【経営組織】部長と課長の役割を明確化して

今回のテーマは
職務分掌
5分でマスター「経営課題の解決法」Q&A
ステップ3の企業規模での
Q:部長と課長の役割を明確化して、政策を進展させたい!
A:戦略・戦術・戦闘の視点から職務分掌を作ってください!
(※文中、ステップ2・3の意味は経営講座参照)
1. 部長の職務分掌
図表1は戦略・戦術・戦闘の視点から設定した部長の(主要な)役割一覧です。
図表1
Ⅰ.
組織
価値観
Ⅱ.
リーダーシッ
プの発
揮
1.理念とプリ
ン シ プル の 共
有化
1.リーダーシ
ッ プ の発 揮 と
部 門 の意 思 統
一
1.事業戦略の
立案と共有化
Ⅲ.
戦略
業務
2.マネジメントシス
テムの改革
3.人材育成
Ⅳ.
戦術
業務
1.戦術立案と
戦術転換
①当社の理念、将来ビジョンの社員への啓蒙
②当社のプリンシプルの社員への啓蒙
③当社のプリンシプルの維持および高揚活動
①部門のビジョン・将来像の設定
②ビジョン実現へのメンバーの動機付け、啓発
③部門メンバーのビジョン実現への意思統一
①全社戦略の部門内メンバーへの理解の促進
②管轄する部門の中期の事業戦略の立案と状況変化に合わせた
変更
③ポジショニング戦略の半期または四半期での進捗管理(報告
書の作成および部内での共有)と損益管理
④全社的な視点からの新規事業、ビジネスストック戦略の企画
と提案、その具現化の促進
①全社のマネジメントシステム改革への提案とその具体化への
取組み
②マネジメントシステムの部内での適切な運用と部下への理解
促進
③マネジメントシステムの適宜の改善、改良への取組み
④事業戦略目標を達成するための部門内の組織づくり、組織改
編
①幹部人材の発掘、導入、育成
②部門内の中期人事政策の立案とその具現化の推進
①全社および部門戦略に基づいた、部門の戦術(年度計画)と
年度利益計画の立案
②各課の戦術(年度計画)と利益計画の立案の指導と戦略のそ
れへの落し込み
③経営管理会計を使った月度での予実績管理と対策の立案およ
び実施
④戦闘上での戦略・戦術の具現化・クラフティングの指導
1
2.部門内組織
の活性化
3.人材育成
⑤上記①~④に関する会議の運営
⑥部門内のプロジェクトの進捗管理
①部門内ジョブローテーションの実施
②部門内の諸インセンティブ施策の実施
①部門内管理者の育成
②部門内の労務管理・人事管理(含:評価、処遇)の実施
③部長としての自己啓発と能力向上への取組み
・・・その他省略・・・
部長の仕事の中の重要事項の説明です。
①部長は自部門・SBU(戦略的事業単位=通常は「部」)のビジョンを示す!
この企業規模ないし体制での部長クラスに求められるものの第一は、部門のビジョン・将
来像を描くことです。それ以前は経営トップが全体のビジョンを描き社員を引っ張ってき
ました。それを部門レベルに落とし込んで、部門・SBUの「ありたい姿」を部長クラス
が描きメンバーを引っ張っていくことがこの体制を創り強固なものにする第一の条件です。
②的確な事業戦略の立案と戦略→戦術←戦闘の着実な推進
部門のビジョン・ありたい姿の実現につながる地に足着いた的確な事業戦略を立案し、戦
術へ落とし込み、戦闘での具現化を推進していきます。事業の戦略的意思決定権の行使で
す。戦術においては課長クラスの管理者の戦術展開と経営管理会計を用いたTBUの損益
管理を、戦闘においては担当者のクラフティング(現場の創作・創造活動)を指導してい
きます。また仕事の結果を評価します。人事考課の権限です。
③部下の動機付け・意欲向上を図る
ビジョン・ありたい姿の実現への取り組みと戦略の具現化を通じて、メンバーが得ること
の出来る自己実現や能力向上を、そして将来のワーク&ライフの全体像を示します。メン
バーを啓発し動機付けを図り、全体の意思統一を促していく作業です。組織力の発揮につ
ながります。
④リーダーシップを発揮して部門を統率する!
以上のビジョンを示し戦略を立案し部下の動機付けを図っていく、その行為は部長にとっ
ての、いわゆるリーダーシップの発揮です。自ら考えた戦略を自信を持って推進していく
戦略マネジャーとしてのリーダーシップです。
ビジョンを示せない、戦略目標も戦略もはっきりしていない、損益意識も希薄、部下がや
る気がない、部下がついていこうとしない、そのような部長であったら、経営組織体制は
2
実現できません。戦略的意思決定権を委譲できません。この段階においては、部長はそれ
をはっきりと認識し、それらの役割に積極的に取り組み果たす必要があります。
2.課長の職務分掌
同じように図表2は戦略・戦術・戦闘の視点から設定した課長の(主要な)役割一覧です。
図表2
Ⅰ.
組織
価値観
1.理念とプリンシ
プルの共有化
1.戦略理解と共有
化
Ⅱ.
戦略
業務
2.マネジメントシステムの
運用
1.戦術立案と展開
Ⅲ.
戦術
業務
2.部門内組織の活
性化
Ⅳ.
戦闘
業務
①当社の理念、将来ビジョンの社員への啓蒙
②当社のプリンシプルの率先垂範
③当社のプリンシプルの維持および高揚活動
①全社戦略および部門戦略の理解と部門メンバーへの
理解促進
②新規事業の企画と提案、その具現化の促進
①マネジメントシステムの部内運用と部下への理解促
進
②マネジメントシステムの改善、改良への提案
③戦略目標を達成するための部門内の組織づくりへの
提案
①会社および部門のポジショニング戦略および年度方
針に基づいた、部門の戦術政策と年度利益計画の立案
②年度計画の月度での経営管理会計上の予実績管理と
対策の立案と月度報告書の作成
③年度および月度計画の進捗状況、戦闘での戦術の具
現化活動に関する部内での検討会の実施と課題の共有
化
④上記を踏まえた戦闘状況の戦術への反映と必要時の
戦術転換および戦略転換への提案
⑤上記①~④のための部門内会議運営
①部門内ジョブローテーションの実施
①部門内メンバーの育成、クラフティング指導
②部門内の労務管理・人事管理(含:評価、処遇)の
3.人材育成
実施
③課長としての自己啓発と能力向上への取組み
1.営業実践
①課長としての営業実践(戦略の具現化)
2.営業スキルの向 ①部下の営業OJTの実施
上
②自分自身の営業スキル向上への取組み
・・・その他省略・・・
課長の仕事の中の重要事項の説明です。
①自部門・TBU(戦術的事業単位=通常は「課」
)の戦術を起案する。
この企業規模ないし体制での課長クラスに求められるものの第一は、課・TBUの戦術立
案、向う半年~1年、どのように戦っていくのか、その具体的なシナリオを描くことです。
戦術と年度利益計画を立案して、それを月度に落とし込みながら実践し、経営管理会計で
3
の損益状況を確認し、月度ごとに戦術を見直していきます。PDCAを回していきます。
それを回すための戦術的意思決定権を委譲します。
②クラフティングを促進する
メンバーの戦闘活動を引っ張っていくこと、クラフティングを促進していくことは、この
体制の中での課長の重要な役割です。戦闘活動での創造行為の舵取りです。担当者と密に
意思疎通を図りながら、新しい時代に合う新しい商品・サービス・営業手法・技術開発・
製造方法等を創り上げていきます。また担当者を評価します。担当者の人事考課の権限を
与えます。
③トップダウン&ボトムアップマネジメントを行う
役割の中に、「戦闘状況の戦術への反映と必要時の戦術転換および戦略転換への提案」があ
ります。
例を上げて説明します。方針は戦略→戦術→戦闘と展開されます。例えばある独自の市場
ポジションを確立するため、○○という新商品群を開発し販売していくという戦略がある
とします。それを当面△△という業界に売るという戦術に落とし込みます。戦闘の中で△
△業界にフィットするように商品開発に努めたがどうもうまくいかないというクラフティ
ングの状況に至ったとします。その時に戦術に関わる管理者は、現状の商品開発の状況か
ら××という業界への販売の方が可能性があると判断し、販売先を変更します。これが戦
術転換です。そしてそれを戦略へフィードバックしていきます。必要があれば部長また幹
部による戦略の転換も図られます。
政策ないし方針の展開、つまり戦略→戦術→戦闘の流れがすべてうまくいくなどあまりな
いことです。すんなりとはいかない、それが大多数です。現場でのクラフティングの状況
を踏まえて、戦略←戦術←戦闘のフィードバックがなされ、その中で戦術または戦略の転
換が行われていきます。
この課長が行う戦術展開と転換が極めて環境対応的にまた独自性ある形でなされる、つまり
戦術のPDCAが的確に回される時、この段階にある企業は極めて強くなります。過言では
ありません。ステップ2の体制でなんとなくマネジメントをし始めた企業体質とは、雲泥の
違いで会社は強くなります。そのことを課長は明確に認識し能力向上に努めることが望まれ
ます。これは、まさしくステップ3へ進化すための最重要テーマです。
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