ロシア・ルーブルの動向と今後の見通し

臨時レポート
ロシア・ルーブルの動向と今後の見通し
2015年9月16日
ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社
■ ロシア・ルーブルは足元1米ドル=65~70ルーブルの安値圏で推移しています。
■ 中国景気後退に対する懸念や米国の利上げ観測等により、新興国からの資金流出懸念が継続すると見
られるものの、経常収支が黒字であることはロシア・ルーブルの下支えとなると予想されます。
■ ロシア・ルーブルはロシアの主要輸出品目である原油価格に左右される展開が予想されます。また、中長
期的にはロシア中央銀行(以下、中銀)の政策にも影響を受けると考えられることから、数々の要因を注意
深く見る必要があると考えます。
【ロシア・ルーブルは安値圏で推移】
ロシア・ルーブル(対米ドル)は直近1年で大幅に下落しました。2014年後半から2015年初にかけて欧米による経済制
裁の影響や原油価格の下落基調が続いたこと等を受けて、ルーブルは一時1米ドル=70ルーブルを超える水準まで
下落しました。その後2015年半ばにかけては原油価格の反発に伴い一時1米ドル=50ルーブル台まで回復しました
が、7月以降は再び原油価格と共に下落基調が続き、足元でルーブルは1米ドル=65~70ルーブルの安値圏で推移
しています。
【図表】ロシア・ルーブル(対円、対米ドル)の推移
期間:2004年1月1日~2015年9月15日、日次
ロシア・ルーブル/円(左軸)
米ドル/ロシア・ルーブル(右軸)
2006/1
出所:Bloomberg
2008/1
2010/1
2012/1
(ロシア・ルーブル)
20
25
30
35
40
45
50
55
60
65
70
75
2014/1
ルーブル安
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
2004/1
ルーブル高
(円)
【図表】ロシア・ルーブル(対米ドル)とWTI原油先物価格の推移
期間:2013年12月31日~2015年9月15日、日次
(年/月)
(ロシア・ルーブル)
(米ドル/バレル)
20
120
ロシア・ルーブル(対米ドル、左軸)
30
WTI原油先物価格(右軸)
105
40
90
50
75
60
60
70
45
80
2013/12
2014/4
2014/8
2014/12
2015/4
30
2015/8
(年/月)
出所:Bloomberg
【新興国通貨は概ね下落】
ロシア・ルーブルに限らず、新興国の通貨はこの1年の間、
対米ドルで概ね下落しました。中でも①原油輸出国、②イ
ンフレ率の高い国、③経常収支が赤字である国の通貨下
落が目立ちます。
原油輸出国は原油価格が1年前と比べ半値以下となって
いることで、受取外貨の減少や景気悪化懸念等が市場心
理の悪化につながった模様です。インフレ率の高い国や
経常収支が赤字の国においては、国外に成長資金を依存
し、経済構造が脆弱であることから、2013年5月に米国が
量的金融緩和策の縮小を示した際に通貨安が進みました。
加えて足元では、中国景気後退懸念が高まっていること
や、米国の利上げ観測等がこれらの国の通貨を押し下げ
ています。
【図表】主要新興国通貨の騰落率(対米ドル)
2015年9月15日時点
-38.6
-2.6
-3.6
年初来
-4.9
-8.0
過去1年
-8.5
-10.2
-14.0
-17.4
-13.8
-17.7
-11.9
-20.6
-18.4
-24.6
-23.3
-27.0
-21.5
-34.1
-30.5
-40
インド・ルピー
タイ・バーツ
インドネシア・ルピア
南アフリカ・ランド
メキシコ・ペソ
マレーシア・リンギ
トルコ・リラ
コロンビア・ペソ
ブラジル・レアル
-12.6
-43.3
(%) -50
中国元
-30
-20
ロシア・ルーブル
-10
0
出所:Bloomberg
※過去1年は2014年9月15日比、年初来は2014年12月31日比
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
式会社が作成しておりますが、正確性・完全性について当社が責任を負うものではありません。当資料記載の情報及び見通しは、作成時点のものであり、市場の環境やその他の状況
によって予告なく変更することがあります。当資料に記載されている個別の銘柄・企業名については、あくまでも参考として記載したものであり、その銘柄・企業の株式等の売買を推奨す
るものではありません。 D-150916-1
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【ロシアの状況】
ロシアの状況を見てみると、ロシアは原油を主要輸出品目としており、かつ足元のインフレ率は約16%となっています。
その一方で、経常収支は黒字が継続しています。
(%)
【図表】主要政策金利、インフレ率の推移
期間:2014年1月1日~2015年9月15日
6.0
18
16
(%)
【図表】経常収支の推移(対GDP比)
期間:2010年12月~2015年6月、四半期
主要政策金利
5.0
インフレ率(前年比)
14
4.0
12
3.0
10
2.0
8
6
1.0
4
2014/1 2014/4 2014/7 2014/10 2015/1 2015/4 2015/7
0.0
2010/12
出所:Bloomberg
※インフレ率は2015年8月時点まで。
(年/月)
2011/10
2012/8
2013/6
2014/4
2015/2
(年/月)
出所:Bloomberg
インフレ率が足元高水準で推移している背景には、2014年にルーブルが大幅下落し輸入物価が急騰したことが挙げ
られます。ロシア中央銀行(中銀)は、弱含みする内需や現在の金融政策等により2017年までにインフレ目標値であ
る4%程度まで低下すると予想しており、実際にインフレ率が落ち着けば、ルーブルの市場変動性も幾分和らぐ可能
性があると見ています。
また、ロシアの経常収支は黒字の状態が継続しています。経常収支が黒字の場合、獲得した外貨の一部を売却して
自国通貨を購入する動きが起きるため、ロシアの黒字の経常収支はルーブルの下支え要因になると考えられます。
【ロシア中銀による金融政策】
今後のルーブルの動きを考える上で、中銀の動向についても確認していく必要があると考えます。
政策金利に関しては2014年12月にルーブル急落に際して大幅に引き上げた後、2015年に入り5会合連続で利下げを
行ってきましたが、9月11日(現地)の政策決定会合では政策金利を11.0%で据え置きました。中銀はこの決定の背景
として、景気低迷が続く中において、インフレ上昇リスクが高まっていることに配慮したとしています。
また、中銀は5月半ばより、外貨準備高拡大のために外貨購入を実施していましたが、足元のルーブル安がインフレ
率を押し上げるというリスクに配慮し現在は一時停止しています。そのため、中銀によるルーブル売り圧力は取り除
かれた状況となっています。
【今後の見通し】
今後インフレ率が低下していくことへの期待感や経常収支の黒字継続はある程度ルーブルを下支えすると予想され
ます。一方、原油価格については依然変動性が大きいことで先行きに対する不透明感が高まっていることから、ルー
ブルは原油価格の動向に左右される展開が想定されます。その一方、中期的には、中銀による政策金利や外貨準
備高に対する動きも市場に影響するとみて注目しています。
加えて、ロシア・ウクライナ情勢を背景としたロシアへの欧米諸国による経済制裁の動向や、年内の実施が見込まれ
る米国の利上げ等海外要因の影響も注意が必要であると考えます。
※データは記載時点のものであり、将来の傾向、数値等を保証もしくは示唆するものではありません。
当資料は、情報提供を目的としたものであり、特定の投資商品の推奨や投資勧誘を目的としたものではありません。当資料は、信頼できる情報をもとにドイチェ・アセット・マネジメント株
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