中村紘子 完全復活 病気療養から本格復帰を宣言! 大腸がんを公表しコンサート活動を一時休止していた中村紘子が、先月3日都内で記者会見を開き元気な姿で 「本格復帰」をアピールした。完治はしていないものの治療が一段落。主治医からは「できるだけピアノを弾 いてください。多くの方の励みになるから」とアドバイスがあり、その言葉に突き動かされ3月にステージ復 帰を果たし、以来以前と変わらない旺盛な演奏活動を続けている。 1965 年のショパン・コンクール第 4 位入賞以来、 国内外で 3800 回!を超える演奏会に出演してき た中村紘子は日本のピアニストの代名詞。所沢ミ ューズでは 1993 年の開館以来、毎年『ニューイヤ ー・コンサート』に出演しショパン、チャイコフ スキー、ベートーヴェンなどのピアノ協奏曲でフ ァンを魅了している。病気療養をへて「聴衆がい るところなら、どこへでも飛んでいきたい」とい う気持ちが一層強くなったと語り、また「自分の 年齢を考えると、これが一期一会になるのかしら、 と思うこともあります。ベストを尽くし、できる 限りの良い演奏をしたい」と話す。 虚心坦懐に聴いて欲しい 中村紘子のショパン 小澤征爾にしても、中村紘子にしても、トップを 走るものの宿命だろうか、その演奏に対しては賛 意両論が渦巻き、多くの絶賛の声の半面批判も少 なくない。いわく「機械的すぎる」 「心がない」 「テ クニックが古い」などなど。しかし、そんな批判 の多くはCDやテレビで演奏を少し聴きかじった だけで発せられることが多い。中村紘子の演奏に 関して言えば、格調高く対位書法の美しさが際立 記者に求められファイティング・ポーズをとる中村紘子 【6 月 3 日 赤坂 ANAインターコンチネンタルホテル】 つバッハ、ロマンティックな感性がキラリと光る シューマン、まるで詩人の朗読のように自由で幻想的なショパンなど、美点は限りなく見つかる。特に長年弾 き込んできたショパンの協奏曲での、自由なテンポの動かし方、閃きに満ちたパッセージ、見栄を切るような 堂に入った弾きおさめは、往年のルービンシュタインやアラウをも彷彿とさせる。「楽譜に忠実」を掲げ正確 さを期するあまり、作品本来のロマンティックな情感を置き忘れてしまったような演奏が多い現代にあって、 19 世紀の詩的でロマンティックな雰囲気をたっぷりと湛えた中村紘子の演奏は、ますます貴重なもののように 感じられる。いまこそ、ご自身の耳で中村紘子の演奏が示すものが何なのか、虚心坦懐に聴いてみていただき たい。そこには、音楽との「一期一会」の出会いが待っているはずだ。
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