七中だより

学校だより 第2号
七中だより
おおさわ学園三鷹市立第七中学校
平成27年5月28日発行
HP address http://www.education.ne.jp/7chu-mi/
夏目漱石、読んじゃえば
校長 川戸 直美
風薫る5月です。朝、8時25分から35分の間、七中は物音一つせず、時が止まったかのよう
な静寂に包まれます。朝読書の時間です。今までもおこなってきましたが、今年からは、読む本も
「小説を読む」と限定し、ストーリーを追っています。みなさんが選んでいる本は、内容も時代も
様々ですが、全員がこの朝の時間を静かに集中して読書をしています。先生も読んでいます。天文
台の竹林の葉がかすかな音を立てながら風に舞い散っていく中、読書をする姿は風情があります。
たかが10分、されど10分の朝読書が一日のスタートを心落ち着ける働きとなっています。
図書館司書の大川さんから、先生方に「中学生に読んで欲しい本」のリクエストが来ました。こ
の場を借りて私のお薦めの本を紹介します。明治時代の文豪「夏目漱石」を知っていますか。代表
作もたくさんあります。「坊ちゃん」聞いたことがありますか。「我が輩は猫である。」これはど
うですか。でも、ここで紹介したいのは、夏目漱石の書物ではありません。夏目漱石の小説をどう
おもしろく読むかについて書かれた本、「夏目漱石、読んじゃえば」という本です。作者は、大
沢地域にお住まいの作家、奥泉 光さん。お会いすれば、きっと知っている人もいるはず。七中に
も何回もいらして、皆さんの授業や活動を見てくださっているのです。奥泉さんは、おおさわ学園
のコミュニティ・スクール委員会のメンバーの一人でもあるのです。
さて、14 歳の世渡り術シリーズの一冊として出版されたこの本は、奥泉さんが大好きな夏目漱石
の作品で「奥泉流、小説の読み方」を我々に伝授してくれる本です。奥泉さんは、夏目漱石の「吾
輩は猫である」の大ファンで、小学校3年生から中学校 3 年生まで、「吾輩は猫である」を5年間
読書感想文の題材にしました。読んだ回数は何百回か、いまだに読んでいらっしゃるそうです。こ
の小説に始まって、そのうち他の作品の面白さにも惹かれていかれました。その経験の中から、奥
泉さんは、「小説の面白さは自分で作るものだ。書かれた小説の文字=インクの染みから読者が自
分で世界を作って自分で面白がるものなんだ。」とおっしゃっています。「そういうのはめんどく
さい、と思う人もあるかもしれないが、小説に限らず、本当に面白いものを楽しむには、労力が必
要だ。」しかも、「小説を面白がるのに決まったやり方があるわけじゃない。それぞれがそれぞれ
でやればいい。」どうでしょうか。続きを読みたくなる本です。朝の読書のレパートリーに加えて
みませんか。
さらに、私はこの奥泉さんの言葉から、練習を重ねている体育祭を思いました。本当に面白いも
のを楽しむには、労力が必要だ!今、みんなでそろえて回数を重ねている大縄も黙々練習する個人
種目も、楽しむための力を養っている。明日の本番、みなさんと中学校の素敵な体験ができること
を楽しみにしています。