藤本昇特許事務所 山本 みどり◇弁理士 当社製品に関する発明についてPCT出願したところ、先日、欧州特許庁より、欧州特許条 約(EPC)規則62a (1) に基づく通知が届きました。どのように対応すればいいでしょうか。 1.はじめに 欧州特許出願では、1つの出 (兵庫県 K.Y) 3.規則43 (2) 規則43 (2) は、「第82条を損なうこと 4.対応について 相談の出願の詳細が不明なため、 一般 願に複数の独立クレームが含まれてい なく、欧州特許出願は、同一範疇(製品、 的なことしかいえませんが、 EPC規則62a る場合、発明の単一性が認められた出 方法、装置又は用途)に属する2以上 (1) が通知された場合、 まず、 該当出願が 願であっても、欧州特許庁から独立ク の独立クレームを含むことができるが、 同一のカテゴリーに複数の独立クレーム レームを1つに限定するように求めら ただし、出願の主題が次の項目の1に を含んでいるか否かを確認すべきです。 れることがあります。 係わっている場合に限る」としています。 審査官によっては、同一のカテゴリー すなわち、 同一のカテゴリーに複数の独 に複数の独立クレームを含んでいない 立クレームを含む場合でも、下記の条件 にもかかわらず(製品についての独立 を満たすケースでは、複数の独立クレーム クレームと、製法についての独立クレー 82条で「欧州特許出願は、1の発明 を記載して出願することが可能です。 ムを含む場合など) 、EPC規則62a (1) 又は単一の包括的発明概念を形成する (a)相互に関連する複数の製品 を通知し、独立クレームを1つに限定す ように関連している一群の発明につい (b)製品又は装置の異なる用途 るよう求めてくることがあるからです。 てのみ行う」と定めています。 (c)特 定の問題についての代替的解 確認の結果、同一カテゴリーに複数 これは、1つの出願に複数の独立ク 決法。ただし、これらの代替的解 の独立クレームを含んでいない場合 レームを含めることを禁止するもので 決法を単一のクレームに包含させ は、 その旨を反論することが可能です。 はなく、欧州特許庁は、特定の主題に ることが適切でない場合に限る。 複数の独立クレームを含んでいる場 2.複数の独立クレームを含む出願 EPCでは、発明の単一性について ついて (後述) 、複数の独立クレームを 合は、それらのクレームが前述の項目 含んで出願することを認めています。 具体例として、 (a)には、 「プラグ (a) ~ (c)に該当するか否かを検討 しかし、それ以外の主題についての とソケット、送信機と受信機、中間製 し、該当するのであれば、その旨を主 出願では、同一カテゴリーに複数の独 品と最終化学製品など」 が該当します。 張することができます。 立クレームが含まれている場合、出願 (b) には、ある物質の医学的適用が 該当しなければ、通知から2カ月以内 人に対して規則62a (1) を通知し、2 公知である場合、該物質のその他の医 に、サーチを受ける独立クレームを1つ カ月以内に、サーチすべき独立クレー 学的適用などが該当し、 (c) には、新 選択する必要があります。期間内に選択 ムを1つに限定するように要求します しい化合物のグループや、その化合物 しなかった場合、各カテゴリーの最初の 〈 「欧州特許の付与に関する条約の施行 を生成するための2以上の方法などが クレームがサーチされることになります。 規則」規則43 (2) 、規則62a (1) 〉 。 該当します( 「パテント」2013年3月 なお、選択から外したクレームは分 号 p.15 日本弁理士会) 。 割し、 別途、 権利化することも可能です。 2015 No.11 The lnvention 65
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