競技飛行の制御にSTM32の 処理性能が貢献

Success STORIES
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ST マイクロエレクトロニクス株式会社
ST マイクロエレクトロニクス株式会社
数ミリ秒のレスポンスが要求される
競技飛行の制御にSTM32の 処理性能が貢献
ST マイクロエレクトロニクスは、ARM の Cortex-M コアを搭載した「STM32」をラインアップしている。その STM32 の採用を予定し
カの 32 ビット・マイコンも比較したが、同等
できるようになり、設計に応じた最適な調達が
で、Cortex-M3 コ ア を 搭 載 し た MCU で は 初 め
ているのが日本遠隔制御(JR PROPO)である。ここでは、ST マイクロエレクトロニクスに STM32 の概要を聞くとともに、日本遠隔
の処理では消費電力が大きく、同じ演算でも
可能となります」
(野田氏)。
て 100MHz を 超 え る 120MHz(150DMIPS)と
STM32 ファミリとして
豊富な品種をラインアップ
ST マイクロエレクトロニクス(以下 ST)は、
いう高性能な製品の提供を 2011 年のはじめ頃
「われわれのアプリケーションは、バッテリ
れている。
「汎用のものをはじめ、USB(Universal
に予定している。ピン数は多ピンニーズに応
駆動という点から消費電力には気を配らないと
Serial Bus)や モ ー タ 制 御、DSP(Digital Signal
え る 最 大 176 ピ ン、 イ ー サ ネ ッ ト、USB2.0 の
いけません」
(古山氏)。
Processor)などに特化したものなど 100 種類く
High Speed モ ー ド、CMOS(Complementary
STM32 F-1 シリーズは、コネクティビティ・
る。電波形式も多彩で、AM や FM、PCM(Pulse
ライン、パフォーマンス・ライン、USB アクセ
Code Modulation)、DSSS(Direct Sequence
さらに古山氏は、STM32 に搭載されているペ
らい用意しています。ファームウエア・ライブ
Metal Oxide Semiconductor)カメラ・インタ
ス・ライン、アクセス・ライン、バリュー・ラ
S p r e a d S p e c t r u m ) や FHSS(Frequency
リフェラルの柔軟さや機能の高さも評価する。
ラリと評価ボードを用いることで、簡単に評価
フェース、暗号化エンジンなどが用意されてお
インといった製品ラインがある。さらに STM32
Hopping Spread Spectrum)方式などがある。
を開始することができるのも特徴のひとつで
り、STM32 の市場を大きく広げるものになる。
ARM7 の時代から ARM コアを採用してきてお
F-2 シリーズは F-1 シリーズよりも高性能であ
り、多くの実績を持つ。Cortex-M コアを搭載
り、メモリや内蔵ペリフェラルが充実しており、
数 に は、27MHz 帯 や 40MHz 帯、72MHz 帯 が 国
し た「STM32」を は じ め、ARM7 を 搭 載 し た
STM32 L シリーズは超低消費電力のマイコンで
内で使用されてきたが、同時に使用できるバン
ある。
ド数に制限があった。近年では、2.4GHz 帯が利
「STR7」や ARM9E 搭載の「STR9」など、豊富な
豊富なファームウエア・ライブラリも用意さ
STM32 の方が良かったという。
制御に STM32 の採用理由やその効果などを聞いた。
従来から使用されてきたメガヘルツ帯の周波
「タイマのプリスケーラも高機能で、他メーカ
の 32 ビット・マイコンと比べても大きなメリッ
プで活用することで、とにかく早く開発できま
し、日本のお客様の声を反映した製品を提供し
制御技術のかたまりです。プロポのスティッ
す。量産品についても、一部のファームウエ
ていきます」
(野田氏)。
性能の高さについても、「ヘリコプターは、
「いろいろな製品ラインがある中、STM32 F-1
用できるようになり、混信を抑制する技術であ
ク操作がすべてではなく、高性能なジャイロ・
ア・ライブラリをそのまま使っています」
(古
Cortex-A9 MPCore コ ア を 採 用 し た「T2430H」
のバリュー・ラインは ST 日本法人が主導して
る DSSS 方式や FHSS 方式の採用によって、同時
センサやガバナ等の機器の助けを借りないと、
山氏)という。
などもある。
仕様を決め製品化したものです。海外メーカな
に使用可能なバンド数が大幅に増えている。
特に競技では対応は難しくなります。ベテラン
ファームウエア・ライブラリは ST のホーム
ガバナとは、ヘリコプターのメインロータの
のフライヤーは、数ミリ秒の違いが分かるほど
ページから無償でダウンロードできる。使用の
回転数を一定にするもの。「ロータのピッチ(角
で、少しでも制御を変えると『あれ?いじった
際のロイヤリティもかからない。
度)操作によって生じる負荷が影響して回転数
でしょう』と指摘されます。また、操縦フィー
ジャイロ・センサや
に変動が生じると操作性が犠牲になります。競
リングが『ニュルっとした雰囲気で気持ち悪
ガバナの次期製品に採用
技術的な問い合わせの 90%以上を
技などで極めて微妙な操縦が要求される場合に、
い』、『カチっとしていていい』、『指に追随し
国内で対応
ガバナがあると有利になることが多いですね」
ていていい』といった表現をされることが多く、
今後もさまざまな ARM コア搭載製品をリリー
がら日本のお客様の声を反映した製品も提供し
ています」
(野田氏)。
スしていきます」
(ST 野田氏)。
STM32 フ ァ ミ リ は、STM32 F-1、STM32 F-2、
STM32 L というシリーズがある。
STM32 ファミリをジャイロ・センサやガバ
(日本遠隔制御 古山氏)。
ナ(Governor:調速機)の次期製品に採用する
われわれとしてはそういった抽象的な要求にも
製品は良いのだけれど、海外メーカは苦手と
対応していく必要があります。STM32 のように
いう人も多いかも知れない。それに対して ST
ペリフェラルの柔軟さや
処理性能にマージンがあれば、対応しやすいで
は、「ハードウエア・マニュアルの日本語化を
PROPO)である。
処理性能を高く評価
すね。さらに、STM32 だと処理性が高いことか
行い、OS やミドルウエアについても日本のサー
ら、高いリアルタイム性能が要求される制御演
ド・パーティと連携するなど、日本市場のお客
算部も移植性を保ったまま C 言語で記述できる
様に特化したサポートを強化しています」
(野
のでこれまでの資産も活用できます」
(古山氏)
田氏)。技術的な問い合わせについても 90%以
とのことだ。
上を日本国内で解決しているとのことだ。
(Radio Control:RC)装置(プロポ)、産業用無
線装置、模型ヘリコプターなどを手がけている
STM32 は、とにかく低消費電力なことに加え、
処理性能も高く、かつ低価格であり、他メー
メーカである(図)。
ち な み に プ ロ ポ と は、
豊富なファームウエア・ライブラリ
ステム」の略で、一般的
古山 寛一 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
いう。
発に大きく貢献していくだろう。
超 低 消 費 電 力 と い っ た 特 徴 に 加 え、EEPROM
STM32 は、多彩なペリフェラルが用意されて
Only Memory)や USB、AD / DA コ ン バ ー タ、
プロポにさまざまなタイ
おり、特色あるマイコンとなっている。ピン数
液晶コントローラなどのペリフェラルを用意
プがあり、ヘリコプター
も 36 ~ 144 と豊富で、内蔵フラッシュ・メモ
し、 そ れ ら を 適 宜 搭 載 し た 製 品 の リ リ ー ス
や飛行機ではスティッ
リも 16KB ~ 1MB と幅広い。「ピン数に合わせ
を 2010 年 の 秋 頃 に 予 定。 さ ら に、STM32 F-2
ながらフラッシュ・メモリの容量を自由に変更
シリーズでは 90nm プロセスを採用すること
ク・ タ イ プ が 用 い ら れ
を積極的に取り入れているという印象です」と
(Electrically Erasable and Programmable Read
には送信機のことを指す。
技術開発部
中、古山氏は「海外メーカの方が、新しい機能
今 後 の 製 品 と し て、STM32 L シ リ ー ズ で は
「プロポーショナル・シ
日本遠隔制御株式会社
このように ST がラインアップを充実させる
STM32 は、日本遠隔制御の競争力ある製品開
ことを決定しているのが、日本遠隔制御(JR
日本遠隔制御は、模型用ラジオコントロール
「Cortex-M シリーズの市場が広がる中、アー
キテクチャを共通化したいというニーズに対応
ラインアップがある。また、プロセッサとして
「ST は、ARM コアを 10 年以上使用しており、
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す」
(野田氏)。
「ファームウエア・ライブラリをプロトタイ
トがあります」
(古山氏)。
図:エアスキッパー 50 タイプⅡ PRO (2010)
ST マイクロエレクトロニクス株式会社
MMS グループ Microcontroller 製品部
主任
野田 周作 氏
ARM PARTNERS SUCCESS
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