牧師のデスクよりローマ書 8 章 31〜39 節誰がキリストの愛から我らを引き離すのか「ローマの信徒への手紙」は大きく三つの部分からなる。第１部は１章から８章まで、罪人に対する神の愛とキリストにおける救いの恵みを語り、第２部は９章から 11 章で、神の選民イスラエルに関する神の摂理的支配について語り、そして第３部（12 章から 16 章）においてはパウロはこの世に置けるキリスト者の生き方（倫理）について語る。第８章 31〜39 節は第１部の結論部に当たる。ここにおいてパウロの「救いのメッセージ」はクライマックスに達する。パウロの論調は、格調高い詩となり、荘厳な賛美となり、キリストにおける神の愛の勝利を高らかに歌う。彼はまず 31 節でこう続ける。「では、これらのことについて何と言ったらよいだろうか」。もし、そうであれば、どうなるか？どういう結論になるか？すなわち、この 31〜39 節は、今まで述べて来たことの結論である。もし神が私たちに対して恵み深く真実な方であるとすれば、一体、誰が私たちを神から、キリストにおける神の愛と恵みから、引き離すことができるか！『できない！』というのである。パウロは、イエス・キリストにおいて表された絶大な神の恵みを見るようにと言う。私たちの神は、私たちの救いのために、ご自身の御子をさえ惜しまずに死に渡された方である。最高の犠牲を払ってでも、私たちを罪とその力の支配から救って下さったお方、そのお方が、望みのない状態に、どうして私たちをほっておかれることがあろうか！苦難の中にある私たちを、どうしてお見捨てになることがあろうか！私たちの救いのために、救いに必要なすべてのものを与えて下さるはずではないか！パウロはこの 31〜35 節の個所で４つの問いを重ねて、そして畳み掛けるようにして、キリスト者の救いの確かさを強調している。『もし神が私たちの味方であるなら』１）誰が私たちに敵対しえようか２）誰が私たちを訴えるのか（告訴）３）誰が私たちを罪に定めるのか（断罪）４）誰がキリストの愛から私たちを離れさせるのか敵対する、訴える、罪に定める、引き離す、これらはすべて法廷の光景を思い起こさせる言葉である。私たちを神の法廷に引きずり出し、告訴し、断罪し、神から引き離すものは誰か？誰もいない！神が私たちを選び、召し、義としておられるとすれば（8：30）誰がこの私たちを告訴し、断罪し、神から引き離すことができるか？まったく不可能である、と語る。私たちの救いは、神の愛とキリストの贖いと救いのみ業によって保証されている、というこの事実（真理）を使徒パウロはここで言葉を尽くして繰り返し強調する。「誰が、神が選ばれた我々を訴えるのか。神ご自身われわれを罪なしとされたではないか。誰が、我々の審判者であるか。ただキリストのみ！そしてこのキリストは、我々のために死んで下さった！我々のためによみがえって下さった！我々のために力をもって支配しておられる！我々のために執り成しておられる！」（フィリップス訳）。この神の御手にある者を断罪し神から引き離すことのできるものは何もないのである。何と力強い福音の宣言であろうか。