢に替わる価値基準を確立し、組織共通の価値観を原 点とした発想に切り替える。 ・人に仕事をつける人ベースの人事制度から、仕事に人 をつける仕事ベースの人事制度に切り替え、その仕 事・役割に最も適した人材を配置する。また、給与体 若手社員も高齢者も活性化させるエイジフリー組織・人 系も、人に賃金をつける属人的体系(職能給)から仕 事を実現するポイントや、高齢者人事・処遇制度の構築に 事に賃金をつける属職的体系(役割業績給)に切り替 ついてご講義いただいた。 える。 ・役割等級体系の例としてジョブキャリアモデルを紹介 ○エイジフリーの人材活用の問題提起 する。まず成果重視か生産性重視かでコース(ビジネ ・高齢者は生き生きと働き、若手社員は精鋭化している スコース・オペレーターコース)を分け、さらにビジ か。働き方のステージはライフサイクルに合致してい ネスコースを 3 ステージに分ける。ビジネスコースの るか。組織や人事は脱タテ社会になっているか。 プロフェッショナルステージをエイジフリーとし、業 ・年齢構造の高齢化に伴い、年功序列の人事システムで 績に貢献すればその分賃金も上昇する仕組みとする。 は年功化した給与と役割のアンバランスが生じ、雇 年功序列モデルでは、段階的に役割・賃金が上昇す 用・組織・人事について適正なバランスを保てなくな る。 る恐れがある。年功序列の人事システムから脱却する 必要がある。 ・プロフェッショナルを育成するには、職場に目指すべ き人材がいることが大切である。 ○エイジフリーの目的と条件 ○改定高齢者雇用安定法への対応 ・若手層の早期プロフェッショナル化、熟年層プロフェ ・高齢者雇用改正への対応は、コスト・組織・事業等、 ッショナルの活用を実現するには、年功序列の人事シ 各企業が持つ個別事情によって対応策は各社各様であ ステムから脱却し、エイジフリーのプロフェッショナ る。 ルステージを設けた人事システムやシニアエキスパー ・高齢者雇用・活用の条件として、高齢者の意識・キャ トの働き方・処遇の仕方を確立する必要がある。 リアを活用できるか、高齢者が継続就業できる職場環 ・成果や業績を重視するコアプロフェッショナルは統合 境・就労環境であるか、などが挙げられる。高齢者雇 戦略的職務や企画創造的職務を担い、作業や業務完遂 用に向けて、エイジフリーの企業風土の醸成、属人的 を重視するオペレーターは熟練的自己完結職務やマニ 組織・人事システムから属職的組織・人事システムへ ュアル的定型職務を担うことで、成長戦略に合わせて の転換が必要である。 人事基盤を再構築する。 ・ジョブステージをデベロップメントステージ、プロフ ェッショナルステージ、シニアエキスパートステージ 32・年金数理人 ○高齢者人事・処遇制度構築の検討 ・高齢者賃金体系は、属職給与体系の場合は見直しの必 平成 26 年度実務研修会が開催される 要性は低いが、属人給与体系の場合は年功的な積み上 高い水準の積立レベルをもとめている割にはそこまで がり分の大幅な見直しが必要である。 高くない水準である。一方、アイルランド、イギリス ・退職金と在職老齢年金の支給制限との調整(給与の退 はそれほど積立水準は高くない。 職金振替)を行い、退職金にインセンティブを与え ○ IORP 指令の見直し る。 ・Directive/2003/41/EC という職域年金に関する欧州 エイジフリーの人材活用について、具体的な事例も踏ま えて丁寧に解説いただいた。今後ますます注目されるテー マであり、大変興味深いものであった。 単一市場の実現に向けた基本指令がある。 ・これは EEA 合意の 3 か国にも適用されており、2007 年に全体に適用されることになった。 ・しかし、2011 年に欧州委員会が IORP 指令の見直し ■欧州の年金制度…最近のトピックを中心に(33) 講師:清水信広氏(厚生労働省) を決定した。これにより、膨大な答申が提出された。 ・2013 年 5 月に企業年金指令の見直しにソルベンシー 基準を入れないことを文書で明確化した。 ・2014 年 3 月に IORP 指令の改正案が公表された。これ により、積立基準が改正項目に入れないことになり、 ガバナンス、情報開示の内容が中心の改正となった。 ・2014 年 11 月に最終案が示されたが、まだ成立しては いない。 ・2014 年 10 月に HBS アプローチについてコンサルテー ション・ペーパーが提出された。 ○ HBS アプローチに係る EIOPA のコンサルテーション 欧州の年金制度に関し、職域年金の最新の動向・トピッ クを中心に講義いただいた。 ・2014年10月13日にEIOPAは欧州委員会に対する技術的 な助言機能の立場から独自の取り組みとして以下の5項 目についてコンサルテーション・ペーパーを公表した。 ○欧州諸国の職域年金制度 「母体の支援」の評価 ・年金制度の適用率は強制加入の国々では加入率が高 給付減額の仕組みの評価と認識 く、任意加入の国々は加入率が低い。職域年金を普及 裁量的な意思決定プロセスの評価 させる場合、任意加入では難しい。 契約境界の定義 ・資産規模 指導監督側の対応(HBS の考えられる利用方法) 欧州全体の資産規模は増えてきている ・HBS の利用方法としては以下の 3 つを想定している。 イギリスとオランダで欧州全体の 85% を占める EU レベルでの SCR の設定 これにドイツも含めると約 90% となる。 責任準備金レベルでの最低積立要件の確立 GDP 比にすると、オランダが 160%、イギリスが IORP の持続可能性評価 約 70% と大きく、次に大きなポルトガルが約 9% となっている。 ・EIOPA は 2015 年の早い時期に量的影響評価に係る技 術仕様書を公表する予定 ・運用利回りは国によって差が大きい。イギリスでは約 1% 程度であるが、オランダではもう少し高い。 ・積立水準ではスウェーデンが高い。オランダはかなり ○オランダの状況(新しい FTK の導入) ・職域年金に対する新しい財政評価の枠組み(FTK) 年金数理人・33 根拠規定を整備 を 2007 年に導入 ・その後、2011 年に FTK の見直し(FTK2 の導入)が 「年金案内サービス」業務を導入し、当該業務の 監督当局たる FCA の指導監督の枠組みを規定 提案された。 ・ 蘭 社 会 省 は 2014 年 6 月 に 年 金 制 度 を 巡 っ て 広 範 囲 個々の加入者の選択肢に係る変換(conversion) な 議 論 を 行 う National Pension Debate を ス タ ー ト。 及び移管(transfer)に係る「独立の助言」につ FTK 見直し提案の詳細を公表。FTK 見直しに係る法 いて規定 案を国会に提出し、12 月に成立した。 ・オランダの年金基金が 1000 くらいしかないのに対し、 2007 年から 2012 年の間に 357 基金が解散した。内訳 ■年金基金のリスクマネジメント(41) 講師:杉田 健氏(三井住友信託銀行) は以下の通り 保険会社に移行:34 業界の年金に移行:82 個別の年金に移行:241 ・新 FTK の基礎の考え方は以下の通り 突然の大幅な給付減額は避けるべきである。同時 に、必要な対応の遅れも避けるべきである。 長期の回復計画期間を固定することにより、給付 スライドの実現を目指す運用方針を危うくするべ きでない。 年金基金の財政運営をより安定的にするため、金 利の日々の変動が FTK にできるだけ影響を与え この講座では、ERM と年金分野との関わりについて、 最新情報の紹介も含めて様々な観点から講義が行われた。 ないようにすることが望ましい。 FTK は掛金の変動制を高めるべきでない。 ○新しい話題(米国の州・地方公務員年金) 時間軸 1 年、信頼水準 97.5% のソルベンシー基準 ・必要掛金額は増加傾向で破綻すると心配されている は、高い水準のバッファーを必要とすること。 ・積立比率は悪化傾向(割引率約 8%で計算で積立比率 72%、リスクフリーレートでは 50%) ○イギリスの状況(リスク分担制度の導入) ・債務評価の割引率は高止まり(割引率約 8%でほとん ・2015 年年金制度法の趣旨は以下の通り ど変わっていないが、リスクフリーレートは大きく下 リスク分担(DA)制度の導入 がっている) 集団型拠出建て(CDC)制度の導入 ・資産配分比率はオルタナが増加傾向 2014 年予算による、DC 制度の給付へのアクセス ・開示の強化:過去 10 年間の給付等、リスク指標、ス に係る加入者の選択肢拡大への対応 ・2015 年年金制度法の概要は以下の通り トレステスト、割引されないキャッシュフロー ・アクチュアリーの役割:割引率(過去のデータに基 給付建て制度(DB) 、リスク分担制度(Shared づかずリスクフリーレートにリスクプレミアなどで risk schemes) 、拠出建て制度(DC)の 3 分類を 算出)、償却年数(最長 20 年)、資産の平滑化(5 年以 導入 内)、拠出金率の平滑化も選択肢 集団型給付(Collective benefits)なる概念を導入 ・制度のガバナンス:拠出の徹底、情報開示の徹底、 ○リスク リスク分担制度及び集団型給付に係る受託者責 任、情報開示、受給権の保護及び再評価等に係る 34・年金数理人 ・好ましくない不確実事象 平成 26 年度実務研修会が開催される ・リスク(確率分布を特定できる)と不確実性(確率分 布で特定できない)に区別できるという考えもある が、区別が難しいという批判もある。 ・リスクはマイナスのみ(例:地震、事務ミス等)とプ ラスとマイナス両方(例:株価変動)の 2 種類ある。 ・関係者:加入者、受給権者、基金関係者、母体企業、 行政、マスコミ、目的:受給権保護。 ・リスク分類例:「戦略リスク」「信用リスク」「市場リ スク」「負債リスク」「オペレーショナルリスク」 ○成熟度 ○リスクの洗い出し ・成熟度が高いほどマイナスリターンの影響大。 ・起こりうるあらゆるリスクを洗い出す。 ○市場リスクへの対応 ○リスクの評価 ・リミット(限度額)(エクスポージャー・リミットお ・過去のデータを参照しつつ、洗い出されたリスク毎の よびストップロス・リミット)、バッファーを持つ 発生頻度と発生した場合の影響の大きさをリスクマッ (別途積立金)、ヘッジ(先物・オプション・スワップ プ等で評価する。リスクの評価方法として、定性的手 法と定量的手法がある。 等の活用)、分散投資等がある。 ・デンマークの大規模な年金基金である ATP はテイル ○リスクへの対応 リスクの消去に成功した。手法は、プットオプション ・リスクへの対応としては、 「回避」 「移転(アウトソー の大量購入(当時プレミアムが安かった。 ) ス、保険、オルタナ、ヘッジ) 」 「リスク発生頻度の削 ○年金資産の市場リスクマネジメントの留意点 減」 「リスクの影響の削減」といったものがある。 ・後追いの失敗:株が下がった後に現金化や上がった後 ○モニタリング に株を購入等→伝統的な年金資産運用であるリバラン ・リスクの特定・評価・対応について、日常的又は定期 スが良い結果になっている。 的にモニターし、リスク削減されていないようであれ ば改善する。 ○ ERM とは ・ERM は Enterprise Risk Management の略。事業リス ク管理、統合リスク管理等と訳される。 ・ERM へのアプローチとして、COSO フレームワーク (COSO cube)を活用するという方法がある。 ・トラックレコード(過去に実績)のみでファンドを評 価する失敗→ポンジ詐欺、マードフ事件やAIJ事件 (資産運用詐欺)→詐欺に合わないために、 「資産運 用規制」「量的上限の設定」「デュー・デリジェンス」 「マネージドアカウントの利用」などがあるがフィー 増加等の問題もあり。銀行などはバーゼルⅡのフレー ムワークにより、ほとんどマードフ事件の被害にあわ ○年金のリスクと関係者 なかった。他には保険会社:ソルベンシーⅡやオラン ・母体企業:年金費用や債務の変動リスク ダ職域年金の財政運営規制等がある。 ・年金基金:投資・戦略・法務・オペレーション・風評 リスク ・年金加入者・待期者・受給者:制度廃止・給付減額・ 市場・法規制・投資(DCの場合)リスク ・分散したつもりが分散不十分→平常時と金融危機時で 相関が異なる。 ・債券代替の失敗→ヘッジファンドや信用リスク商品の 債券で大幅なマイナス利回り。 ○日本のリスク削減例 ・守りに偏り、攻めが不十分になる例もある。 ・予定利率引き下げやDC ○年金加入者・待期者・受給権者のリスク ・給付減額 ・制度廃止による給付の消失→支払保証制度(米国、英 ○英国のリスク削減例 ・新規加入者や現在加入者の将来分をDCへ ・インフレスワップ ・長寿スワップ ○企業年金のリスク管理 国、スウェーデン、ドイツ) ・給付減額等→リスク削減し、無理のない制度設計・制 度運営を行う。 ・DCと市場リスク→投資教育が重要。規制(ドイツ・ ベルギー・スウェーデン(一部)はDCに最低保証義 年金数理人・35 務付け) の羅列にとどまらずそれぞれの概念が現実の場面でど ○欧州職域年金の動向 ういうものにあたるかをあてはめた内容であった。こ ・保険規制の改定と平仄を合わせる→自己資本規制の導 こでの債券価格は後段で予定している無裁定価格に対 入が見送られトーンダウン ・EIOPAは自己資本規制導入を諦めていない し、キャッシュフローが決まっている証券価格として 説明いただいた。 ○集団DC(CDC) 2.証券価格の計算とリスク中立確率 ・年金基金が集合運用 ・ここではキャッシュフローが確定していない証券を考 ・オランダのCDCは年金受給者に過剰給付して若者が 損になりやすいリスク移転の可能性有り。 え、その価格の理論をリスク中立世界をもとに解説い ただいた。無裁定価格の理論的な考え方を解説しなが ら、取引の実態がない証券の価格を現実の例示を踏ま 前年度も講義を受けたが、今年は新しいトピックの紹介 えてどうやって決めるかという考え方を説明いただい があったり、年金分野とリスクマネジメントの関係につい た。よりわかりやすく単純な競馬事業の例でどちらの て、多岐に亘る内容が簡潔に整理され、実体験等を交えて 馬が勝っても損をしない配当案を将来のキャッシュフ 分かり易く説明されており、大変有意義であった。 ローが確定しないなかでのリスク中立確率を設定する ことで配当案を考える例で説明いただいた。 ■数理ファイナンスの基礎(42) 3.オプションの概要と正規分布 講師:安岡孝司 氏(芝浦工業大学) ・オプション取引の概要を説明いただくとともにその意 味するところを保険の概念と対比するなどして対比説 明いただいた。 4.2 項モデルによる株式オプションの価格 ・1 期間 2 項モデルという最も単純な形でオプション価 格をどう計算するかを説明いただいた。オプションを 売った側が実行すべきヘッジ比率を決定し、リスク中 立確率に基づいてコールオプション価格の計算例を示 していただいた。昨年度と同様の内容であるが意味を より細やかに説明いただいた。オプション価格は株価 上昇下降確率には依存しないが、変動幅には依存する 例年どおり数理ファイナンスの基礎というテーマでの講 ため、相場変動が大きいと予想されるときはオプショ 義が行なわれた。今年度のテーマは内容は昨年度のものを ン価格も上昇することや、2 項モデルを多期間にして 踏襲する形であるものの、項目や課題の説明をより例示を 極限を求めて正規分布で表現し、ブラック・ショール 多く示していただく形で講義いただいた。応用編としてブ ズ公式でのコールオプションの価格と対比(同じにな ラックショールズモデルのオプション価格の計算式をエク ること)いただいた。 セルでの算出シートで照会いただいたり、今年度は年金コ ンサルティングの活用としてマイナス金利の社債の構造・ 考え方を説明いただいた。 5.確率微分方程式の見方とブラック・ショールズ・モデ ル ・確率微分方程式を使用したブラック・ショールズの株 価モデルを紹介いただいた。株価のモデルやオプショ 1.金利・割引率・現在価値 ・冒頭導入部分では、復習の形で金利・割引率や現価・ 債券価格の構造などを図解いただいた。理論的な事柄 36・年金数理人 ン価格も 2 項モデルの極限と同じ結果であった。 6.エクセルで作るブラック・ショールズ・モデル ・昨年度に引き続き金融機関の実務者向けにブラック・ 平成 26 年度実務研修会が開催される ショールズ・モデルでの計算例を紹介いただいた。配 ○これまでの流れ 当のある株式を題材にコールオプションとプットオプ ・2012 年 5 月、ASBJ が日本基準を改正した。 ションのオプション価格をエクセルでの計算シートを ・2012 年 12 月、JSCPA/IAJ が「退職給付会計に関す 作成して計算できるものである。 7.年金コンサルティングへの活用 ・講義の最終まとめとして、金融工学を我々の業務に応 用する場合のいくつかの注意点や課題を紹介いただい ている。今年度の年金コンサルティングへの活用の例 は、アドバンテスト社発行の転換社債型新株予約権付 る数理実務基準」 「退職給付会計に関する数理実務ガ イダンス」を公表した。 ・2013 年 4 月の改定は、公益法人化のための文言修正 である。 ・2014 年 1 月、11 月の改定は、IAS19 の改定への対応 である。 社債(CB)で、利率 0%であることに加え額面 100 続いて、 「数理実務基準」の解説があった。以下は解説 円にも拘らず 103 円で発行されたものである。これは された内容の一部である。 マイナス金利の社債とコールオプションを組み合わせ ○位置づけ た商品であり、市場ではこのような多様な金融商品が ・会員が遵守するべきものである。 登場している。伝統的資産とデリバティブの部分とに ・会員の行動・立場に関する基本的なものである。 分離して考えるとよいとの示唆であった。 ○報告 ・対象とした退職給付、個人データ、計算基礎、退職給 この講座は難解な項目も含む内容となっているが、理論 付見込額の期間帰属方法、その他の重要な事項のうち 構築の面・さらには年金資金投資の実際面から留意すべき 依頼者からの依頼に基づくものについて、その旨を記 ことまで、学術的な議論から遠ざかっている者にでも、金 載する必要がある。 融工学の面から丁寧で分かりやすいお話をしていただいて ○ IAA ISAP1 – 4.2. Report いる。特に今年度は講義の節々に理解するためのポイン ・ISAP1 には、同等の能力を持っている他のアクチュ ト・現実場面での具体例を入れていただいて、受講者によ アリーが合理性を判断できる程度の詳しさで、報告書 り分かりやすい講演をしていただいたことに感謝したい。 に書かなければならないとある。退職給付会計基準委 員会において、当会の数理実務基準にこの内容を取り ■退職給付会計実務基準(43、82) 講師:日下部健一氏(新日本有限責任監査法人) 込むべきではないかといった議論もあった。 続いて、 「数理実務ガイダンス」の解説があった。以下 は解説された内容の一部である。 ○位置づけ ・日本基準に関する数理的な実務の教育的資料である。 ・会員は、退職給付会計に関する業務を行うにあたって 本ガイダンスの理解が求められる。 ○第 1 節 退職給付 ・対象となる退職給付の範囲及びその内容は、実態に即 して確定する必要がある。実務を行っていると、評価 対象とする退職給付の範囲の確定が難しいケースもあ った。 「退職給付会計に関する数理実務基準」 「退職給付会計に ○第 3 節 計算基礎 関する数理実務ガイダンス」に関する講義が行われた。ま ・適格 DB 制度の財政の目的で使用されている基礎率を ず、 「これまでの流れ」の説明があった。 そのまま本専門業務における計算基礎として使用する 年金数理人・37 ことも考えられるが、考えられるということなので、 ■企業年金制度の現状と課題(51) そうしなくてはならないというわけではない。むし ~企業年金部会における議論を中心に~ ろ、そのまま使用することが妥当かどうかを考える必 講師:山本進氏(厚生労働省) 要がある。 ・イールドカーブはスポットレートの集合である。イー ルドカーブは、ユニバースを設定し、モデルを用いて 推定される。ユニバースの設定方法、推定方法は、必 要に応じて見直しを検討する。最近では、年限の短い 国債の利回りがマイナスになったり、ユニバースの取 り方によっては AA 格の社債が激減したりしており、 そのような場合にはまさに、見直しを検討する必要が ある。 ○第 4 節 計算基礎の変更に関する重要性 ・期末の割引率により計算した退職給付債務が 10% 以 社会保障審議会企業年金部会では平成 26 年 6 月以降 12 上変動すると推定されるときには、重要な影響を及ぼ 回にわたって企業年金制度等のあり方について幅広い議論 すものとして期末の割引率を用いて退職給付債務を再 が行われてきた。議論が一巡し、平成 27 年 1 月 16 日には 計算しなければならない。 それまでの議論の整理が行われている。本講演では、企業 ・割引率以外の計算基礎についても、重要性の判断に基 年金制度の現状と課題について企業年金部会の議論の整理 づいて、必ずしも毎年度の見直しは求められない。た に沿って、厚生労働省年金局企業年金国民年金基金課基金 だし、数値的な基準は示されていない。 数理室の山本進室長にお話しいただいた。時機を得た本講 ○第 5 節 退職給付債務 演に対しては、多数の参加者があり、大変有意義な講演で ・給付算定式には、 「期間帰属の元とする要素」と「支 あった。 払の条件をあらわす部分」と「将来を予測する部分」 の 3 つの要素に分かれる。これらをどう分解するかが 1.中小企業向けの取組 実務上のポイントであろう。 ・中小企業における企業年金の実施割合は、大企業より ○第 6 節 近似、省略など 低く、近年はそれが低下傾向にある。また、主に中小 ○第 7 節 その他 企業が加入する厚生年金基金制度は、平成 26 年 4 月 ○付録 に施行されたいわゆる健全化法により、解散または代 行返上が進んでいる。こうしたことから企業年金の中 「数理実務基準」 「数理実務ガイダンス」の背景にある考 え方を実務上の経験を交えながら、丁寧に解説頂き、大変 有意義な講義であった。 小企業への普及策は急務となっている。 ・中小企業において企業年金を導入しようとする場合の 問題点はコストや事務の負担。ある調査によれば、か つて適年からDBに移行した企業では、トータルコス トの上昇が問題との指摘が多かった。またDCを導入 する場合でも、投資経験の少なさが問題との指摘が多 かった。 ・企業年金部会の議論では、中小企業へ企業年金を普及 させるため、DB関係では受託保証型DBの手続の緩 和等を進めること、DC関係では「簡易型DC制度」 38・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される や「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」を創 は、現場のニーズを踏まえつつ、各々の制度が税制上 設することが適当とされた。 の優遇措置を受けている固有の考え方を考慮した上で 拡充すべきとされた。 2.柔軟で弾力的な給付設計 ・伝統的なDBは、積立不足が生じた場合に事業主が追 4.DB拠出の弾力化 加負担をする仕組みであり、いわば事業主がリスクを ・現行のDBにおいては、将来のリスクに備えて事前積 負う仕組み。一方で伝統的なDCは、運用成果によっ 立を行うことはできないほか、積立不足が生じた場合 て給付が決まるので、加入者がリスクを負う仕組み。 でもその不足分を一括して掛金拠出することはでき ・事業主と加入者がリスクを分け合うという視点に立っ ず、複数年にわたって拠出することとされている。こ て、いわゆるハイブリッドの給付設計が日本や諸外国 のため、企業は、業績が悪い時期に積立不足の解消を で考案されてきている。日本では、現行キャッシュバ 求められがちである一方で、業績が改善しても積立不 ランスプランが採用できるようになっており、実際に 足の解消には一定期間を要する。 多くの大企業がこれを採用している。また、オランダ ・企業年金部会の議論では、DBの拠出弾力化(景気変 ではコレクティブDCと呼ばれ、積立水準に応じて年 動等のリスクに備えるための事前積立に係る掛金拠出 金額のスライド等を調整できる仕組みが導入されてい や、積立不足を解消するための柔軟な掛金拠出など) る。 についても、恣意的な拠出にならないことに留意しつ ・企業年金部会の議論では、こうした柔軟で弾力的な給 つ、遅くとも今回の制度の見直しの実施時期と合わせ 付設計については、選択肢を拡大し、普及・拡大に資 て実施できるよう、税務当局と調整を進めるべきとさ すると考えられることから、諸外国の例を参考に、制 れた。 度導入も視野に入れて引き続き検討すべきとされた。 またその際には、加入者の関与のあり方について、リ 5.今後の検討課題(拠出時・給付時の仕組みのあり方) スク負担に見合う形で意思決定への関与ができるよう ・近年は大企業においてもDCの導入が進みつつある 検討が必要とされた。 が、企業にとって、現行のDC制度は掛金の拠出限度 額や支給開始年齢到達前の中途引出しに制約があり、 3.ライフコースの多様化への対応 ・近年、離転職経験者は増加傾向にある。また雇用者 使いにくいとの指摘がある。 ・企業年金部会では、企業年金(DB・DC)の拠出 に占める非正規雇用の割合も高まる傾向にあるが、 時・給付時の仕組みのあり方について、 「年金」とし 2010 年の調査によれば企業年金の適用割合は、正社 ての原則を踏まえつつ、「退職金」としての役割を担 員の場合には約 3 割であるのに対し、正社員以外の場 うという現状も念頭に議論を行った。 合には 6%となっている。 ・企業年金部会事務局からの提案は、全体として、外部 ・企業年金部会の議論では、労働の多様化が進む中、生 積立の退職金としての性格が強いDBを「年金」に近 涯にわたって継続的に老後に向けた自助努力を可能と づける一方で、貯蓄性を排除する等制約の多いDCに するため、現在、個人型DCに加入することができな ついては「退職金」としての役割を担う現状も踏ま い第 3 号被保険者、企業年金加入者、公務員共済等加 え、例えば、中途引き出しについては一定の条件の下 入者について、個人型DCへの加入を検討すべきとさ で認めるといった、より使いやすい制度にするという れた。 ものであった。 ・また、制度(DB、DC、中小企業退職金共済制度 ・これに対し企業年金部会委員からは、将来の方向性と 等)間のポータビリティについては、例えばDCから しては理解できるものの、企業年金(特にDB)が現 DBへの移行は現行ではできないが、企業年金部会で に退職金として活用され、従業員の退職後の生活にと 年金数理人・39 って欠かせないものになっているという現状を踏まえ ○ IFRS の審議の状況 れば、早急な制度改革はむしろ制度の普及・拡大を阻 ・保険契約、リース、概念的フレームワークなどの現在 害し従業員の老後生活に支障を来しかねないという意 の審議状況の説明が行われた。 見が多く出された。 ・こうした議論を踏まえ、企業年金の拠出時・給付時の 仕組みのあり方については、今後引き続き議論を重ね ていく必要があるとされた。 ○ IFRS 第 9 号「金融商品」の概要 ・IFRS 第 9 号となる「金融商品」が 2014 年 7 月に公表 され、2018 年 1 月が適用日とされた。 ・事業モデルと契約上のキャッシュ・フローを基礎とし 6.おわりに ・企業年金部会においては、本年 1 月の時点で以上のよ うな議論の整理を行った。 ・厚生労働省では、議論の整理の中で概ね方向性の一 致したものについて、法律改正の検討を進めている (注) 。 ・他方で、議論の整理においても指摘されているとお り、老後所得保障の柱は公的年金であるが、公的年金 の中長期的な給付調整が不可避であることを踏まえれ ば、企業年金制度等のあり方については、今後も引き た負債性金融商品の 3 つの分類が設けられている。 ・株式は、純損益を通じて公正価値で認識されるか (FVPL)あるいはリサイクルなしでその他の包括利 益を通じて公正価値で認識される(FVOCI) 。 ・償却原価(AC)または FVOCI に分類された資産に ついての 12 か月の予想信用損失(ECL)を認識する。 但し、信用リスクの重要な増加があった場合には全期 間の信用損失(ECL)を認識する。 ・基準は一括して適用される(すなわち、「フェーズ」 毎の適用、部分的な適用はない)。 続き議論を行っていく必要があると考えられる。 ○負債性金融商品の分類及び測定 (注)この講演の終了後、平成 27 年 4 月 3 日に「確定拠 ・保険契約の議論において、割引率の変動をその他の包 出年金法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され 括利益において認識することを可能とした。これに対 ている。 応するため、金融商品の基準においても負債性金融商 品について FVOCI(その他の包括利益を通じた公正 ■ IFRS の全体的な動向(53) 講師:川端稔氏(あらた監査法人) 価値測定)を認めることとした。 ・負債性金融商品は、この結果、償却原価、その他の包 括利益を通じて公正価値で測定(FVOCI)および純 損益を通じて公正価値で測定(FVPL)の 3 つに分類 される。 ・この分類は、金融資産を管理する企業の事業モデルの 評価、ならびに、契約上のキャッシュ・フローが元本 および元本残高に対する利息の支払いのみ(SPPI) を表しているかどうかによって決定される。 ○ IFRS 第 9 号「金融商品」の予想信用損失 ・IFRS 第 9 号「金融商品」は、減損損失の認識におい IFRS の退職給付会計を除く全体的な動向について、講 て、予想信用損失(ECL)モデルという新しいモデ 義が行われた。 ルを導入した。 ・予想信用損失モデルは、IAS 第 39 号「金融商品:認 40・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される 識及び測定」の規定を変更したものである。これは、 従来の資産クラスに限らない投資対象拡大への考察、新 金融危機の間に生じた発生損失モデルに対する批判に たな投資手法への考察、そして今後の年金運用の姿につい 対処したものである。 て講義が行われた。 ・予想信用損失モデルは、当初認識以後の金融資産の信 用リスクの著しい変化に基づいた「3 ステージ」アプ ○年金資産運用結果の振り返り ローチである。これは信用度の変化に基づいて、3 つ ・信託 / 生保の商品としての性格の強い運用から、独立 のステージを移動されるアプローチである。 ・認識すべき減損損失の金額および実効金利法を適用する した基金等としての運用へ ・資産運用難の時代でもまれた年金資産運用 基礎は、金融資産が分類されるステージにより異なる。 ○投資のフレームワーク ○ IFRS 第 9 号「金融商品」の経過措置 ・IFRS 第 9 号「金融商品」は早期適用が許容されてい る。 ・当基準は遡及適用しなければならないが、比較情報の 修正再表示は要求されていない。 ・遡及適用を容易にするためのいくつかの実務上の簡便 処理がある。 ・97 年、厚生年金制度上、政策アセットミックス策定 のガイドライン出状。「相場感に振らされない」投資 のための枠組み。 ・近年では、特に欧米において、リスク管理により重点 をおいた、年金債務のマッチングに忠実な運用(= LDI)が拡がる。 ・日本においては、長く低金利が続いている中、LDI を 行う=今の割高の状況で債務を固めてしまう、のはもっ ○保険契約 たいない / もっとタイミングを待とう、との機運有り。 ・ 審 議 が 再 開 さ れ、2016 年 に 最 終 基 準 書 を 公 表 し、 2019 年から強制適用することを目標としている。 ○投資対象への考察 ・検討されている測定モデルのビルディング・ブロッ <運用収益の源泉> ク・モデルと包括利益計算書との関係が、図表を使用 ・かつては個別銘柄の考察(CAPM)中心 して説明された。 その後、金利、株式といった資産への着目や、流動性、 ・測定モデルについての欧州 CFO フォーラムの有配当 契約に関する代替案の概要が紹介された。 小型バイアスといった初期のファクター分析による試 みの出現(APT) ・運用手法から生み出されるリターン ■新たな運用手法(61) スキルによる(アクティブ)アルファが一般的 講師:山下実若氏(ブラックロック・ジャパン) ・非流動性資産(実物不動産、インフラ / プロジェクト 投資、プライベートエクイティ)をどう考えるか ・個別銘柄で考案されたリスク・ファクターの考え方は、 そのままマルチアセットに応用できる。 <投資対象の拡大> ・課題は、レジームの出現によって、中長期 Buy&Hold の投資手法では、ドローダウンが大きく耐えられない 可能性あり ○新たな投資対象 ・新興国リスク 年金数理人・41 ・プリペイメントリスク ・トランチェ / ストラクチャリングのリスクをとる証券 ・年金債務に対する資産の運用効率(サープラス特性= サープラスリターン / サープラスリスク)の向上追求 化商品 ・流動性 / 非上場のリスクをとるベンチャー / プライベ ートエクイティ / インフラ等への投資 ・上場不動産投信REIT ・上場投信ETF ○今後の年金運用の姿 ・リスク運用の設計=全体からのアプローチ ・負債をヘッジする=負債と同じ特徴を持つ資産を組成 する、更に ・負債ヘッジ後、可能なリスク許容度に応じて、 ○新しいベータ ・非時価総額ウエイト指数 ・ベータのリスク、アルファのリスクをとって収益獲得 を目指す ・最小分散指数 ・リスク ・ パリティ 新たな運用手法について、導入における背景から具体的 ・アルファのベータ化 事例まで幅広く講義していただいた。昨今の運用環境は依 然として厳しいものとなっているが、そういった環境下に ○市場効率性とスマートベータ おいてどのような投資を行うかについて解説いただき、た ・スマートベータの興隆の背景には、手数料が安く、か いへん興味深く貴重な講義であった。 つ、( 高く安定した)リターンが期待できる戦略との 期待がある。 ・課題は、レジームの出現によって、中長期 Buy&Hold ■公的年金財政(62) 講師:佐藤裕亮氏(厚生労働省) の投資手法では、ドローダウンが大きく耐えられない 可能性あり ○分散投資 / リスク管理 ・政策アセットミックス / 分散投資 ←→ 相場感、相 場感のぶれに振らされない投資のための枠組み ・Mean Variance 法 / 効率的フロンティア ・多期間モデル /ALM の進展 〇運用手法の進展 ・マルチアセット 公的年金財政の仕組みや考え方に加え、平成 26 年度の ・デリバティブ / レバレッジ / オーバーレイ / ヘッジ 財政検証の結果および今後の年金制度改革の課題につい て、講演いただいた。 ○LDI ・より厳格にリスク管理するならば、明示的にリスクと して捉えられる金利感応度はゼロにすることも一つの 考え方 ・LD I では、年金債務の時価変動を考慮に入れ、年金 債務をベンチマークとして、年金債務ヘッジポートフ ォリオを作成し、運用の土台とする。 42・年金数理人 ○公的年金制度の仕組みと考え方 ・現役世代は全て国民年金の被保険者となり、高齢期と なれば、基礎年金の給付を受ける。また、民間サラリ ーマンや公務員はこれに加え、厚生年金や共済年金に 加入し、報酬比例年金の給付を受ける。 ・1 人当たりの賃金水準が同じであれば、年金月額、所 平成 26 年度実務研修会が開催される 得代替率は同じとなる。 ・賃金水準が高いほど年金月額は高くなるが、所得代替 率は低くなる。 ・公的年金の規模は非常に大きい(保険料は年間 34.3 ○年金制度における世代間の給付と負担の関係について ・給付負担倍率とは払った保険料に対し、平均余命まで 生きた場合に何倍の年金給付を受給できるかである が、年齢別では下記の通り。 兆円、年金給付額は年間 53.9 兆円、年金積立金額は 70 歳:厚生年金 5.1 倍、国民年金 4.5 倍 160.4 兆円) 50 歳:厚生年金 2.8 倍、国民年金 1.9 倍 ・年金は高齢者世帯の収入の 7 割を占め、6 割の高齢者 30 歳以下:厚生年金 2.3 倍、国民年金 1.5 倍 世帯が年金収入だけで生活をしており、公的年金が果 ・給付負担倍率に関しては一般的に以下の批判がある たす役割は大きい 世代間の格差が大きすぎる。 ・公的年金はその成熟とともに「私的扶養」に変わる機 →公的年金だけで考えるのが適当か(私的扶養と 能を有するものとなってきた背景に照らして、相応し の関係などを考慮すべきでないか) 。世代間の差 い財政方式、少子高齢化の問題、世代間格差の問題を を解消する方法があるか。 考えなければならない。 ・公的年金の意義は人生のリスクに備えることであり、 リスクヘッジが目的の保険制度である。 若い世代は払い損(事業主負担を含め利回りを割 引率に使うと 1 倍を下回る) →利回りで割り引く意味は。1 倍を下回ると損か (リスクヘッジにメリットはないのか) 。 ○財政方式 ・年金制度における賦課方式と積立方式の違いは以下の 通り。 賦課方式:現役世代が納めた保険料がその時々の 高齢者の年金給付に充てられる。 積立方式:世代間の仕合いはない。自分が将来受 け取る年金のための保険料を負担する。 ○平成 16 年改革による年金財政フレームワーク ・上限を固定した上での保険料の引き上げ ・基礎年金国庫負担の 2 分の 1 への引き上げ ・積立金の活用(概ね 100 年間での財政均衡) ・財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組み(マク ロ経済スライド)の導入 ・積立方式は「人口構成の変化の影響を受けない」、「世 代間格差が解消される」と言われるが、以下の問題が ○平成 26 年財政検証結果と今後の年金制度改革の課題 ある。 ・出生率:見込みより高い水準で推移している。 2 重の負担はどのように処理するのか。 ・平均寿命:おおむね見込みどおりに推移している。 今後の世代が負担するのであれば、世代間格差は ・物価上昇率、名目賃金上昇率:低い伸びにとどまって 解消しない。 そもそも、積立方式も人口構成の変化の影響を受 ける。 世代間格差等、人口構造の変化の影響を自動的に 解消するものではない。 ・2 重の負担の処理方法は次のいずれか、またはこの組 み合わせしかない。 今の高齢者が負担(年金の大幅な引下げ又は税、 保険料等を追加負担) 今後の世代が負担(今後の現役世代が保険料又は 税で負担) いる。 ・運用利回り:見込みを上回っている。 ・被保険者数:おおむね見込みどおりに推移している。 ・25 年度の財政収支は運用状況がよかったため、見込 みに対してプラス 9.1 兆円となっている。 ・労働力人口は今後下がっていく見込みである。特に労 働市場への参加が進まなければ急速に減少する。 ・平成 26 年度財政検証の結果では高成長ケースは全て 所得代替率が 50% を超えている。低成長ケースにお いて、給付水準調整を続けた場合、所得代替率は 42% になるケースもある。 年金数理人・43 ・公的年金の課題としては持続可能性の確保と給付の十 ことが主な要因である。 分性の確保の両立がある。当該対応として、年金制度 ・2015 年のアジア地域の経済成長は、緩やかに減速す 外の対応としては経済成長の確保、少子化対策があ ると予想する。理由として、世界景気の回復力は弱く り、年金制度内の対応としては次の 3 つがあり、厚生 外需の拡大が期待できないこと、中国は経済成長より 労働省で試算も実施している。 も構造改革の深化を優先していること、原油価格等の 現在の高齢者と将来世代のバランスを図り、将来 世代の年金水準を確保する。 2 階部分の適用拡大による年金水準の確保 保険料納付期間の延長、選択的な繰下げによる年 金水準の確保 商品価格の下落により商品純輸出国の経済収支が悪化 することなどが挙げられる。 ・2008 年の米国の急激な金融緩和以降、アジアの与信 は急拡大した。その米国は 2015 年の下半期から金融 引き締めに転じていくと予想しているが、一方で、景 気回復が遅れている欧州や日本が金融緩和を行うた 公的年金に関し、世間で言われている問題から、平成 め、世界のマネーが増加すると考えている。そのた 26 年度財政検証結果まで幅広く講演いただいた。また、 め、米国の金融引き締めが、アジア通貨危機を引き起 今後の年金制度改革の話は年金数理人にとっても興味深い こすリスクは小さいと考えている。 内容であり、非常に好評であった。 ○アジア主要国の経済動向 ■アジア・新興国経済の動向(63) 講師:藤川進氏(明治安田アジア) ・中国経済は引き続き減速傾向と予想する。その理由と して、債務リスクのコントロールにより経済の安定成 長維持を優先していることが挙げられる。また、贈収 賄や高額の接待を禁止する汚職撲滅運動(反腐敗運 動)によって消費が抑制されることも減速傾向の要因 である。景気の減速、商品価格の下落を背景にインフ レ率は低下傾向にあり、2015 年は追加利下げや準備 率の引き下げが実施されると予想する。 ・インド経済は中国経済と対照的に加速的に成長してい くと予想する。その理由として、モディ新政権が、積 極的な外資企業の誘致、電力・輸送網の整備、都市化 の推進などにより経済成長を目指していることが挙げ この講座では、アジア・新興国の経済動向などについ られる。また、インドを世界の製造・輸出の拠点に て、最新の経済指標などを用いて講義が行われた。 し、経済に占める製造業のウエイトを高める施策もイ ンド経済にプラスと考えている。今後は、経常赤字と ○ 2015 年のアジア地域の経済見通し 財政赤字の縮小、外貨準備の拡大、インドルピーの安 ・2014 年のアジア地域の経済成長は、先進国の景気回 定等、経済のファンダメンタルズの改善を期待してい 復による外需の拡大を背景に緩やかに成長すると予想 る。 していたが、実際には減速した。アメリカ経済は着実 ・マレーシア経済は減速傾向と予想する。その理由とし に回復したものの、ヨーロッパの経済回復は鈍く、ま て商品価格が下落していることや、原油安により財政 た、日本経済は回復基調にあるものの、例えば GDP 赤字の圧縮に時間がかかる可能性が高まっていること の伸びは市場予想を下回る水準であったことなどから が挙げられる。また、2015 年 4 月に消費税が導入さ 外需の拡大が弱かったことが、アジア経済が減速した れることも経済のファンダメンタルズの悪化要因とな 44・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される り得る。 ■米国の年金制度(71) 講師:小野正昭氏(みずほ年金研究所) ○急成長が続くアジアのカジノ産業 ・カジノというと丁半博打をイメージする方もいると思 うが、現在のマカオやシンガポールのカジノは明るく 健全で、大人の社交場として発展している。また、カ ジノの周りにはホテル、レストラン、アミューズメン トパーク等が併設され、統合型リゾート(Integrated Resort 、IR)施設となっている。 ・マカオのカジノ産業の売上高は 2006 年にラスベガス を抜き、2013 年では 7 倍超まで成長している。また、 カジノビジネスは巨大な設備投資を伴うためカジノ運 営会社の多くは上場しており、例えばマカオの Sands 米国の年金制度について、確定給付型の年金制度を中心 China の時価総額は、日本の日産自動車に迫る規模と に、最新の情報を交えてご講義いただいた。 なっている。 ・マカオでは 2001 年にカジノ経営権を外資に開放して ○昨年度の説明事項のフォロー からひとり当たり GPD は上昇、失業率は減少とマカ 昨年度の講義でご説明いただいた次の内容について、昨 オの経済発展に大きく貢献している。しかしながら、 年度からの動き等について補足説明があった。 反腐敗運動により 2014 年に入りカジノ売り上げは減 ・PBGC 対 旭テック 少傾向となった。 2014 年 11 月 4 日 付 で 旭 テ ッ ク が 39.5 百 万 ド ル を ・シンガポールでは 2005 年に IR 開発計画が閣議決定さ れてから観光収入が大きく増加した。 ・フィリピン、韓国、ウラジオストクでも IR プロジェ クトが取り組まれている。 ・IR 導入により建設需要の増加、雇用の創出などの経 済効果が期待できる。また、日本における IR 開設の 経済波及効果は数兆円とも言われている。日本には豊 PBGC に支払う和解に合意 ・同姓婚と企業年金制度 2014 年 10 月 6 日連邦最高裁判所の再審理却下 2014 年 11 月 6 日第 6 巡回裁判所が同性婚禁止を支持 する判決 2015 年 1 月 16 日連邦最高裁判所が同性婚を禁止する 州法の合憲性をめぐる裁判を審理すると発表 富な観光資源や高いホスピタリティ精神があり、日本 ・デトロイト市の破綻をめぐる展開 の IR は世界有数のカジノリゾートに発展する潜在性 2014 年 11 月 7 日金融機関等の債権放棄により 70 億ド があると考える。 ルの債務削減 2014年12月10日存続を前提とした債務整理の手続を完了 アジア・新興国全体の動向だけではなく、主要国の動向 について詳細に解説いただいた。解説が丁寧で分かりやす ○エリサ法 40 周年 く、大変有意義な講義であった。 エリサ法の成立から40年が経過した。この40年の間のエ リサ法および関係法令に関する経緯等について説明があり、 また、エリサ法の意義と課題についても説明があった。 ○米国企業年金の動向 米国の企業年金制度の動向について、次の観点からグラ 年金数理人・45 フや図を用いて説明があった。 ■社会保障制度(年金制度を除く)について(72) ・米国の引退貯蓄市場の規模 講師:鎌田真隆氏(厚生労働省) ・企業年金制度の推移 ・給付建て企業年金の類型 ・給付建て企業年金の動向 なお、単独事業主給付建て制度および多数事業主給付建 て制度ともに成熟化が進んでいることがわかった。 ○キャッシュバランス制度の展開 米国におけるキャッシュバランス制度の経緯について、 次の観点につき説明があった。 ・制度数の推移、給付建て制度に占めるキャッシュバラ ンス制度の割合、キャッシュバランス制度の設立年別 この講座では、医療保障制度及び介護保険制度など社会 の制度数 保障制度全般について講義いただいた。 ・1974 年の「エリサ法成立」から、2014 年の「CB 制 度に関する最終および提案規則」までの法律・規則の ○高齢化率と社会保障給付の国際比較 動きおよび個別制度・訴訟等 ・高齢化率と社会保障の給付規模の国際比較を行うと改 めて、日本はこの 30 年ぐらいで、高齢化が進み、か また、2006 年年金保護法以降の立法・行政については、 つ社会保障の費用も経済に対して伸びが大きかった。 2006 年、2010 年、2014 年の動きについて説明があった。 ・日本と同じ傾向を示しているのは韓国。 ○ 2006 年年金保護法(PPA2006)以降の積立基準の展開 ○社会保障給付費の推移 2006 年年金保護法について復習を行ったうえで、次の ・1970 年には 3.5 兆円程度の社会保障給付費であったが、 観点につき説明があった。 ・2008 年、2010 年の改定について ・2012 年 7 月 6 日に成立した MAP-21 の「利率安定化」 関係条項および PBGC 関係条項の概要について ・2014年8月8日に成立したHighway and Transportation Funding Act について ・2014 年 12 月 16 日に成立した多数事業主年金改革法に 現在 115 兆円の水準 ・1970 年当時の給付費 3.5 兆円の内訳は年金が 0.9 兆円 で 24.3%、医療が 2.1 兆円で 58.9%。福祉その他が 0.6 兆円で 16.8% であった。 ・2014 年時点では年金が 48.6%、医療が 32.1%、福祉そ の他が 19.3%となっている。その他の伸びは介護保険 の定着に起因している。 ついて ○社会保障制度改革 米国の年金制度にまつわるトピックスについて、昨年度 の講義の内容から進展があったものや、年金制度にまつわ る法令等の改正について最新の情報が織り込まれており大 変有意義な講義であった。 ・昭和 50 年代から急速に給付費が増加しており、昭和 の時代から社会保障改革は必須と考えられていた。 ・平成 20 年に社会保障国民会議が設置、持続可能性か ら社会保障の機能強化へと議論の中心が移った。 翌年には、安心社会実現会議が始まり、雇用の確保と いう点が重点的に議論された。 ・平成 24 年には社会保障・税一体改革大綱が閣議決定 46・年金数理人 平成 26 年度実務研修会が開催される された。 ・平成 25 年 8 月に報告された社会保障制度改革国民会 議の報告書をベースにした「法制上の措置」の骨子が ・今後は認知症の人の意志が尊重され、できる限り住み 慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けること ができる社会の実現を目指す。 閣議決定されている。 ・平成 27 年 1 月に厚生労働省は社会保障審議会医療保 社会保障制度全般の内容を中心に医療・介護保障制度等 険部会に、 「医療保険制度改革骨子案」を提示した。 多岐に渡る内容について説明いただいた。 高齢化のピークを迎える 2025 年に向け、高騰する高 参加者の関心も高く大変有意義な講義であった。 齢者医療費の適正化と国民皆保険を堅持するために必 要な医療保険制度の安定化を図る。 ■年金制度改革及び年金リスク管理(73) 講師:田島一郎氏(アステラス企業年金基金) ○医療・介護と年金の違い ・年金は現金給付であるのに対して医療・介護は現物給 付。 ・医療と介護は、現物給付のため、医療従事者等のサー ビス提供者がいないと実施できない ・年金は地域性によって給付の差異はないが、医療・介 護は地域によって様々な状況にある。保険料の他に、 サービス提供者の数、レベルなどにおいて地域差がある ○医療費の動向 ・過去 30 年で 20 兆円が 40 兆円になった。 この講座では、アステラス企業年金基金がどのような年 ・国民医療費の伸びの要因は、高齢化の影響と医療の高 金制度改革を行ってきたか、またリーマンショックなどの 度化、制度改正による患者負担の見直し等。 ・今後は、医療の高度化、制度改正による患者負担の見 直しに伴う医療費増加が見込まれる。 運用環境の激変を経て、どのようなリスク管理を行うよう になったかなど、アステラス企業年金基金の運営・実務に 関する講義が行われた。 ・将来推計では足元 40 兆円が将来的には 55 兆円になる 見込み。 ・社会保障制度改革国民会議報告書等を踏まえ、平成 26 年 4 月に新たに 70 歳になる者から、段階的に法定 負担割合を 2 割とする。 ○会社の概要 ・アステラス製薬(山之内製薬と藤沢製薬の合併により 誕生) ・株式時価総額:現在約 4.5 兆円 ・事業内容:ドラッグストアでの販売を行わない処方箋 ○介護保険について 専用の医薬品製造・販売及び輸出入 ・介護保険は、税金が半分、保険料が半分で運営されて いる。保険料対象者は 40 歳以上。 ・現行制度は費用の 9 割分を保険でカバーし、受給者は 1 割負担で済んでいるが、所得のある人について 2 割 負担となる。 ・介護費用の将来予測では、介護費用は 2025 年に 18 兆 円もしくは 21 兆円程度になる見込み。 年金制度改革 ○退職金年金制度改正の概要 ・2005 年 4 月山之内製薬と藤沢製薬が合併(アステラ ス製薬の誕生) ・2005 年 10 月退職金制度統合・改定 ・2006 年 10 月年金制度統合・改定 年金数理人・47 ・退職金年金制度の構築方針:役割(成果責任)と期間 成果を反映する、安定した年金制度にする ・課題:ポイント付与体系・移行割合・年金種類・給付 利率・PBO削減・ライフスタイル多様化への対応等 ずれまた起こるはず、その時に備えて出来ることは何 でもやってみる ○今後の課題 ・再雇用(定年延長)と年金制度の関係 ○統合後の退職年金制度の概要 ・退職一時金の移行比率の見直し ・DB制度:63.5% ・社員教育の継続 予定利率 2.5%、新ポイント体系を構築、類似CB制 ・年金運用の更なる安定化 度、終身年金と有期年金を半々に、給付水準を低い方 に合わせたため減額同意に苦労 基金運営・実務に関して丁寧で分かりやすいお話をして ・DC制度:20% いただいた。実際に実務を担当されている常務理事からの 想定利率:0.5%、前払い制度との選択性だが、9 割D 講義は、年金数理人にとってあまり触れることのないトピ Cを選択、大手薬品業界は全てDCを導入している、 ックも多く、基金の裏話等も聞けて非常に興味深いもので 投資教育などは e ラーニングを使用 あった。 ・一時金:16.5% ■日本経済の動向(83) 年金リスク管理 講師:嶌峰 義清氏(株式会社第一生命経済研究所) ○新たな問題点 ・運用資産のリスク増加 ・過去に類を見ない低金利 ・下落リスクを抑制しつつ安定した収益確保ができる運 用が必要 ○運用哲学 ・予定利率以上の安定運用 ・下落リスク抑制による長期複利効果の追求(同じ期待 収益率であればリスクが低い方がパフォーマンスが高 い。) ・大勝ちしなくても、大負けしない運用が大事 日本経済の動向をテーマに、足元の経済状況や市場環境 ○政策アセットミックス の見通しについてご講義いただいた。 ・マルチアセット戦略(動的管理)を増加 ・過去に例を見ない低金利の国債は安全でない→グロー バル債券の方が安全と考える ○足元の経済状況 ・消費税増税の影響が予想以上に長引き 4 月~ 6 月期に ・リスクヘッジ:為替・株式 続いて 7 ~ 9 月期もマイナス成長になったため、政府 ・リスク分散:伝統資産だけでなくオルタナの導入 は 10 月に予定していた追加増税をあきらめざるを得 ・リスク低減:最小分散投資、余剰金別枠管理(不景気 なくなった。 時はキャッシュイズキング) ・10 ~ 12 月期にプラス成長に戻ったが、消費の低迷が ○年金運用に対する思い なぜ長引いたかを明らかにすることがアベノミクスに ・絶対収益志向:年金運用者は絶対収益の評価であるべ よるデフレ脱却のために重要。 き、安定したプラスを出せるように努める ・危機はまた来る:リーマンショックのような危機はい 48・年金数理人 ・消費が大きく落ち込んだ原因は実質賃金の低下。ベー スアップで給料は名目で増加したがそれ以上に増税の 平成 26 年度実務研修会が開催される 影響でインフレ率が高く 2014 年の実質賃金は 2 ~ 3 いる。 %程度のマイナス。 ・2013 年も実質賃金はマイナス 2%ほどであったにもか かわらず景気全体を引っ張り上げるほど消費が伸び、 ○市場環境の見通し ・日銀の量的緩和はいつまで続くのか。今年はインフレ 一方で 2014 年は景気全体を大きく押し下げるほど消 率が原油安の影響でかなり下がっているため、追加の 費が落ち込んだ。 量的緩和があっても解除は無い。来年は原油安の効果 ・この差は消費者の景況感(消費者態度指数)で説明が つき、実際 2013 年は株価の上昇が消費者の景況感を 改善させ、逆に 2014 年は増税により景況感が下振れ したといえる。 ・アベノミクスの特徴はまずインフレをおこすところか ら始まるため、給料がインフレ率においつかず、実質 賃金が低下する。 ・実質賃金低下中でも 2013 年は株価を押し上げて景況 感を改善することができ消費を伸ばせたが、2014 年 は株高政策の手綱を緩めたため消費が落ち込んだ。 が一巡しているのでチャンスだが、2017 年 4 月に消 費増税が予定されており量的緩和の解除は難しい。 ・アメリカは金利が今後あげられていくため、来年の後 半ごろからアメリカ経済は減速局面に入っていくと考 えられる。そうなるとアメリカ株、日本株も下がり始 めて量的緩和の解除は当分できない。 ・為替市場の見通しとしては、今までの日本は景気が悪 くなると猛烈な円高となるが、これからは逆に世界の 景気が良くなり猛烈な円安となる。 ・株式市場の見通しは、今までの日本株は上下に振れや ・デフレが続いていたが、円安を背景に物価は上昇に転 すく短期投資家が多かったが、資産規模が大きくなり じる。値上げしても商品が売れれば、価格転嫁でき 安定するため長期投資家が参入してくると考えられ る。 る。 ・株高政策として法人税減税、TPP、GPIF改革等 があげられる。 ・賃上げ自体も期待でき、昨今の原油安とあいまって、 今年の実質賃金はプラスが期待でき、消費は堅調に推 日本経済の動向について、海外動向や最新情勢を踏まえ て非常に分かりやすく解説いただき、大変有意義な講義で あった。 移すると考えられる。 ・設備投資についても今年度は高い伸びが期待される。 ・気がかりなのは外需。アベノミクスでは輸出が全く貢 献しておらず円安効果が表れていない。これは海外の 景気が良くないからである。 ・まず外需ということでアメリカを見てみると昨年の夏 ぐらいからだいぶよくなってきた。過去のアメリカ経 済の好調時、景気拡大局面と比較して全ての指標が遜 色ない水準。 ・ヨーロッパの景気を大きく左右するドイツの景気は昨 年さえなかったが、今年になって景況感が改善してお り、ユーロ圏全体の平均値でも景気の底打ちが確認さ れている。 ・中国経済は輸出主導型であり外需に依存する。その外 需はアメリカ、ヨーロッパ、日本があり、いずれも順 調に伸びていくと考えられることから明るさを増して 年金数理人・49 IAA カウンシル及び委員会等の ミーティングへの参加報告 2015 年 4 月、スイス・チューリッヒ 国際委員会 委員長 50・年金数理人 藤井 康行 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 2015 年 4 月、スイス・チューリッヒで開催された IAA ます。 (国際アクチュアリー会)のミーティングに、国際委員会 から 4 名(藤井康行、上谷敏章、伊藤寛太、浅井将尚)を 当会は、IAA の正会員であり、IAA の活動には委員等を 派遣しました。 送って参加しています。これには、大きく分けて、①当会 の代表と、② IAA の組織における任命等によるものの 2 種 今回のミーティングで、当会として特に重要と思われる 類があります。②については、当会の代表ではありません ものは、次の 4 点です。 が、当会としては、当会との協力関係を理事会において承 1.ISAP 3 が、カウンシルで承認されました。 認するものとし、ミーティングへの出席に当たっては、① IAA は、アクチュアリーの実務基準の、国際的な普及と と同様に、当会からの派遣の取扱いを可とし、活動報告を コンバージェンスを戦略目標のひとつに掲げ、2011 年か 求めるものとしています。 ら、モデル実務基準の開発を進めています。ISAP 3 は、 2015 年 4 月における状況は、次の通りです。 そ の 第 3 弾 と い う こ と で、JSCPA の 会 員 に 関 係 が 深 い IAS19 Employee Benefits に関するモデル実務基準です。 ① JSCPA の代表 ISAP: International Standard of Actuarial Practice ・ カウンシル 藤井康行:代表者 2.IAN の議論が始まりました。 伊藤寛太:代表者代理 IAN は、教育的資料として、ISAP に対する補助的な 浅井将尚:連絡者 役割りと位置付けられています。年金・給付委員会で、 ・ プレジデント・フォーラム 藤井康行 IAS19 に関する IAN 開発の初期の段階の議論が行われま ・ 年金・給付委員会 藤井康行:委員 した。 ・ 教育委員会 伊藤寛太:委員 IAN: International Actuarial Note ・ 社会保障委員会 下島 敦:委員 3.当会の資格制度の変更が IAA の教育シラバスを満たす ・ CEO 会議 浅井将尚 ことについて、教育委員会で承認されました。 年金数理人の要件が 2014 年 4 月 1 日に変更され、当会が ② IAA の組織における任命等によるもの 実施する能力判定試験の全科目合格によって知識要件が ・ 年金・給付委員会 満たされることになりました。当会は、IAA の正会員とし 藤井康行:副委員長[カウンシル 任命] て、IAA の教育シラバスの要件を満たす必要がありますか ・ 年金・給付会計サブ委員会 ら、年金数理人の知識要件の変更について、当会から詳細 藤井康行:委員[年金・給付委員会 任命] な報告書を IAA に提出していました。IAA の教育委員会 ・ IAS19 タスク・フォース では、特に異論なく承認されました。 藤井康行:委員長[アクチュアリー基準委員会 任命] 4.教育シラバスの改定案が示されました。 ・ IASB タスク・フォース IAA の教育委員会では、かねて IAA の教育シラバスの 藤井康行:委員[執行委員会 任命] 改定の議論を進めていたところ、2014 年 10 月のタスク・ ・ PBSS 委員会 フォース発足によって、具体的な検討が進められ、今般、 清水信広:委員[PBSS 総会 選任] 改定案が公表されました。今回は、教育シラバス・セミ 書記[PBSS 委員会の委員 互選] ナー 2 回、プレジデント・フォーラム、及び、カウンシル で概要の説明があり、意見が交換されました。また、プロ IAA のカウンシルと各委員会等は、年 2 回定期的にミー フェッショナリズム委員会でも CPD との関係が議論され ティングを開催しています。その他にも、電話会議、電子 ました。教育シラバスの改定は、当会にとって、試験制度 メールによる意見交換、電子投票、及び、それぞれの役割 や CPD において、少なからず影響があるものと考えられ に応じたタスク等を通じて、活動を進めています。 年金数理人・51 当会からの派遣者は、可能な限り幅広いミーティングに アクチュアリー基準セミナー 参加することにしていますが、記録を作成するべきミー 社会保障委員会 ティングは、当会に関係が深いと思われるものを選び、あ らかじめ決めておくことにしています。今回は、下記の通 りです。当会から委員を出している委員会等については、 その委員に記録をお願いしています。委員が出張できない 4 月 10 日(金) プロフェッショナリズム委員会 年金・給付委員会 4 月 11 日(土) プレジデント・フォーラム カウンシル 場合や、委員を出していない委員会のミーティングについ ては、代わりの派遣者がオブザーバーとして出席して記録 今回は、上記の通り、複数のセミナーが開催されまし を作成することにしています。 た。教育シラバス・セミナーでは、今般公表された教育シ ラバスの改定案について詳しく説明があり、意見交換しま 4 月 8 日(水) 4 月 9 日(木) アクチュアリー基準委員会 した。アクチュアリー基準セミナーでは、ISAP について、 教育委員会、教育シラバス・セミナー 開発の背景や位置づけなどについて説明があり、加盟アク 年金・給付委員会 チュアリー会における導入の進み具合や課題等について意 教育シラバス・セミナー 見交換しました。 CEO 会議 52・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 以下に、各ミーティングの記録を掲載します。 ミーティングは、チューリッヒの中心街から少し北に外れたホテルで開催されました。 委員会等の名称 アクチュアリー基準委員会(Part 1) 日時 2015 年 4 月 8 日 08:00‐12:00 出席者氏名(委員等の別) 藤井 康行(IAS19 タスクフォース委員長) 主要な論点 1 .アクチュアリー基準セミナー セミナーで使う予定の資料をもとに、委員長から報告があった。 2 . ISAP 3 の進捗、ISAP3 の Webcast ISAP 3 が、今回のチューリッヒのカウンシルで採決の予定であるが、特に異論は聞こえていないので承認される見 年金数理人・53 通しであること、カウンシルでの承認の後、ISAP 3 の webcast を開催予定であることが、報告された。Webcast に 関して、他の ISAP についても今後は同様の取り扱いとする方向であること、ISAP 3 は、具体的な分野としては、 幅広いアクチュアリーに関係する最初の ISAP であることから webcast の開催が適切であること、などが確認され た。また、final draft に関する英国からのコメントは、webcast で取り上げるべき重要ポイントであることが確認さ れた。 3 . ISAP 4:IFRS X 保険契約の進捗 IASB における議論の進捗の報告の後、現在検討中の ISAP 4 の原稿をもとに、幾つかのポイントで意見が交換され た。中心的な論点は、ISAP と IAN の区別をどのようにつけるか、ISAP として詳しすぎないか、IFRS との関係の 3 点であった。 4 . ISAP 5、6:ERM の進捗 現在、原稿を検討中であり、まだ当委員会で細かな議論をする段階ではないとして、概略の報告があった。 5 . ISAP 7:IAIS 資本基準に関連するカレント・エスティメット、及び、その他の事項 の進捗 今回のカウンシルで趣意書の承認が議題になっているが、すでに内容の検討を進めているとして、内容の検討にあ たっては、この ISAP は、他の ISAP と大きく異なる点があるとの説明があった。具体的には、IAA から具体的な基 準が出すことを、IAIS が期待している点が、例えば IASB とは大きく異なるとのことであった。よって、公開草案 を出す前に、IAIS と協議をする予定であること、ISAP の開発は、あまり急がず、慎重に進める予定であることが 示された。この ISAP は、各国のアクチュアリー会が仮に採用しなくても、各保険会社や各国政府が順守を求める 可能性が相当程度あるとの認識が示された。 6. ISAP 1 の改定 モデル・ガバナンス の進捗 趣意書の案をもとに意見が交換された。まずは、趣意書の案は、趣意書というより、ISAP の案のようであるが、 もう少し、趣意書らしくするべきとの指摘があった。 主な論点は、モデル・ガバナンスの定義、及び、これを ISAP 1 の改定とするか新しい ISAP とするか、であった。 特に、後者について意見が多く出された。ISAP 1 の改定にすることが、内容から見て本来の形ではあるが、各アク チュアリー会が、ISAP 1 の採用手続きを進めている中で、ISAP 1 の改定は困るという意見が多くあった。一方で、 やはり、ISAP 1 の改定がふさわしいとの意見や、別の解決策を探るべき、との意見もあった。議論は、さらに拡大 して、各 ISAP の改定頻度や手続きは、どうあるべきか、といった論点にも及んだ。別の案としては、この内容は、 ISAP 2、3 には関係しないので、内容をモジュールの形で作って、関係ある ISAP に埋め込んで行けば良いという ものもあった。これらの意見を踏まえて、趣意書の案を公開して、コメントを募ることになると思われる。 主要な結論・方向性 1 . 明確な結論を出すべき議案はなかったが、各案件の方向性は、相当程度得られた。 JSCPA との関係 1 . ISAP 1 の改定議論などに注意が必要。 今後の予定 1 . 各案件が、それぞれのタスク・フォースで進められる。 54・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 委員会等の名称 教育委員会・教育シラバス・セミナー(Part 1 & 2) 日時 2015 年 4 月 8 日 14:00‐18:00, 4 月 9 日 8:00‐12:00 出席者氏名(委員等の別) 伊藤 寛太(委員) 主要な論点 1 .ロンドンミーティングの議事録の承認 2 .教育質問票 (Education Questionnaires) の回答のレビュー 日本年金数理人会: レビュー担当 村田委員 (IAJ) ・レビュー担当者より、JSCPA の資格認定が改正されたこと、改正後は、IAJ の資格試験を用いるか、JSCPA の 試験に合格することとされたこと、及び、JSCPA の試験は IAJ の年金分野に関する資格試験と同等であり、教育 シラバスに沿っていると見解が示された。 ・直ちに採決が行われ、満場一致で問題ないことが承認された。 3 .新会員(5 団体)の教育レビュー担当の選任 4 .教育シラバス・セミナー a.Part 1 タスク・フォース (TF) メンバーから新教育シラバス案の解説が行われた。 ・学習項目ごとに知識 (knowledge) と思考力 (thinking skill) の水準を設定 ・学習領域は 10 分野とし、学習項目ごとに概ねの比重が設定 ・新シラバス案に対し、質問・コメントの受付 b.Part 2 ・新教育シラバスはスペシャリストとしての知識・スキルというより、一般的な知識・スキルを要求するもの ・教育制度の提供・アセスメント方法については、SOA(米国アクチュアリー会)や IFoA(英国アクチュアリー 会)が実施している方法が参考となるとコメントがあった。 ・学習領域案は 10 に区分されているが、相互間で関連しうるため、学習領域を統合して教育が行われてよいとコメ ントされた。 ・シラバスがカウンシルより承認された後の導入までの期間について、TF からは 3 年から最大で 5 年という時期感 が示された。英米では 3 年の期間があれば対応できるようであったが、他の委員は長期間を望んだ。 主要な結論・方向性 1 .承認 2 .承認 3 .チューリッヒミーティング後、委員会の委員へ連絡される 4 .教育シラバス改正 ・コミッティメンバーはシラバスの改正内容を支持 ・導入時期は、会員のフィードバックを得た上で、TF で検討 ・バンクーバー・ミーティングで修正案(refined version)が示される。委員会の委員へは会議の1月前には修正案が 配布される予定。 ・シラバス改正案に関するコメント募集は 7 月 15 日が回答期限であるため、対応をされたいとの委員長より言及が あった。その際、実施時期に関するコメントを入れるよう要請があった。 JSCPA との関係 1 .論点 2:2014 IAA 確認書に対し、年金数理人会の正会員認定要件の変更(能力判定試験による認定の追加)に伴う 当会から提出した教育シラバスに関する質問票の回答を教育委員会でレビュー・承認したものである。 年金数理人・55 2 .論点 4:教育シラバス改正 ・当会の教育制度の見直しの検討 a.教育シラバス改正案は、アクチュアリーに求められる一般的な学習事項の知識・応用力の水準の最低要件を示 しており、それに沿った教育制度の提供・アセスメントの方法を検討する必要がある。 b.シラバス改正案へのコメント提出(提出期限:7 月 15 日) *会議終了後、TF の委員長へ当会からのコメント提出が 7 月 15 日では困難であると個別に伝えた結果、可能な限 り早期に提出してもらいたいとの回答を得た。 今後の予定 1 .2015 年 07 月 15 日 シラバス改正案へのコメント受付 2 .2015 年 09 月 シラバス修正案策定(TF) 3 .2015 年 10 月 シラバス修正案提示(カナダ・バンクーバー ミーティング) 4 .2016 年 05 月 カウンシル承認取得 委員会等の名称 年金・給付委員会(Part 1 & 2) 日時 2015 年 4 月 9 日 08:00‐12:30、4 月 10 日 13:30‐17:30 出席者氏名(委員等の別) 藤井 康行(副委員長) 主要な論点 1 .ISAP3 IAS19 タスクフォースの活動状況を、タスク・フォース委員長として報告した。特に、ロンドンのミーティング以 降の状況を詳しく報告した。 2 .IAN ISAP3 の趣意書の議論の中で、IAS19 タスク・フォースが ISAP ではなく IAN に相応しいと判断した事項が紹介さ れ、意見が交換された。IAN は、教育的資料として、ISAP を補完するものであり、想定読者はアクチュアリーであ ることが確認された。各国の IAN に類似するものを集めて研究するところから始めたらどうか、との意見があった。 3 .年金会計サブ委員会(PBAS)の報告 PBAS の活動が、PBAS 委員長から報告された。主な内容は、IASB の検討への協力と、マイナス金利に関する議論 であった。 4 .IASB の最近の動き IASB の最近の動きが、IASB スタッフから報告された。主に、年金債務評価と割引率のプロジェクトに関する説明 が行われた。それとは別に、独立トラスティの件と制度変更等の測定に関する議論のスケジュール感について説明 があった。 5 .OECD、IOPS OECD と IOPS に関する活動が、担当者から報告された。OECD との協定書が今夏に期限が到来するので、更新に ついて確認するべきとの指摘があった。担当者を助けるチームを組成するべきではないか、との提言があった。 6 .その他の国際機関 IMF が発刊したストレステストに関する書籍が紹介された。その中に、アクチュアリーが関与するべき事項の記載 があるとのことであった。 7 .欧州アクチュアリー会(AAE)の最近の動き AAE の活動状況が、担当者から報告された。AAE の組織の仕組み、EU の指令に関する動向など。 56・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 8 .スイスの状況 スイスの年金に関連する状況が、スイスの委員から報告された。スイスでは、企業年金は、すべて DB であること、 設計内容はハイブリッドタイプであること、給付利率の最低水準が国民参加の法令で規制されていること、などが 説明された。最近の例として、大手企業における、IFRS からスイス GAAP への変更の動きが紹介された。スイス GAAP では、掛金=会計上の費用、の取扱いとのこと。 9 .マイナス金利とそれに関連する経済状況について Amarendra Swarup 氏から、幅広い視点で世界の経済情勢に関するプレゼンテーションがあった。複雑性が増すの に対して、社会の対応能力の進歩が追いつかない状況は避けがたいという視点と、貯蓄は誰かの負債であるという 視点を基礎としながら、様々な現象を読み解くもので、全体的に悲観的な考え方であった。 10. 積立モノグラフ 積立モノグラフの構成と進捗が、担当者から報告された。現在は、各国の状況を各国の委員に書いてもらっている が、なかなか進まないとのことであった。これに対して、積立モノグラフの対象読者を明確化するべきであり、お そらく、実務家というより、各国政府あるいは研究者向けではなかろうか、そう考えると、OECD との共著の形に するのが良いかもしれない、との指摘があった。また、保険に関する類似の経験を踏まえて、各章の関連性の置き 方や取組み方法に関する提言があった。 11. PBSS コロキアム・オスロ ノルウェー・アクチュアリー会の会長から、2015 年 6 月のコロキアムの紹介があった。 12. Webcast Webcast の企画のアイデアを出し合った。アクチュアリー基準委員会(ASC)の委員長から、ISAP3 がカウンシル で承認されたら、ISAP3 の webcast を計画していることが報告された。これまで、webcast は、PBSS と PEBC の 連名で開催しているが、本件に関しては、さらに ASC との連名にすることが合意された。その他では、今回のミー ティングで行われた経済情勢のプレゼンテーションのようなもの、AAE の活動状況、割引率モノグラフ、死亡率の 動向、PBSS 賞の受賞分、といったアイデアが出された。 13. 他の委員会等との連携 国際評価基準カウンシル(IVSC)との協力活動について、委員長から簡単な紹介があった。 14. 各国の最近の動き 各委員から、各国の状況が報告された。 ドイツ:企業年金は、運用実績を反映する場合には、利回りゼロを保証する必要があるので、すべて DB であるが、 企業からの強い要望で、純粋な DC を可能にする議論が進んでいる。社会党からは、会社と労働組合が共同で運営す ることを条件にするべきとの主張が出ている。 英国:年金に変えて、全額を一時金で受け取ることが来週から可能になる。長寿化に対しては逆行する変化である。 カナダ:公務員年金は DB であるが、給付カットの議論が進んでいる。 日本:公務員年金が一般の被用者年金と一元化される。マクロ経済システムが初めて発動されることになった。DC へ加入できる対象者に、主婦と公務員を含めること、および、DC 掛金の上限を引上げる議論が進んでいる。 主要な結論・方向性 1 .IAS19 に関する IAN を検討する。 2 .PBAS の活動を継続する。 3 .OECD、IOPS に関する活動の組織化を検討する。 4 .積立モノグラフを継続する。 年金数理人・57 JSCPA との関係 1 .IAS19 に関する IAN の開発は、実務への影響が大きいと考えられる。 2 .積立モノグラフの内容は、日本の企業年金の積立基準にも影響があるかもしれない。 今後の予定 1 .ISAP 3 の承認を前提に、Webcast に取り組む。 2 .次回のミーティングは、2015 年 10 月、カナダ・バンクーバー。 委員会等の名称 Chief Executive Officers (CEO 会議 ) 日時 2015 年 4 月 9 日 13:30 ‐15:00 出席者氏名(委員等の別) 浅井 将尚 主要な論点 1 .IAA 事務局から以下の報告があった。 a.今後の IAA 会議の予定: 2016 年上期に予定されているロシア・サンクトペテルブルクについては、現在再検討中。バックアッププランは あり、現在、状況をモニタリングしている。 b.ダイバーシティーへの取り組みについて(性別・地域・文化等) 2 .コミュニケーション開発部門より、正会員団体への Engagement Plan についての説明があった。 a.検討されている IAA と各正会員協会及びそれに属する個人を密接にするための施策案(現在のニュースのレビュー や、ソーシャルメディアを使った試み等) 3 .SOA(米国アクチュアリー会)の Greg Heidrich 氏により、プロフェッション調査の案について、報告があった。 a.IAA に加盟している各アクチュアリー会に属する個人向けのアンケートが想定されており、個人情報の取り扱い 等の課題が残っている。 b.プレジデント・フォーラムで、認められれば、来年に調査が行われる予定。 主要な結論・方向性 1 .特になし。 JSCPA との関係 論点 1 .2016 年上期の会議の場所は、変更の可能性があり、状況について IAA 事務局より、連絡を受け次第、早急に報 告する。 論点 3 .来年以降、プロフェッション調査の対応が必要になる可能性がある。IAA 事務局より、連絡を受け次第、早急 に報告する。 今後の予定 1 .次回は、2015 年 10 月 14 − 18 日、カナダ・バンクーバーにて開催。 委員会等の名称 アクチュアリー基準セミナー 日時 2015 年 4 月 9 日 14:00‐17:30 出席者氏名(委員等の別) 伊藤 寛太/浅井 将尚 主要な論点 1 .ISAP(国際数理実務基準)制定の歴史、目的、今後の計画等の概略の説明(アクチュアリー基準委員会) a.ISAP の会員への有用性 58・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 b.数理基準に関する IAA の戦略(各会員の数理基準発展の推進、世界的な数理基準のコンバージェンス) c.ISAP の概略説明(原則的な (principle-based) 基準、教育的内容は含まれないこと等) d.各会員は ISAP と整合性のある数理実務基準を持つこと(現行基準があれば、どのように合わせていくか) e.今後の ISAPs の制定 2 .ISAP1、2 の各会員の適用・検討状況のアンケート結果の説明(プロフェショナリズム委員会)- 以下、ISAP 1 についてのみ記載 - a.会員への周知 70%周知済(35 /50 会員) b.ISAP の受入れ状況 ⅰ.受入れ (adopt) 26% ⅱ.整合性とった修正 (modified) 等 24% ⅲ.受入れに否定的 14% ⅳ.ペンディング等 36% 3 .加盟アクチュアリー会における導入の進み具合や課題等についての意見交換 a.コロンビア、アルメニア、カリブ諸国、カナダ、UK、ドイツ、スイス、日本(当会、IAJ)等 主要な結論・方向性 1 .特になし JSCPA との関係 1 .ISAP と当会実務基準のコンバージェンス対応 今後の予定 1 .特になし 委員会等の名称 社会保障委員会 日時 2015 年 4 月 9 日 14:00 - 18:00 出席者氏名(委員等の別) 上谷 敏章(オブザーバー) 主要な論点 1 .2015 年活動計画 2 .スイスの元政府アクチュアリーからのスイスの社会保障制度に関するプレゼンテーション 3 .EAA(欧州アクチュアリー会)の社会保障小委員会の活動報告 4 .ジュネーブディスカッションフォーラム(ILO、OECD、ISSA、IAA 合同で社会保障について議論する定期的な会 合)の議案として、長寿化、積立の十分性、数理実務を取り上げること 5 .各国の社会保障制度の持続可能性についてのプレゼンテーション(今回は、リトアニア) 。一階部分の保険料の一部 の振替えにより創設された積立型制度の適用状況等。 6 .ISSA(国際社会保障監督者協会)が ILO と共同でガイドライン開発 7 .IMF の各国政府の財政分析に関するレポートで、賦課方式の未積立債務を政府の債務として扱うことへの懸念 8 .世界銀行が行う社会保障の数理分析の透明性と、アクチュアリーの関与の度合についての懸念 9 .米国のアクチュアリー会から米国政府に向けた提言(信託基金枯渇見込みの対応として社会保障税の引き上げ等) の紹介 主要な結論・方向性 1 .ILO、ISSA、OECD 等との協調、ISAP2 の見直し等を含む 2015 年の活動計画が確定 2 .ジュネーブディスカッションフォーラムの議案の合意 年金数理人・59 JSCPA との関係 1 .当会理事が当委員会の委員 2 .社会保障分野の情報収集と必要に応じて当局への連携 今後の予定 1 .バンクーバーでの次回 IAA 会議 委員会等の名称 プロフェショナリズム委員会 日時 2015 年 4 月 10 日 13:30‐17:30 出席者氏名(委員等の別) 上谷 敏章(オブザーバー) 主要な論点 1 .国を跨いだ業務のガバナンスの調査として、国を跨いだ業務に関する懲戒手続きについて調査結果をまとめたこと (当会も回答) 2 .国際数理教育的文書(IAN)制定活発化を踏まえて、そのデュープロセスを再確認すること 3 .各 ISAP のデュープロセスの進捗報告 4 .英国財務報告評議会(FRC)からの諮問へのコメント 5 .制定済の ISAP1(一般数理基準)及び ISAP2(社会保障制度の財政分析)の適用状況調査の中間報告(当会も回答) 6 .職業倫理タスク・フォースの答申への対応 7 .教育的シラバスの改定に関する教育委員会からの諮問への対応 8 .新しい文書クラスとして、 「プロフェショナリズムガイドラインズ」を制定すること 9 .非伝統的業務(ソルベンシーⅡのアクチュアリアル・ファンクション、リスク管理者、が想定テーマ)について、 会員団体ならびにそこに属するアクチュアリーがプロフェショナリズム要件をどのように解釈し適用するか 主要な結論・方向性 1 .ISAP4 以降の ISAP のデュープロセスは順調に進展 2 .職業倫理関連のリソース(各国会員アクチュアリー会向けの参考資料集)が IAA ホームページに掲載されたことを 確認 3 .教育的シラバス改定の諮問に対し、新シラバス案 2.10 (Personal and Professional Practice) の部分の確認ならびに 新シラバス案と CPD ガイドラインとの関係を整理して対応すること 4 .新しい文書クラス「プロフェショナリズムガイドラインズ」については、CPD ガイドラインにおける教育委員会の ようにオーナー委員会が別にある場合を整理すること 5 .非伝統的業務におけるプロフェショナリズム問題は、電話会議を開催し議論継続すること JSCPA との関係 1 .当会から当委員会に委員選任は行っていない 2 .プロフェショナリズム関連を所管する当会委員会等への論点提供 a.実務基準のデュープロセス b.当会のプロフェショナリズム関連規程の適宜見直し c.非伝統的業務、国跨ぎ業務 今後の予定 1 .電話会議 2 .バンクーバーでの次回 IAA 会議 60・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 委員会等の名称 プレジデント・フォーラム(会長懇談会) 日時 2015 年 4 月 11 日 08:30‐12:30 出席者氏名(委員等の別) 藤井 康行(JSCPA 代表) 主要な論点 1 .英国アクチュアリー会における Certified Actuarial Analyst Qualification(アクチュアリアルなアナリストの資格認定) 英国アクチュアリー会が設けた新しい資格であり、同会から紹介があった。 2 .マイクロ保険について ILO 社会財務プログラムの委員長から、マイクロ保険への取組みに関するプレゼンテーションがあった。 3 .プロフェッション調査について 米国アクチュアリー会、カナダ・アクチュアリー会、米国損保アクチュアリー会の各会長から、世界のアクチュアリー の状況調査を個人向けのアンケートの形で実施する案が示された。これは、IAA として実施するのではなく、IAA に 加盟している各アクチュアリー会が共同で行うものであり、独自に資金と人を確保するものとのことであった。 4 .大きすぎてつぶれない、小さすぎて気にならない? 専門家から説明があった。 年金数理人・61 5 .IAA 教育シラバスの改定案 教育委員会の副委員長、本件のタスクフォース委員長から説明があり、意見交換を行った。スケジュールとしては、 2016 年 5 月のカウンシルでの採決を想定していて、実施までの期間は、3 〜 5 年を想定しているとのことであった。 当方からは、教育シラバスが想定しているアクチュアリーを明確にするために、アクチュアリーの定義を考えるべ きであること、保険と年金に関する専門的な内容が少なすぎること、各項目の小分類にウェイトと達成程度が書か れているが、これを全部もれなく達成しなければならないのか、選択肢があり得るのか、といった点を指摘した。 主要な結論・方向性 1 .教育シラバスの改定議論を継続。 JSCPA との関係 1 .プロフェッション調査に関する JSCPA の姿勢を議論しておくべきであると思われる。 2 .教育シラバスの改定に関して、JSCPA としてのコメント提出、および、JSCPA の試験制度の見直しが必要である。 今後の予定 1 .教育シラバスの改定案に対して、2015 年7月 15 日までにコメントを提出。 委員会等の名称 カウンシル 日時 2015 年 4 月 11 日 14:00‐18:00 出席者氏名(委員等の別) 藤井 康行(JSCPA 代表) 主要な論点 1 .会長の報告 2 .執行委員会の報告 3 .国際保険監督者協会(IAIS)執行委員会委員長 Felix Hufeld 氏のプレゼンテーション 4 .指名委員会の報告 次期会長の候補者を検討中であること、執行委員会の委員の再任の条件として、任期途中での交代における残余期 間を含めないように改正する予定であることが報告された。 5 .財務・事務管理 a.監査・財務委員会の報告 b.2014 年の監査済み財務報告 c.2016 年の会費勧告、及び、2016 年予算の見通し セクションの保有資産が、少し大きい点を除けば、公益法人として特に問題なく、かつ、健全な状況であること が報告された。また、2016 年については、これまで毎年行ってきた会費の値上げの必要はない見通しであること が報告された。 6 .2014 年 9 月以降の電子投票議案の結果 a.ルーマニア・アクチュアリー会を正会員として承認 b.ヴァリュー・プロポジション c.2015 年の予算 d.ミーティング:南アフリカ・ケープタウン(2016 年 Q4) e.ミーティング:ハンガリー・ブダペスト(2017 年 Q2) f.ミーティング:米国・シカゴ(2017 年 Q4) g.趣意書 ISAP7 – IAIS 資本基準に関連するカレント・エスティメット、及び、その他の事項 62・年金数理人 IAA カウンシル及び委員会等のミーティングへの参加報告 7 .アクチュアリー基準委員会(ASC) a.ASC の最近の活動 b.ISAP3 – IAS19 Employee Benefits[5 分の 4 以上の議決] 採決の結果、満場一致で、議案通り承認された。 8 .認定委員会 会員基準に関する内部規定の改定[過半数の議決] 審議の結果、議案が修正され、承認された。 9 .ブランド・コミュニケーション・サブ委員会 公表文書の作成のためのデュープロセスの承認[過半数の議決] 審議の結果、議案が修正され、承認された。 10.教育委員会 IAA 教育シラバスについて 教育委員会の副委員長から、検討の状況が報告された。 11.戦略計画サブ委員会からの報告 12.次回のミーティング:カナダ・バンクーバー、10 月 14-18 日の紹介があった。 13. 2015 年 8 月のコロキアム(オーストラリア・シドニー、AFIR, ASTIN, ERM, IACA)の紹介があった。 主要な結論・方向性 1 .ISAP 3 が承認された。 JSCPA との関係 1 .ISAP 3 への取組み 2 .教育シラバスに関する取組み 今後の予定 1 .次回は、2015 年 10 月 14-18 日、カナダ・バンクーバーで開催 カウンシルで、隣のベルギーの代表と(藤井)。 以上 年金数理人・63 IAA Colloquium への参加報告 2015 年 6 月、ノルウェー・オスロ 国際委員会 写真は、Colloquium 会場のグランドホテル 写真は、夕食会(ガラ・ディナー) 64・年金数理人 片寄 郁夫 IAA Colloquium への参加報告 2015 年 6 月 7 日 (日)~ 10 日 (水)にノルウェーのオスロ 6 月 7 日 か ら 10 日 に か け て ノ ル ウ ェ ー の 首 都 オ ス ロ で開催された IAA Colloquium に、発表者として 4 名(大 で開催された国際アクチュアリー会 (IAA) のコロキアム 山義広、稲垣誠一、加藤貴士、川口知宏) 、国際委員会か へ、日本年金数理人会より派遣され、「日本における退 ら 3 名(藤井康行、清水信広、片寄郁夫)を派遣しました。 職・引退給付の新たな動向」(New Trend of severance and オスロは、オスロフィヨルドの奥に位置し、緑が多く静 retirement benefits in Japan) の表題にて発表する機会が与 かな港町です。ノーベル平和賞の授与式が行われるオスロ えられました。本稿は、出発までの準備と発表内容の概要 市庁舎で Welcome Reception が行われ、受賞者が宿泊する を中心に報告するものです。 Grand Hotel が Colloquium の会場でした。 1 .出発までの準備 今回のIAA Colloquiumは、国際アクチュアリー会(IAA)の 準備作業の主要項目と期限等は以下のとおりでした。 3つのセクション(PBSS、LIFE、IACA)による協同開催で 期限又は 予定日 実績 概要の提出 1 月 31 日 1 月 19 日 2 概要による選考結果の通知 2 月 28 日 3 月 24 日 3 本文の提出 3 月 31 日 同左 4 本文による選考結果の通知 4 月 15 日 同左 5 プレゼン予行練習 5 月 21 日 同左 6 プレゼン資料の提出 5 月 31 日 5 月 28 日 あり、年金や社会保障分野の他に、生命保険やコンサルティン ステップ グ分野の“私たちの時代の課題”に関するプレゼンテーション 1 やディスカッションが行われました。また、夕食会等の社交行 事を通して、各国アクチュアリーとの交流も行われました。 Colloquium には 28 か国から 200 名を越える参加者があ り、主催国のノルウェーを含む欧州勢が約 8 割を占める中、 日本は当会からの派遣者 7 名を含む 19 名と大きな貢献を しています。 作業内容 Colloquium は今後も、2016 年にカナダのセント・ジョ 準備作業の一番初めに行ったことは概要の IAA への ンズ、2017 年にメキシコのカンクーン、2018 年にドイツ 提出であり、その期限は 1 月 31 日でした。期限に対し のベルリンが予定されており、会員各位の活発な参加が望 て余裕を持って、1 月 19 日に PDF 化した書類を送信し、 まれます。 特にエラーメッセージ等も発生しなかったので、無事に 着信されたものとこの時点では思っておりました。 以下では、各発表者の発表内容と感想、そしてColloquium 次のステップは、概要に基づく暫定的な選考結果の入 に併せて開催された PBSS 委員会と PBSS 総会の内容を 手であり、2 月 28 日までに結果が通知されるスケジュー 紹介します。 ルが予め公表されていました。殆どの人は期日どおりに 結果を受信した様子でしたが、小生だけには通知が来ま Ⅰ.大山義広さんの発表内容と感想 せんでした。状況を把握したいと思い、3 月 6 日に問い 合わせのメールを発信しても返信はなく、メールが全く 不達となっている可能性もあるため、本文作成作業に着 手せず、発表することを半ば諦めていました。 しかし、3 月 24 日になって主催者より、電子メールの 不具合による着信遅延により返信が遅れたが、採用と なったので本文を提出するように、という通知が来て事 態が一変したのです。 本文提出の指示が来たものの、提出期限は 3 月 31 日 で、残された期間は 1 週間だけです。期限の 1 週間前の この時点では、本文は全く書けていない状況でしたが、 概要の審査結果として暫定採用になったにも拘わらず、 年金数理人・65 本文の提出を放棄することは考えられず、兎に角、その 年金制度とは別に、退職一時金制度が適用される 期限内で書ける事だけを英文ペーパーに纏め、最終選考 へ臨みました。 幸いなことに本文による選考も通過し、その結果通知 ことが多い。 ・ 2012 年までの変遷の概略について は予定どおり 4 月 15 日に入手し、プレゼン資料の準備 は普通のペースで行うことができました。 1962 年に適格退職年金制度 ( 適年 ) が、1966 年に 厚生年金基金制度が開始された。 2001 年公布の確定給付企業年金 (DB) 法と確定拠 ペーパー本文の提出期限とプレゼン資料の作成開始時 出年金 (DC) 法により、企業年金制度は大きく変 期の間隔が、今回は半月であり、通常ではこの程度の時 化した。特に、DB 法により適年は 2012 年までで 期のズレは問題ありません。しかし、4 月 3 日に DC を 廃止され、その廃止の影響は大きかった。適年を 改正する法案の国会提出という重要な動きが、このズレ 実施していた事業主の内、他の年金制度に移行し の期間内に発生するという珍しいことが起き、状況が変 たのは三分の一に満たず、企業年金の実施割合は 化してしまったのです。 低下した。 より詳細には、年金制度に関する最新動向の中心の 一つである DC の改正に関して使用できた公表資料は、 ・ 2013 年の厚生年金基金に関する改革について 2008 年のリーマン・ショックで代行割れ基金が ペーパー本文を提出した 3 月 31 日時点では、前年 12 月 増加し、厚生年金本体の財政にも影響が出るリス 30 日に自民・公明両党から発表された「 平成 27 年度税 クが顕在化した。 制改正大綱」まででしたが、一方、プレゼン資料の作成 そのような環境下で AIJ 投資顧問問題が 2012 年 に着手した 4 月中旬においては、その直前の 4 月 3 日に に発覚した。このスキャンダルが、2014 年 4 月 1 「確定拠出年金法等の一部を改正する法律案 」が国会へ 日施行の「公的年金制度の健全性及び信頼性の確 提出され、この法案を資料に使用することができる状況 保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法 に変化していたのです。 律」制定の引き金となったのである。 ペーパー本文は提出済なので、DC の改正動向に関す この法律により、殆どの厚生年金基金は実質的に る部分に修正は加えませんでしたが、プレゼン資料は法 案を引用して作成し、最新情報を発表してきました。そ 存続不可能になる見込みである。 のため、IAA のサイトに掲載されている本文とプレゼン 資料との間に細かいズレがあります。 日本年金数理人会による発表の予行演習は、5 月 21 日 に行われ、その時はプレゼン資料の原案を使用しまし 現在の厚生年金基金の大多数は総合設立であり、 母体企業は中小企業が中心になっている。 厚生年金基金制度の廃止により中小企業における 企業年金の実施割合が、適年廃止の時と同様に、 低下することが見込まれている。 た。その予行演習の場で、幾つかの修正すべき点に関す ・ 厚生労働省はこのような状況を放置しているのでは る助言を参加者から頂き、その助言に基づく修正を加え なく、2013 年に社会保障審議会企業年金部会を組 た最終版を 5 月 28 日に IAA へ送信しました。 織して企業年金の普及・拡大を含めた議論を実施 2 .発表内容の概要 発表した主要点は以下のとおりであり、各項目をアニ メーション付きのスライドを使用して説明しました。 し、2015 年 1 月 16 日に報告書を提出している。 ・ DC に関する規制緩和を含めた法改正案が 2015 年 4 月 3 日に国会提出されており、この変更により、従 ・ 日本の退職給付制度の現状について 前よりは多くの中小企業が DC を採用する可能性が ある。企業年金部会の報告書に記載された項目のう 日本の民間被用者に適用される年金制度は以下の 3 部分から構成されている。 即ち、①基礎年金、②厚生年金、③企業年金、の 3 階建てになっている。 66・年金数理人 ち、今回の法案に採用された主要点は以下の 3 点で ある。 個人型 DC への小規模事業主掛金納付制度の創設 IAA Colloquium への参加報告 個人型 DC の加入可能範囲の拡大 DC の拠出限度額の年単位化 Ⅱ.稲垣誠一さんの発表内容と感想 ・ 結論として年金給付は、たとえそれが DC からの給 付であろうとも、一時金給付と比較すると老齢期 においてはより重要性があるため、DC に関する 規制緩和は歓迎されるものである。 3 .発表時の様子 発表が行われた時間帯 (6 月 9 日 11:30 ~ 12:00 の 30 分 間 ) には、5 つのパラレル・セッションが同時進行して おり、コロキアム全体では 210 名の参加者が登録されて いたものの、筆者の発表を聞いていたのは 10 数名だけ でした。 用意したスライドは全部で 35 枚でしたが、全てを読 み上げることはせず、話すポイントを絞ることにより、 1.報告の背景 発表時間は事務局から上限として指示された 25 分間の 日本の公的年金制度は、二階建ての仕組みであり、基礎 範囲内に余裕を持って収めることができました。 年金と呼ばれる定額給付と正規雇用者(第 2 号被保険者) 残った時間は質疑応答に充てられ、当該セッションの を対象とした報酬比例年金から構成されており、基礎年金 議長をしていた Montserrat Guillen 女史 ( スペイン・バ は、すべての居住者がその対象者となっている。現行制度 ルセロナ大学教授 ) から以下の質問がありました。 では、専業主婦(第 3 号被保険者)は、保険料の納付を必 「厚生年金基金を実質的に廃止する制度改正を行うに 要としないが、満額の基礎年金を受給することができる。 当たって、大きな議論があったように聞いていますが、 一方、自営業者、非正規雇用者や非就業者(第 1 号被保険 そのときの様子はどうだったのでしょうか。」 者)は、自ら保険料を納付する必要があり、保険料の納付 それに対して、 「この改正については大議論がありま 期間に応じた基礎年金が支給される。そのため、公平性の した。特に、財政的に問題のない厚生年金基金について 観点から、第 3 号被保険者も保険料を納付する仕組みに改 も、何故廃止しなければいけないのかという点が論点と めるべきではないかという議論が提起されている。 なったのです。しかし、最終的には存続のためのハード これは、いわゆる「女性の年金」の一つの大きな争点で ルはものすごく高くて厳しいものとなって決着しまし あり、賛否両論から長期にわたって論争が続いている。し た。 」と回答し、理解してもらえた様子でした。 かしながら、この論争は、定量的なエビデンスに基づい 今回の発表は、日本固有の制度を外国の方々に説明 たものというより、哲学的あるいはイデオロギー的な論 し、参考にできる点があれば活用してもらいたいと思っ 争にとどまっており、堂々巡りを繰り返している。そこ て行ったものです。ペーパー本文とプレゼン資料は IAA で、筆者は、この論点に対して、持続可能性と給付の十分 のサイト内に格納されており 1、各国の人々が今後も 性の両面から、第 3 号被保険者制度の定量的な評価を試み ずっと参照できるようになっています。 るべく研究を続けてきた。その研究成果が得られたことか 最後に、今回の発表の機会を与えて頂いた日本年金数 理人会に感謝申し上げます。 ら、国際アクチュアリー会のコロキアムの機会をとらえ、 The effect of the introduction of mandatory Category 3 contributions on the poverty rate for the elderly in Japan 1 URL は以下のとおりです。http://www.actuaries.org/oslo2015/papers/PBSS-Yoshihiro.pdf http://www.actuaries.org/oslo2015/presentations/PBSS-Yoshihiro-P.pdf なお、プレゼン資料は PDF 化され、アニメーションは参照できない状況で保管されています。 年金数理人・67 (第 3 号被保険者への保険料納付の義務化が及ぼす高齢者 の貧困率への影響)として報告を行ったものである。 また、第 3 号被保険者の保険料等による増収分をどのよ うに取り扱うかも大きな論点である。現在の基礎年金にか かる財政調整の仕組みは、参考 2 に示す問題を内包してい 2.報告の概要 ることから、その仕組みを所与のものとせず、ここでは、 高齢化の著しい進行の中、2004 年改正において、これ 第 3 号被保険者の保険料等による増収分をすべて基礎年金 までの給付と負担の考え方が大きく転換された。それま の給付に充てることとした。その結果、基礎年金のマク で、必要な年金水準を定め、それを賄うために必要な保険 ロ経済スライドをかなり早期に終了できることが明らかに 料を現役世代から徴収する仕組み(給付建て)から、負担 なった。 可能な保険料水準を設定し、その範囲内で年金給付を行う 財政の持続可能性については、2009 年財政検証結果を 仕組み(拠出建て)に改められたのである。具体的には、 修正することによって評価し、給付の十分性については、 保険料の上限が定められるとともに、 「マクロ経済スライ マイクロシミュレーションモデル(世帯情報解析モデル) ド」と呼ばれる給付水準を自動的に削減する仕組みが導入 を用いて貧困率の将来見通しを作成し、その評価を行っ された。 た。ここでは、第 3 号被保険者の保険料の納付率は、現在 この結果、長期的な年金財政の検証の目的も大きく変更 の第 1 号被保険者並みの約 60%としたが、1985 年改正前 された。すなわち、制度改正前は、給付を賄うために必要 でも 60 ~ 70%の専業主婦が任意加入して保険料を納付し な保険料水準を計算することが目的であったが、制度改正 ていたことから、現実にはこれよりも高い納付率になるか 後は、将来の給付水準がどこまで低下するかを計算するこ もしれない。また、扶養者(第 2 号被保険者)の保険料に とが目的となった。給付水準の指標としては、標準的な夫 上乗せして徴収するという方法も考えられるが、この場合 婦の所得代替率(新規裁定時)が用いられており、この所 は未納がなくなることから、さらに財政状況は改善するこ 得代替率が 50%を下回らなければ、公的年金として十分 ととなる。 な水準と判断するとされるが、この指標には問題点も多く 第 3 号被保険者への保険料納付の義務化は、専業主婦の 指摘されている(参考 1) 。 保険料未納による基礎年金の減額をもたらすため、新し 一方、基礎年金給付の負担に関する財政調整の仕組み い保険料の増収分を給付に充てなければ、2100 年におけ も、必ずしも合理的にはなっていない。この仕組みによ る高齢者の貧困率は、現行制度を維持した場合における り、国民年金の保険料納付率(保険料納付義務者に対して 20.2%(女 26.6%、男 12.0%)から 21.0%(女 27.6%、男 約 6 割、第 1 号被保険者全体に対しては 5 割を下回る)が 12.5%)に上昇すると見込まれる。しかしながら、先に述 低くても、国民年金の財政には大きな影響はないとされて べたように、この増収分を基礎年金のマクロ経済スライ いる。年金財政に悪影響を及ぼさないのであれば、納付率 ドの早期終了のために充てることによって、終了時期を が低下しても結果オーライということになるが、実際には 2038 年から 2023 年まで繰り上げること(2009 年財政検 厚生年金の財政に負担を転嫁しており、直感的にも不自然 証ベースの推計)ができ、その場合、2100 年の貧困率は な仕組みである。 (参考 2) 16.9%(女 22.5%、男 9.7%)まで低下すると推計された。 本報告では、第 3 号被保険者への保険料納付を義務化し た場合における年金財政の持続可能性と給付の十分性の評 3.まとめ 価を目的としたが、公的年金制度が基本的に拠出建ての仕 本報告では、哲学論的な賛否は横において、単純に年金 組みになっていることから、財政の持続性よりも給付の十 給付の十分性の評価を試みた。その結果、現役世代の第 3 分性に重点を置いた。ただし、政府の定義する所得代替率 号被保険者の負担は大きくなるが、現在の第 1 号被保険者 は、特定の高齢者夫婦のみを対象とした一面的な指標であ 並みの保険料納付率が確保できるのであれば、全体として り、ここでは、将来の高齢者全体の貧困率(生活扶助基準 は、基礎年金の給付水準が向上することとなる。ここで 未満)を十分性の指標とした。 は、1985 年改正前と同様に第 1 号被保険者と同等の扱い 68・年金数理人 IAA Colloquium への参加報告 としたが、定額保険料による逆進性を回避するためには、 昇するため、保険料未納が財政状況を改善させることに 夫(扶養者)の保険料率に上乗せする方が望ましいかもし なる。実際、政府は、国民年金の納付率が改善する場合 れない。 (65%に上昇)としない場合(60%のまま)の将来の所得 将来の高齢者の貧困層は、専業主婦と死別以外の女性、 代替率の比較を行っているが、経済前提Cでは、前者が すなわち、離別と生涯未婚の女性がその多くを占めると見 51.0%(基礎 26.0%、比例 25.0%)、後者が 51.1%(基礎 込まれる(稲垣誠一(2013) 「高齢者の同居家族の変容と 26.2%、比例 24.9%)となっており、納付率が高くなると 貧困率の将来見通し―結婚・離婚行動変化の影響評価―」 基礎年金の所得代替率が低下することが示されている(第 『季刊社会保障研究』48(4), pp.396–409) 。専業主婦が第 3 21 回社会保障審議会年金部会(平成 26 年 6 月 3 日)資料 号被保険者制度や遺族年金などによって優遇されている一 1-1、14 ページ)。 方、男女の雇用格差が依然として存在する中で、離別・生 さらに、厚生年金の適用拡大をした場合(1200 万人) 涯未婚の女性が大きな不利を強いられている。専業主婦の の試算(同資料 2-1、7 ページ)では、将来の所得代替率 優遇を今後も続けるべきか、この結果も参考に、雇用格差 が 57.3%(基礎 32.7%、比例 24.7%)と推計されている の問題も含め、議論を深めてはどうだろうか。 が、基礎年金分が飛躍的に改善している。これは、1200 万人が第 1 号から第 2 号に移ることによって国民年金勘定 (参考 1)所得代替率について の年間支出が大きく減少し、積立比率が飛躍的に上昇する 所得代替率の算定に用いられる「標準的な夫婦」は、同 ためである。加入区分の変更が、各勘定の財政状況に大き 年齢で 20 歳で結婚し、夫は 40 年間正社員(第 2 号被保険 な影響を及ぼすことを示している。 者)として働き、妻は生涯専業主婦(第 3 号被保険者)と いうモデルである。かつての日本社会では典型的なライフ Ⅲ.加藤貴士さんの発表内容と感想 スタイルであったが、現在はライフスタイルの一つに過 ぎない。女性の第 3 号被保険者の比率も、28.8%(2013 年 度)にとどまっている。 さらに、この所得代替率の分子は税・社会保険料控除 前、分母は控除後となっており、分母と分子の定義が整合 的でない。 (参考 2)基礎年金給付の負担に関する財政調整の仕組み について 基礎年金は、国民全体を対象とした給付であるが、その 給付を賄う勘定は、国民年金勘定(第 1 号被保険者)と厚 生年金勘定(第 2 号・第 3 号被保険者)に分かれており、 2015 年 6 月 7 日から 10 日にノルウェーのオスロで開催 それぞれの勘定で別々に積立金を有している。にもかかわ された国際会議に Contribution Paper(論文ではない)を らず、基礎年金給付のための負担(拠出金)は、現時点の 投稿したところ、発表を行う機会を頂戴し、当会から派遣 被保険者数(第 1 号被保険者は保険料納付者数)で単純に して頂きました。本稿では、発表した Contribution Paper 按分する仕組みとなっており、将来の給付に備えた積立金 作成の概要および発表の感想を中心に報告させて頂きま が全く考慮されていない。 す。 したがって、保険料の納付率が低下し、第 1 号の保険料 タイトルは「低金利環境下における日本の企業年金の対 納付者数が減少すると、国民年金勘定の年間支出額が減少 応」です。ご推察頂けるかと思いますが、本報告の主旨は することによって、積立比率(=積立金/年間支出)が上 年金数理人としての専門的・学術的な知見を披露すること 年金数理人・69 ではありません。ただ、我々日本の年金数理人にとっては 第 1 においては高金利環境を前提とした私的年金の法整 ありふれた事例であったとしても、外国で実務を担当する 備について紹介し、実際に事業主側にプラスに寄与してい 方々にはブレイクスルーとなりえることもあるだろうとの た点などを説明しました。 仮説のもと、紹介しようと考えたことが動機となります。 第 2 においては金利低下の進行に伴い、元本保証型商品 特に昨今欧米でも低金利環境下が常態化しつつあり、欧州 の保証利率低下の変遷、ひいては資産運用の成績が悪化傾 においては短期・中期の金利ではマイナスとなっている場 向、変動率の拡大傾向にある点を確認し、あわせて 1990 合も散見され、低金利の世界ではトップランナーである日 年代後半に行われた法整備(資産運用および予定利率設定 本の事例を紹介することは、参加者の関心を惹きつけるこ の弾力化、給付設計変更要件の緩和、最低責任準備金計算 とが出来ると考えた次第で、また実際に彼らの実務のヒン 方法の変更など)について説明しました。ここで注目すべ トになればと今でも願っております。 きは、規制が環境にそぐわなくなった場合は、規制が実態 に即したものとなるよう改訂されたことであるとも述べて います。 第 3 は第 4 の背景にもつながりまして、すぐに第 4 での 具体的な事例紹介に入りました。 (ア)および(イ)につ いては皆様ご存じのことと推察されますので、(ウ)資産 運用戦略の新たな枠組みについてこの場でも説明させて頂 きます。21 世紀以降の国内債券を除く伝統的資産それぞ れの実績リターンの相関係数を確認し、リーマンショック 以降はいずれの組み合わせにおいても高い相関となった結 報告の概要ですが、内容は年金数理人の皆様にとっては 果、分散投資による下支え効果が限定的であったことを説 ご存知の部分が多く、一方私自身が最近資産運用コンサル 明しました。 ティングに従事していることもあり、運用の観点でのトレ ンドを交えた事例紹介を中心としました。発表では以下の 項目を立て、日本の独自と思われる企業年金制度の仕組み を確認頂いた上で、事例紹介および低金利環境により起き た変化についての考察を述べる形としております。 1 .日本の退職給付制度の概要、税制適格退職年金お よび厚生年金基金制度設立の背景、企業年金におけ る資産運用環境(~ 1985 年) 2 .金利および資産運用環境(1986 年~ 1999 年)およ び法改正概要の確認 そこから得られる教訓として、政策的資産配分の設定に 3 .確定給付企業年金および確定拠出年金制度設立の あたっては単純に安定資産と収益性資産(国内債券および 背景の確認 グローバル株式)の 2 通りのみで最適化を行い、所謂リス 4 .低金利環境下において企業年金が取り組んだ具体 クの予算化を実施するアプローチを説明しています。もち 的対応 ろん実際の資産運用はその 2 通りだけではないので、それ ( ア ) 給付利率の引下げおよび制度変更 ぞれの枠組みの中で所謂リスクの配分を実施する例を紹介 ( イ ) 代行返上および厚生年金基金の実質的廃止 しています。つまり金融危機時など分散投資により損失を ( ウ ) 資産運用戦略の新たな枠組み 最小化したい局面において分散効果を過大評価しないため 5 .筆者所感 の最適化を行い、平時においては期待リターンの最適化を 70・年金数理人 IAA Colloquium への参加報告 狙うというアプローチになります。 に提出しています。しかしながら一次選考結果の発表は公 また国内が低金利であっても、外国により高い金利の投 表されていた予定日と同一であり、その後一か月で英文フ 資先がある場合、為替変動リスクを排除することで国内債 ルペーパー(上限 A4 用紙 30 枚)の提出となりました。週 券投資と同等のリスク水準で一時的に高いヘッジコスト控 末を中心に多くの時間を費やすこととなり、15 枚程度の 除後利回りを獲得する機会を探す、国内債券代替としての ペーパーを提出するに至りました。そして発表許可連絡を ヘッジ付外国債券への投資の有効性についてもご紹介しま 受け、主に週末にプレゼンテーションの準備および出張準 した。 備にとりかかりました。不特定多数に向けたプレゼンテー ションは言語によらず緊張することと思います。25 分の 発表という厳格な要件もあるため、時間管理は難しいとい う方も含め、25 分で読みきることの出来る英文原稿を作 成し、当日読み上げるということでも良いのかと思いま す。私の場合はパワーポイントのアニメーションを多用す ることで、私の言葉の多くを図や強調で代弁してもらうよ うな演出を心掛けました。ただ、本番では会場から全く質 問もコメントも出ませんでしたので、その内容やプレゼン テーションの優劣についてはよくわかりません。 参加しての感想ですが、参加者のうち、大学など学術団 例えばペーパー作成時点ではドイツの 10 年国債金利は 体からの出席者が多く、外国では研究対象としてのアク 日本並みに低下する一方、米国は高めの金利を維持してい チュアリー学がさかんな印象を受け、意外な発見でした。 ましたので、外国でもこのような機を捉えた投資の実施は ランチの際などに欧州の再保険会社の方と意見交換をしま 低金利環境下で一定の効果があることを紹介しておりま したが、日本ではあまりない事例なども聞きまして、多様 す。 な考え方を得ることも出来ました。また参加者(210 名) 担当所感として、プランスポンサーにとってリスク管理 を集めた着席式のかしこまった夕食会や一般公開が限られ および収益追求への関心は高く、企業年金特に DB リスク ていると思われるオスロの歴史的建造物内の見学など、国 の管理および削減の重要性はどれだけ改革を進めても高 内の年金数理人活動では得難い経験が出来たように思いま まっているというのが印象です。50 年近く前に企業年金 す。年金数理人の皆様は普段の業務で多忙を極められてい 制度が設立された際とバブル崩壊後の低金利環境における ることと思いますが、是非とも若い方を含め、海外活動経 状況変化に伴い、新たな法整備が行われたように、仮に現 験を積み、私のように新たな発見をして頂ければと思いま 行の規制が実務や環境にそぐわないものになってしまって す。私自身もまた別の機会を頂ければと思いますので、そ いるのであれば、専門家も含め関係者が積極的に声をあ の際に本稿を読まれた皆様とお会いできることを楽しみに げ、改革をしていくべきであり、制度運営や資産運用手法 しております。 が複雑化すればするほど関係者間でのコミュニケーション 最後に、今回派遣してくれた当会に御礼を申し上げると が肝要であるとの聴衆へのメッセージを述べて結んでおり ともに、週末を含めた本活動を認めた上で励まし、三歳の ます。 息子の育児を肩代わりし、そして単身での一足早い北欧で 次に、今回のペーパーの提出およびコロキアムに参加し の夏休みに快く送り出してくれた妻に心からの感謝の意を た感想を述べたいと思います。まずペーパー作成ですが、 この場で(もちろん直接にも)表しまして、結びとさせて 今回は発表動機が明確でしたので、概要自体は 2 日ほどで 頂きます。 まとまりました。最初に英語で書き始めてしまったため日 本語は直訳とはなりませんでしたが、締切の一か月以上前 年金数理人・71 Ⅳ.川口知宏さんの発表内容と感想 3 .Changes suggested in the proposal by the ruling parties 4 .Current issues with Japanese pension system and how the proposal may improve the situation 5 .A comparison of DC schemes in Japan and the United States 6 .Conclusion ご参考 http://www.actuaries.org/oslo2015/scientificprogram.cfm 第 1 章では、本論文を執筆した背景について触れまし た。第 2 章では、日本の年金制度を、特に DC に焦点をあ 6 月 7 日から 10 日にかけてノルウェーのオスロで開催 てて紹介しています。このあたりは日本の年金数理人には された IAA Colloquium に日本年金数理人会から論文発 なじみが深い分野で、査読者をはじめとする日本以外のア 表のために派遣して頂く機会を得て、参加して参りま クチュアリーや年金の専門家に向けて、以降の議論の前段 した。本稿では、私の論文と発表の内容を紹介しながら として準備しました。発表時には、日本では DB の存在が Colloquium の様子について報告させて頂きます。 依然大きく、世界各国と同様に DC 導入の流れはあるもの の、あくまで漸進的であり人口に膾炙したというには程遠 タイトルは「2016 Expected Reform of Japanese DC Code いのではないか、という問題意識について言及しました。 and Its Implications for the Future DC Prevalence in Japan as Contrasted to US 401k」とし、平成 27 年度の税制改正 第 3 章では、税制改正大綱を通して提案された法令改正 大綱にある DC 法令の改正案を取り上げました。改正のポ の内容を記載しています。細かくは様々なポイントがあり イントを個人型 DC の対象拡大および利用促進と考え、日 ますが、加入対象の拡大、中小企業による個人型 DC 口座 本の DC の過去と今に触れながら改正の背景と予想される への掛金拠出、の 2 点は DC 加入者の数を大きく増やす可 帰結について語り、各国の DC を考える上で重要なベンチ 能性のあるものとして、論文及び当日の発表でも強調して マークの 1 つである米国 401k とも主要な特徴の比較を試 います。 みました。なお、昨年末の公表時には平成 28 年度の春以 降の実施という見通しが主だったように思い、タイトルに 第 4 章では、日本が長寿の国であること、寿命増加に伴 は 2016 と付しましたが、実際の施行時期がその限りでは い終身年金を払う国の財政負担が増していることに触れ、 ない点は当日の発表で補足しました。また、論文はその概 2010 年 に 久 保 知 行 氏 が 発 表 さ れ た Vertical/Horizontal 要を 2015 年 1 月末までに、最終版を 2015 年 3 月末までに Combination の概念を用いて、賃金、企業年金、公的年金 提出する必要があったため、概ね当初に与党より公表され の役割分担について整理しました。その上で、個人型 DC た内容に基づいて執筆しました。 が十分に普及した際に想定される退職給付の受け取り方 を、仮想の例を基に個人目線で検討しました。ここでは、 論文および発表資料は IAA Colloquium の Web サイトに掲 個人型 DC 口座をベースとした仕組みは資産の移管や掛金 示されておりますが、論文は以下の章で構成されています。 が拠出できない期間が無くなり、とても効率的なのではな 1 .Introduction いかと結論付けています。 2 .An overview of the current state of Japanese pension plans 72・年金数理人 第 5 章では、米国 401k と日本の DC を比較しています。 IAAColloquium への参加報告 個人型 DC 制度を活用することで、加入対象や制度間の移 管の面においては米国 401k と同等あるいはそれ以上に柔 軟性の高い退職給付の仕組みが構築できるのではないかと 言える一方で、掛金上限については大きな開きがあるた め、今後はこの点についてどの程度制限が緩和されていく のかが普及の鍵を握っているように考えます。 第 6 章では、論文を総括するとともに、DC 以外の退職 給付制度の給付について特別な口座でポータビリティの考 えを導入できないか、定年および年金支給開始年齢とし ては究極的にどの程度の年齢が望ましいのか検討を要す る、といった点を今後の課題として挙げました。前者につ 日本年金数理人会の国際委員会主催のリハーサルにも出 いては、日本の多くの制度が退職時の一時金支払いを許 席させて頂き、万全を期したはずでしたが、当日の参加 容する一方で個人もそれを期待している場合が一般的で、 者を前にして、こんなことも念のため話した方がいいか retirement benefit ではなく termination benefit となってい な、あんなことも一応言っておくかな、とプレゼンしてい る現状から、老後所得の原資として退職給付制度の支払い くうちに時間が押してしまいました。質問は 1 つだけ回答 を捉えるのであれば、DC だけでなく他の制度でも、給付 が許され、カナダの方から「自国の DC も企業型と個人型 を管理する口座と引き出し年齢を制限することを条件に税 の 2 種類があり言いたいことは理解したが、企業型は企業 優遇を付与する考えを導入することも(現実的というより が DC 管理機関と交渉するため費用や運用商品等の諸条件 もまずは理論的見地から)検討する価値があるのではない が個人型より優れているという側面はないか?」とコメン か、と考えております。後者については、若年世代の一人 トをもらい、個人型の条件が劣っていれば個人型 DC 主体 (と自覚して問題の無い年齢だと自分では考えております の仕組みの利便性を享受するコストになってしまうかもし が・・)として、支給開始年齢の引き上げを眺めていて自 れないが、定量的には分析できておらず結論はまだ出せな 分の場合は何歳になるのだろうという漠とした興味を抱い い、と回答しました。仮に個人型が普及すると各社間の競 ています。 争によって個人型制度の条件も利用者に優位なものとなる ように思いますが、この視点は引き続き深堀する予定で 上記の他に、以下のスライドは発表資料をまとめていく す。また、セッション後にスペインの方からも、同国も 2 中で出来たもの(論文に加筆できなかった点、反省をして 種類の DC があるので個人型に軸足を移していく考え方は います・・)で当日も強調したのですが、個人型 DC の利 興味深い、とコメントを頂き、励みになりました。 用を促していくことで、銀行口座や証券取引口座に加えて 個人型 DC 口座(あるいはより広く退職所得口座)の保持 最後に、参加して得た所感をいくつか述べて、本稿を締 が一般的になり、これらを持って個人の所得管理の三種の めさせて頂きます。まず、Colloquium の公用語である英 神器になるのではないか、という私見を述べました。 語については母語ではないので十分に準備をしておくとし て、発表では内容を正確に伝えるだけでなく参加者から反 応を引き出すことにもっと注意を向けるべきだったと感じ ました。最後の 5 分やセッション後に他国の専門家からコ メントをもらうことで、異なる視点から自身の考えが検証 されるため大変有意義でした。十分に時間を取るために、 事実の紹介はもっと絞るべきだったと悔いが残ります。今 年金数理人・73 回は 79 通の論文が受理されたそうで、これに加えて基調 日が長いとかお酒が入ると国籍問わず賑やかになる等、日 講演もいくつかあり、各社各様のプレゼンスタイルを見て 本での暮らしとの類似点や相違点を肌で感じて、異文化交 学ぶという点でも良い経験をさせて頂きました。次に、論 流の何たるかを少し理解できた気がしました。 文発表等の場に加えて、オスロ市庁舎でのレセプション、 ヴィーゲラン公園やムンク博物館への訪問、レストランで この度は IAA Colloquium に派遣して頂く栄誉に与り、 の会食、といった具合に、企業や自治体の支援の下に様々 大変貴重な機会を得られたことに感謝しております。本件 な催しが企画されていたのも印象的でした。私自身はノル のご案内、選考及び派遣決定後のサポートに関して、日本 ウェーに来たことがありませんでしたが、気持ちの良い天 年金数理人会の国際委員会の皆様に御礼申し上げます。また、 候も相まってとても素敵なところだなと感じました。内に 論文の執筆を助け派遣時の留守を快く預かって下さった職 こもるだけでなく外にも繰り出すことで、物価が高いとか 場の皆様にもこの場を借りて謝意を示したいと思います。 V.PBSS 委員会 委員会等の名称 PBSS Committee Meeting 日時 2015 年 6 月 7 日 15:00 - 17:10 出席者氏名(委員等の別) 清水信広(PBSS Committee 委員) 主要な論点 1 .IAA にとってのリスク及び PBSS の Work Plan ⑴ IAA のアンケートに対応するため、IAA という組織体にとってどのようなリスクがあるか、議論した。 ⑵ IAA の各 strategic objective に対応した PBSS の行動計画を巡って、以下の課題について議論した。 a.IAA は、各 supranational organization(SNO)との関係について、それぞれ relationship manager(RM)を置い ているが、PBSS としては、ISSA 等の関係する SNO との関係を巡って、RM をどのように支援・協力していく のか。 b.IAA が、ローカル組織の各個人会員に対し、より高い価値(Value)を提供していくためには、IAA 及び各セク ションはどう行動していくべきか。 2 .奨学金(bursaries)及び優秀論文賞 ⑴ PBSS が提供する bursaries の支給に関する原則及び金額について議論した。 ⑵ PBSS 優秀論文賞の授与に関する原則について議論した。 3 .出版物及びウェビナー ⑴ Marius 議長より、年金関係論文を掲載する出版物をどうするかという課題について報告があった。 ⑵ 今後のウェビナーで取り上げるべきトピックや、PBSS ウェビナーのフィーを会員以外から徴収することとする 可能性等について議論した。 4 .今後のコロキアム等 ⑴ 2016 年のコロキアムについて、議長より報告があった。 ⑵ 2017 年のコロキアムについて、議長より、メキシコ・アクチュアリー会(Colegio Nacional de Actuarios)のプレ ジデントであるパチェコ・ヴィラグラン(Act. Pedro Pacheco Villagrán)氏より、当該コロキアムをカリブのパラ ダイスであるカンクーンにて開催したい旨、文書で提案があったことが報告され、了承された。 ⑶ 2018 年については、ベルリンにて ICA が開催される。 ⑷ 2019 年のコロキアムに向けて、議長の提案を受け、議論した。 74・年金数理人 IAA Colloquium への参加報告 5 .財政報告 ⑴ 会計担当の Carl Hansen 氏から、以下について報告があった。 a.2014 会計年度の状況 b.2015 会計年度第 1 四半期の状況 c.IAA に支払う事務費負担金の見通し ⑵ PBSS として、どの程度の剰余金を保有していればよいか等について、議論した。 6 .PBSS メンバーシップ及びセクション・ルール ⑴ PBSS のセクション・ルールに関し、セクション議長会議を踏まえた改正案について議論した。 主要な結論・方向性 1 .論点 1 ⑵a . については、関係する RM との情報共有を密にしていくこととなった。 2 .論点 2 については、特に結論なし。 3 .論点 3 ⑴については、ASTIN Bulletin とは別の(年金関係論文を掲載する)出版物を創刊することについては、他 のセクションからの反対が多く実現が望めないため、ASTIN Bulletin に掲載する論文の範囲を拡大する方向で進め ていくこととなっている。 4 .論点 3 ⑵については、今後のウェビナーで取り上げるべきトピックとして、AAE(旧 GCAE)アップデート、割引 率モノグラフ、ICA2014 における優秀論文、ロンジェビティ等が挙げられている。また、PBSS ウェビナーのフィー を会員以外から徴収することとする可能性等についても議論したが、結論なし。 5 .論点 4 ⑴については、以下のとおりである。 a.6 月 26 日~ 29 日、カナダ・ニューファンドランド島セント・ジョンズの新コンベンション・センターで、IAA と IPEBLA のジョイント・コロキアムとして開催予定であること。なお、ニューファンドランド島は、飛行機か船 でしかアクセスできないこと。 b.カナダアクチュアリー会(CIA)とのジョイント・セッションが一部含まれること。 c.前後して CIA の年次大会が開催されるが、CIA のセッションと PBSS のセッションの双方に参加可能とするかと いう検討課題があること。 6 .論点 4 ⑵については、PBSS としてこの提案を受け入れることが決定された。なお、IAA のセクションではないが、 他の組織とのジョイント開催となる可能性は残っている。 7 .論点 4 ⑷については、議長より、まだ早い段階にあるが検討を開始することが提案され、了承された。なお、会員 組織からのコロキアム開催提案を誘うような仕組みが必要ではないかといった意見があった。 8 .論点 5 ⑴については、以下のとおりである。 a.については、タイミング的な要素もあり、1 万 1 千カナダドル弱の剰余となっていること。 b.については、今のところ支出項目はないこと。 c.については、現在、会員 1 人当たり 22 カナダドルの負担となっているが、実際には 1 人当たり 27 カナダドル前後 を要しているため、1 人当たり 24 カナダドル程度への引き上げを容認しなければならない状況のところ、ワシン トン ICA の剰余の一部をこの 1 人当たり事務費負担金の引き上げ抑制に利用するアイデアが出されており、恐ら く今後 2 ~ 3 年度は、引き上げ抑制される見込みであること。 9 .論点 5 ⑵については、特に結論なし。 10.論点 6 については、改正案の主なポイントは以下のとおりとなっているが、委員会として改正案を固めたという状 況にはない。なお、セクション・ルールの改正には、総会の少なくとも 60 日前に、改正案が各通常会員に通知され なければならないことになっている(セクション・ルール 22 条 a)。 a.委員会委員の立候補は、通常会員のなかから求めること。 年金数理人・75 b.委員会委員の任期は 2 期 8 年が上限となっているが、オフィサーに選任された場合は、あと 1 期 4 年の任期が許容 されること。 c.委員会委員の義務と責任について、規定を設けること。 d.委員会への出席状況が悪い等の場合において、当該委員を除く 3 分の 2 以上の多数による議決により、当該委員を 罷免することができるものとし、その具体的なケース及び罷免手続きを定めること。 JSCPA との関係 上述のとおり。 今後の予定 次回 PBSS 委員会は、2015 年 10 月 14 日午後、バンクーバーにて開催の予定となっている。 Ⅵ.PBSS 総会 委員会等の名称 PBSS 総会 日時 2015 年6月 8 日 16:45 – 17:15 出席者氏名(委員等の別) 藤井康行(一般会員:Ordinary Member) 主要な論点 1 .PBSS 委員会の委員の選挙結果 2 .委員長の報告 過去1年の活動が、下記の諸点で報告された。 a.ICA ワシントン DC について b.ASTIN Bulletin について c.Webinar について d.優秀賞について e.参考文献の配信について f.途上国支援について 3 .書記の報告 現状、および、過去1年の事象が、下記の諸点で報告された。 a.会員数についいて b.委員会ミーティングについて c.法人会員について 4 .会計の報告(会計担当が欠席のため、委員長が代読) 5 .今後のコロキアムについて 委員長から報告があった。 主要な結論・方向性 1 .PBSS 委員会の委員の選挙結果 改選3名に対して、4名の立候補があり、電子投票により選挙が行われた。選挙結果が、IAA 代表の委員から報告 された。結果は、下記の通りで、3名の当選者は全て再選者であった。委員の任期は4年で、再選は一回限り可と 規定されている。 Abraham Hernández – Mexico 当選 76・年金数理人 IAA Colloquium への参加報告 Zerrouki Kamel – Algeria Florian Leger – Switzerland 当選 Nobuhiro Shimizu – Japan 当選 PBSS 委員会内の職務分担は、PBSS 委員会で改めて決定するとのことであった。 2 .法人会員の件については、JSCPA から断りの連絡があった旨が報告された。PBSS 委員会としては、希望するアク チュアリー会があれば、今後も検討する方向であるとの説明があった。 3 .今後のコロキアムは、次の通り。 2016 年 カナダ・セントジョンズ 2017 年 メキシコ・カンクーン 2018 年 ドイツ・ベルリン(ICA) JSCPA との関係 上述の通り。 今後の予定 上述の通り。 年金数理人・77 78・年金数理人 国際アクチュアリー会コロキアムの発表者募集 年金数理人・79 80・年金数理人 国際アクチュアリー会コロキアムの発表者募集 年金数理人・81 大学教育推進委員会の 設置について 副理事長 大学教育推進委員長 枇杷 高志 本年 4 月の理事会で、従来の「大学院教育推進特別委員 義の 14 コマ程度を 3 名程度の講師が分担し、公的年金を 会」を常任委員会に移行し、「大学教育推進委員会」とい はじめとする年金制度の概論説明に始まって、年金数理の う名称に改組しました。本稿では、そのことをお知らせす 理論や実務を解説し、投資理論についても触れるというカ るとともに、当委員会の活動内容について改めてご紹介し リキュラムとなっています。 たいと思います。 当会は、平成 13 年度に企画調整委員会の下に「大学院 教育推進小委員会」を設置し、平成 14 年度から大学院で の講義を開始し、その後「大学院教育推進特別委員会」を 設置して大学院等における年金数理教育の推進活動を行っ てきました。 表:年金数理人会が関与する大学での年金数理講義 (50 音順) 大学名 大阪大学 設置学科 開始時期 講義形態 基礎工学研究科 平成 14 年 集中講義 慶應義塾大学 理工学研究科 平成 20 年 活動の開始から 10 年以上が経過し、講義を実施する大 学も徐々に増え、当会の正会員の中にも学生時代に同講義 を受講した方が出てきています。このように、大学院教育 東京工業大学 社会理工学研究科 平成 15 年 通常講義 (半期) 通常講義 (半期) 通常講義 東京理科大学 理学研究科 平成 15 年 一つと位置付けて継続していくために、常任委員会に移行 東北大学 理学研究科 平成 27 年 集中講義 することといたしました。また、実際の講義では大学院生 名古屋大学 多元数理科学科 平成 22 年 集中講義 早稲田大学 理工学術院 平成 19 年 に関する活動が定着してきた中、今後も当会の公益事業の に限らず大学 3、4 年生が受講するケースもあることから、 「大学教育推進委員会」という名称にした次第です。 (半期) 通常講義 (半期) 当会では現在、7 つの大学の講義に関与しています。今 基本的には理工系学部の数学系学科をベースに講義を設 年度からは新たに東北大学での寄附講義がスタートするこ 置している大学が多いのですが、一部の大学では他専攻に とになりました。なお、形式としては、当会の寄附により も広く開放していたり、文科系学部からの受講を受け入れ 設置される「寄附講義」と、大学の経費により運営され ているところもあり、バラエティがあります。受講者数と る「正規講義」に分けられます。また、講義の内容として しては、20 名前後の大学が多いですが、一部には年度に は、大学による差異は多少あるものの、半期または集中講 よっては 100 名近い受講生がいるところもあります。ま 82・年金数理人 大学教育推進委員会の設置について た、ある大学では、大学 1 年生向けに年金数理人の紹介を ので、学生を惹きつけるプレゼンテーション力も求められ 行う単発の特別講義を実施した例もありました。 ます。そうしたなかで所属法人での業務と両立しながら講 義を行うことは大変なことと感じますが、反面、やりがい 社会で活躍する理系専門職の一つとしての年金数理人に も大きいと感じます。 対しては、学生も大学も強い関心を持っています。当会と これまで講師を担っていただいた方々にはそのボラン しては、こうした期待に応えつつ、将来の年金数理人の ティア精神とご尽力に感謝申し上げます。 「卵」を育てる意味でも、こうした活動を継続し充実して また、当会が将来にわたってこうした活動を継続するた いきたいと考えています。 めには、講師の確保が重要な課題となります。今後、講師 一方、講義資料の準備や試験などによる成績の判定な の確保が必要な場合には、使命感と熱意を持って取り組ん ど、講師としての活動には時間と労力がかかります。ま でいただける方のご協力をいただきたいと思いますので、 た、以前に比べると学生の評価も辛口になってきています よろしくお願い申し上げます。 年金数理人・83 年金数理人の 輪 (第 24 回) 前回:岡田直也会員(三井住友信託銀行株式会社) その後は、確定給付企業年金の数理計算業務、総合型厚 →今回:野本高靖会員(第一生命保険株式会社) 生年金基金の指定年金数理人業務を中心に担当しました。 →次回:守屋一典会員(株式会社りそな銀行) 指定年金数理人業務では今まで経験したお客様とは異なる 点が多く、ずいぶん苦労しました。代議員の方に「(説明 共通の質問:現在、私の商用業務は何か? が難しく)分かるような、分からないような。。。」と言わ [答え]平成 27 年 3 月まで確定給付企業年金の数理計算業 れてしまったこともありますが、代議員会では専門的な言 務・厚生年金基金の指定年金数理人業務等を担当し、平成 葉を極力使わず、ポイントを絞り、安心してもらうことを 27 年 4 月より生命保険会社における ALM 業務を担当して 意識して対応しました。 います。 そして、この 4 月より数理人業務から一旦離れ、新所属 で生命保険の ALM 業務を担当しています。現在は各商品 生命保険会社に入社し、企業年金業務を約 12 年間経験 や商品全体の ALM リターン・リスクの計算、再保険会社 いたしました。現在は生命保険分野の業務を担当していま との折衝等を担当しています。企業年金業務と比べると、 すが、こちらは担当してまだ日が浅いこともあり、今まで 業務の性格上、ホストシステムや汎用的なツールに頼るこ の業務を簡単に紹介させていただきます。まず、入社当初 とが難しいため自所管で金融工学を駆使したツールを作 は厚生年金基金の財政業務を担当いたしました。私は平成 成・運用している点が異なり、大変な部分だと感じていま 15 年入社であるため、配属当時は企業年金をマイナス運 す。 用が直撃した際の財政決算等を担当しましたが、回復計画 の策定による掛金回避・予定利率 5.5%での設計などを不 最近は 12 年間慣れ親しんだ企業年金業務から離れたば 思議に思いながら作業した記憶があります。 かりですので、日々、一抹の寂しさを感じています。振り 次に、適年移行に伴うコンサルティング業務、年金 返ってみると、コンサルティング業務などを通じ、企業年 ALM・将来予測計算を中心に担当しました。まだ年金数 金業務では色々なお客様を担当させていただきました。折 理人になっていない若手の頃から、数理計算ばかりでなく 衝対応は時に大変でしたが、数理計算を行い、お客様が容 複数の熟練コンサルタントに同行してコンサルを経験した 易に理解できるよう説明内容・報告資料・話し方を熟考し ことは私の基礎となっています。コンサルにも色々と手法 た上で報告の場に臨むことは刺激的でやりがいが大きかっ があるのだと思いますが、あるコンサルタントから「コン た、と企業年金業務から離れることで再認識できるように サルは情報を伝えた上でお客様に議論してもらい、お客様 なりました。 に答えを見つけてもらうことが大切」 、 「現状分析が最も重 生命保険業務は担当し始めたばかりですが、企業年金業 要」と諭された点がとても印象に残っています。 務での経験を活かし、当面は生命保険分野との共通点・相 84・年金数理人 年金数理人の輪(第 24 回) 違点を考えながら地道に努力していきたいと考えていま ず目まぐるしく変化し続け、その中でいろいろな経験がで す。いずれは企業年金業務を再び担当したいのですが、し きたことは、この業務に関わることができて良かったと再 ばらくは生命保険分野を経験することでの成長を目指そう 認識し、改めてやりがいを感じているこの頃であります。 と思います。一方、環境変化の大きい昨今において、年金 分野の勉強を疎かにしていては年金数理人としての知識・ 現在は、数理計算業務や年金数理人業務を主としており、 能力はすぐに劣化していくという実感を最近持つようにな 業務内容に関しては皆様よくご存じのことだと思いますの り危機感を覚えています。年金数理人としては研修会への で、特にご紹介するようなことはないのですが、最近感じ 参加等を介して引き続き自己研鑽に努め、年金制度の法改 たことを少し書かせていただきたいと思います。 正や基準の改正等について可能な限り専門知識の吸収に励 んでいきたいと思っています。 昔は今ほど便利ではなかったために、今の時代から考え てみるといろいろと苦労をしていたと思います。特にシス さて、次回は、りそな銀行の守屋さんにお願いしたいと テム性能や機能の向上は事務処理のスピードを加速させ、 思います。守屋さんは、数理人会の自主研究会でメンバー 処理工程を大きく削減させてきたと思います。数理計算に としてご一緒した方です。快く引き受けていただきました おいてもシステムの進化により仕事の進め方も変化してき ので、私も楽しみにしています。 ています。一昔前は紙データから数理計算用にシステムデ ータ化をするのにも数日間を要することもありましたし、 以上 計算結果もすぐには確認できなかったため、何度もやり直 さなくていいように事前に結果を想定しながら慎重に処理 していました。そもそも計算専用の端末が十分でなく、誰 前回:金子 強会員(株式会社格付投資情報センター) かが作業を終えるのを待っている時間もあったと記憶して →今回:榊原昭仁会員(株式会社りそな銀行) います。 →次回:長澤直英会員(富国生命保険相互会社) 今は瞬時にシステムで処理されるため、何度も試行して みて最適な結果を選択していくことが普通です。そういう 共通の質問:現在、私の商用業務は何か? 意味では作業はとても楽になったと思いますが、一方で、 [答え]私の現在の主な業務は、厚生年金基金および確定 時代の経過とともに今まで以上により速く計算結果を出す 給付企業年金に関する数理計算業務、退職給付計算業務並 ことやより詳細な分析を報告することが求められてきてお びに年金数理人業務です。 り、逆に、短い時間の中で熟考し、的確に判断することが 重要となってきていると感じます。私が若い頃に思ってい この原稿を書くにあたり改めて自分のこれまでを振り返 たように「将来、便利になったら作業は機械にまかせてゆ ってみますと、入社後すぐに企業年金業務に携ってから早 っくり仕事ができるだろう。 」という楽観的な考えは現実 いものでもうすぐ四半世紀を迎えようとしています。超長 とならなかったことを実感しております。 期の制度である年金制度からしますとわずかな期間に過ぎ ない訳ではありますが、しかし、その間には入社当時から 最近、人工知能に関する書籍を読みました。過去のあら は全く想像もつかないような企業年金を取り巻く様々な出 ゆる膨大なデータを蓄積し、将来起こる事象を高い確率で 来事がありました。適格退職年金の廃止、確定給付企業年 予測、判断することが近い将来に可能になるというもので 金・確定拠出年金の創設、退職給付会計の導入、代行返上 す。人工知能が人間を超えるのが概ね 30 年後くらいと想 や厚生年金基金制度の見直し・・・など。 定されるとのことです。そうなると、専門的な職業のほと どの業界でもそれぞれの時代の背景や時勢により大きな んどが人工知能にとって代わられるのだそうです。 例えば、 変革を重ねてきたと思いますが、企業年金業界も例に違わ 弁護士や税理士における法律や過去の判例調査などの知識 年金数理人・85 を必要とするアシスタント業務は人工知能がすべて行い、 次は富国生命の長澤さんにお願いしたいと思います。長 仕事がどんどん減少していくと予想していました。年金数 澤さんとは 10 年くらい前に企業年金連合会の年金財政シ 理人も例外ではないでしょう。 リーズ編集委員でご一緒させていただき、それ以来、何か 技術の飛躍的な進歩が年金数理人を不要な職業にする とお世話になっております。またいろいろと意見交換させ か、それとも、法令知識や過去事例の調査などは人工知能 ていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願い に任せて作業を効率化しつつ、より専門的な能力を発揮す いたします。 ることでさらに重要な役割を担っていくことになるか。今 後の我々の頑張りにかかっている(?)と思います。皆さ んはどう思われますか。 86・年金数理人 以上 年金数理人の輪(第 24 回) 年金数理人・87 日本年金数理人会の活動状況 職業専門性研修会の開催 産増減計算書)、財産目録承認の件 日時 平成 27 年 1 月 21 日 10:00 ~ 16:00 第2号 定款の変更承認の件 場所 三田NNビル 原案通り承認された。 ・IAA教育シラバスと職業専門性 特別講演会の開催 ・年金数理人に求められる職業専門性 ・当会の行動規範及び懲戒規則 日時 平成 27 年 5 月 27 日 16:00 ~ ・当会CPD制度の考え方と実地テストの状況 場所 ANAインターコンチネンタルホテル東京 ・年金数理実務に関する事例研究/自由討議 「これからの日本経済・財政を見る視点」 前財務事務次官 木下康司氏 評議員会の開催 理 事 会 日時 平成 27 年 1 月 30 日 11:00 ~ 場所 東京會舘 平成 26 年度 ・平成 27 年度事業計画 ( 案 ) について審議 第 9 回 平成 27 年 1 月 15 日 (平成 26 年度事業概要に対する質疑応答を含む) ・公益社団法人日本アクチュアリー会との情報交換会の 開催について 第 63 回研修会の開催 ・平成 27 年度事業計画書(案)について 日時 平成 27 年 2 月 2 日 15:00 ~ ・評議員会の開催について 場所 TKP市ヶ谷カンファレンスセンター ・CPD 制度創設に向けた実地テストの継続実施につい 「IAS19 の概要とその動向」 堀田晃裕委員長 (監査法人トーマツ) 青井知幸委員 (日本生命) 柴田伸一委員 (監査法人トーマツ) て ・平成 26 年度実務研修会eラーニング対象講座の選定 について ・パンフレットの発刊について ・IAA:年次対応について 実務研修会の開催 ・IAA:カウンシル電子投票について 日時 平成 27 年 3 月 5 日、6 日 ・会員の入会について 場所 東京ファッションタウンビル ・退職給付会計基準委員会 委員の退任について 平成 27 年度定時総会の開催 第 10 回 平成 27 年 2 月 19 日 日時 平成 27 年 5 月 27 日 15:00 ~ ・平成 27 年度事業計画の承認について 場所 ANAインターコンチネンタルホテル東京 ・平成 27 年度事業計画書、平成 27 年度収支予算書(正 報告事項 味財産増減予算書及び正味財産増減予算書内訳表)、 第1号 平成 26 年度事業報告の件 資金調達及び設備投資の見込みを記載した書類の承認 第2号 平成 27 年度事業計画書、収支予算書、資金調 について 達及び設備投資の見込みを記載した書類の件 決議事項 第 11 回 平成 27 年 2 月 19 日 第1号 平成 26 年度貸借対照表、損益計算書(正味財 ・企業年金連絡協議会との情報交換会について 88・年金数理人 日本年金数理人会の活動状況 ・IAA カウンシル電子投票について ついて ・会費軽減申請について ・会員の入会について ・ASBJ 公開草案「退職給付に関する会計基準の適用指 ・平成 26 年度決算について 針(案) 」の公表への対応について ・委員会規則の改定について ・正会員入会届の改定について 第 12 回 平成 27 年 3 月 19 日 ・試験委員会 委員の交代について ・あずさ監査法人 アドバイザリー業務委託契約につい ・IAS19 に関する数理実務基準の制定について て ・ 「海外出張旅費に関する内規」の改定について ・「海外出張のしおり」および「海外出張旅費明細 兼 旅費精算チェックシート」の改定について ・退職給付会計に関する数理実務基準・数理実務ガイダ ンスの改定について ・大学院教育推進特別委員会の常任委員会への移行につ いて ・特定費用準備資金の積み立てについて ・教育・研修委員会 委員の交代について 第 3 回 平成 27 年 4 月 23 日(決議の省略の方法による) ・IAA:2015 年 4 月 11 日 カウンシルの対応について ・IAA コロキアム(ノルウェー・オスロ 2015 年 6 月 ・IAA:カウンシル電子投票の対応について 7-10 日)への派遣者について ・事務管理委員会 委員の退任について 企画調整委員会 ・特定会員の申請について ・勘定科目の改定について 第 6 回 平成 27 年 1 月 21 日 ・退職給付会計基準委員会 委員の追加について ・理事会報告 ・東北大学大学院理学研究科への寄付講義の実施につい ・平成 27 年度 事業計画について ( 委員会案確定) て ・ISAP1 への対応方針について 平成 27 年度 第 7 回 平成 27 年 2 月 25 日 第 1 回 平成 27 年 4 月 13 日 ・理事会報告 ・特定費用準備資金の積み立てについて ・ISAP1 への対応状況について 第 2 回 平成 27 年 4 月 16 日 第 8 回 平成 27 年 3 月 25 日 ・企業年金関連提言特別委員会の設置について ・理事会報告 ・試験・教育制度改正特別委員会の設置について ・ISAP1 への対応状況について ・委員会の委員長及び担当理事の選任について ・企画調整委員会 委員の交代について 第 9 回 平成 27 年 4 月 22 日 ・平成 26 年度事業報告および附属明細書の承認につい ・理事会報告 て ・ISAP1 への対応状況について ・平成 27 年度定時総会の開催および付議事項について 総 務 委 員 会 ・IAA コロキアム(ノルウェー・オスロ 2015 年 6 月 7-10 日)への派遣者について 平成 26 年度 ・IAA:カウンシル電子投票について 第 3 回 平成 27 年 3 月 27 日 ・国際委員会の委員への就任の依頼書について ・平成 27 年度定時総会運営について ・IAA:IAA の組織における任命等と JSCPA の関係に 年金数理人・89 平成 27 年度 2015 年会費インボイス 第 1 回 平成 27 年 5 月 8 日 FQA 名簿 ・平成 27 年度定時総会運営について 2014 年確認書 教育に関する質問書への回答 教育・研修委員会 第 7 回 平成 27 年 2 月 3 日 平成 27 年 2 月 ・実務研修会の準備について ・IAA カウンシル電子投票(賛成票) ・CPD 実地テストの検証及び CPD 制度創設の準備 IAA 執行委員会委員の承認 ・年金数理自主研究会について ・職業専門性研修会について 平成 27 年 3 月 ・一般研修会について ・IAA カウンシル電子投票(賛成票) IAA 2014 年度の決算案の承認 第 8 回 平成 27 年 4 月 7 日 ・実務研修会の振り返りについて 第 3 回 平成 27 年 3 月 31 日 ・CPD 実地テストの検証及び CPD 制度創設の準備 ・IAA ミーティング(スイス・チューリッヒ)のアジェ ・年金数理自主研究会について ・一般研修会について ンダについて ・IAA コロキアム(ノルウェー・オスロ) 、および、予 行演習について 広 報 委 員 会 平成 27 年 1 月 平成 27 年 4 月 ・数理人会パンフレット発刊 ・IAA ミーティング(スイス・チューリッヒ)へ派遣 第 3 回 平成 27 年 2 月 27 日 平成 27 年 5 月 21 日 ・理事会報告 ・IAA コロキアム(ノルウェー・オスロ)の予行演習、 兼、 ・会報第 37 号発刊について 外国アクチュアリー会年金専門家交流会を開催 ・数理人会パンフレット発刊について 事務管理委員会 ・数理人会HPについて 平成 26 年度 平成 27 年 3 月 第 8 回 平成 27 年 1 月 22 日 ・会報第 37 号の発刊 ・12 月の活動報告 ・海外出張のしおり等の改定について 平成 27 年度 第 1 回 平成 27 年 5 月 1 日 第 9 回 平成 27 年 2 月 26 日 ・理事会報告 ・1 月の活動報告 ・数理人会HPについて ・会費予告案内について ・決算対応について 国 際 委 員 会 平成 27 年 1 月 第 10 回 平成 27 年 3 月 26 日 ・IAA 年次対応 ・2 月の活動報告 90・年金数理人 日本年金数理人会の活動状況 ・勘定科目の改定について 第 10 回 平成 27 年 2 月 26 日 日本基準チーム ・会費のご案内について ・実務研修会の内容に関する意見交換 平成 27 年度 第 11 回 平成 27 年 3 月 13 日 全体会 平成 27 年 4 月 ・ISAP1 および ISAP3 への対応について ・決算監査について ・委員会規則の改定について 平成 27 年度 ・正会員入会届の改定について 第 1 回 平成 27 年 5 月 1 日 死亡率小委員会 ・財政運営で使用する死亡率について 調査研究委員会 平成 27 年 1 月 第 2 回 平成 27 年 5 月 20 日 全体会 ・JSCPA 調査報 No.10 発行 ・IAS19 に関する数理実務基準の制定について 大学教育推進委員会 第 2 回 平成 27 年 1 月 29 日 ・「年金数理人の活動領域拡大に関する調査」の実施に 平成 27 年 1 月~ 5 月 ・各大学での正規講座の支援(講師推薦等) ついて ・JSCPA 調査報 No.11 の内容について 大阪大学 / 慶應義塾大学 / 東京工業大学 / 東京理科大 学 / 名古屋大学 / 早稲田大学 財政運営実務基準委員会 平成 27 年 3 月 5 日、6 日(平成 26 年度実務研修会) 平成 27 年 3 月~ 5 月 ・財政運営実務基準に関する講座を開催 ・東北大学での寄附講義の開講準備 紀 律 委 員 会 第 2 回 平成 27 年 3 月 2 日 平成 26 年度 ・東北大学での寄附講義実施について 第 1 回 平成 27 年 2 月 23 日 ・常任委員会への移行について ・行動規範・懲戒規則の内容確認 第 3 回 平成 27 年 5 月 12 日 試 験 委 員 会 ・東北大学での寄附講義実施について 平成 27 年度 第 1 回 平成 27 年 4 月 13 日 ・平成 27 年度能力判定試験要領の検討 情報通信技術(ICT)活用検討特別委員会 第 3 回 平成 27 年 2 月 27 日 ・広報委員会と合同開催 退職給付会計基準委員会 死亡率小委員会 平成 26 年度 平成 27 年度 第 1 回 平成 27 年 5 月 1 日 ・広報委員会と合同開催 第 9 回 平成 27 年 1 月 13 日 全体会 ・退職給付に関する会計基準の適用指針の公開草案に対 するコメント検討 企業年金部会関連検討特別委員会 第 2 回 平成 27 年 2 月 10 日 ・意見交換を実施 年金数理人・91 企業年金関連提言特別委員会 平成 27 年 4 月~ ・DB掛金拠出の弾力化についての検討 試験・教育制度改正特別委員会 平成 27 年 4 月~ ・IAA教育シラバス改定案の確認 ・IAA教育シラバス改定案に対する当会意見を検討 92・年金数理人 日本年金数理人会の活動状況 年金数理人・93 会 員 異 動(2015 年 1 月 1 日~ 2015 年 5 月 31 日) 1.入 会(正会員 18 名(準会員からの昇格 7 名) 、準会員 20 名) 日 付 資格 会員番号 氏 名 15.1.15 準会員 612 比 津 貴 行 三菱UFJ信託銀行 15.1.19 正会員 589 菊 池 清 隆 全国勤労者福祉・共済振興協会 15.4.01 〃 126 松 原 良 JPアクチュアリーコンサルティング JPアクチュアリーコンサルティング 15.4.06 〃 591 太 田 剛 〃 〃 595 関 寛 仁 三井住友信託銀行 〃 〃 596 増 田 智 巳 三井住友信託銀行 〃 〃 * 597 代 田 正 治 全国共済農業協同組合連合会 15.4.09 〃 * 601 日比野 渉 富国生命保険 15.4.10 〃 599 林 謙太郎 みずほ信託銀行 〃 〃 600 三 浦 進太郎 みずほ信託銀行 〃 〃 602 柿 沼 彰 寛 日本生命保険 〃 〃 * 603 小 松 啓 伸 日本生命保険 〃 〃 * 604 藤 原 弘 康 日本生命保険 〃 〃 605 松 本 修 日本生命保険 〃 〃 * 606 吉 平 武 史 日本生命保険 〃 〃 607 齊 藤 耕二郎 りそな銀行 15.4.13 〃 598 繁 田 峻 みずほ信託銀行 15.4.14 〃 * 592 比 津 貴 行 三菱UFJ信託銀行 〃 〃 * 593 吉 田 興 正 三菱UFJ信託銀行 15. 4.16 準会員 541 石 井 晋 平 みずほ信託銀行 〃 〃 559 西 村 壮 弘 みずほ信託銀行 〃 〃 562 稲 田 哲 生 みずほ信託銀行 〃 〃 613 徳 田 昭 夫 新日本有限責任監査法人 〃 〃 614 小山田 亮 太 住友生命保険 〃 〃 615 永 島 武 偉 マーサージャパン 〃 〃 616 鈴 木 武 徳 第一生命保険 〃 〃 617 福 田 浩 平 第一生命保険 〃 〃 618 釘 岡 祐 太 第一生命保険 〃 〃 619 山 越 陽 介 第一生命保険 〃 〃 620 神 保 雅 人 明治安田生命保険 〃 〃 621 川 村 峻 介 明治安田生命保険 〃 〃 622 本 山 稔 邦 全国共済農業協同組合連合会 〃 〃 623 西 端 剛 志 富国生命保険 〃 〃 624 金 澤 幸 始 日本生命保険 〃 〃 625 福 本 聡 日本生命保険 〃 〃 626 植 竹 康 夫 日本生命保険 〃 〃 627 大 橋 祐 太 日本生命保険 〃 〃 628 一 丸 全 人 日本生命保険 *は準会員から資格変更 94・年金数理人 所属法人 会員異動 2.退 会(正会員7名、準会員9名) 日 付 資格 会員番号 氏 名 所属法人 15. 3.12 正会員 261 川 島 孝 夫 JPアクチュアリーコンサルティング 15. 4. 1 〃 046 鈴 木 正 巳 個人 〃 〃 163 六 川 厚 朝日生命保険 〃 〃 164 石 垣 英 宣 個人 〃 〃 454 川 上 恭 史 個人 〃 〃 537 鈴 木 潤 身 三菱東京UFJ銀行 〃 準会員 068 吉 沢 俊 ソニー生命保険 〃 〃 402 庄 子 正 りそな銀行 〃 〃 512 小 谷 明 央 日本生命保険 〃 〃 522 深 谷 和 義 プレデンシャルジブラルタファイナンシャル生命保険 〃 〃 547 大 曲 岳 史 ソニーライフ・エイゴン生命保険 〃 〃 555 金 山 峻 第一生命保険 〃 〃 590 上 田 剛 意 マーサージャパン 〃 〃 600 富 澤 宏 紀 第一生命保険 〃 〃 603 藤 田 剛 日本生命保険 15. 5.26 正会員 080 堀 司 郎 個人 3.会 員 数 所 属 正会員 準会員 名誉会員 特定会員 合 計 信 託 183 017 01 - 201 生命保険 130 056 01 - 187 指定法人 037 007 02 - 046 その他の法人 093 019 02 - 114 個 人 032 001 13 26 072 合 計 475 100 19 26 620 賛助会員 1 年金数理人・95 年金数理人 No.38 公益社団法人 日本年金数理人会 〒108-0014 東京都港区芝4-1-23 三田NNビル地下1階 電 話:03-5442-0208 FAX:03-5442-0700 http://www.jscpa.or.jp 発行責任者 和田 貴一 ※本誌は再生紙を使用しております。 96・年金数理人
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