駿河湾における円石藻類出現特性

駿河湾における円石藻類出現特性
B4
東海大学海洋学部環境情報工学科
指導教員
和田 徹
杉本隆成 特任教授・萩原直樹 講師
目的
本研究は、駿河湾フェリーの協力を得て、円石藻類全体の出現傾向を見てきた2008年の研究を今回は、種類組成を試み2種
類の円石藻類(Emiliania huxleyiとGepyhrocapsa oceanica)に分け、出現特性を把握することを目的としてきた。
方法
●:本研究の定点
:調査船の定線
:フェリー航路
フェリーによる採水定点位置
1
2
4
3
(沿岸水域)
(沖合系水域)
図4 沿岸水域(St.1)と沖合系水域(St.2~4)における2種の円石藻類の出現傾向
図1 観測点図
・反復調査の定点より、少し沖合に駿河湾フェリーの横断航路。
・駿河湾フェリーの船底(海面下5m)から汲み上げたエンジン冷却水から採水。
・採集日は2009年2月~12月の隔週で採水し、その出現特性を確認してきた。
・走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた円石藻類の観察と NO₃⁻,Si₄O⁴⁻,PO₄³⁻の比
色による栄養塩定量を行った。
E.huxleyi 春は土肥港寄りの沖合系水域(St.2~4)、秋は清水港寄りの沿岸水域(St.1)で高密度での
出現を確認。
G.oceanica
2月と3月の観測を除いて沖合系水域(St.2~4)のみで出現を確認。
円石藻類
2μm
Emiliania huxleyi
2μm
Gephyrocapsa oceanica
図2 電子顕微鏡で確認した円石藻類
・coccolithと呼ばれる炭酸カルシウムを持つ微細植物プランクトンとして知
られている。
・直径約10μm程と光学顕微鏡からは確認できないほどサイズは小さい。
・ブルーム現象について、ベーリング海でE.huxleyi、博多湾では
G.oceanicaのブルームが報告されている。
結果
図5 円石藻類と各栄養塩との対応
・円石藻類の出現傾向を見るために燐酸塩と珪酸塩で対応させたのだが、まず燐酸塩は低
濃度の状態でも円石藻類は、アルカリ性の酵素ホスフォターゼにより有機燐を合成できる
とされていることから対応させ、珪酸塩の場合は、円石藻類は増殖速度を見たときに珪藻
類に比べ劣ってしまうので珪酸塩の低濃度状態が続くほど、円石藻類の出現に有利と考
え対応させた。その結果、円石藻類は栄養塩が低濃度であるほど高密度の出現が見ら
れた。
まとめ
図3 E.huxleyiとG.oceanicaの出現傾向
・観測期間中、E.huxleyiが優占。
・2種とも春と秋に多く、特に5月、10月が最も高密度で出現が見られた。
・増減傾向については、2種の密度に差はあったものの同じであった。
・ 円石藻類の種類組成を行った結果、観測期間中E.huxleyiが優占していた。特に
5月と10月に最も高密度での出現が見られ、春は土肥港寄りの沖合系水(St.2~4)
秋は清水港寄りの沿岸水域(St.1)で多く見られた。
G.oceanicaは低密度で2月、3月を除いて土肥港寄りの沖合系水域(St.2~4)のみ
で出現が見られた。2種の密度に差はあったものの増減傾向は一緒だった。
・燐酸塩と珪酸塩との対応性について、栄養塩が低濃度の時期に円石藻類は高
密度での出現が見られた。