2015/9/24 地理学における「場所」概念 • 地理的空間の一部、公式・非公式に社会関 係やアイデンティティ(帰属意識)が形成され る地理的環境(settings) 場所の政治的意味 • 「空間」と対比される地理学における基本概 念の一つ 政治・空間・場所 第5章 第2部 空間・場所・領域 2 空間と場所の違い(1) なに いつ どこ • 戦後に明確に概念化 • 1950年代から「空間 space」を分析するアプロー チの隆盛 • 70年代以降、それに対する批判的立場から「場 所 place」の概念が生まれる 空間 場所 • 地理学の対象となる地域(私たちが生きる場) に二つの性格がある 3 4 市大近辺のワンルーム・マンション 空間と場所の違い(2) • 空間 – 抽象的、一般的、客観的 • 場所 – 具体的、個別的、主観的 =平均(均質)化されない固有のもの =原則的にコピーしたり、代替できない =日常性との関わり(場所化) http://house.goo.ne.jp/rent/ap/detail/1/27120/060H000081293731/083040004/a007466977.html 5 6 1 2015/9/24 • • • • • • 空間のとらえ方(1) 空間のとらえ方(2) 交通(沿線/駅/バス停)=JR阪和線杉本町 所在地=大阪府大阪市住吉区山之内3 賃料/管理費等=5.5万円/4000円 礼金/敷金=なし/9万円 間取り/広さ=ワンルーム/25.25㎡ 物件タイプ/築年月=マンション/05年11月 • 下宿生の人は入学前にどうしたか教えてくだ さい • 今その部屋はどうなっていますか 7 Google「私の部屋」画像検索 8 場所のとらえ方(1) • 同じワンルーム・マンションの部屋に住まうこ とによって、具体性、個別性、主観性が与え られる • 下宿していない人でも私の部屋、わが家につ いてそのような要素があるか • 引っ越したことがある人は、それまで住んだ 場所と新しく住む空間に違いを感じたか 9 場所と日常生活 10 場所に起こる変化 • 家 • 近代化の進展 – わが家=父母・兄弟姉妹、部屋 – 空間の効率化・均質化 – 域外企業・資本の活動拠点化 • 近隣 – ご近所=近隣の人々、友人、学校、町並 • 冷戦後のグローバリゼーション • 町・村 – 経済・労働力の流動化と生活様式の多様・均質 化 – 故郷・わが町=親族、知人、町並、繁華街、景 色 • 国家 • 場所の反応=空間と場所の緊張 – くに=景色、文化、言葉、国旗 – 日常生活に根付いた場所の保持 – 新しい場所の創出(記憶化、商品化、観光化) 11 12 2 2015/9/24 伝統的な農村景観 空間と場所の緊張 • 空間か場所かという二者択一ではない • 空間の均質性と場所の固有性との関係 ↓ 両者の間の緊張関係が社会の動態を生みだ す=場所の政治 • 例えば、 13 14 15 16 近代的空間利用:圃場整備事業 滋賀県水口町 棚田(=文化的景観)の保存 石川県松任市 棚田(大阪府千早赤阪村) 17 18 3 2015/9/24 19 場所論の政治地理学への応用(1) 場所論の政治地理学への応用(2) • 場所の政治的概念化(ステーリ2006) ① ② ③ ④ ⑤ 20 • つまり場所は 物理的な位置としての場所 文化的、社会的位置としての場所 コンテクスト(行動の文脈)としての場所 歴史的、社会的に構築された場所 社会的過程としての場所 – 物理的で具体性をもつ存在であり(概念①) – 文化や社会に意味を与え(概念②) – 人間を社会的に位置づけ、その政治行動を形成す るコンテクストを構成し(概念③) – 歴史的、社会的に構築され(概念④) – 現在においても(再)構築され続けている(概念⑤) 21 社会的過程としての場所 • マルチスケールの観点←新しい地誌学 • 「構造化理論」(ギデンズ1989)の参照 – 日常生活(制度や慣習)が特定の時間と空間の コンテクストの中で形成され、再生産されるメカニ ズム – 「構造structure」と「行為主体agent」との相互作用 22 アグニューの場所論 • 「場所の政治」生成の三つの次元 – ロカール(locale):ミクロ・スケールの場所の内実 – ロケーション(location):場所におけるマクロ・スケ ールの秩序の影響 – 場所の感覚(sense of place):場所での生活から 生み出される主観的(政治)指向性 • 場所構築の説明に援用 – 一般性のある構造と個別性を持つ主体の相互作 用から一定の持続的性質をもつ場所が生成され る 23 24 4 2015/9/24 沖縄県基地所在市町村における革新絶対得票率(1968-1974) 沖縄の投票行動 石川市 コザ(沖縄)市 読谷村 嘉手納村 北谷村 金武村 県平均 70 • 米軍統治を通しての保革クリーヴィッジ(政治的 亀裂)の形成 60 局地的傾向( 一貫) – 沖縄社会が米軍統治に関わる利害から分化 – この分化が多様かつ一貫性のあるクリービッジとして ローカルに発現、明確な地域的パターン←場所の政 治 – 保革得票率の計量(重回帰)分析 50 40 % 30 20 • 市町村ごとの基地占有率や住民の社会経済的属性からは 保守票の伸長について説明力が高い • 革新票は地域ダミー変数などコンテクスチュアルな因子の 効果が高い(後日詳述) 10 全県的傾向(変動) 参院71 知事72 0 行政主席68 衆院70 参院70 衆院72 参院74 選挙と実施年 25 26 N 1995年の参議院選挙 における革新票の特 化係数 特化係数 0 20 km 1.40 以上 沖縄県知事選の絶対得票率(1972‐2010) 1.20 ~1.39 1.00 ~1.19 保守 0.80~0.99 0.60 ~0.79 0 革新 50 0.59 以下 45 10 km 40 35 ( ) 絶 対 30 得 票 25 率 20 % 15 10 5 0 0 72 20 km 76 78 82 86 90 年 94 98 02 06 27 基地所在市町村における知事選挙結果(1972-2010) 保守 革新 28 嘉手納空軍基地第二ゲート前 のコザ・ゲート通り 沖縄市 読谷村 保守 革新 45 70 10 40 60 35 50 30 絶 対 得 25 票 率 20 ( ) ( ) 絶 対 40 得 票 率 30 % % 15 20 10 10 5 0 72 76 78 82 86 90 年 94 98 02 06 0 10 72 76 78 82 86 保守 90 年 94 98 02 06 10 98 02 06 10 金武町 北谷町 保守 革新 70 革新 70 60 60 50 絶 対 40 得 票 率 30 % 絶 対 40 得 票 率 30 % 20 20 ( ) ( ) 50 10 10 0 0 72 76 78 82 86 90 年 94 98 02 06 10 72 76 78 82 86 90 年 94 29 30 5 2015/9/24 米軍による占領・統治 (1945‐72) 沖縄戦末期(1945) 31 32 嘉手納基地 嘉手納空軍基地 コザ 33 34 嘉手納基地(左上)と沖縄市(旧コザ市、右下) 35 36 6 2015/9/24 37 38 40 39 場所としてのコザ 「場所の政治」研究の意義 ① 物理的位置 嘉手納基地ゲート前(基地の街) ② 文化的、社会的位置 米軍支配下にある琉米混淆の街 ③ コンテクスト 親米・反米の行動を惹起 ④ 歴史的、社会的構築性 • 全国化やグローバル化の潮流の中で局地的 な場所の価値を見出す。 • マルチスケールでの動態と人間の主観や行 為との関係から、政治を媒介として人間と地 理的環境が密接に結びついていることがわ かる。 戦後の米軍統治の遺制を引きずる ⑤ 社会的過程 戦後の冷戦・日米同盟という構造において基地の街と いう固有性を形成・維持 41 42 7
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