低下するロシアの労働組合組織率:その背景に関する若干の考察 堀江 典生(富山大学) ロシアの労働法制は,労働者に手厚い保護を与えているとよく言われる。一方で,労働 者の権利は,それほど守られるような法制にはなっておらず,労働組合問題などを研究 する研究者たちや人権団体には評判が悪い。旧ソ連時代からの旧態依然とした伝統的労 働組合がいまだに支配的であり,労働組合と政府との関係もまた相変わらずであるが, 規模的には大きくないものの独立系労働組合が再編するなかでロシアの労働組合運動 は新たな発展段階に入ろうとしている。旧ソ連時代は,100%の組合組織率だったもの が,現在次第にその組織率は低下していると言われる。そのように指摘されながらも, ロシアの労働組合に関する信頼できるデータは少ない。支配的なロシア独立労働組合連 盟についても、組合員数でさえも断片的にしか公表されていないし、新しい労働組合と もなればデータそのものがほとんどない状況である。本発表では,ロシアの労働組合の 近年の統合の動き,独自データによる組合組織率,企業の労働組合に対する態度などを 分析し,現在のロシアの労働組合の立ち位置を考察する。
© Copyright 2025 ExpyDoc