生産者と消費者で支える農業の形「CSA」

2015 年 5 月 生産者と消費者で支える農業の形「CSA」 CSA(Community Supported Agriculture)は、消費者と生産者が直接取引を行う方法とし
て、欧米を中心にここ20年程で拡大してきている取組み。日本語にすると「地域が支える
農業」という意味だ。もともとは、1960 年代に日本で生まれた有機農業生産者と消費者の「提
携」運動が原点で、いわゆる生活クラブ(生協)が発端だと言われている。80 年代に入ると
アメリカでも「Teikei」として流れが広まり、現在では日本を含む世界 40 カ国以上の国々で
実施されるムーブメントになった。 |「CSA」の目的は何? CSA は、地域やコミュニティの特性によって目的は様々で、実際に多種多様な成果が出て
いるが、大きくは以下のようなことが目的だと言える。 (1)食の生産と消費に直接的なつながりを持たせることで、生産者とそれを支持する地域
のコミュニティとの間に、強力なかかわりあいとパートナー・シップを生み出すこと。それ
によって、地域経済を強くする。 (2)将来にわたる地域の土地利用・資源活用について、コミュニティに参画するメンバー
の方向性を統一する。また、コミュニティに新たに参加するメンバー(地域の消費者)の意
識を目覚めさせる。 (3)CSAは、家族農業を地域の人々で守る運動でもある。CSAによって、小規模農家
が多様な種類の作物を作れるようになることで、農業者間での交流や協調の体制ができる。
また,小農を守る地域文化を創ることによって、オープン・スペースが確保され、野生生物
の生息地や生態系が守られ、地域の環境が維持できる。 参考となる良書もいくつかあるので、ご紹介しておきたい。 ■CSA 地域支援型農業の可能性〜アメリカ版地産地消の成果(エリザベス・ヘンダーソン) ■シビック・アグリカルチャー〜食と農を地域に取り戻す(トーマス・ライソン) ■スマート・テロワール(松尾雅彦:元カルビー㈱会長) 1
|「地域で農業を育てる」という意識 CSA に取り組む組織・地域では、消費者
は決められた代金を生産者に前払いする。
生産者はこれを元手に資材や種苗を購入
し、農作物を栽培する。消費者は「お客様」
というより、農家とともに作物を育ててい
く「仲間」である。安全で安心、新鮮でお
いしい作物を直接購入できる点に魅力を
感じ、日本国内でも取組みは徐々に増えて
きている。 当然ながら、悪天候などにより予定した収量が確保できなくても消費者は規定の代金を支
払う。これまで農家のみが背負っていた食材の生産・供給におけるリスクを消費者と分担す
ることが、地域の農業を支えていくという考え方だ。 |地域の農業を支えて育てる CSA 北海道札幌市の「ファーム伊達家」は、無肥料無農薬の自然栽培で年間 40 種類以上の野菜
を栽培している。年会費 5,000 円に加え、30,000 円と 20,000 円の 2 コース制(+配送料な
どの諸経費)。商品は配達、または地域の幼稚園で
受け渡す。消費者との直接取引のため規格もなく、
サイズや形にバラつきのある固定種でも、消費者は
納得して受けとる。簡易包装で配送も手軽。直接販
売なので消費者、利用者の反応がすぐに返ってきて、
次の生産や販売を改善していくことができること
は、生産者、消費者両者にとっての利点だ。 2
|農地集約が進められない地域、大規模化できない中山間地で、
小規模農家が地域経済を維持し続けることが出来る CSA 地域の結束を強めて消費者と生産者で農業を支える CSA は、大規模化できない中山間地域
の農家が生き残るためには有効な方法といえるだろう。効率化と値段の安さよりも、安心と
安全、地域とのつながりを重視する消費者の増加に伴い、CSA 農家も増えていくと予想され
る。 地域が自立して、地域経済を維持・保全・再生していく考え方と取組みだ。 今後、国内における取組みの振興に注目したい。 【発行元】 株式会社コネクト・アグリフード・ラインズ (メディア事業部 AgriFood 編集チーム) 3