●反核医師の声●(1) 発行 核戦争を防止する 核戦争防止 兵庫県医師の会 兵庫医師の声 第 93 号 2015 年度 春号 〒 650 - 0024 神戸市中央区海岸通 1-2-31 神戸フコク生命海岸通ビル5F 兵庫県保険医協会内 電 話 078(393)1807 振 替 01130-6-57830 過去と向き合い 人権と倫理問う意識を 全国から 347 人もの人が集まり、戦前から続く医の倫理問題について学んだ 「医の倫理」―過去・現在・未来―企画実行委員会は4月 12 日、京都市内で「歴史を踏まえた日本の医の倫理の課題」 を開催。全国から定員を大きく超える347人が参加し、兵庫県からは 12 人の医師が参加した。今回の企画は、日 本医学会総会2015関西に向け近畿各地で行われた一連の取り組みの集大成の企画として位置付けられたもので、 池内春樹運営委員が実行委員を務めた。加藤擁一運営委員の参加記を掲載する。 この企画は、同じく京都で開催されていた日本医学会 総会を機に、日本の医の倫理のあり方を再度検証するた めのものである。 「戦時下の行為、日本も検証必要。患者の人権考える 上で不可欠」(4/ 18 神戸新聞)と報道されたように、 第一のテーマは、医学界・医療界が戦争に加担した歴史 である。この問題では、精神科医の香山リカ氏の司会で、 元テレビディレクターの近藤昭二氏と米国在住の作家・ 青木富貴子氏が、731部隊の問題や九大生体解剖事件 について、対談された。現在においても、日米両政府と も資料の開示や調査に応じず、真相の解明はきわめて不 十分であることが指摘された。 シンポジストの各氏 左から土屋貴志大阪市立大学准教 授、川田龍平参議院議員、石田勇治東京大学大学院教授、 平岡諦健保連大阪中央病院顧問 第二のテーマは、現代につながる課題でもある、患者 2面へつづく ●反核医師の声●(2) 1面からつづく 界医師会が「患者の人権を最優先する」と宣言している の人権である。シンポジウムでは、この問題が議論され ことを紹介し、医療人が国民の人権を守る先頭に立つべ た。 きだと訴えられた。 土屋貴志大阪市大准教授は、現在の医学教育で731 短時間ではあったが、非常に中身の濃い集会であった。 部隊のような「医学犯罪」を教えないことを指摘し、そ 私も、この企画の一環として、昨年、中国・ハルビンに うしたことを放っておいて被験者保護という研究倫理が 731部隊遺跡を見学に行き、戦争の狂気を実感してき 理解できるのかと批判した。 た。改めてこのシンポジウムで、平時から人権と倫理に 薬害エイズの被害者で、参院議員の川田龍平氏は、 関して問う意識を持ち続けることが、重要であると感じ 731部隊の幹部はデータを米国に渡す代わりに免責さ た。 れ、戦後の医学界でも重要な地位を占めてきたとし、そ 実行委員会は、戦争と医の倫理の問題を、医学会総会 れが薬害エイズ事件の源流になっていることを告発し の正式な企画として取り上げるよう申し入れたが、残念 た。 ながら実現しなかった。そのため、自主企画とはなった 石田勇治東大教授は、ナチス被害者に対するドイツの が、戦後 70 年、戦時下に起こったことを過去の問題と 対応を紹介し、他民族や障害者などへの差別・偏見と闘 片づけてしまわない、このような取り組みを続けていく う民主主義の重要さを強調された。 必要が、今ますます強くなっている。 健保連大阪中央病院顧問の平岡諦(あきら)氏は、世 NPT再検討会議代表派遣 カンパへのご協力 ありがとうございました 池内春樹運営委員(左)が代表派遣された坂口智計先生にカンパを渡した 兵庫県保険医協会は、5月 23 日に協会会議室で、ニューヨークで開催された核不拡散条約(NPT)再 検討会議の報告会を開催した。代表で派遣された坂口智計先生が、現地の様子などを報告。NPTだけでは なく、メキシコからの不法移民問題や、米国政府が進めている公的医療保険制度(通称:オバマケア)につ いての報告が行われた。報告会の最後には、この間寄せられたカンパ 14 万 6000 円が、池内運営委員から 手渡された。 ●反核医師の声●(3) 医の倫理プレ企画市民公開学習会 放射線の健康被害 過小評価を批判 郷地秀夫代表が講演 医の倫理―過去・現在・未来―実行委員会は、4月 12 日に京都・和順会館で開催された「医の倫理―過去・ 現在・未来―」のプレ企画として、市民公開学習会「ハ ルビン、ヒロシマ・ナガサキ、そして福島―医師・医学 者の戦争責任・戦後責任を検証する―」を協会会議室で 開催。郷地秀夫代表が講演し、医師・歯科医師・市民ら 60 人が参加した。 郷地先生は最初、福島県が実施した甲状腺エコー検査 結果を示し、二次検診を必要とする子どもの割合が年度 によって大きく異なっていることから、年によっては正 確な検査がなされていなかった可能性があると批判。ま た、県が示した地域別の甲状腺がん発生数では、恣意的 に地域が区分されており、市町村ごとに見た場合、福島 第一原発周辺では甲状腺がん発生率が高いようにも見え ると、資料を示しながら語った。 医学者の倫理問題について講演する郷地秀夫代表 続いて、放射線による健康被害と医の倫理の問題とし て、広島・長崎での原爆投下について、戦後すぐに被爆 会場からは、東日本大震災後に東北メディカル・メガ 地に入ったアメリカと日本の研究者は、その直後から健 バンク機構が、被災者の遺伝子研究を行っていることに 康への影響を過小評価する説明を繰り返してきたと批 ついて、人類にとっては大きな利益になるから良いこと 判。さらに被ばく者研究のためにアメリカが作ったAB なのではという質問が出され、それに対して郷地先生は、 CC(原爆傷害調査委員会)は、戦後731部隊の研究 たとえ人類の利益になることであったとしても、被災者 者の再就職の受け皿となった予防衛生研究所と共同で、 一人ひとりにていねいに研究内容について説明をし、了 被爆者を対象とした研究を進めてきたことを紹介。医学 承を得ることが、医学研究の侵してはならない大前提で 者の倫理という戦時中から続く重大な問題から目をそら あり、そのことをないがしろに進めている現状は許され してはならないと訴えた。 ないものだと回答した。 原水爆禁止世界大会 折り鶴寄贈のお願い 反核医師の会では、8月に原水爆禁止世界大会が開催される長崎 で、原爆被害で亡くなられた方々への哀悼の意と非核平和への誓い を込めて折り鶴を捧げます。折り鶴作成にご協力いただける方は、 ご連絡ください。 お問い合わせは Tel.078-393-1807, Fax.078-393-1802, または [email protected] 兵庫県反核医師の会担当事務局 栗山まで ●反核医師の声●(4) 非核「神戸方式」40 周年のつどい 核兵器持ちこませない 決意新たに 市民 253 人が参加したつどい(左)では太田昌克氏(右)が核密約についての取材の経験を語った 非核「神戸方式」決議 40 周年記念のつどいが、3 月 18 日、神戸市勤労会館で開催され、市民ら 253 人が参加し た。この集会には、神戸市も後援しており、久元市長からもメッセージが寄せられた。集会の記念講演として共同通 信編集委員の太田昌克氏が、 「日米核同盟の深層~密約と呪縛を超えて」と題して講演を行った。反核医師の会からは、 加藤擁一、松岡泰夫両運営委員が参加した。 であることを明らかにした。そして自身の取材をきっか けに、従来の政権がひた隠しにしてきた核密約の存在を 当時の民主党政権が認めるまでに至った経験を語った。 また日本が戦後、原子力の平和利用の名の下で原発を稼 働してきたことにより、核兵器の原料であるプルトニウ ムを大量に保有するに至っている現状を紹介。核廃絶へ 向けた非核政策の確立のために、核廃絶を願う市民の声 により核拡散を押しとどめる「リベラル抑止力」の考え 方とその重要性を提起した。 集会には兵庫原水協の梶本事務局長が基調報告として 昼に開催されたパレードでは 60 人がアピール 非核「神戸方式」のこれまでの 40 年間の歩みを紹介し この集会は、神戸市が「核兵器積載艦艇の神戸港入港 アピールが採択され、5 月にニューヨークで開催される 拒否に関する決議」の採択から 40 年を記念して開催さ NPT 再検討会議へ向けた兵庫県代表団が紹介された。 れたもの。集会の記念講演の中で太田氏は、国の防衛計 なお集会当日には市民パレードも開催された。約60人 画の大綱の中で、日本が米国の核に依存した防衛計画を が参加し、非核「神戸方式」を神戸から全国へ広げよう 立てていることを紹介し、日米安全保障条約が核の同盟 と市民に訴えた。 た。また集会の最後には核兵器禁止条約の実現を求める ●反核医師の声●(5) ●反核医師の声●(6) ●反核医師の声●(7) ●反核医師の声●(8)
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