9 自分について

9
自分について
日本の高校生は、「私は人並みの能力がある」「自分は、体力には自信がある」「自分は、勉強
が得意な方だ」
「自分の希望はいつか叶うと思う」という問いに対して、
「とてもそう思う」
「まあ
そう思う」と回答した者の割合が4か国中で最も低い。一方、
「自分はダメな人間だと思うことが
ある」の問いに対して、「とてもそう思う」
「まあそう思う」と回答した者の割合が高く、米中韓
を大きく上回っている。
自分自身について、ポジティブな項目(9項目)とネガティブな項目(5項目)を併せて、
「と
てもそう思う」
「まあそう思う」
「あまりそう思わない」
「全くそう思わない」の4段階の尺度を用
いて尋ねている。
まず、ポジティブな項目については、図 9-1 に示しているように、「きまりやルールをきちん
と守るほうだ」では、日本は米中と並んで8割以上の者が「とてもそう思う」
「まあそう思う」と
回答している。次いで、
「自分のことは、できるだけ自分でするようにしている」でも、米中に比
べてやや低いが、
「とてもそう思う」
「まあそう思う」と回答した者の割合が高い。その他の項目
では日本は、米中韓に比べて低い。特に「私は人並みの能力がある」
「自分は、体力には自信があ
る」
「自分は、勉強が得意な方だ」といった自己肯定感、自尊感情については、米中との差が大き
く、韓国と比べても1割程度低い。
これに対し、米国の高校生は、すべての項目で「とてもそう思う」
「まあそう思う」と回答した
者の割合が高い。特に「他人に負けないように頑張る方だ」では、日中韓を2割弱上回っている。
中国の高校生も米国と並びポジティブな考え方がみられた。韓国は、
「きまりやルールをきちんと
守るほうだ」
「自分のことは、できるだけ自分でするようにしている」では、日米中に比べて低い。
他の項目では、韓国は米中と日本の中間に位置する項目が多い。
ネガティブな項目については、図 9-2 に示しているように、日本は、
「自分はダメな人間だと
思うことがある」の問いに対して「とてもそう思う」
「まあそう思う」と回答した者の割合が高く、
米中韓を大きく上回っている。「私は将来に不安を感じている」「周りの人の意見に影響されるほ
うだ」に関しても、日本は韓国の次に高い。一方、
「現状を変えようとするよりも、そのまま受け
入れるほうがよいと思う」
「あまり勉強しなくても将来が困らない」は、米中韓に比べて低い。
韓国は、「自分はダメな人間だと思うことがある」は低いが、「私は将来に不安を感じている」
「周りの人の意見に影響されるほうだ」
「あまり勉強しなくても将来が困らない」といった項目は、
日米中に比べて高い。
33
33
きまりやルールをきちんと守るほうだ
78.2
85.9
87.1
87.0
83.3
自分のことは、できるだけ自分でするようにしている
80.6
75.0
私には友だちがたくさんいる
92.2
93.2
84.4
92.2
86.7
67.8
67.7
他人に負けないように頑張る方だ
73.3
73.5
58.9
55.7
88.5
90.6
私は人並みの能力がある
67.8
43.5
76.9
76.1
私は、体力には自信がある
52.6
65.6
65.1
私は、勉強が得意な方だ
31.6
20%
40%
60%
図9-1 自分自身についての考え(ポジティブな項目のみ)
(「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合)
34
34
87.9
80.9
75.4
私は将来に対し、はっきりした目標をもっている
0%
米国
中国
韓国
57.3
23.4
日本
83.9
80.7
82.6
自分の希望はいつか叶うと思う
80%
100%
45.1
自分はダメな人間だと思うことがある
35.2
私は将来に不安を感じている
72.5
56.4
63.0
48.3
47.0
周りの人の意見に影響されるほうだ
78.0
63.7
58.3
36.2
13.8
あまり勉強しなくても将来が困らない
17.4
0%
20%
73.4
日本
42.9
37.8
40.7
現状を変えようとするよりも、そのまま受け入れるほうがよいと思う
71.0
米国
中国
31.4
韓国
37.8
40%
60%
80%
図9-2 自分自身についての考え(ネガティブな項目のみ)
(「とてもそう思う」「まあそう思う」と回答した者の割合)
また、自己評価についての 14 項目を変数として、4か国全サンプルに対する因子分析を行った。
表 9-1 に示しているように、4つの因子を抽出した。因子1は「私は将来に対し、はっきりした
目標をもっている」「自分の希望はいつか叶うと思う」「きまりやルールをきちんと守るほうだ」
「自分のことは、できるだけ自分でするようにしている」
「他人に負けないように頑張る方だ」で、
“自主自立”の因子とした。
因子2は「私は、体力には自信がある」「私には友だちがたくさんいる」「私は人並みの能力が
ある」
「私は、勉強が得意な方だ」で、
“自尊”の因子とした。
因子3は「自分はダメな人間だと思うことがある」「私は将来に不安を感じている」「周りの人
の意見に影響されるほうだ」で、“ネガティブ思考”の因子とした。
因子4は「あまり勉強しなくても将来が困らない」
「現状を変えようとするよりも、そのまま受
け入れるほうがよいと思う」で、“現状満足”の因子とした。
各因子ごとの得点の平均値を算出し、日米中韓4か国それぞれの特徴を示したのが図 9-3 であ
る。日本の高校生は、
“自尊”
(因子2)の因子得点が低く、他の3か国と大きな開きがみられた。
反対に“ネガティブ思考”
(因子3)の因子得点が米中韓を大きく上回っている。
米国の高校生は、
“自主自立”
(因子1) の因子得点が他の3か国に比べて高い。中国は“自尊”
(因子2)の因子得点が米国とともに高い。韓国は、“現状満足”(因子4)の因子得点が他の3
か国に比べて高いが、 “自主自立” の因子得点が4か国中では、最も低い。
35
35
表 9-1
自己評価の因子分析(4か国全体)
因子負荷量
因子 1
自主自立
因子 2
因子 3
因子 4
・私は将来に対し、はっきりした目標をもっている
.727
.121
-.256
.008
・自分の希望はいつか叶うと思う
.654
.190
-.295
.057
・きまりやルールをきちんと守るほうだ
.649
.069
.164
-.113
・自分のことは、できるだけ自分でするようにしている
.647
.215
.018
-.003
・他人に負けないように頑張る方だ
.568
.351
.006
.038
・私は、体力には自信がある
.135
.742
-.128
.054
・私には友だちがたくさんいる
.092
.723
-.023
.055
・私は人並みの能力がある
.310
.687
-.156
.001
・私は、勉強が得意な方だ
.271
.643
-.049
-.063
・自分はダメな人間だと思うことがある
-.016
-.222
.740
-.031
・私は将来に不安を感じている
-.071
-.153
.721
-.015
・周りの人の意見に影響されるほうだ
-.054
.089
.675
.101
・あまり勉強しなくても将来が困らない
-.067
.091
-.128
.808
.036
-.046
.195
.773
固有値
2.329
2.275
1.800
1.289
寄与率
16.635
16.252
12.855
9.207
自尊
ネガティ
ブ思考
現状満足
・現状を変えようとするよりも、そのまま受け入れるほうが
よいと思う
因子抽出法: 主成分分析 、回転法: Kaiser の正規化を伴うバリマックス法、抽出基準は固有値 1.0 以上
.60
.40
.20
日本
.00
米国
-.20
中国
-.40
韓国
-.60
-.80
因子1
因子2
因子3
図 9-3
自己評価の因子得点の平均値
36
36
因子4