セントレアグループ中期経営戦略 セントレアグループ中期経営戦略

2015~2019
2015~2019年度
19年度
セントレアグループ中期経営戦略
2015年3月
2015年3月
中部国際空港株式会社
Ⅰ. 中期経営戦略の基本的な考え方
1. 開港から10年間の振り返り
開港から10年間の振り返り
中部国際空港セントレアは、利用されるお客様をはじめ、航空会社等の事業者や関係機関の皆様、さらには
地域の皆様からの多大なるご支援のもと、2015 年 2 月 17 日に開港 10 周年を迎えました。
この 10 年間、空港を巡る市場環境は激変を重ねており、開港直後には順調に推移した航空需要も、2008 年
のリーマンショックを境に減少し、さらにその後も航空市場に大きな影響を与えるイベントリスクに見舞われ、航
空ネットワークの縮小や就航機材の小型化が加速しました。
現在の航空市場は、訪日外国人旅客の伸びやローコストキャリア(LCC)の台頭等により、再び成長軌道に向
かいつつあるものの、セントレアの航空需要については、未だ回復途上にあります。
一方、こうした厳しい経営環境下においても、国内の空港では先進的な取組みとされた、非航空系収入の拡
大を空港経営の下支えとする当社のビジネスモデルが奏功し、商業事業が収益の柱として成長しました。
これに加えて、開港以来推進してきたコスト削減努力により、経営体質の改善が図られ、黒字定着が実現しま
した。さらに、累積損失も解消し、将来の飛躍を支えるための経営基盤が確立されました。
2. 経営環境認識
セントレアグループは、将来の経営を取り巻く環境変化について、以下の通り認識しています。
(1) 航空需要の変化
訪日外国人旅客需要の急速な成長や個人旅行(FIT)化の進展等による旅客ニーズの多様化
少子高齢化等により伸び悩むアウトバウンド需要
アジアにおけるLCC勢力の拡大と、航空自由化に伴うアライアンスの進展や新機材の活用等による
フルサービスエアライン(FSA)のネットワーク戦略の変化
貨物航空会社・事業者による一層の効率化追求
(2) 空港間競争の激化
首都圏空港の更なる拡張と航空路線の東京一極集中の加速
関西空港・伊丹空港のコンセッションや国管理空港の運営民営化
航空会社による訪日外国人旅客のニーズに基づいた就航地の選択
(3) 空港商業を取り巻く状況
空港商業を取り巻く状況変化
状況変化
市中免税店や輸出物品免税制度の進展
中部臨空都市をはじめとした周辺地域の魅力向上
(4) 中部圏の成長可能性
国の「2020 年訪日外国人 2000 万人」の目標に対し、中部地域が 200 万人の目標設定
「昇龍道プロジェクト」の更なる進展
名古屋駅周辺再開発や、大型観光施設の充実等による後背地の更なる魅力向上
北陸新幹線開通や高速道路整備、空港連絡橋割引等、地上交通の利便性向上
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2027 年リニア中央新幹線開通による巨大経済圏の形成
MRJ や B787 の本格稼働などによる航空機産業の更なる成長
3. 今後の取組
今後の取組みのスタンス
セントレアグループは、本中期経営戦略期間の 5 ヵ年を、飛躍的な成長を実現するための「第2の開港期」と位
置付け、以下の方針のもと、グループ一丸となって取り組みます。
① 開港 10 周年を節目に、これまでの取組みを評価し、「守り磨き上げるもの」、「変革すべきもの」を峻別する。
② 将来の「量的・質的成長」を目指す上で、空港としての機能をハード・ソフト両面から抜本的に強化する。
③ 取り巻く環境の変化に対応していくために、常に事業の枠組みやビジネスモデルを見直し、進化させていく。
Ⅱ. セントレアの目指すべき姿
今後想定される経営環境の変化を踏まえつつ、一層高まる中部圏のポテンシャルを最大限取り込みながら、利便
性が高く、使い勝手の良いセントレアの独自の強みを存分に発揮し、我が国の国際拠点空港として相応しい量的・質
的成長を遂げてまいります。
Ⅲ. 重要施策(具体的な取組み)
1. 安全・安心の確保
安全・安心の確保
安全・安心の確保は全てに優先するとの考えのもと、一人ひとりが安全に対する意識を高めることにより、安
全管理システム(SMS)が空港全体で有効に機能し、お客様や空港で働く方にとって常に安全・安心な空港であ
り続けることを目指します。
量的成長と質的変化にも対応できる安全推進体制の構築
大規模自然災害を想定した防災対策の推進と早期復旧に係る対応力向上
航空機事故を想定した各種訓練等の充実・強化
SMS の空港全体への浸透及び定着化並びに安全文化・風土の醸成
保安管理システム(SeMS)の先駆的な導入による保安体制の強化
2. 航空ネットワークの
航空ネットワークの拡大
「昇龍道」と「LCC」を成長エンジンとして、伸びゆくアジアの活力や地域のポテンシャルを最大限取り込むこと
により、セントレアを基点とした利便性の高いグローバル・ネットワークの構築を目指します。
このため、航空会社毎のニーズや競争環境等を踏まえつつ、運航コストの低減や、地域・旅行業界等と一体と
なった需要喚起策の拡充に取り組む等、より積極的に路線を誘致するための営業基盤を強化します。
一方、航空貨物についても、地域産業における輸送インフラとしての使命を果たすべく、更なるネットワークの
拡充や機能強化に取り組みます。
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(1) 旅客便ネットワーク拡大
利便性の高いグローバル・ネットワークの維持拡大
「訪日旅行のゲートウェイ空港」を目指した LCC ネットワークの構築
(2) 貨物拠点化推進
フレイターネットワークの維持・拡充と旅客便機材大型化によるベリースペースの拡大
航空機部品や生鮮食品など地域の成長産業分野における物流拠点の誘致
(3) マーケティング強化
航空会社との共同マーケティング施策の拡充
昇龍道プロジェクト、フライセントレア、フライセントレアカーゴなど地域主導の需要喚起活動の強化
航空需要の喚起や路線ネットワークの拡充に資する新たな料金施策の検討
3. 施設機能
施設機能・サービス
機能・サービスの
・サービスの向上
航空需要の量的成長や質的変化にも適切に対応し、航空会社の戦略が最大限展開できるように空港施設の
整備に取り組むとともに、常に全体最適を追求する効率的な空港運営を目指します。
また、全てのお客様が快適に旅行できるように、よりパーソナライズされたきめ細かいサービスの提供や、国
内外のお客様にとって使いやすい地上交通ネットワークの充実などに努め、国内・海外・訪日旅行のゲートウェ
イとして選ばれる空港を目指します。
(1) 施設整備・運用
LCCの拠点化や訪日外国人の増加等の環境変化にも柔軟且つ適切に対応するための施設整備や仕
組みの構築
将来の需要拡大やニーズの多様化を見据えた施設更新及び大規模修繕の確実な実施
空港運用におけるトータルマネージメントの実現と航空会社との協調的意思決定1に向けた環境整備
MRJ、ERJ等小型機の拠点化に向けた受入環境の整備
(2) CS・サービス向上
CS・サービス向上
お客様一人一人のニーズに沿ったきめ細かいサービスの提供
IATA(国際航空運送協会)が推奨する旅客手続きの自動化(ファストトラベル)の実現
ファーストレーン(優先レーン)の設置等プレミアムサービスの実現
SKYTRAXなど外部の専門調査機関による最上位のCS評価の獲得等、CS空港連絡会を核とした島
内一体的な取組みによるサービスレベルの向上
手ぶら観光サービスや観光ナビアプリなど訪日外国人旅客に向けた先進サービスの提供・拡充
(3) アクセス強化
公共交通機関の輸送力確保とアクセス強化・充実への積極的な関与
アクセス施設の拡充及び再配置の検討
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協調的意思決定:関係者が正確かつ最新の情報や状況認識を共有したうえで、それぞれがより適切な業務上の判断を下し、
これらの相互作用によって、さらに効果を発揮する仕組み
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利便性が高くより使いやすい駐車場の整備推進
4. 商業事業の
商業事業の拡大
事業の拡大
お客様ニーズの多様化や訪日外国人旅客の拡大等に伴う環境変化に的確に対応していくために、商業施設
やサービス機能のあり方等を検証し、未来型の空港商業を構築します。
さらに、開発が進む中部臨空都市空港対岸部とも相乗効果が発揮されるよう、『空港』ならではの魅力の強化
にも取り組みます。
(1) 戦略的リ
戦略的リノベーション
スカイタウン全体の店揃え・品揃えの再編集とエンターテイメント性強化
旅客ターミナルビル内スペースの有効活用による空港独自の魅力強化
(2) 機能拡大
機能拡大
訪日外国人旅客の成長に対応できる免税店やサービス機能の拡大
利用可能エリア等における商業機能の拡大に向けた検討
(3) 事業領域拡大
空港型市中免税店設置に向けた検討
異業種との提携や同業種とのパートナーシップによる事業拡大
空港にしかできない新規集客機能の検討
5. 地域連携・環境経営の推進
地域連携・環境経営の推進
地域の熱い思いから誕生したセントレアは、今後とも地域の発展を支える公共インフラとしての役割をはたし
ていくとともに、地域の皆様から愛され親しまれる空港であり続けます。
また空港運営にあたっては、環境への取組みを最重要課題の一つとして捉え、引き続きグループ全体で環境
負荷の低減や省エネ・省資源等に取り組みます。
(1) 地域連携
航空需要の喚起や空港アクセスの充実と利便性向上、二本目滑走路の整備推進などの課題について
地元自治体や経済団体等関係団体との連携強化
(2) 環境経営の推進
施設等の更新や整備時における最新環境技術導入の検討
FCV や EV などの低公害車普及促進への取組みや再生エネルギー導入の検討
6. 経営基盤の
経営基盤の強化
国際拠点空港としての量的・質的成長に向けて多様な人材の確保と活用を推進するともに、セントレアの持続
的な成長と安定した運営を担う幅広い視野と高い専門性を有する人材を育成します。
さらに、上場企業に比肩しうる経営基盤の構築を目指し、経営分析力の一層の強化に取り組みつつ、グルー
プ全体の収益力の向上を図ります。これにより黒字経営の維持や長期債務の大幅削減を達成します。
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Ⅳ. 二本目滑走路の整備推進
中部圏のポテンシャルを最大限に活かし、今後の地域の発展、国際交流の活発化を促進するため、セントレアに
二本目滑走路が必要だという認識のもと、地域の自治体・経済界において、さらなる需要喚起に向けた取組みが拡
大される等、戦略的にセントレアのフル活用が図られており、併せて二本目滑走路の整備推進に向けた取組みや検
討も強化されています。
一方、空港運営の観点からは、セントレアが現在、滑走路1本であることにより、不測の事故による空港閉鎖はもと
より、航空需要が回復基調に転じた中、メンテナンスによる深夜の滑走路閉鎖や近い将来の大規模改修時における
運用制約、ピーク時間帯の受入れ制約といった諸課題が顕在化し始めています。空港管理者としても、これらを解決
し、お客様に安心して空港をご利用いただくため、できるだけ早く二本目滑走路を整備することが必要であると考えて
おり、地域が進める取組みや検討に積極的に協力していきます。
同時に、民間企業による公共インフラの整備・運営のあり方として、滑走路の整備を行っても、将来の空港経営が
安定的である必要があります。このような観点から、引き続き事業スキームのあり方についても地域の検討において
議論を深め、建設に必要な準備が完了することを目指します。
Ⅴ. 業績目標
セントレアグループは、以上の施策を着実に実施することにより、本中期経営戦略が完了する 2019 年度までに
以下に掲げる目標の達成を目指します。
2019 年度(目標)
旅客数(万人)
1,500
国際線(万人)
800
内、訪日外国人数(万人)
国内線(万人)
(400)
400)
700
国際貨物取扱量(万トン)
24
発着回数(万回)
13
売上高(億円)
700
負債残高(億円)
3,000 億円未満
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