天吾と青豆は孤独な 10 歳の少年少女として、誰もいない放課後の

1Q84
== あらすじ ==
2 人の主人公、天吾と青豆は孤独な 10 歳の少年少女として、誰もいない放課後の小学校の
教室で黙って手を握り目を見つめ合うが、そのまま別れ別れになる。
そして相思いながら互いの消息を知ることなく長年月が過ぎた 1984 年 4 月、2 人は個別に
それまでの世界と微妙に異なる 1Q84 年の世界に入り込む。さまざまな出来事、試練に遭
遇したのち、12 月になって 20 年ぶりの再会を果たし、1984 年の世界に戻ったところで物
語は終わる。
スポーツインストラクターの青豆は、とある老婦人の考えに共鳴して、女性を[[ドメステ
ィックバイオレンス DV で苦しめる男たちを暗殺する仕事を引き受ける。彼女は人間の身
体の微妙な部分を捉える優れた能力をもっており、首の後ろのあるポイントに細い針を突
き刺すことで、心臓発作に酷似した状況で人間を殺害することができる。青豆がそのよう
な殺人行為をするようになった背景には、無二の親友を自死で失った過去が関係している。
しかし、1984 年 4 月にその仕事のひとつをやり終えたあたりから、青豆は自分がそれまで
の現実とは微妙に異なった世界「'''1Q84 年'''」に入り込んでいるらしいことに気づく。
一方、予備校の講師として数学を教える天吾は、小説家を目指して新人賞のために小説を
書きつづけている。応募していくなかで知り合った編集者の小松とも親しくなり、小松か
ら無署名のコラム書きや新人賞応募作の下読みなどの仕事を与えられる。天吾は新人賞応
募作のなかから、
「ふかえり」という少女の書いた『空気さなぎ』という小説を見出し、小
松に強く推薦する。小松は天吾に『空気さなぎ』をリライトすることを勧め、作品内容に
魅せられた天吾はそれを引き受け、完成させる。
『空気さなぎ』は新人賞を得て爆発的に売
れるが、いつしか天吾は周囲の現実の世界がそれまでとは微妙に異なって天に月が 2 つ浮
かぶ『空気さなぎ』の虚構の世界そっくりに変貌していることを知る。
して個別に「1Q84 年の世界」に入り込んだ 2 人は、それぞれが同じ「さきがけ」という
宗教団体に関わる事件に巻き込まれていく。
BOOK1、BOOK2 では、スポーツインストラクターであると同時に暗殺者としての裏の顔
を持つ青豆を描いた「青豆の物語」と、予備校教師で小説家を志す天吾を主人公とした「天
吾の物語」が交互に描かれる。
BOOK3 では 2 つの物語に加え、青豆と天吾を調査・探索する牛河を主人公とした「牛河
の物語」が加わる。
== 登場人物 ==
;青豆(青豆雅美)
:広尾 (渋谷区)広尾の高級スポーツクラブに勤務するインストラクター。30 歳を迎えよう
としている。「証人会」の熱烈な信者の家庭に育つが、11 歳のとき信仰を捨てて両親と決
別、叔父に引き取られる。スポーツの才能で奨学金を得て体育大学で学ぶ。スポーツ・ド
リンクと健康食品の製造会社に就職するも、4 年後に退社。大学時代の先輩の口利きで今
のスポーツクラブに入った。筋力トレーニングとマーシャルアーツ関係のクラスを担当し
ている。小説を読むことはあまりないが、歴史に関連した書物ならいくらでも読む。
;天吾(川奈天吾)
:予備校の数学講師。青豆と同じく 30 歳を迎えようとしている。千葉県市川市で生まれ育
つ。少年時より数学、ドラム演奏、柔道で優れた才能を示し、高校・大学は父親から離れ
て柔道でのスポーツ特待生で自立。筑波大学の第一学群自然学類数学主専攻を卒業し、予
備校の講師をしながら小説を書いている。編集者小松の勧めで新人賞応募作品「空気さな
ぎ」のリライトを行う。
;小松祐二
:文芸雑誌の編集者。40 歳前後。天吾の才能を評価し、無署名のコラム書きや新人賞応募作
の下読みなどの仕事を与える。新人賞応募作品「空気さなぎ」を強く推してきた天吾にリ
ライトしてさらに完全な小説にすることを勧める。
;ふかえり(深田絵里子)
:小説「空気さなぎ」の作者。17 歳。両親とともにコミュニティ「さきがけ」内で育つが、
10 歳のときに逃亡して、父の友人・戎野のもとに身を寄せる。黒くて長い髪をもち、美し
い顔立ちをしている。ディスレクシア(識字障碍)があり、長い物語や外国語の歌をまる
ごと暗記してしまう能力(サヴァン症候群)を持つ。また霊的な能力がある。
;深田保
:ふかえりの父。学者であったが、七十年安保にむけての大学闘争に飛び込み、大学から事
実上解雇された。そして手元の元学生 10 人ばかりと家族とともに「タカシマ塾」に入って
システムのノウハウを得た後、独立して農業コミューン「さきがけ」を作る。そして武闘
派を分離した後、「さきがけ」は宗教法人となり、深田の消息は途絶える。
;戎野隆之(センセイ)
:元文化人類学者。60 台半ば。深田と同じ大学・学部で教鞭を執っており、深田とは親交が
あった。大学闘争の時期に大学を去り、現在は[[株取引で経済的な成功を収めている。7 年
前に「さきがけ」を逃亡してきたふかえりを預かり、青梅線二俣尾駅が最寄りの山奥で一
人娘のアザミと3人で生活している。小説「空気さなぎ」の出版を利用して深田の消息を
知る手段を探る。
;老婦人(緒方静恵、マダム)
:70 代を迎えた女性。麻布の高台にある「柳屋敷」に住む。戦後まもなく夫を死別したあと
も、事業経営の才で財産を殖やした。スポーツクラブで青豆を知り、家で出張個人レッス
ンを受けている。娘を夫からの DV が原因の自死で失っている、私財を投じて DV に悩む
女性の保護活動を行うとともに、加害男性に対し非合法を含む各種手段で隠密に報復を施
している。
;タマル(田丸健一)
:「柳屋敷」のセキュリティ担当。かつて自衛隊のレンジャー (陸上自衛隊)|レンジャー部
隊にいたこともあり、空手の高位有段者。前科はない。樺太へ労働者として送られた朝鮮
人の息子として終戦の前年に生まれ、1 歳のとき日本人帰国者に託されて北海道に渡った。
それ以後 両親と会わず、孤児院で形だけの養子縁組で日本国籍を取り、14 歳で孤児院を
逃亡。
;大塚環
:青豆の高校のソフトボールのチームメイトで無二の親友だったが、結婚後、夫の DV に悩
まされ、26 歳になる直前に自殺。
;あゆみ(中野あゆみ)
:青豆より 4 つ年下の婦人警察官。家族や親戚にも警察官が多い。バーで飲んでいる青豆に
声をかけ、親しい友人となる。青豆には大塚環いらい初めて自然な好意を感じた相手。2
人はチームを組んで、バーで男を物色するようになる。
;天吾の父
:東北地方の貧農の三男として生まれ、満蒙開拓団に参加。ソ連軍の侵攻で日本に逃げ帰る。
そのあと NHK の集金の仕事を始め、成績優秀で正規集金職員となって、日曜ごとに天吾
を集金に連れ回す。定年退職後、天吾の父はアルツハイマー型認知症で、南房総の千倉町
千倉にある施設に入る。
;天吾の年上ガールフレンド(安田恭子)
:天吾より 10 歳年上。既婚で小学生の娘が 2 人いる。毎週1回、金曜日に天吾の部屋へ来
て念入りにセックスを行う。
;女性教師(太田俊江)
:天吾が小学校 3 年生から 6 年生の時の担任。公正で心のあたたかい人柄。天吾が父に日曜
日の集金に付いていくことを拒絶して家を追い出されたとき、一晩泊めて、さらに天吾の
父を説得してくれた。
;牛河(牛河利治、福助頭)
:元弁護士。「さきがけ」の表に出ない仕事を請け負ってこなしている。40 台半ばとおぼし
く、頭頂部が扁平で、全体的に特徴的な雰囲気をもっている。小説「空気さなぎ」に関し
て天吾への接近を計り、リーダーに会わせる前の青豆の身元調査をし、リーダーの不審死
の後姿を消した青豆をねばり強く探索する。
;穏田(おんだ、坊主頭)
:リーダーの身辺警護を行う「さきがけ」のセキュリティ全般の責任者。背が低く坊主頭。
背の高いポニーテールの男を従えている。
;安達クミ
:天吾の父が入院している千倉の病院の看護婦。23 歳。認知症が進んだ天吾の父を親しみを
持って看護している。
;大村、田村
:安達クミの同僚の看護婦。