その2 「マイフェアレディ」の原作(pdf)

「マイフェアレディ」の原作
菜穂:ねぇ博士。今年の小平・市民オペラ協会の演目は「マイフェアレディ」だね。この
お話には原作があるんでしょう?
博士:おおもとはギリシャ神話だよ。キプロス島のピュグマリオン王は理想の女性ガラテ
アの像を彫ったんだけれど、やがてその像に恋焦がれるようになって、話しかけた
り食事を用意したりして、だんだん衰弱してしまう。それを哀れんだ愛の女神アフ
きさき
ロディーテが像を人間して、ピュグマリオンの 后 としたという話だ。
菜穂:アフロディーテってビーナスのことね。
博士:この神話をもとにして、フランスの啓蒙哲学者ジャン=ジャック・ルソーが 1762 年
に短い戯曲「ピグマリオン」を書いたんだ。これは殆ど神話と同じ内容なんだけれ
どね。20 世紀になってアイルランドの文豪ジョージ・バーナード・ショーが現在の
「マイフェア」に近い形にして芝居をつくったんだ。初演はウィーンで 1913 年のこ
とだ。バーナード・ショーのことは知っているかな?
菜穂:名前くらいかな。
博士:日本じゃあまり知られてないかもしれないね。長生きしたので多くの戯曲を書いて
いる。ノーベル文学賞受賞者でもあり、1938 年に映画化された「ピグマリオン」(日
本では劇場未公開)ではアカデミー脚色賞を受賞している。ショーの文章は私の受験
勉強の当時に、英語の長文解釈の問題に使われたことがあったな。
菜穂:この「ピグマリオン」は、今のマイフェアレディと同じような粗筋なの?
博士:台詞も含めて殆ど同じだ。でも芝居ではアスコット競馬場は出てこないし、歌もな
い。大きな違いは、最後の部分でイライザはヒギンズと決別するんだ。ショーは後
日譚の中でイライザはフレディと結婚すると追記している。ミュージカルではヒギ
ンズと結ばれそうな雰囲気になっているよね。
菜穂:ブロードウェイのミュージカルや映画ではハッピーエンドというわけね。
博士:そう、脚本家 A.J.ラーナーと作曲家 F.ロウが、ピグマリオンをベースにして「マイ
フェアレディ」というミュージカルに作り直したんだ。1956 年のことだ。それから
6 年半、2700 回以上のロングランとなったようだよ。でもバーナード・ショーはミ
ュージカル化に反対だったんで、1950 年の没後になって初めて製作されたそうだ。
日本でも 1963 年に東京宝塚劇場で、江利チエミ・高島忠雄の共演でミュージカル上
演されている。
菜穂:へぇ~! そしてヘップバーンが出る映画になるのね。
博士:1964 年製作のワーナー映画だ。この映画はアカデミー賞を総なめにしたし、興行的
にも成功した。歴史に残る作品だね。でもミュージカルでのイライザ役はジュリー
アンドリュース、映画ではオードリリー・ヘップバーンになった。ヒギンズやドゥ
ーリットル、フレディなど殆ど同じ俳優なんだけどね。まぁ、この話は別のときに
しよう。
菜穂:博士は、映画やミュージカルを見たの?
博士:ヘップバーンの映画はいち早くみたよ。舞台は残念ながらブロードウェイではなく、
東京宝塚劇場だったと思うけれど……那智わたるのと大地真央が出演していたのを
2回ほど見たな。古い話だ。