大学名 奈良女子大学 表 題 「やまと・紀伊半島・ニホン再生プロジェクト」 概 要 奈良女子大学は平成13年4月に共生科学研究センターを設立し、豊かな自然生態系が、歴史 的風土の中で古くから維持されてきた紀伊半島を、人間社会と自然環境との共生のあり方を探 る格好のモデル地域と位置づけ、人間社会と自然環境の共生のための科学「共生科学」という 新しい研究分野を提言してきた。同センターでは、自然の再生と保全を目指した研究活動を行 うとともに、地域社会の子どもたちに「紀伊半島」という地域の特性を認識し、環境保全への 意識向上を図るため、センター設立当初より野外体験実習を行っている。 また平成23年度からは、本学が中心となり県研究機関や企業とも協力し、平成23年度JST 戦略的創造研究推進事業(社会技術研究開発)の採択を受け、紀伊半島にある吉野郡下市町栃 原地区をフィールドに、過疎高齢化・公共交通機関の衰退などの課題を抱える農山村を活性化 のモデルケースとして、高齢生活者を中心とした営農コミュニティをいかに維持するかという プログラム「高齢者の営農を支える『らくらく農法』の開発」を実施している。 同プログラムでは集落の課題を点検し10年後の予測を立て、高齢者が農作業を行うための畑 のバリアフリー化・扱いやすい電動運搬車の開発、心身の疲労軽減をはかるための作業状況の 分析、体力維持方法の開発に取り組んでいる。この取組が評価され、平成27年度には下市町が 第2回プラチナ大賞の優秀賞を獲得した。 このようなこれまでの「大和・紀伊半島」を舞台にした取組みを土台に、本学はこれから、 まだ仮称だが、「やまと・紀伊半島・ニホン再生プロジェクト」を始動させることにしてい る。過疎化に悩む地方の再生をはかるためには、まずは、その地域がかつて繁栄していた理由 を発見し、それを現代に活かさなくてはならない。ただ闇雲に地方創生を叫ぶだけでは、多分 その実現は不可能だからである。 「大和は国のまほろば」という言葉があるが、大和はかつてこの日本という国の建国の地と なり、栄えた。それはなぜだったのか。これまであまり本格的に解明されたことのないテーマ であるが、『古事記』や『日本書紀』の記述などから推量するに、次の三つが原因であった。 ① 森林資源に恵まれていたこと。 ② 従って燃料資源に恵まれ、金属鉱業をはじめ様々な産業を興すのに便利な地であったこと。 ③ 紀伊半島を横断する、紀ノ川・吉野川・櫛田川ラインにそっており、列島の太平洋側交通の 要の位置にあったこと。 三つ目の理由には少し注釈が必要だが、太平洋側の交通は黒潮に接した交通なので、常に漂 流の危険にさらされながらの交通であった。だから瀬戸内海から和歌山、和歌山から伊勢に抜 けるルートが古来重んじられたのである。さらには太平洋側の交通は、朝鮮半島と北九州を結 ぶ交通と並んで、日本と海外を結びつける、きわめて重要な国際航路であった。 かかる、かつて大和が「国のまほろば」になり得た理由を再発見し、それを、観光開発や 「物づくり」、さらにはグリーンイノベーションやスローライフイノベーションとして現代に 活かしていくのが、これから本学の取り組む「やまと・紀伊半島・ニホン再生プロジェクト」 である。 共生科学研究センター主催野外体 験実習の様子(林業体験) URL 「らくらく農法」プロジェクト模式図 らくらく農法プロジェクト http://www.nara-wu.ac.jp/scc/tochihara/index.html
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